残業代請求によって未払い残業代を獲得する全手順と注意点

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残業代請求によって未払い残業代を獲得する全手順と注意点
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2016.5.26

残業代請求によって未払い残業代を獲得する全手順と注意点

Zangyo-mibarai

あなたは残業代請求の具体的な手法をご存知でしょうか。残業代の未払いは、会社が従業員に対して負う賃金支払い義務を怠る行為であり、民事上の責任が生じることは当然ですが、悪質な場合には刑事上の責任も生じ得る行為です。(労働基準法は、残業代の未払いについて刑事処分まで予定しています。

 

厚生労働省によると、平成24年度の労働に関する相談件数は、106万件以上あると報告されています。さらに、助言・指導を申し出た件数も10,363件と、1万件を超えています。
参照:「平成24年度個別労働紛争解決制度施行状況|厚生労働省
 

このように残業代未払い問題は年々増加傾向にあり、深刻な社会問題となっています。今回は、そんな未払いとなっている残業代を、企業に支払わせるための手順をお伝えいたします。
 


残業代請求の時効は2年です。弁護士へ相談しましょう!
 
未払い賃金の請求は、法的知識と交渉力が必要となります。そこで弁護士への依頼を検討しましょう。法的解決へ導きますので、会社独自の言い分は通用しません。お望み以上の結果が返ってくることもあるでしょう。無料で相談を受けてくれる弁護士も多くあります。未払い賃金でお困りの方は弁護士への相談から始めてください。

 

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【目次】

未払い残業代請求に必要なものは『証拠』です

未払い残業代の請求に有効な証拠

未払い残業代請求の証拠になりにくいもの

未払い残業代請求の証拠になるものが無い場合

実際に会社へ未払い残業代請求をする4つの手順

会社と直接交渉する場合

労働基準監督署に申告する場合

通常裁判で請求する場合

労働審判で請求する場合

残業代請求の時効は2年

残業代未払いの会社がよくやる8つの手口

未払い残業代が発生しやすい業界

残業代の未払い分は会社は必ず払わないといけない

未払い残業代の請求額の計算式

会社が最も恐れる労働者の行動4パターン

役職につくと残業代がなくなる謎

残業代訴訟で勝訴した後も残業代が支払われなかった場合

まとめ

 

未払いの残業代請求に必要なものは『証拠』です

 

未払いの残業代請求を検討している場合、あなたが1番最初に考えなければならないことは、証拠収集(の方法)であると強く認識してください。

 

そして、証拠を集める上で以下のことに注意をしてください。

 

・証拠集めは慎重に!隠される可能性がある

・自分の手元にコピーがあることが最低条件

・証拠がない状態で未払い請求は勝ち目がない

 

この3点をまずは頭に置いておいいただくと良いでしょう。

 

未払い残業代の請求に有効な証拠

雇用時の書面

「雇用通知書」などが一方的に交付される場合もありますし、「雇用契約書」や「労働契約書」など、使用者とあなたの双方で契約する場合もあります。ここでキーになるのは、労働基準法第15条と労働基準法施行規則第5条です。

 

詳しい内容は割愛しますが、使用者(企業)は、労働者を雇用する際に、労働基準法施行規則第5条に定められた事項が記載された書面を、交付しなければなりません。そして、この雇用条件通知書等には給与の計算方法や残業代支給についての取り決めが記載されているため、これを交付された場合は保管しておくと良いでしょう。

 

就業規則のコピー

就業規則とは、労働者が会社で働くルールを定めたものであり、以下の法令などにより労働者への周知(閲覧しようと思えばいつでも閲覧できる状態)が必要とされています。労働者が10人以上いるような職場では、就業規則の作成・周知は会社の義務となります。

 

就業規則には、就業時間、休日、時間外労働の有無、割増賃金の計算方法等、未払い残業代の請求のために必要な情報が多数含まれていますので、その写しは後々有用となります(ただ、会社によっては、法令に違反して就業規則を作成していないケースもあるようですので、留意が必要です。)。

 

・労働基準法第89条(作成及び届出の義務)

・労働基準法第106条(法令等の周知義務)

参照:労働基準法

 

 

