パワハラ・セクハラ・未払い残業代・過重労働・リストラなどの労働トラブルが起こった際に、専門家に相談したくても費用がネックになり、相談が出来ず泣き寝入りしてしまう方が多くいらっしゃいます。
そんな方々を、いざという時に守るための保険が弁護士費用保険です。
労働トラブルに限らず、交通事故や離婚トラブル、子供のいじめなど様々な法律トラブルでも利用可能です。
弁護士保険で法律トラブルに備える
会社に対する残業代請求をご自身だけで行うのは大変なので、専門家に依頼をするのが賢明でしょう。
残業代請求に関する依頼を受けている士業はとして、弁護士以外にも司法書士がいます。
司法書士への依頼費用は、弁護士費用よりも安く設定されている場合もあるので、「司法書士に頼んだ方が良いのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに費用の安さなど、司法書士に頼むメリットがあるケースが存在することも事実です。
しかし、弁護士とは異なり、司法書士の業務には一定の制限が設けられています。
そのため、事案の内容によっては司法書士に依頼することができない場合があることに注意が必要です。この記事では、残業代請求を司法書士に依頼できる条件や注意点などについて解説します。
そもそも、司法書士に残業代請求に関する依頼をすることは可能なのでしょうか。
この点に関しては、司法書士の業務権限の問題が関係してきます。まずは基本的な事項を押さえておきましょう。
司法書士は、弁護士などと比較されるケースが多いことからもわかるように、法律に関する国家資格を必要とする職業です。
司法書士は、特に登記の問題を中心として、日常的に法律に関する事務を取り扱っています。
残業代請求についても、依頼を呼び掛けている司法書士事務所も数多く存在します。
後述のとおり、「認定司法書士に限る」という制限は付きますが、司法書士に対して残業代請求に関する一般的な相談をすることは可能です。
しかし、法律に関する事務を制限なく取り扱える弁護士とは異なり、司法書士が取り扱える業務の範囲には制限があることに注意が必要です。
残業代請求に関する事案の内容によっては、司法書士に依頼することができず、結局弁護士に頼む必要が生じるケースがあります。
具体的に、司法書士が残業代請求に関するどのような事務を取り扱えるのかについては、次の項目で解説します。
司法書士の業務範囲については、司法書士法という法律で定められています。司法書士法との関係で、司法書士が取り扱える残業代請求に関する事務は、一定の範囲に制限されます。
司法書士が残業代請求に関する相談・交渉・和解などを受任できるのは、請求額が140万円以下の事件のみです(司法書士法3条1項6号、7号)。
(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
引用元:司法書士法3条1項6号
七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
引用元:司法書士法3条1項号7
請求額140万円を超える事件については、司法書士がこれを取り扱うことはできず、弁護士に対して依頼をする必要があります。
もし、司法書士が請求額140万円を超える事件の相談・交渉・和解に関する事務を行った場合は、非弁行為に該当します(弁護士法72条)。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
引用元:弁護士法72条
残業代請求に関する事務は、すべての司法書士が取り扱うことを認められているわけではありません。
残業代請求は、労働者側と会社側が対立関係にありますので、法律的には民事に関する「紛争」と捉えられます。
法律上、紛争に関する事務を取り扱うことができるのは、原則として弁護士のみです(弁護士法72条)。
しかし司法書士については、認定司法書士である場合に限り、例外的に請求額140万円以下の民事に関する紛争など(「簡裁訴訟代理等関係業務」といいます)を取り扱うことができます。
認定司法書士の要件は以下のとおりです(司法書士法3条2項各号)。
<認定司法書士の要件>
①簡裁訴訟代理等関係業務について所定の研修を修了したこと
②申請に基づき、法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること
③司法書士会の会員であること
認定司法書士は前述のとおり、請求額140万円以下の事件しか取り扱うことができません。
その関係で、取り扱うことのできる残業代請求に関する事務も、以下のものに限定されます。
認定司法書士は、残業代請求に関する会社との交渉について、労働者のために代理することができます。しかし、交渉の段階であっても、「請求額140万円以下の事件に限る」という制約が適用されます(司法書士法3条1項7号)。
請求額140万円以下の事件については、訴訟に発展した場合には簡易裁判所の管轄となります。
認定司法書士は、請求額が140万円以下の残業代請求事件に関して、簡易裁判所における手続きについて労働者を代理することが認められています(司法書士法3条1項6号)。
認定司法書士は、残業代請求を検討している労働者に向けて、労働審判に関するアドバイスができる旨をPRしているケースがあります。
この点について注意しなければならないのは、「認定司法書士は、労働審判の手続きに関する代理人には就任できない」ということです。
その理由としては、労働審判は常に地方裁判所の管轄とされていることが挙げられます(労働審判法2条)。認定司法書士が裁判手続きについて労働者を代理できるのは、あくまでも簡易裁判所が管轄する事件に関してのみです。
そのため認定司法書士は、労働審判に関する手続きについて、労働者を代理することはできません。では、認定司法書士が「労働審判についてアドバイスができる」とPRしているのはどういうことなのかと疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。
これは、「実際の手続きは労働者自身が行うことを前提として、書類の作成や手続き外での助言などを通じてサポートします」ということを意味しているのです。
つまり、認定司法書士に依頼をする場合、残業代請求に関する労働審判の手続きは自分で行う必要があるということに留意しておく必要があります。
