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未払い残業代を自身で請求・獲得する為の証拠と手順を徹底解説

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未払い残業代を自身で請求・獲得する為の証拠と手順を徹底解説
  • 「残業代がきちんと支払われていない」
  • 「会社に対して請求したいが必要な証拠がどれかわからない」

上記のような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか?

残業代の未払いは、会社が従業員に対して負う賃金支払義務を怠る行為であり、民事上の責任が生じます。

厚生労働省の「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」によれば、残業代・賃金の不払いに対して厚生労働省が「是正・指導」をした企業は1,069 企業、割増賃金の平均額は労働者一人あたり10万円という結果が報告されています。

残業代未払い問題は年々減少傾向にはありますが、いまだに深刻な社会問題となっており、残業代が支払われない労働者は今すぐにでも解決策を打ちたいところでしょう。

本記事では、未払いとなっている残業代の請求方法や対処法、企業に支払わせるための手順などを解説します。

未払いの残業代を請求したい方は、ぜひ参考にしてください。

未払い残業代を請求したいと考えている方へ

会社に未払い残業代を請求したところで、認めるでしょうか?
会社に残業代を支払わせるためには、明確な証拠と法的に正しい主張が必要です。

未払い残業代を請求したい方は弁護士への相談・依頼がおすすめです。

弁護士に相談・依頼すれば、下記のようなメリットがあります。

  • 残業代を請求できる可能性があるかが分かる
  • 未払い残業代を請求するための証拠集めのアドバイス
  • 請求できる残業代を正確に計算してもらえる
  • 会社との交渉を代理してもらえる など

初回相談が無料の弁護士事務所も多数掲載しております。

まずは無料相談を活用して、未払い残業代の有無や証拠収集の助言を受けてみても良いかもしれません。

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目次

残業代請求ができるケースとできないケース|残業代が支給されるべき11の条件

そもそも、残業代が発生していなければ請求することはできません。

ここでは、残業代が請求できるケースとできないケースを紹介します。

残業代請求が出来る11のケース

一般的な労働者であれば、所定労働時間を超えて働いた場合は残業代の支払いを受ける権利が生じます

そのため、下記のような方は残業代を請求できる可能性は高いです。

  1. 会社の定める所定労働時間を超えて働いている(法内残業)のに、残業代が支払われていない方
  2. 法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働したのに、割増賃金(1.25倍)の支払いがない方
  3. 22時〜5時までの深夜労働に対して、深夜労働の割増賃金(1.5倍)の支払いがない方
  4. 休日労働に対する割増賃金(所定休日1.0倍、法定休日1.35倍)の支払いがない方
  5. 本来労働時間に含まれるはずの時間をカウントされていない方(待機時間や移動時間など)
  6. 退勤後の持ち帰り残業をしている方
  7. 経営者と一体となり仕事をおこなうはずの管理監督者だが、実態は「名ばかり管理職」の方(店長職など)
  8. 裁量労働制という理由で、全ての残業代が免除されている方(深夜労働をした場合は深夜割増賃金が発生する)
  9. そもそも裁量労働制の要件を満たしていない労働者の方
  10. 変形労働時間制でも、1ヵ月または1年単位で見た時に所定労働時間を超えている方
  11. 固定残業制(みなし残業)でどれだけ働いても残業代が一定の方

あなたに当てはまるものがひとつでもあれば、残業代を請求できる可能性があります。

以前、固定残業代を導入している企業の約8割が違法な運用をおこなっていたとしてニュースにもなりましたが、会社の経営者であっても正しいルールを知らないことがあります。

もし故意におこなっていれば、かなり悪質なケースといわざるを得ません。

残業代請求が出来ないケース

残業代が請求できないケースとして、以下のような雇用形態が挙げられます。

残業代を請求できない労働者の例
雇用形態 具体例
事業場外のみなし労働制 外回りの営業職などに多い。
「一定時間(所定時間分)を働いたとみなす」場合と「通常その業務を遂行するのにかかる時間分労働したとみなす」場合がある。
裁量労働制 専門職や経営企画に携わる労働者に適応。
労働力を労働時間ではなく、「一定の成果で評価すべき」という考え方。
フレックスタイム制 一般的には、労働時間を1ヵ月以内の一定単位で管理し、賃金精算をおこなう制度。
一定期間単位で労働時間を集計するため、「1日8時間、1週間に40時間」の法定労働時間を超過して働く日があっても、直ちに残業代は発生しない。
固定割増賃金制度 当該固定支給分については割増賃金の支払いをしたものとして処理されるため、固定支給分を超える割増賃金が発生しない限り、別途の精算を求めることはできない。
管理監督者 経営者と一体的立場にある労働者。労働基準法の定める「管理監督者」に該当する場合は、時間外・休日労働に係る割増賃金の請求はできない。
天候や自然条件に左右される労働者 農業や林業、漁業などに携わる労働者。
断続的業務の労働者 手待ち時間の多い運転手や事故待ちの業務など
公務員全般 一部の地方公務員、国家公務員、公立の教員など

そのほか、適正な割増賃金の計算、休日労働に対して適切な残業代の計算がなされている場合も未払いの残業代は発生しませんので、それでも給料が少ないと感じる場合は、「転職」を検討しましょう。

