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「今期で区切りをつけてはどうか」「ほかの会社のほうが力を発揮できると思う」。人事の面談でそう持ちかけられても、その場で答えを出す必要はありません。退職勧奨は会社からのお願いにすぎず、断れば今の雇用はそのまま続きます。神奈川労働局には令和7年度に退職勧奨の相談が1,494件届き、かながわ労働センターでも「退職・退職勧奨」の相談が1,383件と、解雇・雇止めの相談を上回りました。横浜・川崎・相模原・湘南のどこで働いていても、面談の初日から何を残し、どこへ持ち込めばよいかを順に整理します。
いまの状況別・最初にすること
退職勧奨を受けた人がまず知っておきたいのは、勧めに応じるかどうかを自分で決められるという点です。かながわ労働センターの「労働問題対処ノウハウ集」も、退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由意思だと明記しています。会社が一方的に契約を終わらせる解雇とは、次のように扱いが分かれます。
| 比べる点 | 退職勧奨 | 解雇 |
|---|---|---|
| 契約が終わる条件 | 本人が同意して合意退職が成り立ったときだけ | 会社の意思表示だけで終わる |
| 断ったとき | 今の職場で働き続けられる | 断る場面がなく、効力を後から争う |
| 会社側の手続き | 法律で決まった手順はない | 30日前の予告か30日分以上の平均賃金(労働基準法20条) |
| 違法になる場面 | 社会通念上相当な範囲を超えて迫れば退職強要 | 合理的な理由と相当性を欠けば無効(労働契約法16条) |
| 失業給付 | 勧奨に応じた離職は特定受給資格者 | 特定受給資格者(重責解雇を除く) |
出典:かながわ労働センター「労働問題対処ノウハウ集29『辞めてくれないか』と言われた(退職勧奨・強要)」、厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど、ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」、e-Gov法令検索「労働契約法」(8条・16条)
「応じないなら自己都合で辞めてもらう」と条件をつけられた場合も、同意しない限り契約は続きます。神奈川労働局が公表した令和7年度の助言・指導の事例では、夏の2か月の勤務時間を変える、拒むなら自己都合退職になると言われた人が、退職の意思はないとして労働局に申し出ています。労働局は会社に、労働条件の変更は労使の合意で成り立ち、一方的な不利益変更は無効になり得ると労働契約法8条を示して話合いを促し、勤務時間が見直されて本人はそのまま働き続けています。言われた内容をメモにして、神奈川労働局の総合労働相談コーナー(045-211-7358)へ持ち込んでください。
出典:神奈川労働局「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」
退職勧奨の多くは、上司や人事部との面談を何度か重ねる形で進みます。あとで退職強要として争えるかどうかは、面談の中身を本人がどれだけ記録できたかで決まります。呼び出された日から、次の4つを習慣にしてください。
自分が参加している会話の録音に、相手の了解は要りません。「このままでは居場所がない」「辞めないなら遠方に異動になる」といった言葉は、勧め方が行き過ぎていたことを示す証拠になります。
退職届、退職合意書、面談記録の確認欄など、署名欄のある書面はその場で書かずに持ち帰ってください。「家族と話してから返事をします」と伝えれば面談は終えられます。
面談のあと、上司か人事あてに「本日のお話について、退職の意思はありません」と送ります。送信日時がそのまま断った記録になり、それでも面談が続けば、繰り返し迫られた事実の裏づけに変わります。
かながわ労働センターは、対象者が何人かいる場合はまとまって交渉した方が有利だと案内しています。同じ部署で何人も呼ばれているなら、面談の日付と提示された条件を互いに書き留めておきましょう。
出典:かながわ労働センター「労働問題対処ノウハウ集29『辞めてくれないか』と言われた(退職勧奨・強要)」
神奈川で退職を勧められて悩む人は少なくありません。国の窓口と県の窓口のどちらの統計でも、「辞めさせ方」のうち退職勧奨をめぐる相談が大きな割合を占めています。まず神奈川労働局への民事の相談内容を並べます。