始業・終業時刻を立証する資料

未払い残業代を請求するためには、労働者側で実際の労働時間を立証する必要があります。そのため、実労働時間の証拠となる始業・終業時刻を立証する資料は、残業代を請求するうえでは必須の資料です。これら資料が不十分な場合には、仮に裁判を起こしたとしても裁判所において請求が認められない可能性が高いです。

具体的なものとしては・・・

 

1:タイムカード、勤怠記録、日報

会社が労働者の労働時間を管理・把握する方法は、様々ですが、これら管理・把握に用いるツール(タイムカード、勤怠表、申告票、日報等)は、労働時間算定の証拠として有力です。しかし、そもそも会社が労働者の労働時間を正確に管理・把握していないケースも多く、この場合には上記ツールでは不十分ですので、他の立証手段を検討することになります。

 

2:業務用メールアカウントの送受信記録履歴

Eメールは、送受信する度にその時間が記録されることから、会社のアカウントでのメール送受信の履歴も、証拠として有力です。例えば、メール送信時刻は、当該時刻までは社内で業務に従事していたことを立証できます。

 

3:帰宅時のタクシー使用履歴(領収書)

終電がなく、止むを得ずタクシーなどで帰宅した場合など、会計時に領収書をもらっておけば、多くのタクシー会社では乗車時間帯が記載されますので、それを保存しておきましょう。退社時間を証明する有効な証拠となります。

 

4:日記等の備忘録

労働者が日々つけている日記や備忘録も労働時間算定の根拠となり得ます。例えば、日々の日記の中で業務内容や始業・終業時間を記載しておけば、後々、これが労働時間算定の根拠となり得ます。また、業務が終了した際に、会社の業務メールや自身の携帯のメールを使って、業務内容や退社時刻を個人のメールアドレスに送信し、日々の退勤時刻を記録する方法もあり得ます。

 

残業時間中の労働内容を立証する資料

退勤時刻を立証できたとしても、

「勝手に残っていただけではないか?」
「それまでの間、遊んでいただけではないか?」

 

などと会社側から反論される可能性があります。この反論自体は至極もっともであり、労働者が独自の判断で単に会社に居残っていただけでは、労務の提供がないため残業代は請求できません。そのため、このような反論に備え、労働者側では残業時間中に労働していたことを立証する資料を収集しておくと良いでしょう。

 

1:残業指示書や残業承諾書

・上司などからの残業指示書や指示メール、指示を走り書きしたメモ

・残業承認の旨の書面

上記の資料は、残業が上司の明示的な指示(承認)によって行われたことを端的に示していますので、このようなものがあれば証拠として価値が高いと言えます。

 

2:残業時間中の業務内容が分かる書面

・残業時間中に送信した業務用メールの履歴

・業務日報など残業時間中の業務内容が判る資料

・残業を上司が認識していることを証するような資料 など

 

このような資料も、残業時間中に実際に業務に従事していたことを示す資料といえますので、証拠として価値が高いと思われます。

 

 

未払い残業代の請求の証拠になりにくいもの

 

走り書きのメモや不正確なメモ

日記や備忘録は残業代請求を行う上で証拠となり得ますが、これが単なる走り書きのメモで趣旨が不明確である場合や、メールの送信時刻や勤怠記録と著しく齟齬があり内容が不正確と思われるものは、証拠としては価値が低いと言わざるを得ません。重要なのは、これら日記や備忘録を、恣意的にではなく機械的に作成すること、趣旨を簡潔かつ明確なものとすること、とぎれとぎれではなく毎日記録することです。

 

また、一度作成した日記や備忘録を後日修正する行為は、その内容の正確性を疑わせることになりますので、極力避けましょう。

 

私的なメール送信記録

業務用アカウントであれ個人のアカウントであれ、友人等との間で私的に行ったやり取りの記録は、労働時間の算定において証拠としては価値が低いことが多いでしょう。このようなやり取りは内容が不正確である可能性が高いですし、メール送信時刻まで業務を行っていたということにもなりません。

 

ただ、自身のサービス残業について従前から相談していた相手に、その相談の一環として定期的にサービス残業の事実を申告していたというような特別の場合には、当該相談内容自体が証拠となることはあり得ます。

 

 

未払い残業代の請求の証拠になるものが無い場合

もしタイムカードなどの勤怠管理表や労働時間や内容を明記した日報などが手元にない場合。残業代の請求は全くできないかと言われたら、そうではありません。

 