未払い残業代が発生しやすい業界・職種とそれぞれの対処法

古くからある業界の体質や、残業代未払いそのものに対する意識の低い業界もあります。

ここでは、残業代の未払いや不払いが多い業界にはどんなものがあるのかを確認していきます。

工事・土木関係の仕事

残業代未払いのトラブルのなかでも群を抜いて多い業界が、工事・土木関係の仕事です。

内装工事や道路・水道工事の仕事は時間の予測がつかないことも多く、どこも残業が多くなる傾向があります。

また、工事に関する仕事は、決まった時間の終わりではなく、その準備や報告、点検など業務は多岐にわたるのに対し、人手不足からか1〜2人といった少人数で対応させているところも多いです。

そのため、会社が従業員に慢性的な深夜残業をさせているという実態があるようです。

IT関係の仕事

代表的なのは、SE(システムエンジニア)やプログラマーなどIT関係の仕事をしている方の残業問題です。

IT関係の仕事は緊急の対応が求められることも多く、時間外労働が突発的に発生します。

さらに、急速にIT化が進行したため、業界自体の人材不足から知識技能を持った少数の従業員に仕事が集中し、残業が慢性化しているとも考えられます。

会社によっては残業代が出ないことを前提に人材募集しているところも少なくありません。

しかし、これらの職種は労働時間の把握が比較的容易ですので、適切に請求した場合残業代が任意で支払われるケースもあります。

居酒屋・ファッション関係の仕事

居酒屋の店長

居酒屋の店員はアルバイトとして雇われていることが多く、残業自体がない場合も多いですが、社員として雇用されている方は残業があるのに残業代が未払いとなっているという事例があります。

各店舗に社員として働いている方も数名いますが、経費削減のためにアルバイトの稼働を減らし、社員にサービス残業をさせている実態もあります。

ファッション・アパレル業界

ファッション業界は基本給そのものが低いため、残業を前提として働くしかないという実態があります。

1日20時間近く働くこともあり、華やかなイメージからは程遠い過酷な職業です。

一部のアパレル企業では1日の売上が悪いと、アルバイトであっても自社商品を実費で購入することを強要しているケースがあります。

英会話講師や塾講師の仕事

  • 「生徒のために残るのは当たり前」
  • 「生徒の成績もあげられないのに自分の給与の心配をするな」

上記のようなことを言われた場合、法令違反の可能性があります。

塾講師は、退職後に残業代の請求をするケースが多いようです。

小さな塾の場合は、集団で残業代請求をして倒産という事例も少なからず存在します。

未払い残業代請求の時効は3年に

証拠を集めたり、交渉や手続きをおこなったりすることが面倒だと思った方もいるのではないでしょうか。

労働基準法第115条では以下のように定められています。

(時効)

第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索

しかし、労働基準法143条では、この「5年間」について当面の間は3年間とすると定められています。

第百四十三条 第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

② 第百十四条の規定の適用については、当分の間、同条ただし書中「五年」とあるのは、「三年」とする。

③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。

引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索

つまり、あなたが行動を取らずにいる間に、請求できるはずだった過去の未払い残業代がどんどん減っていくのです。

そのため、「内容証明郵便」を送付し過去の未払い残業代の請求権の時効を中断させることを考える必要があります。

3年近く、もしくは3年以上前からの未払い残業代がある方は、無料で相談を受けてくれる法律事務所に相談してみてください

【弁護士に聞いた】未払い残業代請求に必要な「証拠」

【弁護士に聞いた】未払い残業代請求に必要な「証拠」

未払いの残業代請求を検討している場合、最初に考えなければならないことは証拠収集です。

事実を裏づける証拠がなければ、支払いに応じてはくれないため、以下の点に注意して証拠を集める必要があります。

  • 証拠集めは慎重に!隠される可能性がある
  • 自身の手元にコピーがあることが最低条件
  • 証拠がない状態で未払い請求は勝ち目がない

では、具体的にはどのような証拠があればよいのか、労働問題に詳しい弁護士の先生にお聞きしました。

雇用契約書や労働契約書

雇用通知書」が一方的に交付される場合もありますし、「雇用契約書」や「労働契約書」など、使用者とあなたの双方で契約することもあるでしょう。

ここでキーになるのは、「労働基準法第15条」と「労働基準法施行規則第5条」です。

使用者(企業)は、労働者を雇用する際に、労働基準法施行規則第5条に定められた事項が記載された書面を、交付しなければなりません。

この雇用条件通知書等には給与の計算方法や残業代支給についての取り決めが記載されているため、これを交付された場合はきちんと保管しておきましょう。

就業規則

就業規則とは、会社で労働者が働く際の決まりをまとめた書面で、労働基準法第89条・106条により労働者への周知(閲覧しようと思えばいつでも閲覧できる状態)が必要とされています。