| 神奈川労働局の民事相談(令和7年度) | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| いじめ・嫌がらせ | 2,778件 | 15.1% |
| 労働条件の引下げ | 1,923件 | 10.5% |
| 自己都合退職 | 1,886件 | 10.3% |
| 解雇 | 1,589件 | 8.6% |
| 退職勧奨 | 1,494件 | 8.1% |
| 雇止め | 1,004件 | 5.5% |
出典:神奈川労働局「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」、厚生労働省「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」
退職勧奨は前年度から5.1%減ったものの、構成比8.1%は全国の7.9%を上回ります。自己都合退職の相談1,886件と合わせると3,380件で、民事相談の延べ件数の18.4%です。勧められて辞めた人が退職届に「一身上の都合」と書けば、記録上は自己都合退職として残ります。
かながわ労働センターの集計では、「労働契約の終了」2,430件のうち「退職・退職勧奨」が1,383件、「解雇・雇止め・退職強要」が1,047件です。この5年間、退職・退職勧奨の相談は毎年、解雇・雇止め・退職強要の相談を上回っています。
| かながわ労働センター(年度) | 退職・退職勧奨 | 解雇・雇止め・退職強要 |
|---|---|---|
| 令和3年度 | 1,634件 | 1,524件 |
| 令和4年度 | 1,390件 | 1,304件 |
| 令和5年度 | 1,539件 | 1,201件 |
| 令和6年度 | 1,424件 | 1,223件 |
| 令和7年度 | 1,383件 | 1,047件 |
出典:神奈川県「令和7年度神奈川県労働相談の概況」(別紙)、神奈川県「令和7年度の労働相談件数は1万件超、『職場の人間関係』の相談件数が2年連続最上位に」
男女別では、女性からの退職・退職勧奨の相談が885件と前年度より4.6%増え、男性の498件(13.8%減)と逆の動きです。同じ年度に休職・復職の相談も598件と4割増えています。休職明けや産休・育休の前後に退職を持ちかけられた人も、県の窓口で扱ってもらえます。
神奈川労働局への申出でも退職勧奨は目立ちます。紛争調整委員会のあっせん申請271件のうち退職勧奨は28件で、解雇41件、雇止め32件に次ぐ3番目です。労働局長の助言・指導の申出は20件で、前年度より11.1%増えました。ただし、あっせんを終えた250件のうち43.2%は会社が出席せずに打ち切られていて、合意まで進んだのは28.0%です。会社が話合いを拒んでいるなら、あっせんを待たずに弁護士を立ててください。
出典:神奈川労働局「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」
会社が退職を勧めること自体は違法ではありません。違法になるのは勧め方が社会通念上相当な範囲を超えたときで、何回目の面談からという決まった線はありません。かながわ労働センターは、応じなければ解雇すると迫る、無理な配置転換をほのめかす、仕事を取り上げる、大勢で囲んで威圧するといった行為を退職強要の例に挙げています。
退職強要にあたり得る勧め方
行き過ぎた勧め方には、退職の効力とは別に慰謝料を請求できます(民法709条)。すでに辞めた後でも請求できます。妊娠・出産や育児休業をきっかけにした勧奨は、男女雇用機会均等法9条と育児介護休業法10条が禁じる不利益な取扱いにあたり得ます。かながわ労働センターの資料にも、妊娠を上司に伝えたら「周りに迷惑がかかる前に、辞めてもらう」と言われた相談が載っています。妊娠・出産・育休にからむ勧奨は、神奈川労働局 雇用環境・均等部 指導課(045-211-7380)へ相談してください。
出典:かながわ労働センター「労働問題対処ノウハウ集29『辞めてくれないか』と言われた(退職勧奨・強要)」、かながわ労働センター「労働問題対処ノウハウ集40-3 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを受けたら」、神奈川労働局「相談内容から窓口をさがす」、e-Gov法令検索「民法」(627条・709条)、e-Gov法令検索「男女雇用機会均等法」(9条)、e-Gov法令検索「育児・介護休業法」(10条)
面談で断った翌週から担当を外される、雑用だけを命じられる、席を移されるといった扱いが始まることがあります。本人に自分から辞めると言わせるための扱いで、退職強要の事情にもパワーハラスメントにもなり得ます(労働施策総合推進法30条の2)。我慢するほど記録は薄くなるので、次の3つを並行して進めてください。
