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飲食店に多い残業代のトラブル事例!未払い残業代を請求するときのポイントと流れ

更新日
CSP法律会計事務所
加藤 惇
このコラムを監修
飲食店に多い残業代のトラブル事例!未払い残業代を請求するときのポイントと流れ

飲食店では残業代の未払いが常態化している場合が多く、名ばかりの『固定残業代』や『管理職』が横行しています。

しかし、残業代を請求することは労働者としての当然の権利であり、残業代を支払わない飲食店に対しては、法的な手続きにより支払いを強制することが可能です。

本記事では、残業代に関する基本的な法律知識や、具体的な計算方法・請求方法について分かりやすく解説します。

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飲食店で多い残業代に関するよくあるトラブル事例

飲食店における残業代に関するトラブルは、雇用条件や業態によって様々ですが、代表的なものとして次のようなものが挙げられます。

  • 店長・マネージャーであることを理由として残業代を支払わない
  • 着替え・仕込み・買い出し・清掃などの時間はタダ働き
  • 休憩時間なのに呼び出しがあれば接客等の対応をしている
  • 残業は指示していないと主張して残業代を支払わない
  • 残業代は基本給に含まれていると主張する

これらの事例にあてはまる場合、ほとんどのケースで残業代の未払いは違法であり、未払い分の支払いを請求することが可能です。

「飲食店勤務は、そういうものだから」と諦めてしまうのではなく、正しい知識を身につけ、労働者として当然の権利を主張・行使しましょう。

飲食店の従業員が残業代を請求するときに知っておくべき4つのポイント

ここでは、飲食店の従業員が残業代を請求するにあたり、知っておくべき法律知識を4つ紹介します。

残業代未払いで困っている方は参考にしてください。

労働基準法上の労働者に該当する場合は残業代を請求できる

労働基準法では『労働者』について雇用形態(正社員・契約社員・パート・アルバイトなど)を区別していません

そのため、飲食店で働いている人は皆が『労働者』であるといえ、残業代を受け取る権利をもっています。

ただし、飲食店で『管理監督者』として働いている場合には、残業代など割増賃金(深夜割増を除く。)に関する法規制の対象外となる点に注意が必要です。

この『管理監督者』に該当するかどうかは、肩書や職位によって判断されるのではなく、実質的な立場や権限から判断されます。

過去の裁判例によると、以下のすべてを満たす場合には、『管理監督者』に該当するとされています。

  • 経営者と同視できるほどの職務内容・権限がある
  • 自己の裁量で労働時間を決められる
  • 地位にふさわしい賃金等の待遇を受けている

この判断基準に従えば、飲食店の店長であっても『管理監督者』に該当する例はまれで、基本的には『労働者』として割増賃金を受け取る権利をもっているのです。

22時~5時の深夜労働をした場合は割増賃金が25%アップする

22時から5時までの間に労働をする場合には、25%の割増賃金を受け取ることができます

また、深夜労働と時間外労働が重なった場合、すなわち22時以降に残業した場合には、時間外労働の割増25%と時間外労働の割増25%が合算され、合計50%の割増賃金を受け取ることとなります。

なお、休日出勤と深夜労働が重なった場合には、休日出勤の割増35%と残業代の割増25%が合算され、合計60%の割増となるため、計算時に注意が必要です。

割増賃金に関しては法律で細かいルールが定められており、実際の割増率はケースバイケースで異なるため、無理に自力で計算せず弁護士に相談することをおすすめします。

着替え、仕込み、買い出し、清掃などの時間も労働時間に含まれる

飲食店にありがちな、着替え・仕込み・買い出し・清掃などの時間も、労働基準法上の『労働時間』に含まれるため、この時間分の給料を受け取る権利があります。

過去の判例では、労働時間について「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと客観的に評価できる時間」と定義しています。

この定義に従えば、飲食店の従業員が着替えや仕込み等をおこなうことを義務づけられている場合には、それらに要する時間も『労働時間』に該当するのです。

こちらも具体的な判断は難しいものの、おおまかな基準として「サボったら怒られる時間=労働時間」と判断するといいでしょう。

残業代の請求権には3年間の消滅時効が設けられているため注意する

原則として未払い給料の請求権は、その給料が支払われるべきであった給料日から3年が経過すると消滅してしまいます。

つまり、3年より前の残業代を受け取る権利は給料日のたびに失われているのです。

会社に対して内容証明郵便を用いて催促をおこなうことで、一時的に時効の進行をストップさせることも可能です。

ただし、あくまでも一時的なストップであるため、長期間にわたる未払いにお悩みの方は早急に弁護士に相談することをおすすめします。

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飲食店の従業員が未払い残業代を請求する際の流れ|4ステップ