労働者が10人以上いるような職場では、就業規則の作成・周知は会社の義務となります。

就業規則に記載されている内容は、以下になります。

  • 就業時間
  • 時間外労働の有無
  • 休日

未払い残業代を計算するために必要な情報が記載されている可能性が高いため、確認しておきましょう。

※ただ、会社によっては、法令に違反して就業規則を作成していないケースもあるようですので、留意が必要です。

始業・終業時刻を立証する資料4つ

未払い残業代を請求するためには、労働者側で実際の労働時間を立証する必要があります。

すなわち、実際に働いた時間を証明する証拠が必要です。

証拠の資料が不十分な場合には、仮に裁判を起こしたとしても裁判所において請求が認められない可能性が高いです。

実際に働いた時間を証明する証拠として挙げられるものは、主に以下となります。

  • タイムカード・勤怠記録・日報
  • 業務用メールアカウントの送受信記録履歴
  • 帰宅時のタクシー使用履歴(領収書)
  • 日記等の備忘録

それでは、具体的に解説します。

1:タイムカード・勤怠記録・日報

会社が労働者の労働時間を管理・把握する方法はさまざまですが、これら管理・把握に用いるツール(タイムカード、勤怠表、申告票、日報等)は、労働時間算定の証拠として有力です。

しかし、なかにはタイムカードもなく会社が労働者の労働時間を正確に管理・把握していないケースも多く、タイムカードを打刻したあとに働いていたようなケースもあります。

このような場合には上記ツールでは不十分ですので、ほかの立証手段を検討することになります。

2:業務用メールアカウントの送受信記録履歴

Eメールは、送受信する度にその時間が記録されることから、会社のアカウントでのメール送受信の履歴も、証拠として有力です。

たとえば、メール送信時刻は当該時刻までは社内で業務に従事していたことを推認できます。

3:帰宅時のタクシー使用履歴(領収書)

終電がなく、止むを得ずタクシーなどで帰宅した場合など、会計時に領収書をもらっておけばそれを保存しておきましょう。

多くの場合では乗車時間帯が記載されますので、退社時間を証明する有効な証拠となります。

4:日記等の備忘録

労働者が日々つけている日記や備忘録も労働時間算定の根拠となり得ます。

たとえば、日記の中で業務内容や始業・終業時間を記載しておけば、これが労働時間算定の根拠となり得ます。

また、業務が終了した際に、会社の業務メールや自身の携帯電話のメールを使って、業務内容や退社時刻を個人のメールアドレスに送信し、日々の退勤時刻を記録する方法もあります。

残業時間中の労働内容を立証する資料2つ

退勤時刻を立証できたとしても「勝手に残っていただけではないか?」「それまでの間、遊んでいただけではないか?」などと会社側から反論される可能性があります。

この反論自体は当然のことで、労働者が独自の判断で単に会社に居残っていただけでは、労務の提供がないため残業代は請求できません。

そのため、このような反論に備え、労働者側では残業時間中に労働していたことを立証する資料を収集しておくとよいでしょう。

1:残業指示書や残業承諾書

  • 残業指示書や指示を受けたメール
  • 指示を受けた時のメモ書き
  • 残業承認の旨の書面

上記の資料は、残業が上司の明示的な指示(承認)によっておこなわれたことを端的に示しています。

このようなものがあれば証拠として価値が高いといえます。

2:残業時間中の業務内容がわかる書面

  • 残業時間中に送信した業務用メールの履歴
  • 残業時間中の業務内容が判る資料(業務日誌など) など

このような資料も、残業時間中に実際に業務に従事していたことを示す資料といえるので、証拠として価値が高いと思われます。

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残業代請求において証拠になりにくいもの

走り書きのメモや不正確なメモ

日記や備忘録は、残業代請求をおこなうための証拠となります。

ただし、これが単なる走り書きのメモで趣旨が不明確である場合や、メールの送信時刻や勤怠記録と著しく齟齬があり内容が不正確と思われるものは、証拠としては価値が低いと判断されてしまう可能性があります。

そのような状態にならないためにも、主に以下のことを意識するとよいでしょう。

  • 日記や備忘録を機械的に作成する
  • 趣旨を簡潔かつ明確なものとする
  • ことの成り行きをとぎれとぎれではなく毎日記録すること

また、一度作成した日記や備忘録を後日修正する行為は、その内容の正確性を疑わせることになりますので、極力避けましょう。

私的なメール送信記録

業務用アカウントであれ個人のアカウントであれ、友人等との間で私的におこなったやり取りの記録は、労働時間の算定において証拠としては価値が低いことが多いです。

このようなやり取りは内容が不正確である可能性が高いですし、メール送信時刻まで業務をおこなっていたということにもなりません。

ただ、自身のサービス残業について前から相談していた相手に、その相談の一環として定期的にサービス残業の事実を申告していたというような場合には、相談内容自体が証拠となることはあり得ます。

残業代請求_証拠_チェックリスト

残業時間を証明する証拠が無い場合

タイムカードなどの勤怠管理表や労働時間や内容を明記した日報などが手元にない場合、残業代請求がまったくできないわけではありません。

ここでは、残業時間を証明する証拠が無い場合の対処法について解説します。

会社は労働時間の管理・把握する責任がある

厚生労働省通達の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」と、「労働基準法第109条」には次のように定められています。

(記録の保存)

