残業時間が長いと「あれ?うちの会社ってブラック企業じゃ・・・」と気になることがあるかもしれません。業務上、毎日定時で帰れるものではないですが、一般的な残業時間の平均は何時間になっているのでしょうか。
自分の会社は、残業時間が長いのが当たり前の業界なのか、残業時間が長いのであれば、それを解消する方法はないのか気になる部分だと思います。また、残業時間は長いのに残業代が少ない方は、会社が違法に残業代を払っていない可能性もあります。
今回は、残業時間の平均や長い残業時間への対処法、残業代が少ない方への残業代を取り返す方法などをご説明していきます。
今の会社の残業時間に耐えられない場合…
「遅くまで残業に付き合わされるのはもう嫌だ。」
この記事にたどり着いた方の中には、上記の悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。
今の会社に給与や労働環境の改善を期待しても、積極的に対応してくれない場合が多く、結局無駄な時間を過ごしてしまうケースが良く見られます。
このような悩みの場合、次の就職先を見つけることが、一番早い解決策になります。まずは以下の『転職エージェント診断ツール』を利用して、あなたにピッタリな転職エージェントを利用しながら、今よりもホワイトな企業への転職活動を始めてみてはいかがでしょうか?
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平均残業時間に興味があるのは労働者だけでないようで、就職・転職支援情報を取り扱う各企業には月の平均残業時間を調査する結果が多く見られます。転職サイトでお馴染みのdodaが、2020年8月に15,000人に対して行った残業時間の調査によると、1ヵ月あたりの平均残業時間は20.6時間でした。

引用元:残業の少ない仕事・多い仕事は?|doda
リモートワークの普及など働き方に変化が起こり、以前に比べれば残業時間が減ったとはいえ、職種により残業をしている人はまだまだ多くいるようです。
それでは、各職種ごとの残業時間を見てみましょう。

引用元:残業の少ない仕事・多い仕事は?|doda
残業時間の少ない職種
残業時間の少ない回答で多かったものが、下記の職種です。
営業事務アシスタント
医療事務アシスタント
MR
事務・アシスタントの職種や医療系専門職の残業時間が、少ない傾向でした。
残業時間の多い業種
逆に残業時間の多い回答で多かったものは、下記の職種です。
教育・スクール
施工管理
人材サービスの営業
「エンジニア」系、「営業」系、「クリエイティブ」系の職種の残業時間が、多い傾向でした。
残業が増えることで収入が増えることはある意味メリットですが、プライベートとのバランスも大事です。働き過ぎて体を壊してしまったら元も子もありませんし、労働者に無理をさせないと経営が回らないような会社は健全とはいえないでしょう。
本来の法定労働時間
労働基準法では、労働者を働かせることができる時間は1日8時間、週40時間とされています(法定労働時間)。
残業をさせるには協定を結ぶ必要がある
法定労働時間を超えて労働をさせることは労働基準法違反であり「6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」というペナルティも定められています。
しかし、労働基準法36条は、使用者が労働組合(労働組合がない場合は労働者の過半数代表者)との間で書面による協定を締結し、届け出ることで、法定労働時間を超えて労働させることができると定めています。この書面による協定を実務上は36(サブロク)協定といいます。
したがって、36協定を締結・届出することなく法定労働時間を超えて労働させることは、いかなる場合であっても違法です。ただ、現実問題として、中小企業(特に零細の企業)にはこの36協定を締結・届出していない企業が多数あります。
36協定を結べばどれだけ残業させてもいいのか?
