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「毎日のように残業させられる」「定時直前に大量の仕事を頼まれるので残業せざるをえない」といった会社の対応に悩んでおり、「残業の強制は違法ではないのか」と疑問に思っている方もいるでしょう。
会社からの残業の強制は、違法になる場合と適法である場合があります。
「36協定」が交わされているなど、残業の要件を満たしたうえで命令されているのであれば、残業の強制は違法ではありません。
しかし、中には要件を満たさないのにもかかわらず残業を命じたり、残業代を支払わないのに残業を強いられたりする企業もあります。
そのような企業の行為は違法であり、残業命令に従う必要はありません。
今回は、残業の強制が適法であるための要件や事例、違法になるケースのほか、残業の命令を拒否できる場合などについて解説します。
会社が従業員に残業を強制するには、いくつかの要件を満たさねばなりません。ここでは、残業の要件について解説します。
会社が従業員に残業を命じるための要件は、以下の3つです。
これらの要件が満たされている状況であれば、会社から残業を強制されても違法にはなりません。
「36(サブロク)協定」とは、労働基準法第36条に基づく協定の通称です。
この協定において、時間外労働をおこなう業務の種類や範囲、1日、1ヵ月、1年あたりの時間外労働時間の上限を定めます。
また、2018年6月会勢の労働基準法では、36協定で定める時間外労働について、1ヵ月45時間、年間360時間の上限規制が設けられました。
この上限を超えた時間の残業を従業員に強いた場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるほか、厚生労働省のホームページで企業名を公開されるという罰則も設けられています。
36協定を締結しただけでは、残業の強制はできません。管轄の労働基準監督署へ届け出をする必要があります。
また、36協定には有効期間があり、毎年提出しなければなりません。有効期間の起算日は企業によって異なりますが、1月や4月としているところが多いでしょう。
36協定を締結していたとしても、労働契約書や就業規則に残業についての規定がなければ、企業は残業の強制ができません。
労働契約書や就業規則の中で、36協定の範囲内で残業(労働時間の延長)を命じる場合がある旨や残業上限時間などに定める必要があります。
さらに、それらが従業員に交付されたり自由に閲覧できる状態にあったりするなどして周知されている必要もあります。
会社が従業員に残業を強制することは、要件を満たした環境下では適法です。しかし、以下のようなケースでは違法となり、従業員への残業は強制できません。
企業は36協定を締結しているからといって、従業員にどれだけ残業させてもよいというわけではありません。
労働基準法の改正によって、残業時間の上限は「月45時間・年360時間」と定められ、臨時的かつ特別な事情がない限り、これを超えての残業は違法となっています。
また、たとえ臨時的かつ特別な事情があるためにこの上限を超過しての残業が許される場合であっても、以下のことを守らなければなりません。
これに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
労働契約書や就業規則に時間外労働についての記載がなければ、残業の強制はできません。
もし残業を命じる場合には、就業規則などに残業に関する定めを記載して、従業員に周知する必要があります。
そもそも36協定を締結していなければ、従業員に残業はさせることはできません。
従業員に残業を強制したい場合は会社と労働組合、または労働者の過半数を代表する者との間で必ず36協定を締結している必要があります。
法定労働時間を超えて業務に従事させる場合は、残業代を支払わなくてはなりません。
残業代の不払いは違法であり、会社は6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
このことからも、違法性のある残業命令に従う必要はありません。
36協定では、残業でおこなう業務の種類や範囲も定められています。「業務上の必要があるとき」などの文言で定められていることが多いでしょう。
対して、業務上必要がないのに残業を強制することは違法になります。そのため、急を要さない業務や必要のない作業のために残業を命じられても、従う必要はないといえるでしょう。
たとえ会社から残業を強制されても違法にはならない場合でも、下記のような正当な理由がある場合は、従業員は残業を拒否することができます。
病気や怪我などの体調不良は正当な理由に該当します。
労働契約法第5条において下記のように定められており、会社は従業員の安全に配慮しなければならないからです。
第五条
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
引用元:労働契約法|e-Gov 法令検索
介護や育児も正当な理由に該当します。
介護育児休業法において、3歳未満の子どもを持つ方については第16条の8で、小学校就学前の子どもをもつ方については第17条で、要介護状態にある家族を持つ方については第18条で、それぞれ労働時間の延長をしてはならない旨が定められているためです。
妊娠中や出産から1年未満しか経過していない方に対しても、労働基準法第66条の定めによって残業の強制はできません。
36協定が未締結である、労働契約書や就業規則に残業についての定めがないなど、残業の強制が認められるための要件を満たしていないのにもかかわらず、残業を命じるのは違法な行為です。
また、残業代が未払いの状態である場合や、労働基準法で定められた時間外労働時間の上限を超えての残業も違法です。
この場合、従業員は会社から残業を命じられても拒否できます。
残業の要件を満たしているのであれば、基本的には残業を強制されてもパワハラにはなりません。
しかし、嫌がらせやいじめであると解釈できるような内容であれば、パワハラに該当するでしょう。
残業の強制がパワハラだとみなされる可能性が高いケースには、以下のような例が挙げられます。
【残業の強制がパワハラにあたる可能性が高いケース】
会社から残業を強制されて悩んでいる場合は、次のように対処するとよいでしょう。