扱いが変わった日を面談の日と並べる
担当表、座席表、シフト表、社内チャットから外された画面を保存します。変化した日付を面談の日付の隣に書けば、断ったことへの報復だと示せます。
働く意思を書面で出し続ける
「これまでの業務を続ける意思があります」と上司にメールで伝え、返信を保存してください。後から「本人に働く気がなかった」と言われても反論できます。
体調を崩したら受診して診断書をもらう
眠れない、出社前に動悸がするといった状態なら心療内科を受診してください。仕事が原因の精神疾患は労災の対象になり得て、請求先は勤務先を受け持つ労働基準監督署です。横浜市内は横浜南・鶴見・横浜西・横浜北の4署に分かれています。
かながわ労働センターは、退職強要が続くときは内容証明郵便などで強要をやめるよう通知でき、弁護士の名前で出すと効果的な場合があると案内しています。繰り返される退職強要には、裁判所に退職強要禁止の仮処分を求める方法もあります。パワーハラスメントとして国に相談するなら、神奈川労働局の総合労働相談コーナーが県内14か所にあり、横浜駅西口(045-317-7830)、川崎南(044-381-5279)、相模原(042-752-1427)、藤沢(0466-23-7223)などの労働基準監督署の中にも置かれています。
出典:かながわ労働センター「労働問題対処ノウハウ集29『辞めてくれないか』と言われた(退職勧奨・強要)」、神奈川労働局「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」、神奈川労働局「労働基準監督署の所在地・管轄一覧」、e-Gov法令検索「労働施策総合推進法」(30条の2)
勧めに応じて辞めた人は、雇用保険では特定受給資格者、いわゆる会社都合の離職として扱われます。ところが退職届に「一身上の都合」と書くと、自己都合として処理されることがあります。どちらになるかで、基本手当を受け取れる日数も時期も変わります。
| 35歳・勤続10年の場合 | 会社都合(勧奨に応じた離職) | 自己都合 |
|---|---|---|
| 所定給付日数 | 240日 | 120日 |
| 給付制限 | なし(7日間の待期のみ) | 待期の後に原則1か月 |
| 必要な加入期間 | 離職前1年間に6か月以上 | 離職前2年間に12か月以上 |
| 国民健康保険料(税) | 届け出れば軽減の対象 | 一般の自己都合は対象外 |
加入10年以上20年未満の会社都合なら、30歳以上35歳未満は210日、45歳以上60歳未満は270日です。
出典:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」、ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」、ハローワークインターネットサービス「基本手当について」、厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
離職票の離職理由が自己都合になっていたら、離職者の記入欄に「退職勧奨による」と書き、面談の録音や断ったメールを持って住所を受け持つハローワークで異議を申し出てください。かながわ労働センターも、辞めることを選ぶなら「事業主の勧奨による退職」として手続きする条件を交渉に入れるよう勧めています。横浜市の中区・西区・神奈川区・南区・港南区・保土ケ谷区・旭区・磯子区に住む人の窓口は、雇用保険給付課があるハローワーク横浜(中区新港1-6-1 よこはま新港合同庁舎・045-663-8609)です。港北区や戸塚区などは港北・戸塚、鶴見区は川崎のハローワークが受け持ちます。ハローワークプラザよこはま(横浜STビル1階)の平日夜と土曜の窓口は就職相談の場で、失業給付の手続きは扱いません。
神奈川の有効求人倍率は令和8年7月に0.84倍で、求職者100人に対して求人は84人分です。同じ月に新たに仕事を探し始めた人は22,043人と前年同月より6.6%増えています。次の仕事が決まるまでの期間が延びやすい県なので、給付日数を確保できる会社都合の扱いは手放さないでください。
出典:かながわ労働センター「労働問題対処ノウハウ集29『辞めてくれないか』と言われた(退職勧奨・強要)」、神奈川ハローワーク「ハローワーク一覧」、神奈川労働局・ハローワーク「就職相談におけるオンライン活用」、神奈川労働局「神奈川労働市場月報(令和8年7月)」