36協定は、無制限の残業を許すものではありません。時間外労働(残業)の上限時間は法律で以下のとおり決められています。この上限時間を超える場合は36協定があっても原則として労働基準法違反となります。

サブロク協定の上限は、1ヶ月単位で管理している会社が多く、残業時間が月に45時間超えないように上司から言われている方も多いのではないのでしょうか。
しかし、一部36協定の上限が免除されることも
例えば、残業時間が月に45時間超えないように上司から言われている方がいるでしょう。
しかし、一定の場合には上記の上限は免除されます。一例を挙げますので参考にしてみてください。
工作物の建設等の事業
土木、建築、解体などが該当します。建築関係の残業時間が長いのもそのためです。
自動車の運転業務
トラック、バス、タクシーなどの運転業務が該当します。運搬業に長時間残業が多いのもそのためです。ただし、自動車運転業務に従事する者については、別途、拘束時間規制があります。
新技術、商品開発等の研究開発業務
専門的な知識や技術で新技術・新商品を開発する場合は、労働者と使用者で自主的に協定を結んでいいとされています。クリエイティブ系の仕事に残業が多いのもこのためかもしれません。
季節的要因で事業活動の量の変化が激しい労働基準監督署に指定された業務
郵便配達や造船業のように、時期によって繁忙期のある業種はこちらに当てはまります。ただし、年間上限の360時間は適用されます。※ただし、労働基準監督署の指定を受けるのはごく一部に限られていて、繁忙期があるからといって、小売やサービス業程度では認められません。
特別条項付36協定を結んである
多くの会社では36協定に特別条項として、例外的に上限時間を超えて業務をさせることができる規定を定めています。このような特別条項を締結し、この範囲で運用する場合には、上限を延長することができます。
【関連記事】【弁護士監修】特別条項付き36協定とは
法律関係の内容が多くて堅苦しい話が続きましたので、ここで残業時間を少しでも減らすために意識していたほうが良いことをご説明します。
出社したらその日のタイムスケジュールを立てる
目標なしに仕事をしていたら、次から次へと仕事が増えていき全然終わらない、などという状況に陥りかねません。出社したら、なるべく残業をすることなく無理をしない範囲内の仕事で、その日のタイムスケジュールを立てましょう。
「具体的に何時までに◯◯は終わらして、◯◯は重要ではないので後に回す。」など、慣れてくると自分のペースが掴めるようになります。
次の日でもできるような仕事は次の日に回す
その日に終わらせる必要のない仕事については、無理に残業する必要もないように思います。その場合は支障のない程度に、きっぱり次の日に回しましょう。
自分の仕事が終わったら早く帰る
上司がまだ残っているからとりあえず会社に残ってしまう、という人もいるかと思います。上司から仕事を手伝ってくれとお願いされている場合は別ですが、ただ、相手に気を使って居残るのは無意味です。
自分の仕事が終わり、他に手伝うこともないのであれば、「お先に失礼します」と挨拶をしてさっさと帰りましょう。
上司や同僚が非常に多忙であり自分は手が空いている、というのであれば、率先して手伝うことは評価にも繋がりますし、感謝されて職場の関係も良好になります。
しかし、そのような状況ではないのであれば、「自分の仕事は終わっているのでお先に失礼します。」と帰ることに問題はないと思います。
仕事以外の楽しみを持つ
「仕事が終わると帰って寝るだけ」の悪いサイクルに入ると、仕事にも力が入らずダラダラ働きがちになってしまいます。仕事後の楽しみを持っていると早く帰りたい気持ちが働き、意外と仕事にも身が入ります。
家族との時間を作るでもいいですし、海外ドラマのDVDを見るでもいいと思います。仕事が終わったらやりたいことを作りましょう。
作業を分担する
自分の仕事量が多い場合は、同僚や部下と上手に分担することも検討してみましょう。自分の仕事を他人に丸投げするのは相手に失礼ですし、関係も悪くなるため控えるべきですが、分担すべき業務は公平に分担するのが適切です。もし一人で抱え切れない仕事があるならば、正直に上司や同僚に協力を求めてみてはいかがでしょうか。
労働時間に見合った残業代が支給されていない場合、会社が適法に残業代を支給していない可能性があります。
例えば、以下のようなことはないでしょうか?もしもこれらに当てはまるようでしたら、労働基準法違反の可能性があり、残業代の未払いが生じているかもしれません。
うちは定時が10時間労働だから残業は少ない