あまり知られていませんが、厚生労働省通達の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」と、「労働基準法第109条」には次のように定められています。

 

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について

・使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録すること

・始業・終業時刻の確認、記録は、原則として、【使用者が自ら現認して】、【タイムカード等の客観的な記録を基盤として】確認、記録すること

・自己申告制により行わざるをえない場合には、【適正な自己申告等について労働者に十分説明して】、【自己申告と実際の労働時間とが合致しているか、必要に応じて実態調査を行う】等の措置を講じること

 

 

【労働基準法第109条(記録の保存)】

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。

 

要約すると、「労働時間の管理は使用者の義務」であり、「労働時間の記録を3年間保存するのも使用者の義務」ということです。そして、このような労働時間の管理・把握の義務は労働者の利益のために行われるものであるため、労働者側は、会社に対して、「労働時間の管理・把握に係る資料を提供せよ」と要求することができ、会社は正当な理由なくこれを拒むことはできません。

 

そのため、労働者の手元に今は資料が何もなくても、請求の前段階として、会社側にこれら資料の提供を求めることで、資料を収集することは不可能ではありません。しかし、使用者が管理しているから何も収集しなくていいとは考えないでください。裁判では、基本的に、何かを請求しようとする際、その請求が正当であることを立証する責任は、請求する側にあります。

 

そのため、上記の要求をした結果、やはり証拠が集まらなかったという場合、結局、請求は認められません。すなわち、「会社が労働時間の管理・把握義務を履行していない=あなたの主張通りに残業代請求が認められる」とはならないのです。

 

ただ、このような場合は残業代の未払い請求とは違った切り口(例えば、労働時間の管理・把握義務の不履行を理由とする不法行為を追及する等)で攻めていく必要もありますので、自分で証拠が集められないといった場合は、弁護士や社労士に相談してみるのが無難です。
 


無料相談ができる事務所もありますので、残業代未払いになっている方は弁護士に相談してみましょう。払われていない賃金を取り返せる可能性が十分高まります。
 

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実際に会社へ未払い残業代請求をする4つの手順

ここでは具体的にどういった手順で残業代の未払い請求を行っていけば良いかを解説します。

 

給料未払いの人必見|自分で未払い分を請求し獲得する方法」にも詳しい内容が記載してありますので、合わせてご確認いただければと思います。

 

 

1:会社と直接交渉する場合

会社側に法令遵守の意識があり、労働者側にもある程度の譲歩が検討できるのであれば、会社と労働者が話し合うことによって早期に解決することも可能です。ただ、あくまで当事者に話合いの意思がなければ解決は困難ですし、当事者がどこまで譲歩できるかにもよります。また、労働者側が引き続き会社に在籍する意思がある場合、会社とトラブルになることが危惧され、ご自身ではなかなか請求しづらいという問題もあります。


ただ、弁護士等に依頼せずにご自身で請求するのであれば、特に費用もかからないいったメリットもあります。


■交渉内容のサンプル■

 

■提出日時、名前
平成●●年●月●日、残業太郎

■自分の詳細
いつ、どこ(部署)に入社して、どんな業務についていたのか。

■現状の説明
何年何月から勤務しており、毎日何時から何時まで勤務しているが、残業代の支払いが未だに行われていないことなど。

■要求の確認
残業代等の請求。残業代●●万円の支払いを要求しますなど。

■支払わないといけない理由
実労働時間、これに応じた残業代の計算式・金額、既払い残業代等を、具体的に記載する。

■譲歩の有無
交渉がちゃんと可能だという歩み寄りの記載。

■回答方法・期限
文書(メール可)での回答と、いつまでに回答がほしいという旨。

■対応依頼
誠意ある対応のお願いをしたいするなど。


 

これでもし、会社側が無反応である場合は「内容証明郵便で請求する方法」を検討してみてください。

 

 

2:労働基準監督署に申告する場合

残業代未払いの問題は、労働トラブルの中でも重要な問題であるため、きちんとした証拠があれば、労働基準監督署からの対応も充分活用できます。費用も発生しませんので、社外の相談先として適しています。
 
また、残業発生に関する証拠を揃えていれば、正確な残業代の計算も行ってくれますし、匿名で申告をお願いすることも可能です。

 

詳細は「労働基準監督署に労基違反として申告する」をご確認ください。

 

 