会社が解雇を避けて退職勧奨を持ちかけるのは、解雇が無効と判断されるおそれを避けたいからだけではありません。キャリアアップ助成金の正社員化コースは、一定期間に解雇など会社都合で離職させていないこと、特定受給資格者となる離職者の割合が6%を超えていないことを支給の条件にしています。勧奨に応じた離職も特定受給資格者に数えられるため、会社には離職理由を自己都合にしたい動機が生まれます。渡された退職届の書式に「一身上の都合」と印字されていたら、その行を消してから話し合いに臨みましょう。
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」
辞めてほしいと言い出したのは会社の側なので、辞める人にも条件を出す余地があります。かながわ労働センターも、退職がやむを得ないと考えるなら、より有利な条件で合意退職できるよう交渉するよう案内しています。退職合意書に署名する前に、次の5点を決めてください。
| 交渉する項目 | 求められること |
|---|---|
| 離職理由 | 合意書に「会社からの退職勧奨による」と書かせ、離職票も同じ扱いにさせる |
| 解決金・退職金の上乗せ | 規程どおりの退職金とは別に、月給の何か月分かを上積みさせる。額に法律の基準はない |
| 退職日と有給休暇 | 残った年次有給休暇を消化してから退職日を置く(労働基準法39条) |
| 未払いの残業代 | 在職中の残業代を清算させる。賃金の時効は3年、退職金は5年 |
| 清算条項・口外禁止 | 「一切の債権債務がない」とする範囲を絞り、口外禁止の対象を決める |
出典:かながわ労働センター「労働問題対処ノウハウ集29『辞めてくれないか』と言われた(退職勧奨・強要)」、e-Gov法令検索「労働基準法」(20条・22条・39条)
未払いの残業代も一緒に清算させるなら、神奈川県弁護士会の横浜駅西口法律相談センターで水曜18時45分から開かれる無料の賃金相談(30分・045-620-8300)を使えます。解雇や退職勧奨そのものの相談は関内の「働く人の法律相談」で45分5,000円ですが、残業代の見込みだけなら費用をかけずに弁護士に聞けます。
上乗せ額の目安になるのが退職給付の統計です。大学・大学院卒の管理・事務・技術職で勤続20年以上・45歳以上の退職者を見ると、自己都合は1,441万円(月収の30.3か月分)、早期退職優遇制度による退職は2,266万円(39.9か月分)です。神奈川の相談で最も多い医療・福祉の職場では、この年代の退職者のうち会社都合は0.8%しかなく、45.3%が自己都合として辞めています。病院や介護施設で勧められた人ほど、離職理由と上乗せを文書で確定させてください。
出典:厚生労働省「令和5年 就労条件総合調査の概況」(退職給付)、神奈川県「令和7年度の労働相談件数は1万件超、『職場の人間関係』の相談件数が2年連続最上位に」
争った場合の相場からも額を考えられます。全国の労働審判で終わった雇用終了事案の解決金は中央値150万円です。神奈川の一般労働者の所定内給与は月36万8,600円なので、150万円は約4.1か月分にとどまります。給与水準が高い分、月収の何か月分を求めるかで交渉してください。
出典:労働政策研究・研修機構「労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析」、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査(都道府県別にみた賃金)」
出した退職届を取り戻すのは簡単ではありません。かながわ労働センターは、たとえ執拗に迫られた結果でも、脅迫などに至らない場合は合意退職になると説明しています。それでも、次の場面なら争う余地が残ります。
合意退職の申込みとして出した退職願は、会社が承諾するまでは撤回できます。送信日時の残るメールか内容証明郵便で、すぐに撤回を伝えてください。間に合うかどうかは、かながわ労働センター(045-662-6110)で電話でも聞けます。
事実と違う説明で書かされた、書かなければ懲戒解雇だと脅されたといった事情があれば、詐欺・強迫や重要な事実の錯誤を理由に取消しを主張できます。どれにあたるか微妙な場合は、撤回・取消し・無効の主張を併せて書いた通知を会社に送ります。
会社が撤回や取消しを認めないときは、労働者の地位にあることの確認を求めて労働審判を申し立てます。神奈川で労働審判を扱うのは横浜地方裁判所の本庁だけです。
出典:かながわ労働センター「労働問題対処ノウハウ集29『辞めてくれないか』と言われた(退職勧奨・強要)」、厚生労働省「確かめよう労働条件」退職、解雇、雇止めなど、裁判所「労働審判手続」
