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労働審判とは|申立ての流れや期間をわかりやすく解説

更新日:2023年01月24日
飯田橋法律事務所
中野雅也 弁護士
このコラムを監修
労働審判とは|申立ての流れや期間をわかりやすく解説

労働審判(ろうどうしんぱん)とは、労働者と事業主との間で起きた労働問題を労働審判官1名と労働審判員2名が審理し、迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする裁判所を通じた手続きです。

 

労働審判の主な特徴は、以下の3点です。

 

  1. 早期解決(迅速性):申立から終結まで平均75日(約2ヶ月半)
  2. 柔軟な解決:申立の約88%が金銭解決を中心とした和解的解決
  3. 簡易な手続:提出書面は原則として申立書(申立人側)・答弁書(使用者側)のみ、証人尋問などの正式な手続省略。

 

労働審判は訴訟よりも早い期間での解決が見込め、手数料も訴訟の半額以下、さらに労働審判委員会による客観的な判断を求められるメリットがあり、労使トラブルの解決手段としては最適です。

 

ただし、労働審判をただただ申し立てればよいかといえばそうともいいきれません。労働審判の申立書は法的な要件を押さえて正しく主張する必要がありますし、その主張を立証するような証拠をそろえる必要があるからです。

 

もし、労働審判について十分に理解しないまま臨んでしまうと、あなたに不利な結果に終わる可能性も否定できません

 

そこでこの記事では、労働審判を有利に進めるために知っておきたい次のような点を解説します。

 

  • 労働審判の特徴
  • 労働審判の流れ
  • 労働審判のメリット・デメリット
  • 労働審判を有利に進めるために弁護士に依頼すべき理由 など

この記事を参考に労働審判への理解を深め、有利に審理を進めましょう。

 

労働審判を有利に進めたいなら弁護士に依頼を

労働審判は裁判所も弁護士に依頼することを推奨しています。それは、期日が3回であることから、申立書および期日当日のやり取りで、法律の要件に則り正しく主張・立証する必要があるからです

労働審判を弁護士に依頼すると、あなたに次のようなメリットがあります。

 

  • 手続きの代行が依頼できる
  • 申立書を代理で作成してもらえ、あなたの不利益が正しく伝えられる
  • 期日も代理で出頭してもらえ、審理を有利に進められる

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労働審判の特徴|通常訴訟と比べた場合の違いとは

 

早期解決を可能にする

労働審判はトラブルの早期解決を可能にします。というのも、労働審判は原則3回以内で審理を終結しなければならないと法律で定められているからです(労働審判法第15条2項)。

 

実際、97%以上が3回以内、7割は2回以内で終結しています。

 

一方、通常訴訟は、何回法廷を開くか期日の回数に特段制限は設けられていません。裁判迅速化法により、一審手続は2年以内のできるだけ短い期間内に終えることが努力目標とされているにすぎません。

 

特に労働事件は事実関係も法律関係も通常訴訟と比べて激しく争われることが多いため、少なくとも概ね8~10回程度(1年)の期日が開かれることが多いです。

 

裁判官だけでなく「労働審判員」も審理に加わる

労働審判は裁判官だけでなく、「労働審判員」という労働組合の役員(労働者側代表)や企業経営者・人事担当者(使用者側代表)を含めた3名から成る「労働審判委員会」が審理を行います。

 

このように,裁判官以外の第三者が審理に加わるのは,労働現場の実情に詳しい人材が参加することにより,適切かつ妥当な解決を図る趣旨です。

 

直接口頭主義

通常訴訟の場合、準備書面という書面と紙の証拠を交互に提出する方式で審理が進んでいきます。これに対し、労働審判は原則として書面や証拠を出すのは第1回期日前までで、期日当日は口頭でやり取りがおこなわれます。

 

その上で、第1回期日においては、予め双方の主張と証拠を読み込んでいる労働審判委員会から直接双方当事者(労働者や会社の担当者)に質問が飛び、その場で答えなければなりません。