3:通常訴訟で請求する場合

裁判所に訴えを起こして未払い残業代の支払いを請求する方法。弁護士に依頼すれば一定の費用がかかりますし、裁判手続にもある程度の期間も必要となります。実名で表に立つことにもなりますので、個人情報の開示を避けたい場合はデメリットの方が目立つといえます。また、在職中であれば、周囲の人間との関係や職場環境などを考慮すると裁判と表立って争うことは躊躇されるのは当然でしょう。

 

しかし、確実に未払い分を取り返そうと思った場合には有効な手段であり、

(1) 労働基準法上の割増賃金と同額の付加金

(2) 遅延損害金(退職前は年6%、退職後は年14.6%の割合)

も併せて請求することができますので、方法としてはおすすめできます。

 

参考:

給料未払い問題で裁判所の利用をする判断基準額

未払い期間が長い場合は利息が取れる

 

 

4:労働審判で請求する場合

「労働審判」は、労働問題を迅速に解決させるための法的な手続きです。通常の訴訟よりも短い期間での解決が期待できます。労働審判での結果は、法的効力もありますので、結果に対して大抵の使用者が従います。

 

その他の方法もありますので、詳しくは「給料未払いの現状を解消する5つの方法」をご覧ください。給料に関してですが、残業代の未払い請求も全く同じ手順で行えます。
 


残業代請求を労働者だけで行うのは非常に難しいと言えます。無料相談を受けてくれて、実際の未払い残業代の金額も教えてくれる事務所もありますので、まずは弁護士も相談してみて下さい。
 

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未払い残業代請求の時効は2年

いかがでしょうか。以上が未払い残業代を請求する方法です。正直なところ、証拠を集めたり、交渉や手続きを行なうことに若干面倒だと思った方もいるのではないでしょうか。「退職した後に・・・」「お金に困ってきたときに・・・」と、先延ばしにする方もいるかもしれません。
 
しかし、一点お伝えしたいことがあります。労働基準法第115条には「賃金や災害補償その他請求権は2年間」と決められています。つまり、あなたが行動を取らずにいる間に、請求できるはずだった過去の未払い残業代がどんどん減っていくのです。
 残業代請求の時効

すぐさま残業代請求を行わなくても、「内容証明郵便」などの過去の未払い残業代の請求権の時効を中断させることは考えましょう。2年近く、もしくは2年以上前からの未払い残業代がある方は、少なくとも弁護士に相談するようにしてみて下さい。無料で相談を受けてくれる弁護士事務所もあります。

 

残業代請求には時効もありますので、未払い残業代がある方はすぐに行動を起こすようにしましょう。とはいっても、何から手を付けていいのか分からない事だらけでしょうから、弁護士に相談をしてアドバイスを受けてみることをおすすめします。
 

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残業代未払いの会社がよくやる8つの手口

悪だくみをする上司

 

よく「うちの会社は残業代が出ないから・・・」と、残業代の請求を諦めている方がいますが、残業をすればそれに対応する賃金を請求する事ができるのが原則です。

 

これは、労働基準法という法律で決められている事です。会社が独断で「残業代は支払わない」と決定しても、法律で認められた権利が直ちに消滅するわけではありません。

 

ますは、企業が残業代の支給を免れようとするよくある手口を知っておきましょう。

 

 

1:残業代は出ない事を明言している場合

「そもそも、うちは最初から残業代が出ないことを説明している。」

「残業代が出ない旨を記載した雇用契約を締結している」

 

などの理由で、残業代を支払わない会社があります。しかし、企業側から一方的な説明によって法の定める労働者の権利が消滅するものではありません。また、残業代を支払わない旨の雇用契約を締結していても、これは違法な契約として無効となります。

 

法律には「任意規定」と「強行法規」という2種類の法律がありますが、残業代の支払義務は「強行法規」であり、当事者間の合意によってその適用を排除することはできないのです。

 

任意規定とは?

当事者間の合意があれば、その法規(法律)に優先するルールを定めることができるもの。

 

強行法規とは?

