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ホーム > 労働問題コラム > 職業別の残業代 > エステサロンの残業代事情|正しい計算と未払い残業代の請求手順

エステサロンの残業代事情|正しい計算と未払い残業代の請求手順

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
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今、日本の社会全体で未払い残業代が社会問題となっており、エステ業界もその例外ではありません。長らくエステティシャンの残業は慣習として受け入れられてきましたが、近年日本でも労働者の権利意識が高まっていることを受け、エステ業界もついに動き出しました。

 

2017年1月には、エステサロン「ジェイエステティック」の東京都内2店舗が、残業代不払いなどを理由として労働基準監督署から是正勧告を受けたことが明らかに。さらに、2018年4月にもエステサロンを全国展開する「PMKグループ」が、元従業員4名に対する未払い残業代計約420万円の支払いを東京地裁から命じられました

 

エステサロンで働いていた女性従業員4人が、会社相手に2014年〜2016年までの未払い残業代として計約520万円を求めていた訴訟で4月18日、東京地裁(堀田秀一裁判長)は会社に計約420万円の支払いを命じた。女性たちの代理人は「典型的な求人詐欺の事例で、固定残業代が無効と判断された」と評価している。

引用元:弁護士ドットコムニュース

 

このように、労働者一人ひとりが勇気を出して一歩踏み出すことで、業界全体の労働環境が改善するきっかけになることがあります

 

そこで今回は、今現在残業代が支払われず苦しんでいる方向けに、エステ業界における残業の実態と、残業代請求の具体的な手順について解説していきます。

 

 

 

失敗しない残業代請求|未払い残業代を獲得する全手順

いまの働き方が何かおかしいのではないか?」「もらっている残業代がなんか少ない気がする​」このような疑問をお持ちの方に対して、未払いとなっている残業代を請求し、企業に支払わせるための手順をお伝えいたします。

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エステサロン/美容業界の残業時間・残業代の実態

 

 

エステサロン/美容業界の平均残業時間

まず初めに、エステ・美容業界における残業の実態を見ていきましょう。就職・転職の口コミサイト「Vokers」が発表した「業界別残業時間(月間)ランキングTOP30」では、「理容、美容、エステティック」が15位平均残業時間は49.64時間でした。

 

TOP30のほぼ真ん中に位置しており、全業界の中でも比較的残業時間が多い方だということがわかります。

 

参照元:約6万8000件の社員クチコミから分析した‘残業時間’に関するレポート

 

エステサロン/美容業界の平均残業代

では、エステ・美容業界で働く方々は、長い残業時間に対してどれぐらいの残業代を受け取ることができているのでしょうか。

 

厚生労働省が2018年10月に発表した『毎月勤労統計調査-平成30年10月分結果速報』によると、エステ業界が含まれている「生活関連サービス等」の現金給与総額284,935円に占める所定外給与(残業代など)は17,034円所定外労働時間(残業時間)は10.9時間でした。

 

表:業種別の残業代平均額

産業

現金給与総額(円)

所定外給与(円)

所定外労働時間

鉱業,採石業等

324,411

26,648

14.9

建  設  業

361,258

29,589

16.4

製  造  業

346,196

39,356

18.5

電気 ・ ガス業

465,697

63,803

17.2

情 報 通 信 業

417,087

33,560

14.7

運輸業,郵便業

350,088

50,560

27

卸売業,小売業

354,082

18,672

11.5

金融業,保険業

409,787

23,836

11.9

不動産・物品賃貸業

366,140

22,133

14.1

学 術 研 究 等

445,608

29,434

15.4

飲食サービス業等

265,958

22,094

15.8

生活関連サービス等

284,935

17,034

10.9

教育,学習支援業

400,265

8,743

15.6

医 療,福 祉

317,069

18,877

6.9

複合サービス事業

348,667

19,944

10.4

その他のサービス業

286,723

25,834

15.2

平均

358,998

28,132

14.8

参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査-平成30年10月分結果速報

 

エステ以外の業界が含まれていることもあり、前述の「Vorkers」の平均残業時間49.64時間よりも残業時間がかなり低くなっています

 

 

所定外労働時間6.9時間の「医療・福祉」では所定外給与が18,877円、所定外労働時間10.4時間の「複合サービス事業」で所定外給与が19,944円であることと比較すると、エステ業界を含む「生活関連サービス等」の残業代は残業時間に対して低いと言えるでしょう。

 

 

 

 

エステサロンで未払い残業代が起こる原因

 

各業界で横行している、未払い残業代問題。しかし、その背景にある事情は業界によって異なります。エステ業界ならではの原因について、解説します。

 

固定残業代(みなし残業)制度の悪用

2017年11月にエステサロンの元従業員7名が元勤務先を相手に計約1600万円の残業代支払いを求めて訴えた事例では、「固定残業代の悪用」が注目されました。

 

原告の元従業員7名は、訴訟を起こす前に外部の労働組合に入って勤務条件について交渉しようとしましたが、勤務先の経営者は

 

 