 

直接口頭でやりとりをすることにより、いわば尋問を先取りするからこそ、第1回期日で心証形成を行い、早期解決が可能となるのです。

 

権利判定機能

労働審判の大きな4つ目の特徴は権利判定機能が備わっている事です。 労働審判の流れとして3回目期日までにお互い譲歩して妥当な解決水準を模索します。

 

原則として交互に労働審判委員会に対して、「ここまでなら妥協できるが、この点は譲れない。」等の言い分を伝え、そのうち伝えていい部分を委員会から他方に伝え、それを検討した結果を委員会に伝えるという作業を繰り返します。

 

なかなか合意点が見いだせない場合は、途中で双方とも部屋から出され、労働審判委員会の見解や「調停案」が提示されることもあります。

 

そして、それでもいずれか一方が応じなければ「調停」は打ち切られ、最終的には「労働審判」が言い渡されます。

 

制度・手続と同じ名称のためわかりにくいのですが、これは通常訴訟の判決と同義で、双方の主張立証を踏まえて、労働審判委員会が妥当と考える解決内容を具体的に示されます。

 

「えっ,そんなの当たり前じゃないの?」と思われるかもしれませんが,たとえば労働局のあっせんは参加するか否かも自由なため、まったく強制力がありません。

 

これに対し、労働審判手続では、呼出しを無視すれば欠席判決ならぬ「欠席労働審判」が出るリスクがあるため、会社側が出廷しないことはほとんどありません

 

また、この「労働審判」は裁判所のれっきとした判断(公権的判断)ですから、確定すれば判決と同一の効力があり、差押え等の強制執行をすることも可能となります。

 

そうすると、労使双方にとって、0か100かという危険な賭けを行うよりも、進んで譲歩してある程度の水準で「調停」に応じようとの強い動機付けが生まれます。

 

この権利判定機能こそが,労働審判制度の成功(順調な利用件数推移,高い調停成立率)の要因といわれています。

 

異議が出れば通常訴訟に移行する

それでも調停が成立せずに「労働審判」が言い渡された場合,これに不服があれば異議を申立てることができ,通常訴訟に移行することになります。言い渡された労働審判の効力は失われるので注意してください。

 

「それなら最初から通常訴訟をやった方が早く終わるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが,労働審判を経由した場合,基本的に双方の主張立証は出尽くしているため、最初から通常訴訟を起こした場合よりも解決までのトータルの時間は短くて済むメリットがあります。

 

労働審判を申し立てられる内容

労働問題であれば、権利・利益の大小関わらず労働審判を申し立てることができます。実際の手続では特に賃金関係と解雇関係の事件が主を占めています。

 

なお、労働審判制度は労働者個人と会社との労務問題を審議する制度であるため、集団での申し立てはできませんし、民間の雇用とは異なる雇用システム下にある公務員による申し立てはできません。

 

また、パワハラやセクハラの加害者本人と直接争うこともできません。

 

対象は権利関係のみ

労働審判として申し立てられる対象は、次から紹介するような「賃金に関するトラブル」か「解雇に関するトラブル」などの、いわゆる労働者としての権利・利益に関わる争いです。

 

賃上げ交渉などの利益闘争には労働審判を利用することができません。利益闘争については労働組合などに相談するといでしょう。

 

賃金に関するトラブル

賃金に関するトラブルには次のものが挙げられます。

 

  1. 残業代未払い
  2. 給料未払い
  3. 退職金、賞与未払い
  4. 労働条件の不利益変更 など

 

労働契約書や就業規則等にかかれている内容と相違のある賃金が支払われていれば、会社に確認をとってみましょう。それでも、会社の対応が曖昧ならば、適正な賃金の支払を求める趣旨で労働審判を申し立てるのを強くおすすめします

 

雇用に関するトラブル

雇用に関するトラブルとしては次のものがあります。

 