認定司法書士は法律の専門家ですので、残業代請求に関して専門的な見解を聞けるという意味では、相談することに有益な側面もあります。
しかし、実際に認定司法書士に残業代請求を依頼する場合、以下のような難点があるということに注意が必要です。
労働審判は、労働紛争を迅速に解決するための手続きです。
1年以上かかることも多い訴訟手続きに比べて、労働審判の場合は3か月程度ですべての手続きが終了します。
したがって、残業代請求の問題を早期に解決するためには、労働審判の手段に訴えることが有効となるケースもしばしばあります。
しかし前述のとおり、労働審判は地方裁判所管轄のため、認定司法書士が代理人になることはできません。
書類の作成や手続き外でのアドバイスを受けられるとはいえ、労働者が自分で手続きを行わなければならないのはデメリットでしょう。
訴額が140万円を超える事件については、認定司法書士は相談を含めて対応することができません。
当初は140万円以下の請求に収まることを想定していても、調べていくうちに請求額が膨らみ、140万円を超えるケースもあります。
この場合、請求額が140万円を超えることが分かった時点で弁護士に依頼し直す必要があるので、二度手間になってしまうデメリットがあります。
労働者が会社に対して残業代を請求するケースでは、残業代(未払い賃金)請求と並んで、解雇無効の論点が生じていることもあります。
たとえば、労働者が会社に不当解雇された場合に、解雇されなかったとしたら支払われたであろう賃金相当額の支払いを請求するケースが考えられます。
この場合、仮に残業代(未払い賃金)の請求総額が140万円以下だとしても、認定司法書士は相談に応じることができません。
解雇無効の請求は、それ自体は金銭を請求する内容ではないので、「請求額を算定することが極めて困難なもの」に該当します(民事訴訟費用等に関する法律4条2項)。
請求額を算定することが極めて困難な請求に関しては、同項の規定により、訴額(請求額)は160万円とみなされるものとされています。したがって、解雇無効請求の請求額は160万円です。
すでに何度も解説しているとおり、認定司法書士が取り扱える事件についての請求額のボーダーラインは「140万円」です。ボーダーラインを超えているかどうかを判断するに当たって、残業代(未払い賃金)の請求と解雇無効の請求がセットになっている場合には、両者の請求額を合計して考える必要があります。
このとき、解雇無効請求の請求額は160万円なので、必ずボーダーラインを超えてしまうというわけです。
以上のことから、残業代(未払い賃金)の請求と解雇無効請求がセットになっているケースの場合は、認定司法書士に依頼をすることはできないので、当初から弁護士に依頼をしましょう。
会社に対する残業代請求を検討している場合、事案によっては認定司法書士に依頼するという選択肢もあり得ますが、当初から弁護士に依頼する方がメリットが大きいといえるでしょう。
弁護士は、認定司法書士には取り扱うことができない労働審判を含めて、残業代請求に関するすべての手続きを取り扱うことが可能です。
残業代請求を含めた労働紛争では、会社の出方に応じて、交渉→労働審判→訴訟と手続きが移行する場合もしばしばあります。その場合でも、弁護士に依頼をしておけば、同じ弁護士のサポートを最初から最後まで受けることができるので便利です。
残業代請求に関する法的手続きを制限なく利用できるということは、依頼者にとってベストな手続き・解決方法を利用可能であるということも意味しています。
認定司法書士の場合、特に労働審判の代理人に就任できないことは大きなデメリットです。
最初から選択肢が限られていると、依頼者にとってベストな手続きを提案されないというリスクがあるかもしれません。
しかし、弁護士の場合は業務範囲についての制限がないため、そのような心配は不要です。
弁護士は、訴額(請求額)にかかわらず訴訟手続きを取り扱うことができる、紛争解決のスペシャリストです。
弁護士は法的手続きに精通しているのみならず、会社の対応などを丁寧に観察しながら、状況に応じた臨機応変な対応によって依頼者をサポートすることに長けています。
特に労働者と会社の言い分に大きな食い違いがあり、紛争になる可能性が高いと考えられるケースでは、当初から弁護士に依頼することが安心でしょう。
労働者が会社に対して残業代を請求する場合、法律の専門家のサポートを受けながら交渉や法的手続きを進めるのが安心でしょう。
残業代請求の相談先としては、弁護士以外にも司法書士が考えられます。請求額が140万円以下の残業代請求事件では、認定司法書士であれば相談に応じることが可能です。
しかし、事実関係を調査しているうちに請求額が140万円を超えてしまうと、その段階で弁護士に依頼をしなければならないため二度手間になります。また、認定司法書士は労働審判手続きの代理人になれないなど、業務範囲に法的な制限がかかっている点もデメリットです。このような点を考慮すると、明らかにシンプルで請求額も少ない事案は別として、基本的には当初から弁護士に依頼をする方が賢明といえるでしょう。
弁護士は紛争解決のスペシャリストですので、依頼者の具体的な状況に応じて、残業代請求問題を迅速かつ適切に解決するための有益なアドバイスを受けられます。
会社に対する残業代請求を検討している労働者の方は、お早めに弁護士にご相談ください。
弁護士への相談で残業代請求などの解決が望めます
労働問題に関する専門知識を持つ弁護士に相談することで、以下のような問題の解決が望めます。
・未払い残業代を請求したい
・パワハラ問題をなんとかしたい
・給料未払い問題を解決したい
など、労働問題でお困りの事を、【労働問題を得意とする弁護士】に相談することで、あなたの望む結果となる可能性が高まります。
お一人で悩まず、まずはご相談ください。あなたの相談に、必ず役立つことをお約束します。
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この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
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残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。