退職勧奨の段階で依頼すれば、断り続けるか条件を取って辞めるかを先に決めたうえで、会社とのやり取りを任せられます。神奈川県弁護士会には1,849人が所属し、関内・横浜駅西口・川崎・横須賀・相模原・小田原など県内12か所に法律相談センターがあります。
面談に呼ばれなくなる
受任通知が届けば、会社の連絡先は本人から弁護士に切り替わります。人事との面談に一人で臨む必要がなくなり、働きながら交渉を進められます。
退職強要をやめるよう通知してもらえる
弁護士名の内容証明で面談の中止を求めます。国のあっせんでは43.2%が会社の欠席で終わっていますが、弁護士からの通知を放っておけば次は横浜地方裁判所からの呼出しになると会社も分かります。
上乗せ額を数字で示してもらえる
勤続年数、月給、面談の経緯、残業代の未払いから請求額を組み立て、会社に提示します。神奈川の給与水準なら、全国の中央値をそのまま目標にしない交渉ができます。
合意書の不利な条項を直してもらえる
離職理由、支払期日、清算条項の範囲、口外禁止の対象を読み込み、署名の前に書き換えを求めます。
解雇に切り替わっても続けて任せられる
断った結果として解雇された場合も、同じ弁護士が解雇の無効を争う手続きにそのまま移れます。退職強要禁止の仮処分のように弁護士でなければ進めにくい手続きも任せられます。
出典:日本弁護士連合会「弁護士会別会員数」(2026年9月1日現在)、神奈川県弁護士会「相談場所から探す・アクセス」、神奈川労働局「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」、かながわ労働センター「労働問題対処ノウハウ集29『辞めてくれないか』と言われた(退職勧奨・強要)」
神奈川で退職勧奨を任せる事務所の条件
面談が始まったばかりの段階で相談すれば、断り方と記録の残し方をその場で決められます。弁護士に相談したことを会社に伝えるかどうかは本人が選べるので、相談だけして様子を見る進め方もとれます。ベンナビ労働問題では、初回相談無料の神奈川の事務所、休日に相談できる事務所、オンライン面談ができる事務所を条件で絞り込めます。
初回相談料、夜間や休日の対応、オンライン面談の可否は事務所ごとに違います。面談の録音とメモを手元に置いたまま、横浜・川崎・湘南・県央・県西の事務所を比べられます。
退職勧奨の解決の道筋は、条件をまとめて辞めるのか、退職の効力や勧め方の違法性そのものを争うのかで分かれます。神奈川では、行政の話合いが県と国の2つのルートに分かれ、労働審判の申立先は1か所に集まっています。
録音と面談のメモから、勤め続けるか条件を取って辞めるかを決めます。退職届を出していれば、撤回が間に合うかもこの段階で見極めます。
面談の中止を求めると同時に、離職理由、上乗せ額、退職日と有給休暇の消化をまとめて交渉します。
かながわ労働センターの職員が間に入るあっせん指導は、令和7年度に解雇・退職の7件のうち6件が解決しています。まとまらなければ県労働委員会のあっせんへ進みますが、申込先はどちらも労働センターです。国のあっせんは県内14か所の総合労働相談コーナーで申請します。
退職の効力を争う場合や慰謝料を求める場合に申し立てます。期日は原則3回以内で、全国の平均審理期間は96.7日、調停成立で終わる割合は65.6%です。
審判に異議が出れば訴訟に移ります。訴訟は横浜地裁の本庁のほか、川崎・相模原・横須賀・小田原の各支部でも扱います。
出典:神奈川県「令和7年度神奈川県労働相談の概況」(別紙)、神奈川県「個別労働関係紛争のあっせんとは」、裁判所「労働審判手続」、最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第11回)」
| 裁判所 | 扱う手続き・所在地 | 対象 |
|---|---|---|
| 横浜地方裁判所 本庁 | 労働審判(第7民事部)、労働関係の民事訴訟、民事保全(横浜市中区日本大通9) 第7民事部書記官室 045-664-8767 |
県内のすべての労働審判 |
| 横浜地方裁判所 川崎・相模原・横須賀・小田原の各支部 | 民事訴訟と民事保全は扱うが、労働審判は扱わない | 川崎市・相模原市・横須賀市・小田原市などに勤めていた人も、労働審判は本庁へ申し立てる |
出典:裁判所「労働審判手続」、横浜地方裁判所「管内の裁判所の所在地」、横浜地方裁判所「ダイヤルイン一覧表」
