日給制の場合も残業代はもらえる!計算方法や請求方法を解説
残業代と聞くと、「会社勤めで月給を受け取っている方がもらえるもの」というイメージがある方もいるかもしれません。
しかし、日給制の方でも、定められた時間を超えて働いた場合には残業代を受け取ることができます。
残業代の計算方法は給与体系によって異なり、日給制の場合は日給額を1日の所定労働時間で割り、さらに60で割って1分あたりの基礎賃金を求めて算出します。
残業代の計算ミスや請求漏れが起こらないよう、本記事を読んで正しい計算方法や請求方法を身に付けましょう。
本記事では、日給制における残業代の計算方法や、残業代の請求方法などについて解説します。
【結論】日給制の場合も残業代は請求できる
一般的に用いられる「残業」とは、労働契約において定められた時間を超えて働くことを意味します。
労働契約においては、労働者が一定期間内にどれだけの時間働き、それに対していくらの給料が支払われるのかということが規定されています。
基本給は労働の対価として受け取るものであり、それを超えて労働した場合には残業代がもらえるのが当然です。
残業代がもらえるかどうかは、給与体系によって左右されるわけではありません。
主な労働形態としては、年俸制・月給制・週給制・日給制・フレックスタイム制などがありますが、要件を満たしていれば全てが残業代支給の対象になります。
日給制の残業代計算で知っておくべき3つのポイント
残業代請求にあたって知っておくべきポイントとして、労働時間には「所定労働時間」と「法定労働時間」という2種類の概念があります。
ここでは、所定労働時間や法定労働時間の定義について解説します。
1.所定労働時間とは|労働契約において定められた労働時間のこと
所定労働時間とは、労働契約において労働者が働くことを義務付けられた時間のことです。
多くの企業では、正社員の所定労働時間は「9時00分~18時00分(休憩1時間)」「10時00分~19時00分(休憩1時間)」などの8時間勤務制となっており、後述する法定労働時間の範囲内で定められます。
基本給は所定労働時間に対して支払われているので、それを超える労働があった場合には、追加で残業代が支払われます。
自分の場合はどのような取り決めになっているのか知りたい場合は、雇用契約書・労働条件通知書・就業規則などで確認できます。
所定労働時間の定義や所定労働時間に関連する制度など、所定労働時間について詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧ください。
2.法定労働時間とは|労働基準法にて定められた労働時間の上限のこと
法定労働時間とは、労働基準法にて定められた労働時間の上限のことです。
具体的には、1日8時間・1週間40時間と定められています(労働基準法32条1項、2項)。
労働基準法上、会社が労働者に対して法定労働時間を超えて働かせることは原則禁止です。
ただし、労使間では36協定と呼ばれる協定が締結されるケースもあります。
36協定とは、労働基準法36条1項に基づいたもので、労働者の残業や休日労働などに関する労使協定のことです。
労使間で36協定が締結されている場合には、会社は労働者に対して協定の範囲内で残業させることが可能です。
法定労働時間の定義や36協定の制度内容など、各用語について詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧ください。
3.法定労働時間を超えた部分には割増賃金が適用される
会社が深夜時間帯まで残業させたり、労働者を休日に働かせたりした場合、割増賃金を支払わなければいけません(労働基準法37条1項)。
割増賃金はいくつか種類があり、各手当の支給対象や割増率は以下のとおりです。
| 手当の種類 | 支給対象 | 割増率 |
|---|---|---|
| 深夜手当 | 22時00分~5時00分の深夜時間帯に働いた場合 | 25%以上 |
| 時間外手当 | 1日8時間、週40時間を超えて働いた場合 | 25%以上 |
| 休日手当 | 法定休日に働いた場合 | 35%以上 |
| 時間外手当 (1ヵ月60時間超え) |
月60時間を超える時間外労働が発生した場合 | 50%以上 |
| 時間外手当+深夜手当 | 時間外労働+深夜労働の場合 | 50%以上(25%以上+25%以上) |
| 休日手当+深夜手当 | 休日労働+深夜労働の場合 | 60%以上(35%以上+25%以上) |
