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ホーム > 労働問題コラム > 職業別の残業代 > 年俸制で残業代が出ないのは一部だけ|見分け方と請求方法

年俸制で残業代が出ないのは一部だけ|見分け方と請求方法

更新日:2021年07月28日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
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近年、働き方の多様化もあり年俸制を採用する企業も増えてきました。「年俸制だから残業代は出ない」という認識がある方も多いようです。

 

プロスポーツ選手や、年収1000万円を超える所謂ホワイトカラー労働者も年収制で働く人が多く、結果を出せば翌年には年俸が格段に上がり、反対に結果を出せなければ大幅に年俸が下がるシビアな世界というイメージがまだあるのではないでしょうか。

 

しかし上記でも述べたように、働き方の多様化に伴い、年俸300万円などでも年俸制を取っている一般企業も見受けられるようになってきました。

 

結果と比例する年俸制の働き方。年俸が1000万円を超えるような賃金をもらっているのであれば、そのようなシビアな年俸の増減には納得できるかもしれません。しかし、一般的な年俸300~500万円で働く人たちにとって出てくる問題が、年俸と労働時間のバランスです。

 

今回は、年俸制の企業で働く方にとって正しい労働基準法を理解してもらい、「年俸制だから残業代が出ない」という事態を回避するヒントになればと思います。

 


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この記事に記載の情報は2021年07月28日時点のものです

年俸制は残業代の出ない理由にはならない

まず「年俸制は残業代が出ない」という、一般的な認識がありますが、年俸制だからという理由だけで企業が残業代を支払わないことは出来ません。これは、年俸制だとしても会社は使用者で、従業員は労働者という関係は変わらないからです。

 

そして、労働基準法37条にも「時間外労働、休日出勤をした労働者には割増賃金(残業代)を払わないといけない」と記されています。ですので、使用者と労働者の雇用関係がある以上、使用者はこの労働基準法を守らなくてはなりません。

 

年俸制の代表的な例として、プロ野球選手をはじめとするプロスポーツ選手があります。毎年、オフシーズンになると契約更新を行ない、年俸を球団との話し合いで決めますが、そもそも、プロの世界で活躍するスポーツ選手は、雇用契約による労働者ではなく、個人事業主(自営業)であることが一般です。

 

ですので、使用者と労働者という関係性のある働き方がされていません。「年俸制は残業代が関係ない」という認識は、このようにプロスポーツ選手などからきているものも多いのですが、もともとの雇用関係が違うということを覚えておいて下さい。

 

あやふやにされがちな年俸制における労働時間の定義

年俸制は、成果・業績に比例して給料が増減することが多く、労働時間とは関係なしに契約をしているかのような錯覚に陥ります。しかし、労働基準法では、労働時間を基準として規制を設けていますので、使用者と労働者の雇用関係があるかぎり、この基準を守らなくてはなりません。

 

年俸制も一般的な法定労働時間と同じ

このように、あなたが個人事業主でないかぎり、使用者と労働者の雇用関係が成り立ち、給与の支払基準に法定労働時間が関係してきます。法定労働時間とは、俗に言う、定時のことで、簡単にいえば1日8時間で週40時間以内と法的に定められている労働時間です。

 

年俸制だからといって、労働時間を把握しなくていいというようなこともありません。例え、会社で出勤時間を記録するような形を取っていなくても、自身で実際に働いた時間が把握できるようにしましょう。

 

法定労働時間に関して詳しくは「どこから残業時間になるのか」をご覧ください。

 

法定労働時間を超えれば残業代が支払われるべき

法定労働時間を超えるようであれば、それは残業時間となり、年俸とは別で残業代が支払われるべきです。年俸制を理由に残業代が支払われておらず、残業時間と給料が吊り合わないような場合は、違法な働かせ方の可能性が非常に高いと思って間違いないでしょう。

 

年俸制で残業代を払わなくて良いケース

しかし、年俸制でも契約内容によっては残業代を支払わなくて良いケースがあります。しかし、この内容は、年俸制に限らず一般的な、月給制の給与形態でも適応される内容です。

 

裁量労働制によるみなし時間制

みなし時間制とは、事前にある程度の労働時間は要するであろうと見込んで、あらかじめ年俸に残業代を含めておく契約内容です。例えば、「年俸には1ヶ月◯◯時間、◯万円分の残業代を含める」というような契約内容をしていることです。

 

あなたは、そのような契約を結んだ記憶や契約書がありませんか?そのような契約だと、みなし時間制で定められた時間以内の残業代は、もう既に年俸に入っていることになる可能性があります。

