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残業代ゼロ法案の仕組みと今もある残業代ゼロになる問題

更新日:2021年06月02日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
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2015年4月3日。安倍政権は労働基準法の改定を閣議決定しました。長時間労働を防ぎ、働いた「時間」より「結果」で給料を支払うという制度を目指すものです。しかし、これはいくら働いても残業代の出ない「残業代ゼロ法案」として、一部から批判を受けています。

 

残業代ゼロ法案は、簡単に「量」ではなく「質」で給料を支払うという制度です。実際はまだ実施もされていませんし、最初は年収1000万以上の労働者のみ対応と、一般的な給料で労働している人たちには、まだ少し遠い制度でもあります。

 

しかし、現在の日本の労働状況を見ると、ブラック企業が相変わらず蔓延し、「名ばかり管理職」や「みなし残業」など、あらゆる手を使いサービス残業がなされています。残業代ゼロ法案も新しいサービス残業の口実として使われるのではないかと、問題が懸念されています。

 


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残業代ゼロ法案とは?

冒頭でもご説明しましたが、簡単に説明すると、給料を仕事の量ではなく質で支払うという制度です。

 

いつから?

現段階(2015年11月)では、改正案が閣議決定されただけですので、まだ実施がされることが決定するわけではありません。しかし、政府は2016年の春の実施を目指しているようです。

 

どのような制度なのか?

残業代ゼロ法案の対象は、開発・分析・研究などの企画業務型の年収1000万円以上の人になります。「労働時間=賃金」が一般の考え方だった今までが「成果=賃金」という新しい考え方です。

 

例えば、今まで固定給が月50万円と決まっていて、定時を超えたらそこから残業時間に応じて残業代が発生するようになっていました。しかし、残業代ゼロ法案によって、◯◯が完成したら+5万円、◯◯の提案をしたら、+3万円といったように成果報酬のように支払われることになります。

 

反対に、今まで残業代目的でダラダラ仕事をしていた人は、長く働いても賃金が変わらないため、サッサと仕事を終わらせて帰ろうと努力をします。

 

しかし、この考え方は、全く新しいものでもなく、今までも「固定残業代」や「管理職手当」、「歩合制」、「成果報酬」など様々な働き方が提案され、その度にブラック企業が法の隙間を付いて、サービス残業を助長させていました。

 

残業代ゼロ法案のメリット

もちろんメリットがあるから、政府も残業代ゼロ法案を提案しています。

 

残業代ゼロ法案が目指す理想郷

残業代ゼロ法案が目指す理想は「短い時間・労力で質の高い経済成長を目指そう」というものです。その背景には、今日の「サービス残業」や「過労死」などの「日本人は働き過ぎ」という風潮を改善する考えがあるのではないかと思います。

 

働いた時間が評価されるのではなく、会社への貢献度、残した結果が評価されるようになれば「長く働く≠経済の成長」が成り立ち、「成果の達成=経済の成長」が成り立つと政府も考えたのでしょう。

 

働いた人より結果に答えた人に多く支払われる

今までの概念だと、後の出世は別にして「長く働く=給料が高い」という構図になっていました。これは、結果的に少なからず「今月ピンチだから残業多くしよう~」と残業代目当てでダラダラと、非効率な働き方をする労働者を生み出すことがありました。

 

そのような人を横目に、多くの仕事を抱え真っ当に残業をしている人に不満が出てきます。残業代ゼロ法案は、そのような事態を防ぐことが出来るでしょう。

 

残業時間の削減

長く働いても、短く働いても賃金は同じならば、ほとんどの人が短く働くことを目指すでしょう。

 

結果的に「効率的に働き残業が無いように帰ってもらいつつも、会社は適正な賃金を払い、労働者は求められたパフォーマンスをして経済的に成長する」というものが残業代ゼロ法案の理想郷です。

 

残業代ゼロ法案のデメリット

もちろんデメリットもあります。この生ずるであろうデメリットがあるからこそ、「残業代ゼロ法案」と批判的に言われています。

 

残業代ゼロ法案で懸念される今後の不安

最初の実施は年収1000万円以上の労働者が対象とされています。しかし、後に企業の労働組合からの申請があれば、一般企業でも残業代ゼロ法を取り入れることが出来るとされています。