まずは、会社から残業を強制されることが適法なのかどうかを確認してみましょう。具体的には、以下のポイントをチェックしてみます。
36協定や就業規則などには、従業員への周知義務があります。
そのため、従業員全体に書面で交付されているか、わかりやすい場所に掲示されていたりデジタルデータとして全員がアクセスできる場所に保存されていたりするはずです。
実際に確認したい場合は、社内の掲示物やデジタルデータを確認したり、会社から交付された書類をチェックしたりしてみましょう。
また、36協定が労働基準監督署に届け出ているかどうかは、届出書に受付印があるかどうかなどで判断できます。
最近では電子申請も可能となったため、受付通知が保存されている場合もあるでしょう。いずれにせよ、何らかの形で受付済みである旨を確認できる書類を会社が保管しているはずです。
また、自身に「正当な理由が」あるかどうかもよく振り返ってみましょう。たとえば、体調不良や介護・育児があったり、妊娠中や出産から1年未満であったりするわけでもないのに、残業を断ることはできません。
正当な理由なく残業を断れば、社内規定の違反にあたり、処分される可能性もあります。
違法な環境下で残業を強要されるなら、管轄の労働基準監督署に相談して是正を求めてもらうとよいでしょう。
労働基準監督署は、管轄区域内の事業所が法令を遵守しながら企業活動をおこなっているかどうかを監督する機関です。
違法な残業の強制について相談すれば、会社の実態を調査したり、改善するよう指導したりしてくれます。その結果、会社の対応が改善され、適切な労働環境で働けるようになる可能性もあるでしょう。
ただし、労働基準監督署が簡単に動いてくれず、調査までに時間がかかるケースもあります。できるだけ早急に指導してもらうためには、有効な証拠を準備し、的確に企業の問題を訴える必要があるでしょう。
また、管轄の労働基準監督署は下記サイトより調べられます。
特に会社に対して何らかの請求をしたい場合には、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に依頼すれば、こちらの請求を会社に認めさせるために準備すべき証拠についてのアドバイスがもらえます。
さらに、実際に請求する場合には依頼者に代わって会社と交渉してもらえるでしょう。
違法行為の立証に有効な証拠を集めやすくなるうえ、弁護士が法律に照らして交渉してくれるので、会社に請求を認めさせられる可能性が高まるはずです。
また、自分で直接会社と交渉する必要もないので、精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。
ここまで残業の強制について解説してきましたが、まだまだわからないことがあるという方もいるでしょう。
ここでは、残業の強制についてよくある質問とその答えについて解説します。
企業が適法に対処しているにもかかわらず、正当な理由もなく残業を拒否し続けると、社内規定に反するとして処分が下される可能性があります。
減給や降格処分となる可能性があるほか、最悪の場合、懲戒解雇処分となるおそれもあるでしょう。
従業員として雇用されている以上、会社の命令にはある程度従わなくてはなりません。会社が違法行為をしていない以上、理由なく拒否したほうに非があるとみなされます。
それでも残業に対して不満が残るなら、転職や退職を考えるなど、ほかの解決策を探すほうがよいでしょう。
以下の要件を満たす場合は、派遣社員に残業を強制することは適法です。
この2つの要件が満たされていれば、基本的に残業を断ることはできません。
残業代の未払いは違法であり、会社に対して残業代の支払いを請求しても、当然問題はありません。
会社が残業代の支払いに応じない場合は、適切な証拠を準備のうえ、会社に支払いを求めます。
雇用契約書や就業規則など残業について会社が規定した書類のほか、自身の残業の実態がわかるもの、残業でおこなった業務の内容がわかるものを証拠として準備しましょう。
もし自分で交渉しても会社が取り合ってくれない場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士であれば、根拠となる法律を示しながら的確に主張して会社を説得してくれますし、会社側も訴訟提起など法的手段に訴えられることを恐れて支払いに応じる可能性も高まるからです。
残業の要件を満たす労働環境下での残業の強制は違法にはなりません。
むしろ、正当な理由がない限り、会社からの命令を拒否することは、従業員に非があるとして会社から処分を受ける可能性もあるでしょう。
一方、残業の要件を満たさない状態での残業の強制は違法です。会社からの要求に従う必要はありませんし、常態化しているようならば、労働基準監督署に相談して指導してもらうなどの対処を検討したほうがよいでしょう。
また、損害賠償請求など会社に対して何らかの補償を求めるなら、弁護士への依頼がおすすめです。
自分で会社と交渉する必要がないので精神的負担が軽減できるうえ、賠償金を支払ってもらえる可能性が高まります。違法な残業の強制に悩んでいるなら、一度労働問題に強い弁護士に相談してみましょう。
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相談者様ご自身で保管していなくても、弁護士に依頼することで会社に開示請求を行う事ができます。
タイムカードはもちろん、PCの起動ログから残業時間を立証できた事例もございますので、証拠が手元に無くても泣き寝入りせず弁護士に相談しましょう。
確かに労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくても良いと明記されておりますが、会社で定める「管理職」が労働基準法で言う「管理監督者」に当たらないケースもあります。
この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
固定残業時間以上の残業を行った場合、その分の残業代は適切に支払われる必要があります。また、36協定の都合上、基本的に固定残業時間の上限は45時間とされております。
固定残業時間を上回る残業を行ったり、会社が違法な固定残業代制度をとっていた場合はもれなく残業代請求が可能です。直ちに弁護士に相談しましょう。
残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。