  1. 不当解雇
  2. 雇い止め
  3. 退職強要、退職勧奨

 

もし、会社による雇用終了の処理に関して違法性を感じたら、明確に抗議をしましょう。もし、正当な理由なく退職を求められるようならば、労働審判を検討してみてください

 

労働組合と会社の争いは、労働審判でできない

労働組合と雇用者との争いは、労働審判で対応していません。

 

労働審判法に「個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争」とあり、労働組合は団体であって「個々の労働者」ではないとされているからです。

 

パワハラやセクハラなどの、対個人の労働審判はできない

パワハラやセクハラなどで、加害者個人と争うことはできません。もっとも、パワハラやセクハラは労働審判の対象ではありませんが、民法上の不法行為に該当する可能性があります。そうであれば相手方に損害賠償請求できる可能性があります。

 

損害賠償請求は、通常は交渉から始めます。もし交渉に応じてもらえなければ訴訟しなければなりません。あなた自身での対処は現実的ではありませんから、弁護士に相談することをおすすめします。

 

弁護士が交渉するだけで相手方が応じることもありますし、訴訟もあなたの代理人となって対処してもらえます。相談したからと言って必ず依頼しなければならないこともありません。まずは、下にある都道府県の一覧から相談する弁護士を探して、損害賠償請求が可能か確認してみましょう。

 

原則として、公務員の労働審判はできない

公務員は、国家公務員法や地方公務員法に基づいて登用されており、民間の労働者とは立場が異なります。そのため、公務員と国・地方自治体との紛争は民事に関する紛争に該当しないものとして、労働審判の対象にはなりません。

 

労働審判の申し立て手続き3つのステップ

労働審判を行おうと考えた場合、まず何から始めればよいでしょうか。こちらでは、労働審判を申し立てるまでの手続きをご説明いたします。

 

①証拠を集める

まずは、申し立てる事件に関する証拠を集めましょう。

 

賃金関係のトラブルの場合、

 

  • 元々の給与の決まりが書かれたもの(雇用契約書、就業規則等)
  • 実際働いた労働時間が分かるもの(タイムカード、勤怠表等)
  • 実際に支払われた金額が分かるもの(給与明細等)


は抑えておきましょう。

 

雇用に関するトラブルの場合、

 

  • 元々の雇用に関する決まりが書かれたもの(雇用契約書、就業規則等)
  • 勤務態度が記されたもの(人事評価表等)
  • 解雇の事実と理由を証明するもの(解雇通知書、解雇理由証明書等)


を抑えておきましょう。

 

さらに、証拠証明書があると裁判所に対しても親切で、印象が良くなります。証拠証明書の作成方法はこちらを参考にしてください。

参考:裁判所HP|証拠証明書の作成要領等

 

なお、この証拠収集はとても重要です。というのも、労働審判は証拠によって認められた事実に基づいて判断がおこなわれるからです。証拠をもって事実を立証できるかは、裁判所の判断傾向などの実務感覚が必要不可欠になります。

 

あなた自身での判断は非常に難しいことが一般的で、労働審判を申立てるなら証拠収集の段階から弁護士への依頼がベストです。

 

この章の最後に都道府県の一覧があります。お住いの都道府県をクリックすると対応可能な弁護士事務所が一覧で表示されますので、まずは相談先を選んでください。

 

②申立書の作成

労働審判の手続きは、申し立てをすることから始まります。そして、申し立ては書面でしなければなりません。まずは、申立書の作成から始めましょう。正式には「労働審判手続申立書」と言います。

 

こちらも「労働審判手続申立書の見本」裁判所HPを参考に作成してみてください。

 

なお、申立書の作成も労働審判においてはとても重要です。なぜなら、申立書には労働者側の主張を、その請求が妥当であると法律の要件に沿って記載する必要があるからです。

 

また、裁判官や労働審判員は申立書を読み、第一回の期日までに「心証」、つまりどのような結論を出すかの大まかな枠組みを決めるといわれています。申立書の内容が不十分であると、あなたに不利な心証を形成させてしまうかもしれません。

