パワハラ・セクハラ・未払い残業代・過重労働・リストラなどの労働トラブルが起こった際に、専門家に相談したくても費用がネックになり、相談が出来ず泣き寝入りしてしまう方が多くいらっしゃいます。
そんな方々を、いざという時に守るための保険が弁護士費用保険です。
労働トラブルに限らず、交通事故や離婚トラブル、子供のいじめなど様々な法律トラブルでも利用可能です。
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時間外労働をした際に支払われる残業代ですが、未払いになっている可能性がある要因として、下記の3つが挙げられます。
医師という職業は非常に高度な専門職であり、常に緊急的対応が求められるため、労働時間に対する意識が希薄になりがちです。どこからが時間外労働で、どこが深夜労働や休日労働に該当するのか、区別がつきにくい特殊な環境とも言えます。
その特殊な働き方故に、医師には「専門業務型裁量労働制」が適用できると思われがちですが、実は「医師」「歯科医師」「薬剤師」「獣医師」などの保健業務者は専門業務型裁量労働制の対象業務に含まれていません。
そのため、医師に専門業務型裁量労働制の適用はできず、これが雇用契約であるならば、一般労働者と同様に働いた時間分の時間外手当を請求することができます。
2018年、医師の年俸に残業代が含まれないとして、500万円の残業代請求が認められた裁判をご存知の方も多いのではないでしょうか?
年俸制で働いていた医師の男性が、残業代に未払いがあるとして、病院を運営する神奈川県内の法人に計725万円の支払いを求めた訴訟の差し戻し控訴審判決で、東京高裁は22日、制裁に当たる「付加金」を含め、計546万円の支払いを法人に命じた。
本記事では、医師の方が残業代請求を行うにあたり、必要な知識をご紹介します。
残業代の請求期限は3年です。残業代が支払われていない、明らかに少ないなど、納得いかないことがあれば弁護士にご相談ください。不当な賃金計算が行なわれている可能性も考えられます。相談料無料、着手金無料の事務所も多いので、まずはご相談から始めてください。
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冒頭でもお伝えしたように、医師が労働契約に基づく労働者であれば、労働基準法に則り、時間外労働の分だけ割増賃金(残業手当・深夜手当・休日手当)が発生します。また、使用者はその分の残業代を支給する義務があります。
なぜ未払いの残業代が発生してしまうのか、まずは医師の働き方に関して解説します。
これは裁判でも争われた事案で、医師に限らず『年俸制』で給与を支給されているすべての労働者に起こり得ることです。『年俸制だから残業代は支払わない、またはすでに支給されている』という使用者側の主張がありえます。
しかし、年俸制はあくまで『1年間の総給与額を決めておく』だけのもので、『年俸制=残業代が発生しない』ということはありません。
ただ、支給されている年俸の中に、『いくらぶんの固定残業代が含まれている』ということが雇用契約上明示されており、労働者側で基本給部分と割増賃金部分を識別できるような場合は、固定残業部分については割増賃金の支払いであると認められる場合もあります。
このような場合は、固定割増賃金を超えて支払われるべき『割増賃金』のみの請求しかできないことには注意が必要です。
導入でご紹介した裁判でも、ここが争点になっています。
【要旨】 医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても,当該年俸の支払いにより時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできないとされた事例
◆医療法人と医師との間の雇用契約において時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていたとしても,当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず,通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないという事情の下では,当該年俸の支払により,時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということはできないとされた事例 |
裁判年月日 平成29年 7月 7日 裁判所名 最高裁第二小法廷 裁判区分 判決 事件番号 平28(受)222号 事件名 地位確認等請求事件 裁判結果 一部破棄差戻 Westlaw Japan文献番号 2017WLJPCA07079001 |
上記裁判原審では、医師の雇用契約では残業代が年俸に含まれる旨の合意が医師と病院で成立していたとして、医師側の残業代請求を棄却しました。
しかし、最高裁判所は、年棒に割増賃金の支払が含まれるかどうかは、明確に合意されている必要があるとして、原審判決を取り消しました。
この判例は『通常の労働時間と残業代にあたる労働時間が判別できることが必要』という、平成24年3月8日判決の『テックジャパン事件』の判断を踏襲したものであり、最高裁の立場をより明確にしたものと言えます。
テックジャパン事件とは |