任意規定とは逆で、当事者間の合意があっても、その法規に優先するルールを定めることができないもの。つまり、強行法規に反するルールを当事者間で定めたとしても、そのルールは違法無効になるということです。

 

 

2:定時を過ぎるとタイムカードを切らせてから仕事をさせる

残業が発生する場合、とりあえず定時終業としてタイムカードを打刻させた後、タイムカードに記録しない状態で残業を行わせる会社があります。このような運用をしても、残業行為を行った事実には違いはありませんので、会社は実際に行わせた残業時間に応じた賃金の支払義務を負うことになります。

 

会社の風土や慣習が会社全体で蔓延しているようなら、あなたひとりだけが率先して実際の退社時間にタイムカードを打刻する事は難しいかもしれません。その場合、後日、未払の残業代を請求するためには、実際の退勤時刻を証明する証拠(PCのログオフ時刻、メールの送受信記録、個人的な業務日誌等)を残しておく必要があります。

 

3:月の残業時間上限を決めて超過分をカットしている

残業代は月20時間まで』というルールを定め、これを超える部分の残業代を支払わない会社がありますが、これも違法です。上記のとおり、残業代の支払義務は法律(強行法規)で定められた義務ですので、会社の一方的な説明や労働者との合意によって上限を定めたとしても、無効です。

 

 

4:「年俸制だから」と残業代をカットしている

疑いの目を向けるサラリーマン

年俸制だから残業代は出ない」「残業代が出ない旨を記載した契約を締結している」という理由で、残業代を支払わない場合もありますが、年俸制であっても会社の残業代支払義務が消えることはありません。

 

この点、会社によっては「年俸制」と「定額残業代制」を複合的に導入しているケースもあるようですが、そのような場合でも会社の残業代支払義務が当然に消えることはありません。


例えば、「年俸額に○○時間分の定額残業代を含む」というようなルールが定められているケースが考えられます。この場合、会社は、定額残業代(残業時間)を超過する部分について残業代支払義務を負うことは当然ですが、場合によっては定額分についても支払義務を免れないことがありますので、注意しましょう。

 

 

5:会社で残業はさせず、家で仕事をさせる

残業代を発生させたくないために一旦定時で退勤させ、自宅で仕事(残業)をするように指示する会社がありますが、自宅での業務も労働(残業)時間に該当する場合があります。ただし、自宅での業務処理は、これが残業代の支払対象となる「残業」であるかどうか微妙である場合もあります。

 

例えば、特に必要性が高くないのに自己判断によって自宅で業務した場合で、かつ当該業務について拘束性が乏しいという場合は残業時間には該当しない可能性が高いといえます。

 

少なくとも、自宅での業務について「残業」として賃金を請求するためには、

 

1:上司の指示によって自宅業務を行った場合

2:上司の許可を得た上で自宅業務を行った場合

3:どうしても自宅業務をしなければならなかった場合

 

といういずれかのパターンに該当することを立証しなければなりません。したがって、この場合の未払い分請求は立証の観点から難易度が高いと言わざるえないでしょう。

 

 

6:管理職になった途端残業代がカットされる

家に帰らずに仕事をするサラリーマン

課長・部長は管理職だから」という理由で、残業代を支払わない会社がありますが、必ずしも管理職=残業代が支払不要ということにはなりません。

 

管理職と残業代の問題はじつは大きなテーマです(いわゆる「名ばかり管理職」の問題)。例えば、係長など下位の管理職の場合や管理職といっても名目上のものに過ぎない場合などは、会社は残業代の支払義務を免れられない場合があります。

 

このような「名ばかり管理職」の問題は、会社で労働者側が声を上げて会社に改善を求めたり、労働基準監督署に申告して当局からの指導が行われることで、改善に至るケースもあります。

 

詳しくは「役職につくと残業代がなくなる謎」をご覧ください。

 

 

7:残業時間を切り捨てる

退勤時刻は15分単位で切り捨てる」というルールを設けている場合です。意外とよくある社内ルールですが、単位未満の端数時間を切り捨てることは違法です。法律的には、残業代は例え1分であっても請求が可能であり、これを会社が一方的に切り捨てることは、原則として許されないのです。

 

もっとも、会社が常に1分単位で労働時間を集計して残業代を計算しなければならないとすると事務処理上煩雑なケースが出てくるため、行政通達では、次のような例外を認めています。

 

1ヶ月の総労働時間について、「30分未満の切捨て、30分以上の1時間への切上げ」「15分未満の切捨て、15分以上の30分への切上げ」という処理を行うことは、必ずしも労働者に不利となるものではないため許される。(あくまで1ヶ月単位での処理であり、1日単位での処理は許されません。)