たとえば「所定労働時間だけを超えて働いた場合」と「所定労働時間も法定労働時間も超えて働いた場合」では、以下のとおり扱いが異なります。
- 所定労働時間を超えて働いていたが、法定労働時間は超えていない場合:割増は適用されず、所定労働時間を超えた労働時間分について、通常の賃金率で計算された残業代が支払われる
- 所定労働時間も法定労働時間も超えて働いていた場合:割増が適用され、法定労働時間を超えた労働時間分について、通常の賃金に対して25%以上の時間外手当が上乗せされて支払われる
割増賃金の種類や計算例など、割増賃金について詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧ください。
日給制における残業代の計算方法
日給制で残業代を計算する際、基本的な流れは以下のとおりです。
- 1分あたりの基礎賃金を求める
- 実際の残業時間数を確認する
- 残業代を計算する
以下では、日給制での残業代の計算方法を解説します。
1.1分あたりの基礎賃金を求める
残業代は、1分単位で支払われるのが原則です。
そのため、残業代を計算する際は、まずは1分あたりの基礎賃金を計算する必要があります。
1分あたりの基礎賃金の計算式
日給制の場合、以下の計算式で1分あたりの基礎賃金を計算します。
| ・1時間あたりの基礎賃金=1日あたりの基礎賃金÷1日の所定労働時間 ・1分あたりの基礎賃金=1時間あたりの基礎賃金÷60 |
基礎賃金には、基本的に会社から労働者に支給される全ての金銭が含まれます。
例外的に、以下の手当については基礎賃金の金額から控除されます(労働基準法37条5項、同施行規則21条)。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金(結婚手当・出産手当など)
- 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
なお「日雇いで働いており、日によって所定労働時間が異なる」という場合は、以下のような計算式で1日の所定労働時間を算出します(労働基準法施行規則19条2号)。
| 1日の所定労働時間=1週間の合計所定労働時間÷1週間の所定労働日数 |
1分あたりの基礎賃金の計算例
ここでは、以下のようなケースを想定して、1日あたりの基礎賃金を計算します。
- 給与体系:日給制
- 労働日数:平日の5日間
- 1日の所定労働時間:7時間
- 会社から労働者に交付される金銭:1労働日あたり1万5,000円(うち1,000円は通勤手当)
まず、1日あたりの基礎賃金は、1万5,000円から通勤手当の1,000円を差し引いた1万4,000円となります。
1日あたりの所定労働時間は7時間ですので、1時間あたりの基礎賃金は以下のとおり2,000円となります。
これを60分で割ると、1分あたりの基礎賃金は約33.33円となります。
| ・1時間あたりの基礎賃金=1万4,000円÷7時間=2,000円 ・1分あたりの基礎賃金=2,000円÷60分≒33.33円 |
2.実際の残業時間数を確認する
次は、実際にどれだけ残業したのかを確認します。
残業状況によって発生する割増賃金は異なるため、残業時間数や残業時間帯などを正確に把握することが大切です。
実際の残業時間数の計算例
上記の計算例の続きで、以下のようなケースにおける残業時間数を確認します。
| 月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 実労働時間 | 9時間 | 7時間 | 9時間 | 9時間 | 7時間 |
所定労働時間は7時間ですので、月曜日・水曜日・木曜日については2時間ずつ、計6時間残業していることになります。
また、法定労働時間は1日8時間ですので、法定労働時間を超えているのは月曜日・水曜日・木曜日の各1時間ずつ、計3時間となります。
したがって、法定内残業と法定外残業の時間数は、それぞれ以下のとおりです。
- 法定内残業の時間数:3時間
- 法定外残業の時間数:3時間
3.残業代を計算する
①・②を確認したあとは、残業代の金額を計算します。
残業代の計算式
残業代の金額は、以下の計算式で求められます。
| 残業代の金額=1時間あたりの基礎賃金×残業時間数×割増率 |
残業代の計算例
上記の計算例の続きで、残業代の金額を計算すると、以下のとおりになります。