第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準
  • 使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録すること
  • 始業・終業時刻の確認、記録は、原則として、【使用者が自ら現認して】、【タイムカード等の客観的な記録を基盤として】確認、記録すること
  • 自己申告制により行わざるをえない場合には、【適正な自己申告等について労働者に十分説明して】、【自己申告と実際の労働時間とが合致しているか、必要に応じて実態調査を行う】等の措置を講じること

要約すると、「労働時間の管理は使用者の義務」であり、「労働時間の記録を5年間保存するのも使用者の義務」ということです。

そして、このような労働時間の管理・把握の義務は労働者の利益のためにおこなわれるものであるため、労働者側は会社に対して「労働時間の管理・把握に係る資料を提供せよ」と要求でき、会社は正当な理由なくこれを拒むことはできません

会社が開示を拒むことはできないが任せっぱなしにするのは危険

労働者の手元に資料が何もなくても、請求の前段階として、会社側にこれら資料の提供を求めることで、資料を収集することは不可能ではありません。

しかし、使用者が管理しているから何もしなくていいとは考えないでください。

お粗末な会社では、そもそも労働時間を管理把握していない場合もあります。

裁判においては、基本的に何かを請求しようとする際、その請求が正当であることを立証する責任は請求する側にあります

証拠が無いと請求の主張は認められにくい

上記の要求をした結果、やはり証拠が集まらなかったという場合、結局、請求は認められません。

すなわち「会社が労働時間の管理・把握義務を履行していない=あなたの主張どおりに残業代請求が認められる」とはならないのです。

ただ、このような場合は残業代の未払い請求とは違った切り口で攻めていく必要もあります。

たとえば、労働時間の管理・把握義務の不履行を理由とする不法行為を追及するなどです。

自身で証拠が集められないといった場合は、一度弁護士に相談してみましょう

証拠が無い場合は弁護士の開示請求を利用

会社に対して開示請求をおこなうことで、勤務記録や就業規則、労働契約書などを開示させることができます

これを「文書提出命令」といいます。

文書提出命令とは、民事訴訟手続において当事者が裁判所へ申立てることにより、証拠を所持している相手方、または第三者に対して、所持する証拠文書の提出を求める命令のことです(民事訴訟法221条)。

引用元:文書提出命令とは証拠を提出させる法的手続き|効果・申立て手順を徹底解説

弁護士に相談し文書提出命令の申し立てをおこなうと、裁判所が会社へ命令します。

会社は労働者からの労働時間に係る資料を開示する義務があるとした裁判例もあります。

それでも応じない場合

会社側にとって、未払いの残業代が出ることは大きな痛手となります。

当人への支払いはもちろんの事、ほかの労働者からも芋づる式に残業代請求がおこなわれ、最悪の場合は経営破綻してしまう可能性もあるからです。

そのような事情から、会社側が残業代の支払いを恐れて、開示請求に応じない場合もあります。

しかし、会社が文書提出命令に応じない場合には、裁判所が労働者側の主張を真実と認める可能性が高まります

未払い残業代請求をする具体的な6つの手順

ここでは、具体的にどういった手順で残業代の未払い請求をおこなっていけばよいかを解説します。

  • 未払い残業代がいくらあるのか計算しよう
  • 会社側と直接話し合いによる交渉(在職中の場合)
  • 内容証明郵便で請求(退職後の場合)
  • 労働基準監督署に申告する
  • 労働審判で請求する場合
  • 通常訴訟で請求する場合

1:未払い残業代がいくらあるのか計算しよう

ここで、あなたが残業代の未払い分を請求した場合、いくらもらえるのかを計算してみましょう。

ざっくりいうと、給与を時給に換算し、時間数と割増率を掛けていくという方法になります。

割増率

時間外労働には、通常の賃金よりも多く支払う「割増率」が存在します。

残業代請求をおこなう際には、こちらの割増率も加算しましょう。

種類 割増率
法定時間外労働 25%以上
休日労働 35%以上
深夜労働 25%以上
時間外・深夜労働 50%以上(25%+25%)
休日・深夜労働 60%以上(35%+25%)

すこし難しいかもしれませんが、残業代には2種類ありますので、まずはそこから確認していきます。

2つの時間外労働を把握

法定時間外労働

労働基準法で定められた労働時間を超えておこなわれた残業のことです。

原則1日8時間、1週40時間と定められています。

法内残業

会社が定めた所定労働時間を超えて、労働基準法で定められた法定労働時間以内の範囲でおこなわれた残業のことを法内残業といいます。

たとえば、10時から18時までを労働時間と会社で定められており、その途中で1時間の休憩時間が設けられていたら、1日7時間会社が定めた労働時間(所定労働時間)となります。

所定労働時間の例

割増賃金の発生タイミング

もし、このケースで19時まで働いたとすれば、会社の労働時間では1時間の残業をしていますが、1日8時間の法定労働時間内には収まっています。

この考えから算定する残業代は以下のようになります。

法定時間外労働の計算

  • 法定時間外労働の時間数(時間)×1時間あたりの賃金(円)×1.25(※)