労働審判の期日は、横浜市中区日本大通9の横浜地方裁判所本庁で開かれます。みなとみらい線の日本大通り駅から徒歩1分で、申立ては第7民事部が受け付けます。小田原や相模原、横須賀の会社が相手でも申立先は同じで、期日はいずれも平日の日中です。県西から通うなら移動を含めて半日を空け、代理人に任せられる期日は任せてください。本社が東京にある会社でも、横浜・川崎・藤沢など神奈川の事業所で働いていれば、労働審判法2条により横浜地裁を申立先に選べます。
出典:横浜地方裁判所「横浜地方裁判所・横浜家庭裁判所の所在地」、e-Gov法令検索「労働審判法」(2条)
退職勧奨は、面談が始まってすぐ相談するほど打てる手が多く、費用の見通しも早く立ちます。神奈川県弁護士会の労働相談は原則有料ですが、かながわ労働センターの弁護士労働相談なら無料で約40分話せます。
| 費用の種類 | 目安 | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 法律相談料 | 45分5,000円。残業代・未払い賃金の相談なら無料枠がある | 神奈川県弁護士会の「働く人の法律相談」は関内で月・木13:15〜14:45、火9:15〜11:45。無料の「賃金相談」は横浜駅西口で水曜18:45〜20:45(30分)。日弁連アンケートでは相談料「1万円」56%・「5,000円」36% |
| 着手金 | 20万〜30万円、または見込み額の約8%。着手金無料の事務所もある | 日弁連アンケートの労働事件の設例で20万円が45%・30万円が31%。交渉だけで終わる見込みなら着手金を抑える事務所もある |
| 報酬金 | 30万〜50万円、または獲得額の16〜25% | 同じ設例で30万円が36%・50万円が31%。勧奨をやめさせた、在職を続けられたといった金額にならない成果の扱いを契約前に決める |
| 裁判所への手数料 | 労働審判は請求100万円で5,000円、300万円で10,000円 | 金額を算定できない請求は160万円とみなして6,500円。50万円なら2,500円、200万円なら7,500円 |
| 裁判所への予納郵便切手 | 労働審判は3,950円分 | 横浜地方裁判所は本庁・支部とも定額(500円5枚・110円5枚・100円5枚・50円6枚・10円10枚)。現金や電子で納める場合は4,000円で、切手で納めるなら予納金は要らない |
出典:日本弁護士連合会「市民のための弁護士報酬ガイド(2008年度アンケート結果版)」、裁判所「手数料額早見表(労働審判用)」、横浜地方裁判所「郵便切手及び予納金一覧」、神奈川県弁護士会「相談料金」
神奈川の平均的な所定内給与36万8,600円で働く人が、月給4か月分にあたる147万4,400円の上乗せで合意したとします。着手金20万円・報酬金30万円の事務所なら費用は50万円で、手元に約97万円が残ります。着手金無料・報酬金20%の事務所なら費用は約29万円で、手元は約118万円です。離職理由を会社都合にできれば、35歳・勤続10年で基本手当の日数が120日から240日に増えるので、上乗せ額と給付の差を合わせて比べてください。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査(都道府県別にみた賃金)」、ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
費用をすぐに用意できない場合は、法テラスの立替制度を使ってください。手取り月収と預貯金が次の基準に収まれば、同じ問題について3回まで無料で相談でき、弁護士費用を立て替えてもらえます。横浜市・川崎市・相模原市など県内の大半の市は生活保護の一級地で、次の額が上限です。
| 家族人数 | 手取り月収の基準(横浜市・川崎市など) | 現金・預貯金の基準 |
|---|---|---|
| 単身 | 200,200円以下 | 180万円以下 |
| 2人家族 | 276,100円以下 | 250万円以下 |
| 3人家族 | 299,200円以下 | 270万円以下 |
| 4人家族 | 328,900円以下 | 300万円以下 |
横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市・藤沢市・平塚市・小田原市・茅ヶ崎市・鎌倉市・逗子市・大和市・三浦市・秦野市・厚木市・座間市・葉山町は生活保護の一級地にあたるため、収入基準はこの枠で見ます。海老名市や伊勢原市など県内のほかの市町村に住む人の基準は単身182,000円・2人251,000円・3人272,000円・4人299,000円です。家賃や住宅ローンを負担している場合は単身41,000円・2人53,000円・3人66,000円・4人以上71,000円まで加算できます。窓口は法テラス神奈川(0570-078308)・川崎(0570-078309)・小田原(0570-078311)です。