法定外残業をした分には時間外手当が発生し、基礎賃金に対して25%の割増となります。
| 残業代の金額=2,000円×(3時間+3時間×1.25)=1万3,500円 |
したがって、この場合の残業代総額は1万3,500円になります。
日給制で残業代を請求する3つの方法
会社に対して未払い残業代を請求するために、労働者が取ることのできる主な方法としては以下の3つがあります。
- 会社と交渉する
- 労働審判を起こす
- 訴訟を起こす
ここでは、未払い残業代の請求方法について解説します。
1.会社と交渉する
残業代請求は、まずは会社との交渉から始めるのが一般的です。
交渉によって会社が支払いに応じてくれれば、最も早く問題を解決することが可能です。
残業代の支払いについて会社に納得させるためには、「日給制の残業代請求で失敗しないための2つのポイント」で後述する残業の証拠を提示して説得することが大切です。
なお、残業代請求の交渉は、弁護士に依頼することも可能です。
法律知識や交渉経験などがなく、自分で説得力のある主張ができるか不安な方は、弁護士の力を借りることをおすすめします。
2.労働審判を起こす
直接交渉では解決が難しい場合は、労働審判に移行するのが一般的です。
労働審判とは、労働紛争を迅速に解決するための法的手続きです。
裁判所にて残業の事実関係などについて聴取がおこなわれ、原則3回程度の審理で終結するため、後述する訴訟よりも早く手続きが終了するのが大きなメリットです。
ただし、残業代獲得のために的確な主張・立証をするためには、証拠などの周到な事前準備が必要です。
自力での対応に自信がない方は、弁護士にサポートを依頼しましょう。
3.訴訟を起こす
交渉や労働審判では解決しない場合には、最終手段として訴訟を起こして争うことになります。
訴訟では、裁判所にてお互いの言い分を主張したり、相手の言い分に対して反論したりして争い、最終的には裁判官の判決または和解によって終結します。
残業代の請求方法の中でも訴訟は長期化しやすく、場合によっては1年以上かかることもあるため、長い目で見て根気強く戦う必要があります。
ただし、訴訟は手続きが複雑で高度な知識なども求められるため、素人が自力で適切な対応をするのは困難です。
裁判官に対してできるだけ説得力のある主張をおこなうためにも、法律の専門家である弁護士に依頼しましょう。
日給制の残業代請求で失敗しないための2つのポイント
会社に対して残業代請求をしても、場合によっては不満の残る結果に終わってしまうこともあります。
できるだけ納得のいく金額を受け取るためにも、以下のようなポイントを押さえておきましょう。
1.残業に関する証拠を集めておく
残業代の支払いを求めて会社と交渉する場合でも、法的手続きを取る場合でも「残業したことを証明できるもの」を集めておくことが大切です。
十分な証拠がないと説得力に欠けてしまい、会社が交渉に応じてくれなかったり、法的手続きがうまく進まずに難航したりするおそれがあります。
残業代請求で集めておくべき証拠としては、以下のようなものがあります。
| 残業代請求で有効な証拠 | 具体例 |
|---|---|
| ①実際の労働時間に関する資料 | タイムカード・勤務表・業務日報など |
| ②労働条件や契約内容に関する資料 | 就業規則・雇用契約書・労働条件通知書など |
| ③給与の支払い状況に関する資料 | 給与明細・銀行口座の写しなど |
なお、現場仕事の場合は、自分が現場にいるところの写真を撮っておくのも有効です。
2.弁護士に残業代請求を相談・依頼する
残業代請求の知識や経験のない素人が、会社を相手に交渉したり、法的手続きをおこなったりするのは大きな負担となります。
慣れない手続きに時間がかかってしまうこともありますし、うまく対応できずに本来受け取れるはず残業代よりも低額しか受け取れずに終結となるおそれもあります。
弁護士に相談すれば、未払い残業代の計算方法・証拠の集め方・交渉の流れ・裁判手続きの進め方など、状況に応じた適切なアドバイスが受けられます。
弁護士なら請求対応の代行なども依頼でき、労働問題に注力している弁護士であれば、これまでの経験や知識を活かして適切な金額を獲得できるように尽力してくれます。
スムーズかつ有利な形で請求対応を進めたい方は、弁護士にサポートを依頼しましょう。
日給制の残業代に関するよくある質問3選
ここでは、日給制の残業代に関するよくある質問について解説します。
1.日給制の場合は残業代が出ない?
