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外資系の残業代に関するよくある誤解と請求に役立つ証拠・対処法

労働問題弁護士ナビ編集部
このコラムを監修
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外資系企業で働くAさん


「外資系企業に勤めているけど、一切残業代が支払われない…。これって違法じゃないのかな?」

外資系と日系企業では残業に対する意識の違いからか、残業代が支払われないのではと考えている方がいるかもしれませんが、それは間違いです。

 

外資系企業であっても日本で事業を行う以上は日本の法令が適用されますので、労働者が残業をすれば残業代を支払わなければなりません。

 

万が一あなたが外資系企業だからという理由だけで残業代が一切支払われていないのであれば、違法である可能性が高いでしょう。

 

この記事の前半では、外資系企業の残業代に関する誤解や支払いが必要・不要なケース、実際の請求事例について解説します。

 

また後半では、残業代の計算方法や請求のために集めておきたい証拠、未払いがあった場合の対処法などについて解説するので、参考にしてください。

 

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外資系企業の残業代に関するよくある誤解

外資系企業では残業代が出ないという誤解が生じる理由としては、以下のようなものが考えられます。

 

◆年俸制だから残業代が出ないという誤解

◆裁量労働であるという誤解

 

それぞれ確認していきましょう。

 

年俸制だから残業代が出ないという誤解

外資系企業だと給与形態が年俸制であるところも多いかと思います。年俸制の場合、残業代が出ないという話が当然のようにされることがありますが、実は誤りです。

 

年俸制とは単に給与を年単位で合意する制度に過ぎず、残業代の支払義務とは直接の関係はありません

 

そのため、年俸制を採用しているという理由だけで、企業が残業代の支払義務を免れることはなく、労働者が残業をした場合は残業時間に応じた残業代を毎月精算しなければならないのが基本です。

 

【関連記事】

年俸制で残業代が出ないのは一部だけ|見分け方と請求方法

 

裁量労働であるという誤解

外資系企業は、労働時間よりも労働成果を重視する傾向が強いと言われており、労働者の労働時間を厳格に管理していないこともあります。

 

場合によっては、「うちは裁量労働である」という説明の下、労働者の労働時間を厳格に管理しない代わりに、残業代を支払わないというケースも考えられそうです。

 

しかし、労働基準法は労働者の労働時間を厳格に管理することを基本としており、裁量労働というものを当然には認めていません。

 

企業が裁量労働を導入したいのであれば、法令の定める厳格な要件・手続を満たす必要があります

 

裁量労働制度が適法に導入・適用されているのであれば、企業側の主張にも一理あるといえます。

 

ですが、適法な導入・適用がない場合には、企業はたとえ労働時間をある程度従業員の自由にさせていたとしても、実際に行われた残業については残業代を支払わなくてはなりません

 

【関連記事】

裁量労働制でも残業代は請求可能|正しい計算方法と請求手順

 

外資系企業において残業代の支払いが必要となるケース

外資系企業であろうと、日本で事業を行っている以上は労働基準法を守らなければなりません。

 

そのため、残業時間に応じた残業代の支払いがなされるのは当然なこと。

 

ですが、制度を正しく理解せずに導入・運用しているためか、本来なら支払いが必要な残業代を未払いとしているケースもあるようです

 

では、残業代の未払いが生じるようなケースを具体的に見ていきましょう。

 

固定残業代制度(みなし残業)の導入・運用が適正にされていない

外資系企業の中には固定残業代制度を実施している企業も少なくないようです。

 

固定残業代制度とは毎月残業代として一定額を支払う給与制度のことをいい、労働基準法の定める制度ではありませんが、適正に運用される場合には法令違反とはならないと考えられています。

 

固定残業代制度が正しく運用されている場合には、毎月定額で支払われる限度で残業代の精算がされていると認められ、企業は実労働時間が定額分を超えない限りは、いちいち残業代の精算をしなくて済みます。

 

もっとも、このような固定残業代制度が適正と認められるためには、以下の要件を満たしていなくてはなりません。

 

  1. 通常賃金部分と割増賃金部分が明確に区別されていること
  2. 固定手当が残業の対価として支給されていること

上記2要件を満たしていない場合は、固定残業代の支給は残業代の支払いとは認められず、別途残業代全額を精算する必要があります。

 

また、固定残業代制度は、一定額を支払えばそれ以上の残業代の支払義務を免除する制度ではありません。

 

よく誤解されますが、「うちは固定残業代制度であるから、何時間働いても残業代は一定額である」という説明は誤りです。

 

実労働時間により算定される残業代が、定額分を超える場合には、超過分は当然精算されなければならないことも注意しましょう。

 