 

労働審判で有利な結果を得たいなら、申立書は弁護士に作成してもらうことを強くすすめます。この章の最後に都道府県の一覧があるのでクリックし、相談先の弁護士事務所を検索してください。

 

③申立書、証拠の提出

申立書は裁判所用1通(正本)、相手方用1通、労働審判員用2通の合計4通を送付することになります。証拠と証拠証明書は裁判所用と相手方用の2通用意します。

 

これらを裁判所に提出します。収入印紙や郵券が必要になります。収入印紙は請求金額によって、郵券は申し込みをする裁判所によって変動があります。

 

裁判所は原則として、申し立てをする会社の本店所在地になります。

 

しかし、本社が他県にあるなどの場合は、勤務地を管轄とする裁判所で審理を行うなど、労働審判では労働者側にかなり融通を利かせてくれます。

 

労働審判は3回の審判といった流れ

申し立てが受理されると、いよいよ労働審判が始まります。

 

どのような流れで進んでいくのか説明します。労働裁判は三回まで裁判所に赴くことができ、途中で和解し解決する場合もあります。労働審判だけで解決しなかった場合は、正式裁判手続に移行することになります。
 

労働審判の手続きの流れ

裁判所HPより

 

①第一回審判期日の決定と呼び出し

申し立てが受理されると裁判所から第一回期日の指定があります。会社側にも裁判所から通知が届き、第一回期日が知らされ、出頭するように呼び出しがあります。第一回期日はだいたい、申し立てをした1ヶ月後になります。

 

②第一回審判期日

指定された期日に、裁判所で第一回期日が行われます。提出した申立書、証拠と会社側の用意した答弁書と証拠を元に、裁判官と労働審判員を交えて事実確認や、当事者同士の話し合いが行われます。

 

第1回で話し合いがついた場合や判断が決まった場合には第一回で終了することがあります。話し合いでまとまった場合には調停調書が作成され、裁判所が職権で判断する場合は審判という決定が下されます

 

労務安全情報センターの平成22年~26年のデータによると、第一回期日までで終了する割合が30.7%となっています。

 

③第二回審判期日

第二回期日では、第一回期日で提出、証言した事実を元に話し合いがされます。

 

労働審判手続では、通常第二回までで審理が終了します。統計上は、第二回で終了する確率が39.0%であり、第一回期日も合わせると約70%は2回目までに終了しています。

 

④第三回審判期日

事実確認で双方の意見が食い違い、争っていたり、話し合いで解決しない場合は、第三回期日が行われます。

 

原則として労働審判は、この第3回期日までで終了します。3回目の期日で話合いがまとまれば調停により終了し、まとまらない場合には、裁判所による審判が下されます。

 

以上が、労働審判の流れになります。労働裁判は、話し合いで解決する「調停成立」裁判所に判決が下される「労働審判」どちらかの結果になります。労働審判の判決に異議がなければ、こちらで問題は解決ということになります。

 

労働審判によってもたらされる3つの結果

労働審判は、3つの結果に分かれます。

 

  1. 話し合いで解決する → 調停成立
  2. 裁判所の決定を下される → 労働審判
  3. 審判に異議を申し立てる → 訴訟手続移行

 

訴訟手続移行以外は労働審判手続での問題解決になり、約80%がこちらで解決します。どちらかが結果に不服が合った場合、異議を申し立て訴訟手続へと進んでいきます。

 

調停成立

調停とは、話し合いによる和解のことです。調停が成立すると、調停調書を作成します。

 

調停調書とは、話し合いにより当事者同士が合意した際に作成される合意文書です。裁判所が作成してくれ、調停調書に記載されている金銭的なやりとりの内容を守らなかった場合、強制執行手続きを取れるという効力があります。

 