 

 

8:みなし労働時間制だから残業代は出ない

みなし労働時間制とは、1日の労働時間のうち、事業場外で業務を行う時間が含まれており、労働時間の算定が難しい場合にあらかじめ一定の労働時間を労働したものとみなす制度です。労働時間を算定するには、実際の労働時間を把握することが必要ですが、外回りの営業マンなど、実際の労働時間を管理することが難しい場合に、一定時間労働したものとみなすことができる制度です。

 

この制度の適用がある場合、実労働時間の多寡に拘らず、労働時間は一定として計算されるため、実労働時間に対応する残業代は発生しないということになります。なお、営業職の社員に対して「営業手当」といった名目で支払いをしていることを理由に、残業代の支払いを行わない会社があります。

 

しかし、「営業手当」が直ちに残業代の支払いであると評価されるものではありません。そのため、みなし裁量労働時間制の適用がない場合にはたとえ「営業手当」の支払いがなされていてもなお、会社が残業代の支払義務を免れないケースもありますので、留意が必要です。
 


会社は様々な方法を取って、残業代を払っていないことを正当化しようとしますが、実際には違法に支払われていないことがほとんどです。少しでも残業代が払われていないことに違和感があるのでしたら、弁護士に直接尋ねてみることをおすすめします。
 

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残業代の未払い(不払い)が発生しやすい業界

 

古くからある業界の体質や、残業代未払いそのものに対する意識の低い業界もありますが、残業代の未払いや不払いが多い業界にはどんなものがあるのかを確認していきたいと思います。

 

 

工事・土木関係の仕事

残業代未払いの事件数の中でも群を抜いて多い業界です。内装工事や道路・水道工事の仕事は時間が読めないことも多く、平均的にどこにいっても残業が多くなりがちです。


また、工事に関する仕事は、決まった時間の終わりではなく、その準備や報告、点検など業務は多岐に渡るのに対し、人手不足からか1〜2人といった少人数で対応させているところも多く、会社が従業員に慢性的な深夜残業をさせているという実態があるようです。

 

 

IT関係の仕事

代表的なのはSE(システムエンジニア)や、プログラマをされている方の残業問題です。職種柄、緊急の対応が求められることも多く、時間外労働が突発的に発生します。さらに、急速にIT化が進行したため、業界自体の人材不足から知識技能を持った少数の従業員に仕事が集中し、残業が慢性化しているとも考えられます。
 

IT関係の会社は残業代を支払っていない会社が本当に多く、しかも他の業界よりも未払い残業代の額が大きい事も特徴です。

 

会社によっては残業代が出ないことを前提に人材募集しているところも少なくありませんが、これらの職種は労働時間の把握が比較的容易ですし、伸び率の高い企業が多いことから、適切に請求した場合残業代が任意で支払われることも多いようです。

 

 

居酒屋・ファッション関係の仕事

居酒屋の店員の多くはアルバイトとして雇われており、そのような方は残業自体がない場合も多いですが、社員として稼働する方については残業が多くあるのに残業代が未払いとなっているという事例があるようです。
 

多くの場合、各店舗に社員として働いている方が数名いますが、多くの店で経費削減のためか、アルバイトの稼働を減らし、社員にサービス残業をさせている実態もあるといわれています。

 

ファッション業界は基本給そのものが低いため、残業を前提として働くしかないという実態があります。1日20時間近く働くことも多く、華やかなイメージからは程遠い過酷な職業です。大手のファッション業界はそうでもありませんが、アルバイトであっても、日の売り上げが悪いと自社商品を実費で購入することを強要している場合が多いので、この業界の闇は深いと思われます。

 

 

英会話講師や塾講師の仕事

具体的な名前は出せませんが、

「生徒のために残るのは当たりまえ」

「生徒の成績もあげられないのに自分の給与の心配をするな」

「有給を取りたいなんて結果を出してから言え」

 

こんな体育会系のことを平然という塾がありますが、法令違反となっている可能性があります。やめていく塾講師は、退職後に残業代の請求をするケースが多いようです。小さな塾の場合は集団で残業代請求をして倒産という事例も少なからず存在します。

 

 

残業代の未払い分は会社は必ず払わないといけない

実際に残業した場合の残業代は、労働者はこれを請求する法的な権利があり、企業は当然支払わなければならないのが原則です。

 