基本給を月額で定めた上で月間総労働時間が一定の時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払うなどの約定のある雇用契約の下において,使用者が,各月の上記一定の時間以内の労働時間中の時間外労働についても,基本給とは別に,労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの)37条1項の規定する割増賃金の支払義務を負うとされた事例
◆基本給を月額41万円とした上で月間総労働時間が180時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払い,140時間未満の場合に1時間当たり一定額を減額する旨の約定のある雇用契約の下において,次の(1),(2)など判示の事情の下では,労働者が時間外労働をした月につき,使用者は,労働者に対し,月間総労働時間が180時間を超える月の労働時間のうち180時間を超えない部分における時間外労働及び月間総労働時間が180時間を超えない月の労働時間における時間外労働についても,上記の基本給とは別に,労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの)37条1項の規定する割増賃金を支払う義務を負う |
裁判年月日 平成24年 3月 8日 裁判所名 最高裁第一小法廷 裁判区分 判決 事件番号 平21(受)1186号 事件名 損害賠償、残業代支払請求上告事件 〔テックジャパン事件・上告審〕 裁判結果 一部破棄差戻、一部上告棄却 Westlaw Japan文献番号 2012WLJPCA03089001 |
専門業務型裁量労働制が適用できる対象業務は労働基準法施行規則で指定されています。具体的には以下の19業種が当てはまります。これをみれば、医師業務が裁量労働性の範囲外であることはわかります。
医師について「スタッフの管理業務がある」「役職がある」等の理由から管理職扱いとして割増賃金を支払わないというケースも有るようです。
確かに、労働基準法では、管理監督者に該当する場合には時間外・休日割増賃金の支給は不要とされます。
しかし、使用者側が管理職として扱っていることで、直ちに当該労働者が管理監督者と認められるわけではありません。労働基準法第41条2号の『監督若しくは管理の地位にある者』に該当するかどうかは、以下のような考慮要素を総合的に判断して決せられる問題です。
① 当該者の地位、職務内容、責任と権限からみて、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあること。
② 勤務態様、特に自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること。
③ 一般の従業員に比してその地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇を与えられていること。
したがって、医師が管理職扱いとされていたとしても、上記基準に基づいて総合的に判断した結果、管理監督者ではないと評価される可能性は十分にあります。
この場合は、管理職扱いとしていたとしても、時間外・休日労働の割増賃金を支払う必要があります。もし、医師を一律で管理監督者としているような運用をしている場合、本当に法律上の管理監督者といえるのかどうか、今一度振り返ってみましょう。
【関連記事】管理職(課長職など)に残業代が出ないのは違法?未払い残業代の請求手順
医師にとっては重要な「宿直・当直勤務」や「宅直勤務」は勤務に従事している時間帯は当然労働時間です。
他方、仮眠時間が労働時間に該当するのかどうかは争点となり得ます。この点、労働基準法第32条における『労働時間』は、単純に実労働に従事していた時間ではなく、『使用者の指揮命令下に置かれていたかどうか』で評価、判断されるものです。
医師が宿直勤務中であっても
仮眠時間を労働時間と評価するのは難しいでしょう。
他方、仮眠時間について明確なルールがなく、かつ仮眠時間中にも何かしらの緊急対応を義務付けられているような場合は、たとえ実際は業務に従事していなくても仮眠時間全体を労働時間と評価する余地は十分にあります。
仮に仮眠時間も労働時間と認められるような場合、当該時間に対応する時間外労働・深夜労働割増賃金の支給が必要となります。そのため、このような場合は、割増賃金コストの大幅な増加につながりかねないといえます。
表:割増率の早見表
労働時間 |
時間 |
割増率 |
時間外労働(法内残業) |
1日8時間、週40時間以内 |
1倍(割増なし) |
時間外労働(法外残業) |
1日8時間、週40時間超 |
1.25倍 |
1ヶ月に60時間超 |
月60時間を超える時間外労働 |
1.5倍 |
法定休日労働 |
法定休日の労働時間 |
1.35倍 |
深夜労働 |
22:00~5:00の労働時間 |
0.25倍 |
時間外労働(限度時間内) +深夜残業 |
時間外労働+深夜労働の時間 |
1.5倍 |
法定休日労働 + 深夜労働 |
休日労働+深夜労働の時間 |
1.6倍 |