経営者

固定残業代制度を採用しているので、固定額以上の残業代を支払うつもりは一切ない。

の一点張りでした。そのため、訴訟に発展したということです。

 

この固定残業代制度は、残業代を支払いたくない経営者によってしばしば悪用されています。「固定残業代制(みなし残業代制)」とは、実際の残業時間に関係なく、固定額の残業代を支払う制度。

 

しかし、固定残業代制度が適法に認められるためには、

 

  1. 労働契約、就業規則に明示して従業員にあらかじめ知らせる
  2. 基本給と固定残業代を明確に区別して記載する
  3. 残業時間と固定残業代を明確に記載する

 

この対応をする必要があります。

 

そして、実際に働いた時間がみなし残業時間を上回っていた場合には、追加で残業を支払わなければならないとされています。「固定残業代制」を採用しているからといって、何時間でも働かせてよいという訳ではないのです。

 

 

施述時間以外を労働時間にカウントしていない可能性

中には、施術時間のみを労働時間としてカウントしたり、「従業員が自分の意志で勝手に残業した」などと主張したりする悪質なエステサロンもあるようです。

 

 

閉店後の研修や作業も労働時間に含まれる

このような会社の主張はもちろん法的には認められず、施術に付随する作業や研修も労働時間に含まれます。そもそも労働時間とは、「従業員が使用者の指揮命令下に置かれている状況」にある時間を意味しています。つまり、職場や上司によって拘束されており自分の意志で自由に行動できない時間は、働いていることになります

 

閉店後の研修や作業についても上司監督のもと行われている以上、いくら会社が「施術こそエステティシャンの本業なのだから、施術時間のみ労働していることにする」と主張しても認められません。

 

人手不足による残業も本人の自主的行為とみなされる

会社が「従業員本人が自発的に残業した」と主張している場合は、どうなるのでしょうか?

 

労働基準法の行政解釈によると、基本的には「自主的な時間外労働は労働時間としない」としていますが、「黙示の命令があると判断されるような場合については残業として扱う」ことにしています(昭23.7.13基発1018、1019号)。

 

残業をしたのが一見本人の自主的な行為に見えたとしても、与えられた仕事を期限内に完了するために“そうせざるを得ない”場合は「黙示的な残業指示があった」と評価される可能性は十分にあります。

そもそも人手不足で残業せざるを得ない状況を生み出しているのは使用者の責任ですから、これもおかしな主張ですよね。

 

業務委託契約を理由とした未払い

残業代を支払いたくないがために、雇用契約ではなく業務委託契約を締結している悪質なケースも報告されています

 

 

業務委託契約とは、会社と個人事業主(フリーランス)などとの間に締結される“独立した事業者同士”の契約のこと。基本的に立場が対等であると考えられるため、どちらか一方が手厚く保護されることはありません。

 

一方、雇用契約では、会社と労働者は“主従関係”にあります。そのため、立場が弱い労働者は労働法で守られているのです。

 

業務委託契約を隠れみのにして労働法の適用から逃げるなどという卑怯な行為は、認められません。どんな契約を形式的に結ぼうが、実質的に「使用従属性」が認められれば労働者として労働法で守られることになります。

 

 

エステサロンの労働者が未払い残業代を請求する手順と方法

最後に、実際に未払い残業代を請求する具体的なプロセスについてわかりやすく解説します。

 

労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合には、原則として「1.25倍の割増賃金」で残業代が発生します。さらに、残業が月60時間を超えると、割増賃金が「1.5倍」になります(中小企業は2023年から)。

 

そして重要なポイントですが、未払い残業代の時効は「残業代発生時から2年」です。

 

 

この基礎知識を念頭に置きつつ、順に見ていきましょう。

 

残業があったという事実・証拠を集める

まず大切なのは、残業をしていた証拠を集めることです証拠がない状態で未払い残業代を請求しても、会社が認めたがらないケースは非常に多いからです。残業があった事実を証明する責任(立証責任と言います)は従業員側にありますから、日頃から可能な限り以下のような証拠を集めておきましょう。

 

  • 労働契約書、雇用通知書
  • 実際の支給額を証明する給与明細、源泉徴収票
  • 残業していた事実を証明するメッセージの履歴など
  • タクシーの領収書
  • 残業内容を証明するもの

 

上から3つ目「残業していた事実を証明するメッセージの履歴など」は、職場のパソコンから自分のプライベート用メールアドレスに「本日の残業終了」などとメールを送る方法もあります。

 

 

また、家族宛てに送った「今日も残業でした。今から帰ります」などのメッセージでも証拠になることがあります。

 

 

内容証明郵便で請求

証拠を集めることができたら、次に未払い残業代の支払いを求める内容証明郵便を勤務先に送ります。内容証明郵便とは、「送った人・日時」「受け取った人・日時」「内容」を郵便局が証明してくれる特別な郵便物のことです。

 

内容証明郵便の内容に従わなかったからと言ってペナルティはありませんが、後々裁判手続きなどに移行した際には、有力な証拠として役立つことがあります。そのため、未払い残業代以外にも、法律的な手続きで幅広く活用されています。

 