労働審判の確定

労働審判は、告知を受けた2週間後に確定します。労働審判の確定は判決と同じ効力を発揮し、内容を覆すことができなくなります。

 

こちらも、金銭的なやりとりがある場合、それを守らなければ強制執行手続きを取ることができます

 

労働審判の異議申立てと訴訟手続

もしも、労働審判の結果に不服がある場合は、異議を申し立てします。労働審判の告知から確定までの2週間までの間に異議を申し立てなくてはなりません。

 

異議申立てが認められると、通常訴訟に移行します。その場合、労働審判の申立書は訴状とみなされますので引き継がれますが、その他の主張書面や証拠は引き継がれませんので、再度、提出し直す必要があります。

 

なお、通常訴訟にまで発展した場合、あなた自身での対処は全く現実的ではありません。法律に関する要件を押さえ、正しく主張・立証する必要があるからです。

 

また、訴訟にまで発展すると年単位の時間がかかることが通常です。訴訟となる前に有利な結果が得られるよう、できれば労働審判から弁護士に依頼するのを強くすすめます

 

労働審判を検討している人は、ぜひ、下記の都道府県一覧をクリックし、対応可能な事務所に相談してください。相談したからと言って必ず依頼する必要はありません。労働弁護士ナビは相談料無料土日対応の事務所も多数掲載していますので、お気軽に相談してみましょう。

 

平均的な労働審判にかかる期間は?

労働審判は、計3回裁判所に赴くことになりますが、先で少し触れたように、1回目で解決することが30。7%。2回目までに解決することが約70%になります。それでは具体的にどれくらいの期間を要するのでしょうか?

 

労務安全情報センターの平成22年~26年のデータによると全件1年以内には終了し、平均で74日となっています。民事訴訟の判決が出るまでの平均期間が約10ヶ月となっており、かなりのスピード解決が見込めます。

 

申し立てからの終了までの期間

 

労働審判を行うことのメリット・デメリット

では、労働審判を行うことのメリット・デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

 

労働問題に特化した労働審判には数々のメリットが有ります。それに対し、少なからずデメリットは存在します。

 

労働審判のメリット

迅速である

先程も申しましたが、労働問題の民事訴訟になると平均10ヶ月の期間を要し、労力を必要とします。しかし、労働審判なら平均で2ヶ月ちょっとで終了します。

 

労働問題に対して専門性がある

労働問題を得意とする裁判官が審判官となり、また、労働問題に詳しい審判員が審理を担当しますので、うまく証拠を集められなかったり、証言がしっかりできなかったりしても、事案を見て適切な解決方法を模索してくれます。

 

個人で申し立てて勝つことができる

労働審判の場合、通常の裁判に比べて審判体が主導して手続を進めてくれますので、弁護士をつけない場合であっても、ある程度のサポートを受けることが可能です。

 

そのため、客観的に会社の対応が違法又は不適切な事案であれば、弁護士をつけなくとも審判体が主導して妥当な判断を下す(または妥当な形での和解を成立させる)ということが期待できます。

 

強制的に話し合いに持ち込める

労働問題は、「契約書に書いてあるから」「会社のルールだから」と聞く耳持たずの一点張りの使用者がいます。その場合も、労働審判の申し立てを行えば、法的な手続である以上、期日前に主張を書面で提出し、期日にも出席することが期待できます。

 

すなわち、使用者を半強制的に話し合いの場に呼び出すことができます

 

使用者が審判に参加しなくても、審判が進められることもありますが、使用者が主張を提出しなかったり、理由なく欠席した場合は、労働者側の主張を前提とした審理がなされ、申立書の内容に沿った労働審判が出されることもありますので、使用者側へのダメージは大きいと言えます。

 

労働審判のデメリット

異議を申し立てられると、訴訟に発展する

労働審判の異議は、理由なく申し立てることができます。労働審判の判決内容は、そのまま訴訟に引き継がれますが、裁判は労働審判より重厚な手続きとなりますので、長期化しますし、更なる労力を奪われる事になります。