※時間外労働が60時間/月を超えた場合、超える部分については、1.5倍

ただし、法律上の中小企業等に該当する企業は当面の間、1.25倍でたりるとされています。

所定休日:土曜に労働した場合

法内残業の計算

  • 法内残業の時間数(時間)×1時間あたりの賃金(円)×1(※)

※法内残業は、所定労働時間を超える以上は賃金が発生しますが、法定労働時間の範囲内であるため割増率は適用されません。

計算例

月給 25万円
所定労働時間 154時間(1日7時間、月22日として計算)
法定労働時間 176時間(1日8時間、月22日として計算)
時給換算 1,250円
仮に月250時間働いたとすると、法内残業は22時間、法定時間外労働時間は74時間
法内残業賃金 1,250円×22時間1=27,500円
時間外労働割増賃金 1,250円×74時間×1.25=115,625円
合計 143,125円

この金額をその月の残業代として請求することができます。

休日労働_割増賃金

2:会社側と直接話し合いによる交渉(在職中の場合)

会社側に法令遵守の意識があり、労働者側にもある程度の譲歩が検討できるのであれば、会社と労働者が話し合うことによって早期に解決することも可能です。

ただ、あくまで当事者に話し合いの意思がなければ解決は困難ですし、正当な権利行使といえども人と人の交渉事になるため、在職中に請求することは一般的にはハードルは高いといえます。

3:内容証明郵便で請求(退職後の場合)

残業代を支払わない会社に残り続けることは、あまりないと思います。

在職中に請求するとなると、会社とトラブルになることも危惧されますので、自身ではなかなか請求しづらいという問題もあるでしょう。

そういったこともあり、退職後に残業代請求をおこなう方もいます。

退職後の請求には「内容証明郵便」が使われるケースが多いです。

内容証明郵便とは、「相手にどんな内容の文書を、誰から誰に、いつ送ったのかを証明してくれる郵便局のサービス」です。

内容証明郵便の送付は残業代請求の第一歩になります。

弁護士等に依頼せずに自身で作成し、請求するのであれば、特に費用もかからないといったメリットもあります。

※例文

平成○年○月○日

 

株式会社A

東京都新宿区西新宿○-○-○

労働 太郎 殿

催 告 書

(請求書、通知書でも可)

 

 

私は、貴社従業員として20●●年○月○日まで勤務していた者です。

20●●年○月○日〜20●●年○月○日まで、●時間の時間外労働に従事していましたが、合計○○万円をお支払い頂いておりません。

つきましては、本書面到達後●週間以内に、上記賃金を下記指定の口座までお支払いくださいますよう請求します。

お支払いに応じて頂けない場合、法的手段に移行いたしますので、ご承知ください。

 

金融機関名 □□銀行

支店名 ○○支店

種類 普通預金

口座番号 XXXXXXXXX

名義番号 ○○○○

平成○年○月○日

東京都新宿区○○

アシロ 太郎 印

これでもし、会社側が無反応である場合は「残業代請求の内容証明郵便を無視されたら|5つの対処法を解説」を読んでください。

4:労働基準監督署に申告する

残業代未払いの問題は、労働トラブルの中でも重要な問題であるため、きちんとした証拠があれば労働基準監督署からの対応も期待できます

費用も発生しませんので、社外の相談先として適しています。

また、残業発生に関する証拠を揃えていれば、正確な残業代の計算もおこなってくれますし、匿名で申告をお願いすることも可能です。

ただ、証拠がない、違反事実がない状態では労働基準監督署は動いてくれませんので、使いどころが難しいという問題があります。

労働組合に駆け込むのも有効

労働組合には会社従業員のみで組織される企業組合と、広く労働者一般により組織される一般労働組合があります。

前者は会社従業員でしか加入できませんが、後者は誰でも加入できます。

一般労働組合との交渉は、精神的にも経済的にも負担が重いため、経営者にとっては避けたい事態です。

そのため、労働者が一般労働組合に加入することは、それだけで経営者にとっては脅威といえるでしょう。

5:労働審判で請求する場合

「労働審判」は、労働問題を迅速に解決させるための法的手続です。

通常の訴訟よりも短い期間での解決が期待できます。

労働審判での結果は、法的効力もありますので、結果に対して大抵の使用者が従います。

6:通常訴訟で請求する場合

通常訴訟とは、裁判所に訴えを起こし、未払い残業代を請求する方法です。

個人で訴訟を起こすには少しハードルが高いですし、ここまで交渉がうまくいかないのであれば弁護士に相談することをおすすめします。

確実に未払い分を取り返そうと思った場合の最終的な手段であり、以下も合わせて請求できます。

  • 労働基準法上の割増賃金と同額の付加金
  • 遅延損害金(退職前は年3%、退職後は年14.6%の割合)

もし勝訴した後も残業代が支払われない場合は?