なお、外資系企業で高額の報酬を受領している場合には、報酬の中に残業代が含まれていると評価される可能性も否定できません。

 

例えば、モルガン・スタンレーに勤務する従業員が、同社を相手に時間外勤務手当の支払いを求めた裁判では、高額の報酬の中に残業代が含まれていると判断するのが妥当として、原告の請求が退けられました。

参考:平成16年(ワ)第23338号 超過勤務手当請求事件|裁判所ホームページ

 

【関連記事】

固定残業代(みなし残業)の仕組み|適正な残業代の計算方法

 

管理監督者の運用が適正にされていない

労働基準法では、管理監督的立場にある労働者については、時間外労働や休日労働などの割増賃金を支払う必要がないとしています。

 

(労働時間等に関する規定の適用除外)

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

引用:労働基準法

この法令を根拠として、日系・外資系問わず日本で事業を行う会社の多くは、管理職である労働者を残業代の支給対象外と整理しているケースは少なくないようです。

 

しかし、企業内で管理職であることと、法令上の管理監督者であることは別問題です。

 

労働基準法が定める管理監督者と認められるかどうかは、その職責・勤務実態・待遇から「経営者と一体的立場にある者」といえるかどうかで判断され、企業が一方的に与える役職によって決まるものではありません。

 

具体的には以下のような事項を総合考慮した上で判断がされることになります。

 

  • 企業の部門等を統括する立場にあること
  • 企業経営への関与が認められること
  • 自身の業務量や業務時間を裁量的にコントロールできること
  • 賃金面で十分に優遇されていること

したがって、仮にマネージャーと呼ばれる立場であっても、上記事項を総合考慮した結果、「経営者と一体的立場」といえない場合には、管理監督者には該当しないため、残業代の支払いが必要となります。

 

裁量労働制の導入・運用が適正にされていない

企業が裁量労働制を導入するには、労働者との間に労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります

 

仮に正式な手続きを行っていない場合には、裁量労働制を導入していると法的には認められません。

 

また、仮に裁量労働制を適法に導入したからといって、全ての従業員を裁量労働制の下で働かせられるわけではありません。

 

裁量労働制の適用対象となるのは、法律で認められる特定の職種の労働者のみです。

 

【裁量労働制が適用できる職種例】

  • 服飾、インテリア、広告デザイナー
  • 放送番組ディレクター、プロデューサー業務
  • コピーライター
  • システムコンサルタント
  • ゲームエンジニア
  • 企業の中核を担う部門で企画立案を行う労働者 など

上記で挙げたような職種に該当しない労働者については、そもそも裁量労働制を適用することができません。

 

【関連記事】

裁量労働制とは|今話題の自由な働き方に隠れた5つの問題点と対処法

 

外資系企業に対する未払い残業代請求事例

この項目では、外資系企業に対する未払い残業代の請求が認められた事例を紹介します。

 

本採用を拒否された原告が未払い残業代等の支払いを請求した事例

原告は外国法人である被告に、ヴァイスプレジデントとして採用されたが、その待遇が労基法上の管理監督者に当たるか、給与に割増賃金が含まれるとする合意が有効かどうかなど争われた事例。

 

原告は労働時間の管理を受けておらず、報酬も上場企業の部長クラスを上回るほど高額ではあったものの、管理監督者にふさわしい職務内容や権限は有していなかった。

 

また、年俸のうち割増賃金に当たる部分とそれ以外が明確に区別されていないことから、原告の年俸に割増賃金が含まれるとする合意はなかったとし、未払い割増賃金合計324万6922円と遅延損害金の支払いが認められた。

 

年俸制採用時の残業代計算方法

外資系企業で採用されるケースも多い年俸制での残業代計算方法を確認していきましょう。

 

残業代の計算式は以下の通り。

 

【残業代の計算式】

1時間あたりの基礎賃金×割増率(1.25)×残業時間

 

年俸制における1時間あたりの基礎賃金を算出するには、以下の計算式を利用します。

 

【1時間あたりの基礎賃金の計算式】

年俸額÷12ヶ月÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間

 

給与明細等で月の支給額(月給)がわかっている場合は、「年俸額÷12ヶ月」の処理は不要で記載された金額を「1ヶ月あたりの平均所定労働時間」で割りましょう。

 

1点注意して欲しいのが、月給に含まれるいくつかの手当は、残業代を計算する際には除外しなくてはならないということです。具体的には家族手当や通勤手当、住宅手当など。

 

詳しくは「割増賃金の基礎となる賃金とは?」もご確認ください。

 

【関連記事】

年俸制で残業代が出ないのは一部だけ|見分け方と請求方法

正確な残業代を計算する5つのステップ

 

外資系勤めの方が残業代請求をする際に集めておくべき証拠

残業代請求を行う場合、未払いを証明する証拠を集められるかどうかが鍵となります。

 