 

労働審判を行うかどうかの判断基準

労働審判のメリット・デメリットはわかりましたね。それでは、具体的にどのような人が労働審判を検討してみるのが良いのでしょうか

 

当てはまったのであれば、ぜひ労働審判を検討してみてはいかがでしょうか。

 

労働審判を行ったほうが良い人

会社が話を聞いてくれない

メリットの部分で説明しましたが、労働審判には一定の強制力があります。会社側が聞く耳持たずで、らちがあかない場合は、ぜひ労働審判を検討しましょう。

 

会社と戦うことに関して情熱と覚悟がある

労働審判は、弁護士を付けずに個人で戦えば費用を低額で抑えることが可能です(印紙代と交通費程度。)。

 

自分で証拠を集めたり、申立書を書いたり、多少面倒なことでもやりきれる覚悟があるのであれば、ぜひ個人で始められることをおすすめします。

 

解雇の理由が明らかに不当な場合、会社が支払うべき賃金を遅滞している場合

スピード解決が魅力の労働審判。解雇理由が明らかに不当であるとか賃金未払いなど、会社による違法が相当明確な場合には、労働審判手続で適切な形に修正してもらえる可能性が高く、早期解決が見込めます。

 

忙しく、時間があまり作れない人

審判に出向く回数は最大で3回のみ。忙しくて裁判所になかなか行けない人でも大きな負担にはなりません。

 

労働審判を行わないほうが良い人

証拠や交渉材料が少ない

訴訟よりもハードルが低い労働審判ですが、証拠や交渉材料が全くない場合には、十分な審理はできません。とりあえずで労働審判を起こしても、時間の無駄となり問題の解決にならないこともあります。

 

相手が弁護士を立ててきて、こちらは個人のみ

いくら個人で起こせると行っても、相手が弁護士を立ててきた場合、たとえ負けはしなくても獲得金額が大幅に下がったり、満足できるほどの結果が出ないことがあります。

 

この場合、行わないというより、途中からでも構いませんので、こちらも一度弁護士に相談するのも良いでしょう。

 

ここで挙げた内容はあくまでも一例になりますので、労働審判を行うべきかどうかも含めて弁護士への無料相談をしてみることをお勧めします。

 

弁護士への依頼は労働審判をさらにスムーズに確実に進める必殺技

個人でも申し立てることのできる労働審判。それでもなお確実に、迅速に解決させるには弁護士に依頼しましょう。弁護士に依頼することのメリットがいくつかあります。

 

優位な立場に立てる

労働審判の通知が来た使用者は、第一回審判まで時間が少なく準備もできないため、大抵の場合弁護士に依頼します。

 

労働審判は労働者有利の制度ではありますが、相手に弁護士を立てられてしまうとさすがに分が悪くなります。こちらも弁護士を立てることで、審判を優位に進めることがあります。

 

手続きを請け負ってくれる

申し立てから問題解決まで個人でできるのが労働審判ですが、やはり、申し立ての手続きは面倒な部分があります。

 

弁護士なら申し立てから一括して請け負ってくれます。

 

何よりも弁護士は訴訟の専門家ですので、あなたが裁判所に伝えたいことを効果的に主張してくれます。申立書の内容も弁護士の作成した要点が抑えられた申立書のほうが裁判官の印象がよいです。

 

裁判所も労働審判においては代理人弁護士を選任することを推奨しています。

 

 

請求金額に上乗せできる

弁護士は様々な法的知識を持っています。法的知識を元に追加の金額を請求することが可能です。

 

さらには、弁護士は交渉のスキルも持っていますので、調停のための話し合いで請求金額を下げられることも少ないでしょう。

 

労働審判の弁護士費用は?