訴訟によって残業代の支払いを命ずる判決が出たにもかからず、会社が任意にこれを支払わない場合には、「強制執行」をおこなうという方法があります。

強制執行とは、会社の不動産や債権などを差し押さえて、裁判によって確定した残業代請求権を強制的に実現させる方法です。

実際は、会社がすでに破産状態にあるような場合でない限り、会社は銀行口座を差し押さえられるような事態は避けたいと考えるので、強制執行まで至ることは珍しい事例です。

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残業代請求でよくある失敗事例【裁判事例付き】

そもそも残業代が発生していない雇用形態である「裁量労働制」「フレックスタイム」「固定割増賃金制度」「管理監督者」が適切に運用されていれば、残業代の請求はできません

ただし、それ以外に、残業代請求に失敗しやすいパターンとなるのが、以下のとおりです。

  • 証拠が不十分
  • 自身で残業代請求を全ておこなおうとしてしまう
  • 労働基準監督署に強い期待感を持って相談していた

それでは、以下3つのパターンを順番に紹介します。

証拠が不十分である

残業代請求では労働時間を立証する「証拠」が重要

 

そもそも残業代を請求する場合には、一般的に労働者側で具体的に●万円の残業代を支払ってください、と請求するため、前提として金額を計算する必要があります。

また、裁判になったときに証拠がなければ請求は認めてもらえません。

タイムカードやシフト表、営業日報や手帳、交通ICカードの利用記録、パソコンのログインログオフ記録などが裁判に有効な証拠となります。

退職後に証拠を集めることも不可能ではありませんが、ハードルは上がるため、可能な限り在職中に集めておきましょう。

残業代請求が棄却|アイスペック・ビジネスブレイン事件

業務日誌と手書きのタイムカードを提出したものの、証拠として不十分であり労働者が主張するような時間外及び深夜労働は認められないとして控訴を棄却した事例。

判例元

裁判年月日 平成19年11月30日

裁判所名 大阪高裁 裁判区分 判決

事件番号 平19(ネ)1493号

事件名 賃金請求控訴事件 〔アイスペック・ビジネスブレイン事件・控訴審〕

裁判結果 控訴棄却 上訴等 確定

Westlaw Japan文献番号 2007WLJPCA11306002

自身で残業代請求を全ておこなおうとしてしまう

残業代請求を訴訟に依らずに成功させるには残業代の金額を正確に計算し、会社と的確に交渉をおこなって有利な条件で和解することが重要です。

しかし、そのためには高度な専門スキルが必要です。

労働者一人では正確に残業代を計算することも簡単ではなく、会社の反論にうまく対応できずに失敗してしまう可能性もあります。

成功させるには、弁護士に相談して力を借りましょう

残業代請求に実績のある弁護士に依頼すること

まずは残業代請求を得意とする弁護士に依頼することが重要です。

残業代請求を得意とする弁護士であれば、必要な証拠の集め方や会社との交渉方法も知っています。

交渉が決裂して労働審判や訴訟になっても有利に進められるので、適正額の残業代を回収しやすくなります。

労働基準監督署(労基署)に強い期待感を持って相談していた

「労基署が救ってくれる」と考えていると残業代請求に失敗しやすくなります。

労基署は証拠がないと動いてくれませんし、小さな事件の場合はあと回しにされてしまう可能性もあります。

また労基署は、あくまで行政機関として企業に対して指導勧告をおこなったり刑事的な責任追及をしたりする機関であり、個人の代理人になったり、民事的な残業代支払命令を出してくれたりするわけではありません。

本気で残業代を支払ってもらいたいなら、労基署頼みではなく弁護士に請求手続きを依頼しましょう

残業代請求で失敗したくないなら弁護士への相談がおすすめ

残業代請求を弁護士に依頼する3つのメリット

問題の早い解決が見込める

個人で残業代請求をおこなうと、会社との交渉も上手くまとまらず、請求のための準備も時間がかかることがあるでしょう。

請求に時間がかかってしまうと、解決の見えない問題にストレスを感じて途中で挫折してしまう方は意外と多くいます。

残業代請求が得意な弁護士に相談すれば、残業代請求にも精通しており、スピード解決が見込めるでしょう。

今ある証拠だけでも請求が可能になる

もし、いま手元に残業代請求の確実性を高めるだけの証拠がなかった場合でも、就業規則と給与明細などの最低限のものがあれば、弁護士はその証拠を元に会社へ請求することも可能です。

会社側の対応が変わる

残業代を支払わない会社は、「注意を受けないから払っていない」というところもあります。

労働者個人で残業代請求をしても、「なめられた対応を取られる」ことも考えられます。

しかし、弁護士に依頼すると会社に対しても本気度を伝えることができます。

「内容証明郵便を弁護士名義で送っただけで、すぐに会社が応じてきた」ということも往々にしてあります。

残業代請求にかかる弁護士費用は?