 

しかし、そのような場合でもこのみなし時間制で定められた残業時間を超えれば、そこから追加の残業代が支払われる必要があります。詳しくは「固定残業代(みなし残業)の仕組み」の仕組みと同じになります。

 

管理監督者

労働基準法には、「管理監督者には割増賃金を支払わなくて良い」と記されています。管理監督者とは、簡単に言うと、経営者と同等の立場にいて、出退勤時間の決まりがなく、一般社員との給与に差があるといった内容です。詳しくは「名ばかり管理職と管理監督者の違い」をご覧ください。

 

ホワイトカラーの年俸制で出退勤時間も決まっておらず、年俸何千万円で働く方には、このような管理監督者の条件に当てはまる人もいます。しかし、年俸数百万円で労働時間にも制限がある方は、この管理監督者には当てはまりません。この事を「名ばかり管理職」とも言います。

 

個人事業主

稀なケースですが会社と業務委託で契約を結び、こちらが個人事業主となっているというケースも有ります。個人事業主とは、いわゆる自営業者のことで、雇用契約ではなく、業務委託契約など、時間に縛られず、時間に対する給与ではなく委託内容や成果によって対価が支払われる契約で働いている人のことをいいます。

 

プロスポーツ選手などがそうです。こちら側から望んで個人事業主になったのであれば、自己責任も了承済みでしょうが、悪質な会社は年俸制という少し特殊な契約内容のどさくさに紛れて、働く人を個人事業主にすることもあるようです。

 

個人事業主として会社勤めをすることは、税金面・給与面・社会保障面、また、労働基準法でも保護されなくなり、非常に不利です。自分の意思と関係なく個人事業主になっているようであれば直ちに「労働問題を得意とする弁護士」に相談して下さい。

 

年俸制の残業代の計算方法

年俸制の残業代の計算方法は、一般的な残業代の計算方法と変わりません。しかし、一点大きな問題があります。年俸制は使用者も労働者も正確な労働時間を把握していないということがあります。

 

しかし、残業時間を計算するにあたって重要になるものが、もちろん実際にどれだけ働いたかということです。ここで、実労働時間を把握する材料は、何もタイムカードだけではありません。実労働時間を把握する証拠には、以下のようなものがあります。

 

・業務用メールの送受信履歴

・日記等の備忘録

・勤怠表 

・業務日誌

・オフィスビルへの入館記録

 

などがあります。労働時間は管理していなくても、出勤しているかどうかを把握する「なにか」がある場合があります。それが、証拠として使えることがありますので、残業時間を把握していないと諦めないようにしましょう。

 

残業代の計算方法も一般的な方法と同じ

年俸制の残業代の計算方法も、一般的な残業代の計算方法と変わりません。年俸制でも毎月給料が振り込まれ、月額いくらという明細があるはずです。雇用契約書を確認し、実労働時間と給料で支払われた金額の差額を割り出します。

 

詳しくは「残業代の計算方法と未払い残業代を取り返す全手法」をご覧ください。

 

年俸制で未払いだった残業代を取り戻す方法

未払いだった残業代を計算されてみた方は、意外と高額になる残業代にワクワクと憤りが交差する、なんとも言えない感情が出てきたのではないでしょうか。もちろん、今までに支払われていなかった残業代を請求することは可能です。

 

しかし、年俸制の雇用形態は、企業によっては成果に応じてしっかり返ってくる可能性がありますし、未払いの残業代を取り返せるくらいのパワーも持っていることがあります。これから将来性があるような会社であれば、未払い残業代の請求より、年俸を上げる取り組みに注力したほうが良いかもしれません。

 

しかし、それでも上司や先輩を見ていて、将来性を感じられないようであれば、退職を念頭に置いたうえで、未払い残業代の証拠集めからとりかかりましょう。その後の方法は、「未払い残業代を自分で請求/獲得する為の証拠と手順を徹底解説」をご覧ください。

 

まとめ

いかがでしょうか。結論を言うと、年俸制だからといって残業代が出ないようなことはありません。もう一度、ご自身の雇用契約をしっかり確認して、残業代が支払われるべきかを確認しましょう。

 

残業代が違法に払われていないようで、会社にも魅力を感じられないようであれば、退職を考えながらも、未払い残業代を請求しても良いでしょう。

 

まだ将来性があるような会社であれば、残業代未払いを会社と相談の上、今より年俸が上がるような取り組みをしていきましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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