「会社の今後の運営方針を決めるような、そんな大事な会議の日に有給休暇を申請された…。」
こんなとき、申請拒否することはできるのでしょうか?
それとも、どんな理由であれ、労働者のもつ権利である有給休暇の申請は、受け入れるしかないのでしょうか?
会社側としては、そういった大事な時期に会社を休むのは、できれば避けてほしいですよね。
労働者のもつ権利と、会社側の運営上の都合。両者を天秤にかけたとき、どちらが優先されるのでしょうか。
この記事で解説していきます。
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KL2020・OD・099
基本的に拒否はできない
まず理解しておくべきことは、有給休暇を行使することは労働者の権利であり、どんな理由であれ、使用者は原則として拒否はできないということです。たとえ私用のためであっても、労働者は自由に有給休暇を使って会社を休むことができます。
会社によっては、
「うちの会社に有休はない」
と労働者に伝えることもあるかもしれません。しかし、そういった言動に対して厚生労働省は、
「年次有給休暇は、要件を満たせば必ず発生します。会社がそのような主張をしたとして も、一定の要件を満たしたすべての労働者に取得する権利があります」
と回答しています。
参考:厚生労働省
つまり、基本的には、会社にどのような理由があれ、労働者の権利を拒否することはできないのが原則です。
大事な会議がある場合には拒否できる?
冒頭のように、 その労働者がいないことで会社に支障が出ると考えられる場合でも、有給申請を拒否することはできないのでしょうか?
そういったケースでは、以下のような権利が認められています。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
引用元:労働基準法第39条5項
このように、その労働者がいないことで会社の正常な事業運営が妨げられる場合、使用者は労働者に対し、有給休暇を別の日に取得することを求めることができます。
このとき注意しなければいけないのは、『単に人手が足りないから』や『いつもより忙しくなるから』という理由は事業の正常な運営を妨げるということにはならないということです。
対象となる労働者が会社の当該事業にとって唯一無二であり、余人をもって代え難いという場合であれば、事業の正常な運営を妨げる場合に該当するといえるかもしれません。しかし、「何かあったときのために居てくれたほうが良い」程度であれば有給申請を拒否することはできないと考えるべきでしょう。
冒頭のように、労働者が大事な会議に欠席することは好ましい事態ではないのかもしれません。それでも、当該労働者がいなくても会議の進行や決定には具体的な支障はないということであれば、有給申請を拒否することはできないと考えるべきです。またそもそもですが、普段から労使間で十分なコミュニケーションをとり、良好な関係性を作っておけば、労働者からも会社に配慮して有給取得時期について難しい要求をしてくるということもないはずです。
なお、労働者からの有給取得の申請に対して、会社が一定の配慮を求めること自体は禁止されません。そのため、仮に会社として休暇を取得してほしくないということがあれば、まずは労働者と休暇取得時期を調整できないか、話し合いをしてみるということは検討に値するでしょう。