以下に挙げるような証拠をできるだけ集めておきましょう。

 

  • 雇用契約書
  • 就業規則のコピー
  • 給与明細
  • タイムカード
  • 始業・終業時間がわかる手書きのメモや写真
  • パソコンのログイン・ログアウト記録
  • 上司からのメールやLINE など

証拠の量は豊富であるに越したことはないですが、仮に少ない、全くない場合でも残業代請求をできる可能性がゼロとなるわけではありません。

 

会社側が労働時間に関する資料を保有している場合、通常は会社側から資料の提供を受けられますが、これが期待できない場合には

文書提出命令の申立て」などの方法によって、会社に強制的に証拠を開示させることも可能です。

 

残業代請求に関しては消滅時効の問題もあるので、早い段階で一度弁護士に相談した方がよいでしょう。

 

【関連記事】

残業代請求時に認められやすい証拠と、証拠がない時の対処方法

残業代請求の時効は2年間から当面は3年に延長?時効を中断させる方法まで

 

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外資系企業の残業代未払いで困ったときの対処法

会社の残業代未払いに気づいた場合、どうすればわからないという方も多いかと思います。

 

この項目では残業代の未払いで困った際の対処法をご紹介します。

 

労働基準監督署に相談する

残業代の未払いや不当解雇などの労働問題で困った場合、まず労基署への相談が選択肢に浮かぶ方も多いでしょう。

 

外資系企業に関する労働問題であっても、労基署へ相談に行って問題ありません。

 

むしろ外資系企業の労働問題については、労基署の目も厳しくなるという話もあるようです。

 

ただし、労基署はある程度の証拠が揃っていないと動かないケースも多いので注意が必要です。

 

弁護士に相談する

残業代請求についての具体的なサポートを望むなら、弁護士に相談することをおすすめします。

 

わざわざお金を払って弁護士に相談しなくても、労基署で十分でないかと思う方もいるかもしれません。

 

ですが、労基署の役割はあくまで法律に違反してる企業の監視、監督です。

 

労働者の救済が目的ではないため、期待した対応を取ってもらえるとは限りません。

 

むしろ企業に配慮し、未払いの一部を清算したことで解決とするケースも多々あります。

 

弁護士の場合は、依頼者の利益が最善となるよう対応してくれるため、自身が望む結果を得られる可能性は高くなるでしょう。

 

転職する

残業代が支払われない職場では無理に働き続けず、転職を考えるのも一つの選択肢です。

 

ですが、また残業代が支払われないような職場に転職することになったらと思うと不安ですよね。

 

転職活動の失敗を避けたいのであれば、転職エージェントの利用がおすすめです。

 

転職エージェントは紹介する企業の社内事情を詳しく把握しているため、事前に働きやすい環境か知ることができます。

 

また、転職エージェントでのキャリアカウンセリングを通じて、外資系企業で働くことが自身のキャリア形成において正しいかを確認してみてもよいかもしれません。

 

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もし退職勧奨されていたらパッケージも請求しよう

外資系企業の場合、労働者に対する退職勧奨が日常的に行われており、退職勧奨を受けたことがきっかけで、残業代請求をしようと考える方も多いと思います。

 

退職勧奨を受けた場合には、残業代の請求に加えて、退職パッケージの請求も検討したほうがよいかもしれません。

 

外資系企業であっても、日本の法律に従う必要があるため、解雇に対するハードルの高さは日系企業と同様です

 

そのため、従業員を解雇するだけの十分な理由がない場合には、退職勧奨すると共に、退職を促す趣旨で一定のパッケージを提示することも多いと言われています。

 

パッケージ額に決まった相場はなく、交渉次第で増額することもありえます。

 

法的に問題といえるような退職勧奨が行われている場合には、弁護士に交渉してもらうと有利に進められる可能性があるでしょう

 

【関連記事】

外資系企業の退職勧奨におけるパッケージの相場と金額を最大化するには

 

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まとめ

外資系企業では残業代が支払われない、支払われにくいとの誤解について簡単に解説しました。

 

また、もしもあなたが現在、残業代の未払いで困っているのであれば、労働基準監督署や弁護士に相談することをおすすめします。

 

解決が期待できそうなら、どちらでも構いませんので対応を依頼するとよいでしょう。

 

解決が難しそうである場合には、無理に働き続ける必要はなく、転職も視野に入れて行動することをおすすめします。

 

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この記事の監修者
労働問題弁護士ナビ編集部
職場の労働問題・法律分野に深く関わるチームが『職場の不満解決法』や『労働問題の具体的なアドバイス』を、弁護士協力のもと正しい情報提供を行います。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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