残業代未払いの会社がよくやる8つの手口」でも触れましたが、様々な社内ルールを作って残業代の請求を逃れているケースが多くなりますが、法律に則っている場合はともかくとして、隠れ蓑にしているケースがあり、悪質な企業であれば巧妙にその仕組みを隠してます。

 

「皆同じようにやっている」「業界では当たり前」というように言われてしまうと、良心の強い方であれば「仕方がない」と諦めてしまう方もいますが、それはあなたのためになりません。仕事はボランティアではなく、労力という価値を提供するものです。したがって、会社の指示に従って手を動かしたのであれば、その労力分の対価をきちんと主張しましょう。
 


それまで働いていた会社に対して残業代請求をすることは気が引けるかもしれません。弁護士に依頼すれば、ほとんどの業務を行ってくれるので、会社との関係性もあまり心配することもないでしょう。
 

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未払い残業代の請求額の計算式

ここで、あなたが残業代の未払い分を請求した場合、いくらもらえるのかを計算してみましょう。基本的な考え方としては,時給に換算し,時間数と割増率を掛けていくという方法になります。
 

 

※割増率
時間外労働には、通常の賃金よりも多く支払う「割増率」が存在します。残業代請求を行う際には、こちらの割増率も加算しましょう。
 

種類

割増率

時間外労働

25%以上

休日労働

35%以上

深夜労働

25%以上

時間外・深夜労働

50%以上(25%+25%)

休日・深夜労働

60%以上(35%+25%)

 

すこし難しいかもしれませんが、残業代には2種類ありますので、まずはそこから確認していきます。

 

 

残業代に関する2つの時間外労働

 

法定時間外労働

労働基準法で定められた労働時間を超えて行われた残業のことです。

定められた基準は、原則1日8時間、1週40時間と定められています。
 

法内残業

会社が定めた所定労働時間を超えて、労働基準法で定められた労働時間以内の範囲で行われた残業のこと。

 

例えば、10時から18時までの労働時間と会社で定められており、その途中で1時間の休憩時間が設けられていたら、1日7時間が会社が定めた労働時間(所定労働時間)となります。
 
もしも、このケースで19時まで働いたとすれば、会社の労働時間では1時間の残業をしていますが、1日8時間の法定労働時間内には収まっています。このことを法内残業と言います。この考えから算定する残業代は以下のようになります。

 

法定時間外労働の計算
時間外労働の時間数(時間)×1時間あたりの賃金(円)×1.25(※)
※時間外労働が60時間/月を超えた場合、超える部分については、1.5

 

ただし、法律上の中小企業等に該当する企業は当面の間、1.25で足りるとされています。
 

法内残業の計算

法内残業の時間数(時間)×1時間あたりの賃金(円)×1(※)

※法内残業は、所定労働時間を超える以上は賃金が発生しますが、法定労働時間の範囲内であるため割増率は適用されません。
 

■計算例■

月給:25万円

所定労働時間:154時間(1日7時間、月22日として計算)

法定労働時間:176時間(1日8時間、月22日として計算)

時給換算:1250円

仮に月250時間働いたとすると、法内残業は22時間、法定時間外労働時間は74時間

法内残業賃金:1250円×22時間×1=27,500円

時間外労働割増賃金:1250円×74時間×1.25=115,625円

合計:143,125円

この金額をその月の残業代として請求することができます。

 

会社が最も恐れる労働者の行動4パターン

労務管理について法令遵守意識の低い経営者の場合、従業員にしてほしくない対応というものがあります。会社にいくら是正を求めても対応や改善が見られない場合には、検討してみましょう。

 

 

1:労基署に駆け込む

経営者は労働者の言うことは聞きませんが、当局の言うことはよく聞きます。つまり、経営者が心配するのは労働者が労基署へ駆け込む事態です。労基署は、経営者が労働法規を遵守していない場合には、是正勧告、指導等の行政処分を行います。

 

このような行政処分は、それ自体、経営者に指摘事項の是正を促す効力がありますが、それだけでなく、指摘された違反行為を繰り返す場合(例えば、残業代の精算をするよう指導されたのにこれを無視し続けて、処分が繰り返される場合など)には、経営者が労働基準法違反で逮捕・送検されるケースもあります。