被告が設置する病院に医師として勤務する原告らが、宿日直勤務および医師の間で自主的に定められた宿直医師をサポートする宅直勤務について割増賃金が支払われていないことを不服として、被告に対し割増賃金の支払等を求めた事案において、原告らの宿日直勤務が状態としてほとんど労働する必要がない勤務とはいえず、原告は監視断続労働者とはいえないこと、自主的に定められた宅直勤務については病院がこの勤務を命じていた事実が認められず、労働時間とはいえないこと等を理由に、原告らの請求を一部認容した事例 |
◆主文 1 被告は,原告Aに対し,736万8598円及びこれに対する平成18年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,802万8137円及びこれに対する平成18年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の,その余を原告らの負担とする。 5 この判決は第1,2項に限り仮に執行することができる。 |
裁判年月日 平成21年 4月22日 裁判所名 奈良地裁 裁判区分 判決 事件番号 平18(行ウ)16号 事件名 時間外手当等請求事件 〔奈良県(医師時間外手当)事件・第一審〕 裁判結果 一部認容 上訴等 控訴 Westlaw Japan文献番号 2009WLJPCA04229003 |
どの業務、労働時間が残業時間に該当するかはおおよそ判断できたと思います。次に残業代がどの程度発生しているのか、残業時間の平均や計算方法などをご紹介します。
厚生労働省が調査した『医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査(2017年)』によると、週当たりの勤務時間が60時間以上の常勤医師は
、産婦人科で約53%、臨床研修医48%、救急科約48%、外科系約47%となっています。
つまり、産婦人科の医師の2人に1人、麻酔科、精神科、放射線科などを除く4割の医師が長時間労働に従事していることになります。
また、上記のデータを参考にした『医師の労働時間を取り巻く状況について(2017年)』の年齢別【「診療」+「診療外」時間分布】では、20代~40代の男性勤務医で「50~60時間」がピーク、20代の女性の勤務医の「50~60時間」にピークに達していることがわかります。
応召義務(おうしょうぎむ)とは、医師が患者から診療行為を求められた際、正当な理由が無い限りは拒んではならないと、医師法第19条で定められた義務のことです。
第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。
引用元:医師法 第五章 第19条
厚生労働省は、医師限定の残業規制を2024年度に導入する方針で、その際に「応召義務」の見直しや残業規制で「最大で年960時間」、勤務時間インターバルも当直明けの医師は2倍の18時間とする方針ですが、反発も多く、医師の労働時間の改善ができるかどうかはまだわかりません。
参考 |
労働基準法に則って時間外労働を算出した場合、「1日8時間・週40時間」を超えた労働が「残業」になり、下記のような働き方をした際は18時以降から割増賃金が発生します。
医師の働き方は変則的なケースが多く、上記のような働き方をしている医師は稀ですが、仮に月60時間の時間外労働、年俸1,000万円だった場合の残業代の基本的な計算は下記のようになります。
残業代=【残業時間×1時間あたりの基礎賃金×割増率】
1時間あたりの基礎賃金
=1,000万円÷12ヶ月
=83.3万円÷160時間(20日勤務8時間労働)
=5,208円
割増率:1.25
残業代=5,208円×60時間×1.25=39万円
上記はあくまで簡易的な計算で『基礎賃金から除外する手当』や『深夜労働の割増率』『休日労働』等は考慮していませんので、正確な残業代を算出しようと思った場合は、弁護士などに相談し、請求方法も含めた無料相談をされることをおすすめします。
残業代の請求手順としては下記の通りです。
重要なのは『残業代が発生していることが証明できる証拠』ですから、
『残業の証拠』となるものをできるだけ集めておくとよいでしょう。もし退職している、別の病院に移動しているなどで手元にない場合、弁護士に相談することで『文書提出命令』という手段が取れる可能性もあります。
もし裁判となった場合、あなたの味方になり、代理交渉をしてくれるのは弁護士しかおりません。弁護士への依頼を併せて検討しておくのも良いでしょう。
参照元一覧 |
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タイムカードはもちろん、PCの起動ログから残業時間を立証できた事例もございますので、証拠が手元に無くても泣き寝入りせず弁護士に相談しましょう。
確かに労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくても良いと明記されておりますが、会社で定める「管理職」が労働基準法で言う「管理監督者」に当たらないケースもあります。
この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
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固定残業時間を上回る残業を行ったり、会社が違法な固定残業代制度をとっていた場合はもれなく残業代請求が可能です。直ちに弁護士に相談しましょう。
残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。