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アパレル業界の残業代事情|残業代の計算・未払い請求の方法
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アパレル業界の残業代事情|残業代の計算・未払い請求の方法

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
Apareru

 

アパレル販売員

アパレルの販売員として働いていますが、残業代の支払いを受けてことがありません。あまりにも残業時間が長いため、転職も検討中です。ただ、アパレルの求人情報を見ても勤務時間はあるけど、残業の記載はないのです。

アパレル業界には残業代が付かないものなんでしょうか?

 

回答

アパレルで働いているからと言って、一概に残業代が出ないことはありません。会社であれば社員の労働時間に応じた給与を支払う義務がありますし、法定労働時間を超えて働いた分は残業代や割増賃金が支払われます

 

アパレル業界でも、残業代の未払いは深刻な問題となっています。残業代の未払いは他の業界でも横行していますが、

 

  • 「開店前・閉店後を労働時間扱いしない」
  • 「店長は名ばかり管理職扱い」
  • 「ノルマ達成のために自腹を切る“自爆営業”」など

 

 

アパレル特有の問題もあります。それらの事情を踏まえつつ、未払い残業代を請求する方法についてご紹介します。

 

 

 

 

アパレル業界の残業時間・残業代の実態

 

アパレル/サービス業の平均残業時間

まず、アパレル業界における残業の実態を見ていきましょう。就職・転職口コミサイト「Vorkers」の「業界別残業時間(月間)ランキングTOP30」には「アパレル(小売)」は入っていませんでした。上位と比較すると、残業時間は少なめであると言えるでしょう。

 

しかし、まったく残業時間がないという訳ではありません。同じく「Vorkers」の「業界別月間平均残業時間の推移」によると、2018年の平均残業時間は

 

  • 小売(百貨店・専門・CVS・量販店):22.2時間(前年比マイナス3.9時間)
  • ファッション、アパレル、繊維:16.5時間(前年比マイナス3.4時間) でした。

 

出典元:2018年「Vorkers残業時間レポート」

 

他の業界と比べて少なめではあるものの、残業は恒常的に発生しているようです。

 

アパレル/サービス業の平均残業代

上記の残業時間に対し、残業代はどれぐらい支払われているのでしょうか。

 

厚生労働省の『毎月勤労統計調査-平成30年10月分結果速報』によると、アパレルが含まれる「卸売業・小売業」の現金給与総額354,082円に占める所定外給与(残業代など)は18,672円所定外労働時間(残業時間)は11.5時間となっていました。 

表:業種別の残業代平均額

産業

現金給与総額(円)

所定外給与(円)

所定外労働時間

鉱業,採石業等

324,411

26,648

14.9

建  設  業

361,258

29,589

16.4

製  造  業

346,196

39,356

18.5

電気 ・ ガス業

465,697

63,803

17.2

情 報 通 信 業

417,087

33,560

14.7

運輸業,郵便業

350,088

50,560

27

卸売業,小売業

354,082

18,672

11.5

金融業,保険業

409,787

23,836

11.9

不動産・物品賃貸業

366,140

22,133

14.1

学 術 研 究 等

445,608

29,434

15.4

飲食サービス業等

265,958

22,094

15.8

生活関連サービス等

284,935

17,034

10.9

教育,学習支援業

400,265

8,743

15.6

医 療,福 祉

317,069

18,877

6.9

複合サービス事業

348,667

19,944

10.4

その他のサービス業

286,723

25,834

15.2

平均

358,998

28,132

14.8

参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査-平成30年10月分結果速報

 

閉店後/開店前は労働時間に含まれていない可能性が高い

アパレルショップに勤務する販売員は、一般的に接客が主な仕事だと思われています。しかし、実際には接客以外にも以下のような作業を行っています。

 

  1. 在庫の管理
  2. 店舗の清掃
  3. 売り場づくり(商品の陳列、店舗飾りつけ)
  4. 入荷した新商品の確認(試着など)
  5. 接客に使用する資料の作成
  6. 宣伝用SNSの更新など

 

ところが、中には「お店の開店時間=接客時間のみを労働時間としてカウントしている会社」も存在するようです。

 