経営者でもあまり知らないようですが、労働基準法には違反行為への罰則として懲役刑や罰金刑などの刑事罰が規定されているものもあり、残業代の不払いの場合、法定刑として6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が定められています(労基法119条)。

 

 

2:労働組合に駆け込む

労働組合には、会社従業員のみで組織される企業組合と、広く労働者一般により組織される一般労働組合があります。前者は会社従業員でしか加入できませんが、後者は誰でも加入できます。一般労働組合との交渉は、精神的にも経済的にも負担が重いため、経営者にとっては絶対に避けたい事態といえます。そのため、労働者が一般労働組合に加入することは、それだけで経営者にとっては脅威といえます。

 

 

3:裁判を起こす

裁判で残業代を請求する場合、判決によってこれが認容されれば年6%(退職後は年14.6%)の遅延損害金が認められます。また、労働者が請求し、裁判所がこれを認めた場合には、未払残業代だけでなく、これと同額の付加金の支払いまで認められることもあります(労基法114条)。この金銭は国に対して払うのではなく労働者個人に対して支払います。


もし、従業員から300万円の残業代請求を受けた場合、これが裁判所に認められ、付加金の支払いを命じられると、600万円を従業員に支払う必要が出てくるわけです。

 

また、裁判は、それ自体、会社にとって重い負担となるものですから、労働者と訴訟になることは会社としては避けたい事態といえます。
 


裁判は個人でも行えなことではありません。しかし、やはり裁判となると弁護士にお願いしたほうが良いでしょう。いきなり依頼するとなると抵抗もあるでしょうから、まずは気になる弁護士事務所を探してみて相談から始めてみましょう。以下のリンクに労働問題に強い弁護士を集めて掲載していますので探して相談してみましょう。
 

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4:マスコミへの告発

ある意味、経営者の方々にとって最大の脅威と言えます。マスコミが取り上げるかどうか、取り上げた場合のインパクトの程度は会社の規模や状況にもよって異なりますが、もしもマスコミに取り上げられて社会的に吊るしあげられた場合には、会社の被る損害額は莫大なものとなります。

 

 

役職につくと残業代がなくなる謎

 

労基法では、「監督若しくは管理の地位にある者、または機密の事務を取り扱う者は労働時間、休憩、休日についての規定を適用しない」と定めています(41条)。

 

つまり、「管理監督者」には法定労働時間という概念がないため残業は存在しないことになります。ここで問題になるのが「管理監督者とはどういう立場か」ということです。例えば、飲食業界全社員の約7割が任命されているという「店長」、これは該当するのでしょうか。一般の会社の「主任」や「係長」はどうでしょうか。

 

労基法の通達を要約すると、管理監督者とは「部長や工場長など労働条件の決定やその他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とのことであり、極めて限定的な地位を指します。

 

この「経営者と一体的な立場」かどうかは、人事権等権限の有無、業務への裁量制、経営への参画の程度、労働条件その他待遇という諸々の要素を実質的に検討することで判断します。そのため、会社がつけた役職名は実は関係ありません。

 

通常で考えれば、課長や係長が、経営者と一緒になって労働者の賃金を管理したりするでしょうか?事業の方針を説明することはあっても労働条件を決める立場にはありません。このように、管理職とされていても、実態から見れば「管理監督者」には該当しないというケースは往々にしてあります。

 

よって、もし管理職に付いた方が、「自分たちは管理監督者ではなく残業代が未払いなのはおかしい」と声をあげた場合、会社は実態に照らして検討する必要はあると思います。

 

 

残業代請求訴訟で勝訴した後も残業代が支払われない場合

訴訟によって残業代の支払いを命ずる判決が出たにも拘らず、会社が任意にこれを支払わない場合には、「強制執行」を行うという方法があります。強制執行とは会社の不動産や債権などを差し押さえて、裁判によって確定した残業代請求権を強制的に実現させる方法です。

 

詳しくは「差押・仮差押を実行する」をご覧ください。

 

 

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか?

未払の残業代についての請求方法などをお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか。

 

話合いで解決できれば御の字ですが、もし何かと理由をつけた反論(言い訳)をしてきた場合には、すぐに弁護士に相談してみましょう。未払い残業代の請求には請求期限もありますので、早めの対応をしておけば安心です。
 

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編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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