ここからは、飲食店の従業員が未払いの残業代を請求するための具体的なステップを解説します。

請求の際に必要な証拠の種類等についても紹介するので、しっかり確認していきましょう。

残業代を計算する

まずは、未払いの残業代があるかどうか、あるとすればいくらになるのかを確認・計算します。

ここで注意しなければならないのが、パートやアルバイトなど、フルタイムで働いていない場合の計算方法です。

労働基準法にいう『時間外労働』とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働のことをいい、シフト上予定されていた労働時間を超えた時間のことではありません。

例えば、シフト上の労働時間が6時間であり、3時間残業した場合には、労働基準法上の『時間外労働』は1時間ということとなり、8時間分の通常時給と、1時間分の割増時給を請求することができます。

それぞれの時間外労働等の割増率は、以下の通りです。

種類

割増率

法定時間外労働

25%以上

休日労働

35%以上

深夜労働

25%以上

時間外・深夜労働

50%以上(25%+25%)

休日・深夜労働

60%以上(35%+25%)

残業代に関する証拠を集める

残業代に関する証拠は、残業代を計算する際に必要となりますが、会社に対して請求をおこなう際にも必要となります。

もし会社側が残業代の支払いを拒み、訴訟などの法的措置に移行する場合には、残業の事実を客観的に証明できる証拠を揃え、裁判官を説得しなければならないからです。

残業代の未払いを証明する証拠の種類として、主なものは以下の通りです。

  • タイムカード
  • シフト表
  • 営業日報・手帳
  • 交通ICカードの利用記録
  • 勤怠管理システムの記録
  • 給与明細
  • 預金通帳の写し

もっとも、これらの証拠を一つだけ用意しても、請求を認めさせる根拠としては弱いと言わざるをえません。

残業代の未払いを直接的・間接的に証明できる証拠があれば、できる限り全てを集め、より説得力をもたせられるようにしましょう。

会社に対して未払い残業代を請求する

残業代の未払い額を計算し、証拠も揃ったら、会社に対して支払いの請求をおこないます

このとき、直接会社に出向いて口頭で話し合いをすることも可能ですが、やりとりの記録を残すためにも、内容証明郵便などの文書で請求することをおすすめします。

内容証明郵便とは、同じ内容の文書を3通作成し、それぞれ差出人・郵便局・受信者が保管することで、文書が確実に受信者に届けられたことを証明できるサービスのことです。

内容証明郵便での請求は自力でおこなうことも可能ですが、今後法的措置に移行する可能性を考慮すると、この段階から弁護士に依頼したほうがいいでしょう。

会社が残業代の支払いに応じない場合は労働審判や訴訟を検討する

残業代トラブルでは、証拠を集めて請求をおこなっても、会社側が何らかの理由をつけて支払いを拒むことが多く、当事者同士での交渉で決着がつくケースはあまりありません。

しかし、残業代の未払いは労働基準法に違反する行為であるため、このような場合には会社に対して法的措置を講じ、支払いを強制することが可能です。

主な法的措置の方法としては「労働審判」と「通常訴訟」があります。

労働審判は比較的結果が出るのが早くコストも小さいのに対し、通常訴訟は結果が出るまでに時間とコストがかかるものの、付加金と遅延損害金まで請求できる方法になります。

いずれの方法をとったとしても、裁判所の判決には強制力があるため、判決後も支払いがおこなわれない場合には、会社の口座を差し押さえるなどして強制的に支払わせることができます。

さいごに|飲食店に対して残業代を請求するなら弁護士に相談するのがおすすめ

今回は、飲食店における残業代に関する基本的な知識や、具体的な請求方法などについて解説しました。

比較的、飲食店では残業代の未払いが起きやすく、労働者側としても「飲食店だからしょうがない」と泣き寝入りしている人が多いのが実情です。

しかし、残業代の請求は労働者の権利であり、残業代の支払いは会社側の義務として、労働基準法に明確に定められています。

そのため、このまま泣き寝入りするのではなく、まずは弁護士に相談したうえで正確な未払い額を計算してもらい、会社に支払いを請求することをおすすめします。

未払い残業代の請求権は3年で消滅してしまうため、できる限り早いタイミングで弁護士に相談しましょう。

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本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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