 

このような対応は労働基準法違反となる可能性があります。労働基準法では、「使用者の指揮命令下に置かれている状況」にある時間を労働時間とされるためです。

 

接客以外の作業を行っている時間でも、お店や上司の監視下にあって、自由がなく拘束されている状態であれば労働時間となる可能性が高いです。

 

判例は、労働時間に「使用者の指揮命令下に置かれている時間」という抽象性の高い統括的定義を与えたうえ、具体的判断基準としては、場所的・時間的拘束性の有無・程度、実態的な義務的業務性の有無・程度、使用者の指示の有無などの諸要素を総合的して判断する傾向にある。(大林ファミリティーズ事件―最二小判平 19・10・19 労判 946 号 31 頁)

引用元:⑫ 休憩時間の労働時間該当性 - 厚生労働省

 

 

労働基準法での労働時間と長時間労働の対処法

労働基準法で定められている労働時間は、原則『1日8時間、週40時間以下』です。この記事では、普段何気なく会社で過ごしている労働時間について、労働基準法から見た規定や扱いについて分かりやすく解説していきます。

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アパレル業界/サービス業に残業代が出ないと思われている理由

 

他の業界と比べると残業時間は短めなアパレル業界ですが、バーゲンセール前や季節の変わり目などには準備のために夜遅くまで残業が発生することが多いです。

 

にもかかわらず、なぜか残業代が貰えないという不満の声もあるようです。

 

 

一体なぜなのでしょうか。背景には、アパレル業界ならではの事情がありました。

 

タイムカードによる勤怠管理がされていない

一つ目の理由としては、「タイムカードによる勤怠管理がされていない」ということが挙げられます。タイムカードがないため、正確な労働時間がわからなくなっているケースがアパレル業界には多いようです。この場合は、証拠として「売上伝票やレジ内の計算書」などを集めておき提出するのも一つの方法です。

 

営業時間外の業務がサービス残業

前述の通り、開店前・閉店後をサービス残業扱いにしている会社もあります。販売員が接客以外の作業を行っている場合でも、「使用者の指揮命令下に置かれている」のなら労働時間に該当します。

 

変形労働時間制のため計算が正しくない

販売員の勤務形態が変形労働時間制度であることも、アパレル業界における残業代の扱いを難しくしていると考えられています。

 

職場で「変形労働時間制」が採用されている場合、1日8時間の勤務を超えても残業代が発生しない場合があります。繁忙期や繁閑期があるような業界の場合、このような変形労働時間制を実施することで、労働コストを抑制するということはよくあります。

 

なお、変形労働時間制を採用している場合の残業代の計算方法はかなり複雑です。気になる方は弁護士や社労士などの専門家への相談をご検討ください。

 

 

変形労働時間制とは|定時と残業時間の正しい求め方

繁忙期や閑散期など、業務にかかる時間が月や週ごとにバラつきがある場合に労働時間を調整できることから、夏休みなどの長期休暇がある教職員などでも導入が検討されていますが、「どこから残業代が発生するのか」と感じる方もいると思います。今回は変形労働時間制での労働時間の考え方と長時間労働や未払い残業代などの対処方法についてご紹介します。

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店長クラスは管理監督者という扱いをされている

店長クラスが“名ばかり管理職”として扱われているケースもあります。“名ばかり管理職”とは、労働基準法の管理監督者に当たらないのに、管理職であるという理由だけでこれに該当すると整理されている労働者のこと。「管理監督者には残業代を支払う必要がない」という労働基準法の定めを悪用しているのです。

 

しかし、管理職という肩書きと管理監督者は全く異なる概念であるため、直結するようなものではありません

 

  • 「実際には、経営にあまり関与してない」
  • 「自分自身や部下の業務について裁量権がない」
  • 「給与が平社員とあまり変わらない」

 

などに該当する場合には、たとえ管理職であっても残業代を請求できる可能性があります。

 

残業時間の切り捨てが行われている

○分未満の残業代は切り捨てにする」などの定めも原則として違法です。毎日の勤務時間は、1分単位で厳密にカウントするのが基本です。

 