出典:法テラス「民事法律扶助のしおり」(2026年3月現在)、厚生労働省「級地一覧」、法テラス「法テラス神奈川」
弁護士に頼むかどうか決める前に、状況を整理できる公的な相談先です。神奈川は県の窓口が日曜と火曜の夜も開いているので、平日の日中に抜けられない人はそこから始めてください。
| 窓口 | できること・受付 | 電話番号 |
|---|---|---|
| 神奈川労働局 雇用環境・均等部 指導課 | 妊娠・出産や育児休業をきっかけにした退職勧奨、マタハラ・セクハラの相談先。パワハラは総合労働相談コーナーが受ける | 045-211-7380 |
| ハローワーク横浜(横浜市中区新港1-6-1 よこはま新港合同庁舎) | 離職理由への異議と失業給付の手続き(雇用保険給付課)。神奈川区・西区・中区・南区・港南区・保土ケ谷区・旭区・磯子区を受け持つ | 045-663-8609 |
| かながわ労働センター 本所(横浜市中区寿町1-4 かながわ労働プラザ2階) | 労働問題全般の相談。平日9:00〜17:00(12〜13時を除く)に加えて、毎週火曜17:00〜19:30の夜間と毎週日曜9:00〜17:00(12〜13時を除く)も受ける。日曜は予約不要で、県内在勤・在住の人が対象。無料・匿名可 | 労働相談110番 045-662-6110 日曜 045-633-6110 |
| かながわ労働センター 川崎・県央・湘南の各支所 | 勤め先の所在地で担当が分かれる。川崎支所(高津区溝口)は川崎市、県央支所(厚木市)は相模原市・厚木市・大和市など、湘南支所(2026年1月に平塚市中里へ移転)は平塚市・藤沢市・小田原市など。川崎支所は原則第3木曜17:00〜19:30に予約制の夜間相談がある | 川崎 044-833-3141 県央 046-296-7311 湘南 0463-45-3150 |
| かながわ労働センターの弁護士労働相談 | 弁護士に無料で相談できる予約制の枠。1回おおむね40分で、センター職員が同席する。本所は第1・3・5火曜13:30〜16:30、各支所は月1回 | 本所 045-662-6110 |
| かながわ労働センターのあっせん | まずセンター職員が会社との話合いを仲介するあっせん指導を行い、解決しなければ神奈川県労働委員会のあっせんに進む。申請はどちらも労働センターで受け付け、労働委員会は直接受け付けない。無料 | 勤め先を担当する本所・支所 |
| 神奈川労働局 総合労働相談コーナー(県内14か所) | 神奈川労働局、12の労働基準監督署、横浜駅西口に設置。労働局長の助言・指導や、紛争調整委員会のあっせんへつなぐ | 045-211-7358(神奈川労働局) |
| 神奈川県弁護士会 法律相談センター(県内12か所) | 解雇などの労働者側の相談は関内の「働く人の法律相談」で45分5,000円(月・木13:15〜、火9:15〜)。残業代・未払い賃金に限った「賃金相談」は横浜駅西口で水曜18:45〜20:45に無料 | 関内 045-211-7700 横浜駅西口 045-620-8300 |
| 法テラス神奈川・川崎・小田原 | 収入・資産が基準以下の人向けの無料相談と費用立替。法テラス神奈川は横浜市中区山下町2、川崎は川崎駅前本町、小田原は小田原市本町。平日9:00〜17:00 | 神奈川 0570-078308 川崎 0570-078309 小田原 0570-078311 |
出典:神奈川県「職場の悩みを相談したい方へ」、神奈川県「個別労働関係紛争のあっせんとは」、神奈川労働局「総合労働相談コーナーのご案内」、神奈川県弁護士会「相談料金」、法テラス「法テラス神奈川」
日曜の本所は混み合い、電話がつながりにくい日があります。1回の相談は原則1時間以内なので、面談の日付、言われた言葉、渡された書面を先にメモにまとめてから電話してください。かながわ労働センターの弁護士労働相談は面談か電話で受けられ、利用は年度内に1人1回です。センターは会社との交渉の代理まではしないので、条件交渉を任せたくなったら別に弁護士へ依頼してください。
出典:神奈川県「日曜労働相談」、神奈川県「夜間労働相談」、神奈川県「弁護士労働相談」、神奈川労働局「相談内容から窓口をさがす」、神奈川ハローワーク「ハローワーク一覧」
違います。解雇は会社の一方的な意思表示で契約を終わらせますが、退職勧奨は同意を求める申入れで、同意しなければ契約は続きます。断る余地がないほど追い込まれた場合は、形は合意でも退職強要として争えます。面談の録音があれば、どちらだったかを後から示せます。