今となっては少ないでしょうが、雇用される際、このようなことが言われたり、契約書に書かれたりしていなかったでしょうか。法定労働時間は1日8時間までと決められています。それを超えるようであれば残業代を払わなくてはいけません。
会社との合意により法定労働時間を増やすことはできません。労働時間が8時間を超える場合は基本的に残業代が発生します。ただし、会社が変形労働時間制やフレックスタイム制を導入している場合は特別な計算が必要です。
45時間を超えたら残業できないから、超えたら自己責任だ
36協定で時間外労働を月45時間と決めること自体は間違っていませんし、45時間を超えないように会社も努めていると思います。しかし、業務によりやむを得ずこの上限を超えたことについて「超えても自己責任だ」と残業と認めない行為は労働基準法違反です。
会社が45時間を超える場合は労働させないというのであれば別ですが、現実に労働をさせておいて「自己責任」は理由になりません。
管理職は残業代が出ない
少し前に話題になりました「名ばかり管理職」の問題です。もともと残業時間の長い小売や外食産業に多く、店長やエリアマネージャーなどの肩書をもらい「管理職」扱いにするのです。しかし、会社での立場は一般企業の班長や係長などと変わらず管理職といえるのか、疑問なケースもあります。
これは労働基準法が「管理若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)には残業代を支給しなくてよいと定めていることを理由とするものです。
しかし、管理監督者とは「経営者と一体的立場にある者」を意味しており、
- 「経営に参画する権限の有無」
- 「業務時間・業務量へのコントロールの有無」
- 「部門内での人事権限の有無」
- 「その地位にふさわしい待遇の有無」
という観点から総合的に判断されます。
そのため、今まで管理職を理由に残業代が全く払われていないような場合でも、「経営者と一体的立場」といえないような場合は残業代は支給されなければならないということになります。
うちは残業代が固定で出されている
こちらは、「みなし残業・固定残業」というものです。本来、固定残業は一定の残業時間を見込んであらかじめ残業代を定額で支払う制度であり、それ自体は許容されています。
しかし、固定残業代を超える残業代が発生する場合は、その超過分は支給されなければなりません。
定額で払われているから残業代は払われていると誤解しがちですが、明らかに固定残業代ではカバーできないような長時間残業をしても残業代が支給されない場合、残業代が一部未払いとなっている可能性があります。
固定残業代については「固定残業代(みなし残業)の仕組み|適正な残業代の計算方法」の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
ここまで読んでみて「あれ?残業代返ってくるんじゃ・・・」と思われた方もおられるでしょう。しかし、なかなか残業代を取り返す行動を起こす踏ん切りが付かない人も多いのではないかと思います。
残業代の時効は3年間
「会社を辞めるときに一緒に請求しよう。」そう思っている方もいると思います。
しかし、2020年4月以降に支払われた残業代の時効は3年間(2020年3月までは2年間)と決まっています。後でやろうと思っているうちに、残業代の請求権が時効消滅してしまったということもあり得ます。
【関連記事】【2020年4月から】残業代請求の時効は3年に延長|時効を中断させる方法まで
言えば返してくれる世間の風潮
「とはいえ、残業代を請求しづらい・・・」と思っている方も多いと思います。
ここで、厚生労働省が公表した、平成30年4月から平成31年3月までの1年間に労働基準監督署が行った指導の結果をご覧ください。
・100万円以上の未払い残業代を払った企業数は1,768社
・残業代を受け取った労働者数は118,680名
・未払い残業代の合計金額124億4,883万円
未払い残業代への世間の目は、時代とともに厳しくなっているようです。
もし、少しでも「残業代が取り返せるかも」という気持ちが出てきたのであれば、未払い残業代を取り返す方法が「未払い残業代を自分で請求/獲得する為の証拠と手順を徹底解説」に細かく書かれていますので参考にしてみてください。
いかがでしょうか。ひと月の平均残業時間、20.6時間は決して短いものではありません。しかしながら、その残業に見合う残業代が適切に支給されているケースは多いとは言えないのではないでしょうか。
もしも、実際の残業時間に比して残業代が少ないと感じたら、会社が残業代を適切に支給していないのかもしれません。泣き寝入りをしてしまうとその分の残業代は返ってきませんが、行動を起こせば十分返ってくる可能性があります。