弁護士費用の内訳と相場は概ね下記のようになっています。

合計 20万~40万円+請求額の20%程度
相談料 1時間当たり:0~1万円程度
着手金 0~30万円程度
手数料など 数万円程度
成功報酬 請求額の20~30%程度
実費 事務所による
日当・タイムチャージ 事務所による

残業代請求が得意な弁護士の選び方

いざ残業代請求を弁護士に依頼しようとしても「どの弁護士に依頼すればいいのか?」と、お悩みの方も多いでしょう。

ここからは、残業代請求を弁護士に依頼する際の選び方を解説します。

残業代請求に実績のある弁護士

まず、弁護士にも得意・不得意があることを知っておきましょう。

離婚問題や遺産相続トラブルなどの民事事件が得意だったり、暴行や窃盗などの刑事事件が得意だったりとさまざまです。

弁護士として知名度が高くても、その方が残業代請求の実績が少ないのであれば、自身の望む結果にならないこともあります。

まずは、残業代請求を得意とする弁護士へと依頼することを念頭におきましょう。

弁護士との相性が重要

労働問題を得意とする弁護士も複数いますので、その中からどのようにして選んでいくかが重要です。

特に重要なのが、依頼者と弁護士との相性です。

ここでいう相性とは、さまざまな要素が考えられます。

  • 「優しい弁護士がいい」
  • 「しっかりした弁護士がいい」
  • 「親近感がある弁護士がいい」
  • 「とにかく費用を抑えたい」

自身と相性の良い弁護士に依頼すると、満足のいく結果になる可能性が高まるでしょう。

無料相談を活用し弁護士との相性を確認しよう

そうはいっても、普段弁護士との接点がある方も少ないでしょう。

今ではインターネットでいろいろな弁護士を調べることができます。

通常、弁護士への相談は1時間5,000~10,000円程度の相談料がかかりますが、現在は初回相談無料などを実施している法律事務所もあります。

それらを上手く利用し、どの弁護士が自分と相性がいいのかを判断しましょう。

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残業代請求を有利に運ぶために|残業代を払わない会社がよくやる8つの手口

「うちの会社は残業代が出ないから……」と、残業代請求を諦めている方がいますが、残業をすればそれに対応する賃金を得られるのが原則です。

まずは、企業が残業代の支払いを免れようとするよくある8つの手口を知っておきましょう。

  • 残業代は出ない事を明言している場合
  • 定時を過ぎるとタイムカードを切らせてから仕事をさせる
  • 月の残業時間上限を決めて超過分をカットしている
  • 「年俸制だから」と残業代をカットしている
  • 会社で残業はさせず、家で仕事をさせる
  • 管理職になった途端残業代がカットされる
  • 残業時間を切り捨てる
  • みなし労働時間制だから残業代は出ない

1:残業代は出ない事を明言している場合

  • 「そもそも、うちは残業代が出ないことを最初に説明している」
  • 「残業代が出ない旨を記載した雇用契約を締結している」

上記のような理由で、残業代を支払わない会社があります。

しかし、雇用契約書に残業代は支払わないと書かれていたとしても、法の定める労働者の権利が消滅するものではありません。

これは違法な契約として無効となります。

法律には「任意規定」と「強行法規」という2種類の法律がありますが、残業代の支払い義務は「強行法規」であり、当事者間の合意によってその適用を排除することはできないのです。

任意規定とは?

当事者間の合意があれば、その法規(法律)とは異なるルールを定めることができるもの。

強行法規とは?

任意規定とは逆で、当事者間の合意があっても、その法規と異なるルールを定めることができないものです。

つまり、強行法規に反するルールを当事者間で定めたとしても、そのルールは違法無効になります。

2:定時を過ぎるとタイムカードを切らせてから仕事をさせる

残業が発生する場合、定時終業としてタイムカードを打刻させたあとで、タイムカードに記録しない状態で残業をさせる会社があります。

このような運用をしても、残業行為をおこなった事実には違いありませんので、会社は実際に稼働させた残業時間に応じた賃金の支払い義務を負うことになります。

このような慣習が会社全体で蔓延しているようなら、ひとりだけ実際の退社時間にタイムカードを打刻することは難しいかもしれません。

その場合、後日、未払の残業代を請求するためには、実際の退勤時刻を証明する証拠(PCのログオフ時刻、メールの送受信記録、個人的な業務日誌等)を残しておく必要があります。

3:月の残業時間上限を決めて超過分をカットしている

「残業代は月20時間まで」というルールを定め、これを超える部分の残業代を支払わない会社がありますが、これも違法です。

残業代の支払い義務は法律(強行法規)で定められた義務ですので、会社の一方的な説明や労働者との合意によって上限を定めたとしても無効です。

4:「年俸制だから」と残業代をカットしている

  • 「年俸制だから残業代は出ない」
  • 「残業代が出ない旨を記載した契約を締結している」

上記のような理由で、残業代を支払わない場合もありますが、年俸制であっても会社の残業代支払い義務が消えることはありません

この点、会社によっては「年俸制」と「固定残業代制」を複合的に導入しているケースもあるようですが、そのような場合でも会社の残業代支払い義務が当然に消えることはありません。

たとえば、「年俸額に○○時間分の固定残業代を含む」というようなルールが定められているケースが考えられます。

この場合、固定残業代(残業時間)を超過する部分について残業代支払い義務を負うことは当然ですし、場合によっては定額分についても支払いを要求できる可能性があります。

5:会社で残業はさせず、家で仕事をさせる

残業代を発生させないために社内では定時で退勤させて、帰宅後に自宅で仕事をさせることもあります。

自宅で仕事をしていても、会社からの指示があれば残業と考えられるケースもあるでしょう。

しかし、自宅での業務処理は、これが残業代の支払い対象となる「残業」であるかどうか微妙です。

たとえば、特に必要性が高くないのに自己判断によって自宅で業務した場合で、かつ当該業務について拘束性が乏しいという場合は残業時間には該当しない可能性が高いといえます。