あります。かながわ労働センター本所(横浜市中区寿町)が毎週日曜の9時から12時と13時から17時に、電話と来所で相談を受けます(045-633-6110)。予約は要らず無料で、神奈川県内に勤めているか住んでいる人が対象です。年末年始の12月28日から1月5日は休みです。
かながわ労働センター本所が毎週火曜の17時から19時30分まで夜間相談を受けます(045-662-6110)。川崎支所も原則第3木曜の同じ時間に予約制で開いています。弁護士の有料相談なら、神奈川県弁護士会の川崎(月・水)と相模原(火・木)の法律相談センターに20時までの枠があります。
かかります。関内法律相談センターの「働く人の法律相談」が45分5,000円で、月・木曜の13時15分からと火曜の9時15分から受け付けます。無料の「賃金相談」は残業代・未払い賃金に限った枠です。退職勧奨そのものを無料で弁護士に聞くなら、かながわ労働センターの弁護士労働相談か法テラスを使ってください。
頼めます。相談者だけで解決するのが難しい場合、センター職員が会社に事情を聞いて話合いを仲介する「あっせん指導」を行います。令和7年度は解雇・退職の7件のうち6件が解決しています。まとまらなければ県労働委員会のあっせんに進みますが、申込みはどちらも勤め先を受け持つ労働センターで受け付け、労働委員会は直接受け付けません。
断ったことを理由にした解雇は、客観的に合理的な理由を欠くとして無効を主張できます(労働契約法16条)。神奈川労働局への相談でも解雇1,589件、退職勧奨1,494件と、どちらも多く寄せられています。断ると決めたら、解雇に進んだ場合の動き方まで弁護士と先に決めておいてください。
「分かりました」「仕方ないですね」のように、同意と受け取られかねない返事は避けてください。後から「本人も了承していた」と言われる材料になります。残りたいなら「退職するつもりはありません」の一言で足ります。迷っているなら「持ち帰って家族と相談します」と伝えて面談を終えてください。
会社の承諾前なら、すぐにメールか内容証明郵便で撤回を伝えてください。辞めることになった場合も、離職票の離職者記入欄に「退職勧奨による」と書き、面談の録音や断ったメールを添えてハローワークで異議を申し出ます。横浜市中区や西区などに住む人の窓口はハローワーク横浜(045-663-8609)です。
辞めさせるための隔離や仕事外しは、退職強要の事情であると同時にパワーハラスメントにもあたり得ます。座席表や担当表など扱いが変わった前後の資料を残し、「これまでの業務を続ける意思があります」とメールで伝えてください。国に相談するなら神奈川労働局の総合労働相談コーナー(045-211-7358)、県ならかながわ労働センター(045-662-6110)です。
妊娠・出産を理由にした不利益な取扱いは男女雇用機会均等法9条で、育児休業の取得を理由にしたものは育児介護休業法10条で禁じられています。神奈川労働局 雇用環境・均等部 指導課(045-211-7380)が相談を受けます。言われた日時と言葉を書き留め、退職届は書かないでください。
はい。神奈川県内で労働審判を扱うのは横浜地方裁判所の本庁(横浜市中区日本大通9)だけで、川崎・相模原・横須賀・小田原の各支部では扱いません。訴訟なら支部も使えます。出向く回数を減らしたいなら、代理人を立てて本人が出る期日を絞ってください。
横浜市・川崎市・相模原市・藤沢市など一級地に住む単身者なら、手取り月収20万200円以下が目安です。海老名市や伊勢原市などそれ以外の市町村なら18万2,000円以下で、預貯金は単身で180万円以下が基準です。窓口は法テラス神奈川(0570-078308)、川崎(0570-078309)、小田原(0570-078311)です。
離職理由が会社都合になっているか、上乗せ額と支払期日、退職日と有給休暇の扱い、清算条項の範囲の4点です。清算条項が「一切の債権債務がない」という書き方なら、未払いの残業代や慰謝料の請求まで手放すことになります。署名の前に弁護士へ見せ、残したい請求は条項から外してもらってください。
迫られて出した退職の意思表示なら、取消しを主張して争える場合があります。退職強要の慰謝料は、損害と加害者を知った時から原則3年で時効になります。うつ病など心身の不調に至った場合は、生命・身体を害する不法行為として5年に延びます(民法724条・724条の2)。離職理由を会社都合に直す手続きは受給期間の1年のうちに済ませてください。辞めた後は社内の資料が手に入りにくいので、手元のメールや録音を消さずに横浜や川崎の弁護士へ持ち込んでください。
参考資料・更新情報