残業時間の切り捨てを行っている会社は、切捨てられた分の賃金を支払っていないとして、労働基準法第24条・第37条違反で労働基準監督署から指導・勧告を受ける可能性があります。

 

なお、日々1分単位で集計した1か月合計分について四捨五入的な処理(例えば15分未満は0分、15分以上は30分と整理する処理)は適法とされます。

 

単純なサービス残業

上記とは別に、単純にサービス残業が慣習になっている職場もあります。周りが文句も言わずサービス残業をしていると、自分だけ嫌とは言いにくいもの。本音では納得がいかないけれど、職場の雰囲気を乱したくないがために受け入れてしまう方が大勢います。

 

 

 

 

従業員による自爆営業も問題

残業代の未払いとは別に、アパレル業界ならではの“自爆営業”も問題となることがあります。自爆営業とは、売上ノルマを達成するために従業員が自腹で商品を購入すること。

 

このような自爆営業を会社が労働者に強制することは、もちろん違法です。

 

労働基準法第十六条には、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と明確に定められています。

 

また、ノルマを達成できなかったペナルティを給料から差し引くのも違法です。労働基準法第二十四条には、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」として『賃金の全額支払いの原則』が定められています。

 

もし自爆営業を許すと、立場が強い使用者は搾取し放題。達成することが到底無理そうなノルマをわざと労働者に課し、馬車馬のように酷使したあげく給料からペナルティも回収するということが起こり得ます。

職場で自爆営業を強制されている場合は、労働基準監督署に通報したり、弁護士等の専門家に相談することを検討しましょう。

 

 

 

 

アパレル業界の労働者が未払い残業代を請求する手順と方法

最後に、未払い残業代の請求方法についてご紹介します。未払い残業代には2年の時効があり、これを超えると請求できなくなるので注意しましょう。

 

 

残業があったという事実・証拠を集める

まず初めのステップは、残業の証拠集めです。残業をしていたということを証明する責任(立証責任)は、従業員にあるからです。証拠もなしに未払い残業代を求めても、会社に拒否されてしまうおそれがあります。具体的には、以下のようなものが証拠としてよく提出されます。

 

  • 雇用契約書、就業規則
  • タイムカード、出勤表
  • パソコンのログイン・ログオフ履歴
  • パソコンのメール送信履歴
  • 売上伝票やレジ内の計算書 など

 

タイムカードが勤務先にない場合は、自分で詳細な日記をつけておくのも一つの方法です。家族や友人などに送った「今日も○時まで残業だよ」などのメッセージも残しておきましょう。

 

 

 

内容証明郵便で請求

未払い残業代○円を支払ってください」という内容証明郵便を郵送する方法も実務で頻繫に用いられています。内容証明郵便が他の郵便物と異なるのは、配達日時だけでなく「文書の内容まで」郵便局が証明してくれること。

 

そのため、受取人である勤務先が「そんな文書知らない、読んでいない」と言っても通用しません。こちらの本気度を示すために、内容証明郵便の作成を弁護士に依頼する方法もあります。

 

労働基準監督署に申告・相談

労働基準法違反については、労働基準監督署に通報すれば是正勧告をしてくれることもあります。しかし、労働基準監督署には常にたくさんの通報・相談が寄せられており、手が回らない状況。すぐに対応してくれるとは限らないため、並行して弁護士に相談することをオススメします。

 

弁護士に相談

この記事では最後に紹介しましたが、最初から弁護士に依頼してしまうのもアリです。むしろ、早い段階で弁護士に相談した方が、スムーズに未払い残業代を回収できる可能性があります。従業員相手だと侮っていた会社が、弁護士が介入した途端手のひらを返したように未払い残業代の請求に応じたケースも少なくありません。

 

 

 

まとめ

この記事では、アパレル業界の残業問題について解説してきました。他の業界にはないアパレル業界特有の問題についても、「慣習だから」と諦める必要はありません。

 

タイムカードがない、変形労働時間制で残業代の計算が難しい、なかなか有力な証拠が集められないなど、どうするべきか困った時には早めに弁護士に相談してみましょう。

 

 

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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