少なくとも、自宅での業務について「残業」として賃金を請求するためには、下記のいずれかのパターンに該当することを立証しなければなりません。

  • 上司の指示によって自宅業務をおこなった場合
  • 上司の許可を得た上で自宅業務をおこなった場合
  • どうしても自宅業務をしなければならなかった場合

したがって、この場合の未払い分請求は立証の観点から難易度が高いといえます。

6:管理職になった途端残業代がカットされる

「課長・部長は管理職だから」という理由で、残業代を支払わない会社がありますが、必ずしも「管理職は残業代を支払わなくてよい」ということにはなりません

管理職と残業代の問題は大きなテーマです(いわゆる「名ばかり管理職」の問題)。

たとえば、係長など下位の管理職の場合や管理職といっても名目上のものに過ぎない場合などは、会社は残業代の支払い義務を免れられない場合があります。

このような「名ばかり管理職」の問題は、社内で労働者側が声を上げて社内環境の改善を求めることや、労働基準監督署に申告して当局からの指導がおこなわれることで、改善するケースもあります。

7:残業時間を切り捨てる

「退勤時刻は15分単位で切り捨てる」というルールを設けている場合です。

意外とよくある社内ルールですが、単位未満の端数時間を切り捨てることは違法です。

法律的には、残業代は例え1分であっても請求が可能であり、これを会社が一方的に切り捨てることは、原則として許されないのです。

ただし、会社が常に1分単位で労働時間を集計して残業代を計算しなければならないとすると事務処理上煩雑なケースが出てくるため、行政通達では次のような例外を認めています。

1ヵ月の総労働時間について、「30分未満の切捨て、30分以上の1時間への切上げ」「15分未満の切捨て、15分以上の30分への切上げ」という処理をおこなうことは、必ずしも労働者に不利となるものではないため許されています。

8:みなし労働時間制だから残業代は出ない

みなし労働時間制とは、1日の労働時間のうち、事業場外で業務をおこなう時間が含まれており、労働時間の算定が難しい場合にはあらかじめ一定の労働時間を労働したものとみなす制度です。

労働時間を算定するには、実際の労働時間を把握することが必要ですが、外回りの営業マンなど、実際の労働時間を管理することが難しい場合に、本制度が適用される傾向があります。

この制度が適用された場合、実労働時間が多いか少ないかにかかわらず、労働時間は一定として計算されるため、実労働時間に対応する残業代は発生しないということになります。

営業手当と残業代は別物

なお、営業職の社員に対して「営業手当」といった名目で支払いをしていることを理由に、残業代を支払わない会社があります。

しかし、営業手当が直ちに残業代の支払いであると評価されるものではありません

そのため、みなし裁量労働時間制の適用がない場合には、「営業手当」の支払いがされていても、会社が残業代の支払い義務を免れないケースもあります。

さいごに

未払の残業代についての請求方法などをお伝えしてきました。

話し合いで解決できれば御の字ですが、もし会社が理由をつけて反論してきた場合には、すぐに弁護士に相談しましょう

未払い残業代の請求には請求期限もありますので、早めの対応を心がけてください。

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この記事の監修者
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竹中 朗 (東京弁護士会)
会社側の労働問題を取り扱ってきた経験から、企業側の対応を熟知した問題解決を行う。弁護士として妥協しない最適解を提案、最高のリーガルサービスを提供することをモットーにしている。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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「 残業代請求 」に関するQ&A
勤務記録を証明できるものが手元にない場合、請求は出来ないのでしょうか。

相談者様ご自身で保管していなくても、弁護士に依頼することで会社に開示請求を行う事ができます。
タイムカードはもちろん、PCの起動ログから残業時間を立証できた事例もございますので、証拠が手元に無くても泣き寝入りせず弁護士に相談しましょう。

残業代請求時に認められやすい証拠と、証拠がない時の対処方法
管理職だから残業代は出ないと会社から伝えられました。本当に1円も請求できないのでしょうか。

確かに労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくても良いと明記されておりますが、会社で定める「管理職」が労働基準法で言う「管理監督者」に当たらないケースもあります。
この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。

管理職(課長職など)に残業代が出ないのは違法?未払い残業代の請求手順
会社が固定残業代制度(みなし残業制度)の場合、残業代は全く払われないのでしょうか。

固定残業時間以上の残業を行った場合、その分の残業代は適切に支払われる必要があります。また、36協定の都合上、基本的に固定残業時間の上限は45時間とされております。
固定残業時間を上回る残業を行ったり、会社が違法な固定残業代制度をとっていた場合はもれなく残業代請求が可能です。直ちに弁護士に相談しましょう。

固定残業代(みなし残業)とは?未払い分がある場合の対処法も解説
在職中に残業代請求を行うリスクについて教えてください。

残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。

残業代請求をしたら報復に?予想される報復行為と未然に防ぐ方法
未払い残業代に時効はあるのでしょうか。

残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。

残業代請求の時効は3年|時効を中断させる方法を解説
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