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公開日:2019.12.16  弁護士監修記事

忘年会で一気飲みを強要することが笑い話じゃ済まない理由

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2019年も12月に入り、忘年会シーズンがやって参りました。

 

年の瀬くらい、仕事を気にせずお酒を飲みたいと、忘年会を楽しみにされている方も多いかと思います。

 

しかし、羽目を外し過ぎてしまうせいか、お酒のトラブルが多いのもこの季節。

 

特に盛り上がるからと言って、他人に一気飲みを強要させるような下品な飲み方も、しばしば見受けられます。

 

ご存知の通り、一気飲みは最悪死に至る可能性もある、とても危険な飲み方です。

 

一気飲みを無理やりさせられた人が亡くなれば、当然強要した人の責任問題となります。

 

忘年会で少し羽目を外し過ぎてしまったがゆえに、人生を棒に振ってしまうことがないよう、一気飲みの強要にどのような法的問題があるのか確認しておきましょう

 

一気飲みの強要で刑事罰に問われることはある?

嫌がる相手に一気飲みを強要した場合、どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか?

 

銀座さいとう法律事務所の齋藤健博 弁護士にお話を聞いてみました。

Q.一気飲みをさせられた人が亡くなった場合、強要した人は罪に問われますか?

【齋藤弁護士の回答】

死亡結果を故意的に招いたとしても、法律上、殺人罪に問うことは困難といえます。

 

ただし、強要罪・重過失致死罪が成立する可能性はあるでしょう。とりわけ一気飲みを強要させる行為は、一気飲みをしたことによって死亡結果が発生する予見可能性があり、結果回避可能性も十分あったはずです。

 

このように考えていくと重過失致死罪の成立は視野に入ります。

 

Q.一気飲みを強要するだけでも(相手が亡くなったりはしていない)何か罪に問われる可能性はありますか?

【齋藤弁護士の回答】

強要罪の可能性は高いです

 

また、被害者の行為を利用した傷害罪に問われる可能性もあるでしょう。

 

Q.周りに空気に合わせていただけ(例えばコールで手拍子だけしていた等)の人も罪に問われますか?

【齋藤弁護士の回答】

過失犯の共同正犯※という刑法上難しい問題にぶつかるのですが、結論からいうと、共同正犯が成立する可能性は低いです。

 

しかし、ある意味でそれに加担していた具体的な行為、たとえば強要行為それ自体をあおるような準備行為を行っていた場合には、ほう助罪が成立することがあり得ます。

 

※共同正犯とは

2人以上が共同して犯罪を行うこと。共同正犯が成立した場合、今回の事例でいえば、自身が一気飲みを強要したわけじゃなくても、強要罪等に問われることとなります。

 

Q.一気飲み後、酔いつぶれた人を放置していた場合、罪に問われますか?

【齋藤弁護士の回答】

不作為犯※の成立可能性につき、積極的に先導をして、お酒の強要をした方であれば、不作為による関与態様であっても、犯罪となりえることはありますね。

 

※不作為犯とは
通常、犯罪は作為(何かをすること)で発生しますが、「何もしないこと」で起こる犯罪を不作為犯といいます。今回の事例でいえば、酔いつぶれた人を放置した結果、亡くなってしまったという場合、保護責任者遺棄罪等に問われる可能性があります

 

亡くなった方の遺族などから損害賠償請求をされる可能性もある

一気飲みの強要が問題となるのは、刑事罰についてだけではありません。

 

一気飲みをさせられた方が亡くなれば、遺族などから損害賠償請求される可能性があります。

Q.損害賠償請求された場合、どのくらいの金額を請求される可能性がありますか?

【齋藤弁護士の回答】

こればかりは具体的な状況に応じますが、仮にこれが職場内、もしくは職場の延長で行われた場合には、特に使用者側に対し、逸失利益がとして、生涯年収(賃金センサスなどによって定めるものです)分が認められる可能性があります。

 

この場合には何千万という金額になることも当然あり得ますね。

 

Q.損害賠償請求の相手は会社ですか?個人ですか?

【齋藤弁護士の回答】

資力の観点から考えると、法人が現実的でしょう。

 

しかし、加害行為者の不法行為が原因なのですから、使用者側は「求償権」と言って、加害者に請求する権利を取得します。

 

ある意味で法人側は肩代わりをするだけなのです。

まとめ

忘年会を盛り上げるためであろうとなかろうと、一気飲みを強要するのは非常に危険です。

 

最悪、一気飲みをさせられた方が亡くなってしまうかもしれません。取り返しのつかない事態となってから、後悔しても遅く、償いきれない罪を抱えることになります。

 

年に一度の忘年会ですが、羽目を外し過ぎず、節度を持って楽しんでください。

 

銀座さいとう法律事務所 齋藤健博 弁護士 (東京弁護士会)


女性のセクハラ被害解決を得意とする弁護士。慰謝料請求や退職を余儀なくされた際の逸失利益の獲得に注力。泣き寝入りしがちなセクハラ問題、職場の女性問題に親身に対応し、丁寧かつ迅速な解決を心がけている。

この記事の監修者
銀座さいとう法律事務所
齋藤健博 弁護士 (東京弁護士会)
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本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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