日給制でも、所定の労働時間を超えて働いた場合は残業代の支給対象となります。
残業代がもらえるかどうかは、給与体系によって左右されるわけではありません。
会社には「賃金全額払いの原則」が定められており、原則として実際に労働者が働いた分の賃金を全額支払う義務があります(労働基準法24条1項)。
たとえ雇用契約書に「残業代は支払わない」などと記載されていたとしても、労働者は会社に対して未払い残業代の請求が可能です。
2.日給制の残業代の計算方法は?
日給制で残業代を計算する際、基本的な流れは以下のとおりです。
- 1分あたりの基礎賃金を求める(1日あたりの基礎賃金÷1日の所定労働時間÷60)
- 実際の残業時間数を確認する
- 残業代を計算する
なお、残業時間数や残業時間帯などによって発生する割増賃金は異なるため、残業時間数を確認する際はタイムカードや勤務表などを準備して確認漏れがないように注意が必要です。
素人では残業代の計算ミスが発生するおそれがあるため、自力での計算が不安な場合は弁護士への相談も検討しましょう。
弁護士に相談すれば、資料をもとに正確な未払い残業代を算出してくれます。
3.日給1万円の残業代はいくらですか?
残業代がいくらになるのかは、実際の残業状況などによって異なります。
たとえば「日給:1万円、1日の所定労働時間:7時間」というケースで1時間残業して8時間働いた場合、基本的には以下のように通常の賃金率で計算された残業代が支払われます。
| ・1時間あたりの基礎賃金=1万円÷7時間=約1,429円 ・残業代=約1,429円×1時間=約1,429円 |
一方「日給:1万円、1日の所定労働時間:8時間」というケースで1時間残業して9時間働いた場合、基本的には以下のように時間外手当が上乗せされて支払われます。
| ・1時間あたりの基礎賃金=1万円÷8時間=1,250円 ・残業代=1,250円×1時間×1.25=1,563円 |
さいごに|日給制で未払い残業代があるなら、ベンナビ労働問題で相談を
日給制の場合でも、定められた時間を超えて働いた場合には残業代を受け取れます。
残業代は、1分あたりの基礎賃金や残業時間数をもとに計算し、残業状況によっては時間外手当や深夜手当などが上乗せされます。
未払い残業代を請求する際は、交渉・労働審判・訴訟などの手段がありますが、自力で対応しようとすると手間がかかりますし、思うような結果にならないおそれもあります。
残業代請求で失敗しないためには、労働問題に注力する弁護士に対応を一任するのが効果的です。
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この記事の監修
フリューゲル法律事務所
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相談者様ご自身で保管していなくても、弁護士に依頼することで会社に開示請求を行う事ができます。
タイムカードはもちろん、PCの起動ログから残業時間を立証できた事例もございますので、証拠が手元に無くても泣き寝入りせず弁護士に相談しましょう。
確かに労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくても良いと明記されておりますが、会社で定める「管理職」が労働基準法で言う「管理監督者」に当たらないケースもあります。
この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
固定残業時間以上の残業を行った場合、その分の残業代は適切に支払われる必要があります。また、36協定の都合上、基本的に固定残業時間の上限は45時間とされております。
固定残業時間を上回る残業を行ったり、会社が違法な固定残業代制度をとっていた場合はもれなく残業代請求が可能です。直ちに弁護士に相談しましょう。
残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。