弁護士費用は事務所や請求金額によって様々なため一概には言えませんが

 

・相談料1時間あたり:約1万円(初回は無料の事務所があります)

・手続実費相当額:約5万円

・労働審判着手金:約20~40万円

・成功報酬:約15~20%

 

あたりが相場になっています。

 

まとめ

労働審判を利用すれば、会社側とのトラブルを迅速に解決できる可能性が高まります。費用も訴訟ほどかかりませんから、経済的なメリットもあります。

 

ただし、裁判官や労働審判員に対して正しく主張・立証するには、申立書の記載内容や提出する証拠がとても重要です。法的な要件を押さえておく必要がありますから、労働トラブルに注力している弁護士に依頼しましょう。

 

弁護士に依頼すれば、申立書の作成、証拠の収集、労働審判への代理出席などを一任できます。労働審判を有利に進めるには弁護士への依頼が必須といえるでしょう。

 

労働審判を有利に進めたいなら弁護士に依頼を

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この記事の監修者
飯田橋法律事務所
中野雅也 弁護士 (東京弁護士会)
大江忠・田中豊法律事務所を経て飯田橋法律事務所を設立。中小企業法務(契約、労務、債権回収、顧問弁護士等)を中心とし一般民事、労働(解雇)及び家事(相続)事件等のリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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「 労働審判 」に関するQ&A
労働審判は通常の裁判とは何が違うのでしょうか?

労働審判とは、2006年4月に導入された、地方裁判所で職業裁判官(労働審判官)1人と使用者側有識者、労働者側有識者(労働審判員)各1名ずつの合計3人で構成された労働審判委員会の下で、使用者と労働者の間の紛争を適正かつ迅速に解決するための審判制度です。労働審判の目的は、給与の不払いや解雇などといった事業主と個々の労働者の間で発生した労働紛争を、迅速・適正かつ効果的に解決することです。

労働審判の流れを解説|労働審判を活用する際の手続きと解決フロー
労働審判で申し立てられる内容はどのようなものがあるのでしょうか?

労働問題であれば、権利・利益の大小関わらず労働審判を申し立てることができます。実際の手続では特に賃金関係と解雇関係の事件が主を占めています。
例えば、残業代・給与・退職金や賞与の未払いといった賃金に関する問題や、不当解雇・雇い止め・退職勧奨といった雇用に関する問題が多いです。

労働審判とは|申立ての流れや期間をわかりやすく解説
公務員でも労働審判を申し立てることはできるのでしょうか?

原則として、公務員の労働審判はできません。
公務員は、国家公務員法や地方公務員法に基づいて登用されており、民間の労働者とは立場が異なります。そのため、公務員と国・地方自治体との紛争は民事に関する紛争に該当しないものとして、労働審判の対象にはなりません。

労働審判とは|申立ての流れや期間をわかりやすく解説
労働審判で必要になる弁護士費用はどれくらいになるのでしょうか?

弁護士費用は弁護士事務所によって金額が違うため、決定的に「いくら」という決まりはありません。
一般的に20~40万円+成功報酬(請求金額の15%~20%前後)の合計60~100万円程あたりが相場になっていますが、報酬基準は事務所単位で設定されており、報酬額も事案に応じて変動します。
弁護士に相談、依頼時に労働審判の申し立てにかかる費用がどれくらいかかるかをしっかり確認しましょう。

労働審判の弁護士費用相場と費用を無駄なく抑える方法
労働審判がどれくらいの期間で行われるのでしょうか?

申立から終結まで平均75日(約2ヶ月半)ほどとなっております。原則3回以内で審理を終結しなければならないと法律で定められており、実際にも97%以上が3回以内、7割は2回以内で終結しています。
通常訴訟では一審手続は2年以内のできるだけ短い期間内に終えることが努力目標とされているにすぎず、回数も8~10回程度と多く、いかに労働審判に迅速性があることがわかります。
また、労働審判から通常訴訟に移行した場合でも、労働審判で,基本的に双方の主張立証は出尽くしているため、最初から通常訴訟を起こした場合よりも解決までの時間は短くて済みます。

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