内容証明郵便は誰でも送ることができますが、「弁護士の名前入りの方が、威圧感がある」という理由で弁護士に作成・送付を依頼する人も多いようです。

 

労働基準監督署に申告・相談

勤務先が明らかに労働基準法に違反している場合には、労働基準監督署に通報して是正勧告をしてもらうというのも一つの方法です。この場合、相談料は無料です。

 

しかし、労働基準監督署は基本的にとても多忙です。あまりにも通報が多いのですべての案件に対処しきれず、なかなか動いてくれないかもしれません。ですから、労働基準監督署への通報と並行して弁護士に相談することをオススメします。

 

残業代請求を弁護士に依頼するメリット

弁護士に残業代請求を依頼することで、それまで未払いだった残業代を取り返せる可能性は非常に高くなります。ご自身で会社を相手に残業代を請求するのは簡単ではありません。残業代請求は「会社を辞める時に・・・」「就職先が決まってから・・・」とお考えの方もいるでしょう。

しかし、あなたが残業代請求をためらっている間にも過去の残業代は2年間という時効がありますから、時効がどんどん迫り獲得できる額が減っていくことになります。まずは労働基準監督署へ行こうという方も多いかと思いますが、労働者が注目すべきは、『労働基準監督署はあくまで企業に対してその体勢を改めなさいという『指導/是正』を行う機関』であるということです。



つまり、個人の未払い残業代を取り返してくれたり不遇を受けている労働者ひとりのために具体的な行動をとってくれない可能性が高いということです。お困りなのは『今、未払いになっている自分の残業代や給与』のはず。

『残業代を出さない』『労基署に行ってもダメだった』『会社が応じない』などの対応をされてお困りの場合に、心強い味方となってくれるのが弁護士であり、労働者個人の悩みに親身に相談に乗ってくれて、会社から未払い残業代を取り戻すために交渉をしてくれるのが弁護士に依頼する最も大きなメリット

【労働問題弁護士ナビ】では、着手金無料、休日・夜間対応可能な弁護士も多数おりますので、まずはお悩みを相談し今後の対策を考えてみましょう。もし弁護士に相談するのは不安、怖いという思いがあれば、まずは『弁護士がどのようなことをしてくれるのか?』下記のコラムを参考にしてください。


 

 

弁護士に相談

自力で未払い残業代を請求するのが難しいと思ったら、早めに弁護士に相談することをオススメします。高額な費用がかかることを心配されるかもしれませんが、その分迅速な解決に繋がる可能性があります。

 

弁護士に残業代請求を依頼して解決した事例

内容証明郵便を発送してから3日で示談が成立し、730万円増額した事例

(労働者側・示談交渉)

相手方提示額200万円

示談額930万円 → 730万円増額

弁護士に相談して3ヶ月で解決。600万の残業代が支払われた事例

印刷業を営む中小企業で3年間勤務。毎月100時間を超える残業を強いられ、労働基準監督署に相談。当初50万円程度の請求になるといわれたが、弁護士に相談し、持参したタイムカードや会社の就業規則を細部まで検証。最終的には600万円の残業代獲得に至る

 

当初提示額:50万円

相談後:600万円→ 550万円増額

3

タイムカードがないため業務日誌を元に未払い分を計算。労働審判を経て100万円の未払い残業代が支払われた事例

リフォーム会社勤務の40代男性。現場仕事も多く月の残業時間は30~40時間ほど発生していたが残業代は未払い。労働基準監督署に相談へ行くも残業代の支払いには至らず弁護士に相談。証拠となるタイムカードもなかったため、手元にあった500ページ程の業務日報解析し残業代の計算を行い、最終的には労働審判に。会社側と和解が成立し、100万円の支払いが認められた

 

当初提示額:0円

相談後:100万円→ 100万円増額

4

管理監督者という理由で残業代の支払いがなかった飲食店勤務の店長。裁判の結果800万円の残業代が支払われた事例

会社がタイムカードの開示に応じず推定計算で提訴。タイムカードの開示を求める文書提出命令を申し立て、開示されたタイムカードをもとに請求した結果、裁判所は管理監督者と認めず、和解によって800万円を支払いが認められた

 

初提示額:0円

相談後:800万円→ 800万円増額

 

 

前述の通り、未払い残業代の時効は2年です。有力な証拠をたくさん集めるのが難しい場合でも、弁護士に依頼したら勤務先がすぐに未払い残業代を払ってくれたという事例もあります。

 

ポイントは、プロフィールに「労働問題に詳しい」「未払い残業代請求の実績多数」などの記載がある弁護士を選ぶこと。初回のみ無料で法律相談を受けている弁護士もいますから、まずは気軽に相談してみましょう。

 

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まとめ

今回は、エステ業界における残業の実態と未払い残業代の請求方法について解説してきました。

 

ブラックな会社が多い」という不満の声も少なからず聞こえてきますが、冒頭で紹介したような裁判が大々的に報道されることによって、業界内の意識も少しずつ変化し始めているようです。

 

少しでも「おかしいな」と思ったら、まずは勇気を持って弁護士に相談してみましょう

 

 

 

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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