 

これにより、一般企業にも残業代ゼロ法が取り入られる事になります。労働者に年収1000万円を払っているようであれば、例え労働時間は長くても、支払われている賃金は相当なものになりますので、ブラック企業とは呼べないでしょう。

 

しかし、年収の限定なく残業代ゼロ法を使えるようになると、成果の割に賃金が見合っていないという事態が発生しかねません。今までは、1時間あたりの最低賃金で保障はされていましたが、極端に言えば残業代ゼロ法案にそのような概念が無くなるのです。

 

残業代の概念が無くなる

「時間=賃金」から「成果=賃金」になることで、残業代という概念が無くなります。そうなると「働いても働いても給料が変わらない」と不満を感じる人が出てきます。そのために法的にも保護するため、残業代がありました。

 

しかし、残業代ゼロ法の場合、法的にも守ってくれるものはなく「仕事が遅いあなたが悪いんだ」という風潮にもなりかねません。

 

評価基準が難しくなる

時間は誰にも平等です。「◯時間働けばいくら」と国単位で決まりを作ることも簡単です。それが、最低賃金や時間外労働に関する労働基準法です。しかし、成果を評価基準にしてしまうと、決まりを作ることが難しくなります。

 

「ある企業では、◯までやれば給料いくらなのに、うちは◯をやっても評価の対象ですら無い。」と、企業間でズレが生じることは、目に見えています。これを国の基準でしっかりと定めることができれば問題も大きくはならないでしょうが、時間と違い成果で基準を決めることは難しいでしょう。

 

残業代ゼロ法案以前に現在も問題が存在する

「成果を残した人物に真っ当な賃金を」という考えの残業代ゼロ法案。しかし、今ある制度で、その目的は達成することも可能です。ただ、残念ながらブラック企業などがその制度を悪用し問題になっています。

 

歩合制・成果報酬

残業代ゼロ法案は、「歩合制・成果報酬」の働き方に似ています。例えば、不動産の営業で「基本給20万円で物件を1件売るごとに+5万円」というような契約がされていたとします。

 

「4件売ったら給料倍だ!」と意気込んで入社しても、実際はなかなか売れず、給料が低いと不満に感じてしまう人もいます。この場合、まだ最低賃金が守られていれば良いのですが、営業後の義務手続きを夜遅くまでやっても、「残業代はないよ、その分売れば良いのだから」と成果報酬制を理由に、払うべく給料をあやふやにしているブラック企業もあります。

 

残業代ゼロ法案では、この場合、合法的に残業代を払わなくていいような、企業側にプラスになる制度にもなりかねません。

 

名ばかり管理職

一般社員にも「管理職」の肩書を与えて、「管理職には残業代を払わなくていい」とサービス残業をさせる方法です。労働基準法にある「管理監督者には割増賃金(残業代)を払わなくていい」という決まりを悪用した方法です。

 

5年程前、ファーストフード店や大手量販店の店長などが、このように、名ばかり管理職で多額の未払い残業代があったと指摘を受け、問題にもなりました。詳しくは「管理職になった途端残業代が出なくなる原因と今できること」をご覧ください。

 

みなし残業代

みなし残業代は固定残業代制とも言われ、本来、時期ごとに労働時間にバラつきがある企業や、外回りで実際の労働時間が判断しづらい営業職に対して、あらかじめ固定で残業代を支払うという制度でした。

 

しかし、ブラック企業は、この固定残業代制を悪用し、固定給の中にみなし残業代を含ませて、未払い残業代を逃れる口実を作っていました。詳しくは「固定残業代の仕組み|適正な残業代の計算方法」をご覧ください。

 

残業代ゼロ法ができても、それを有効に活用するか悪用するかは企業次第

このように、どのような制度ができようと、その制度を有効活用するか、悪用するかは企業次第なところがあります。乱暴な言い方をしてしまえば、残業代ゼロ法が決まっても決まらなくても、結局のところはそこまで変わらないということです。

 

反対に、労働者を保護してくれるような、素晴らしい制度が出来ても、それから免れるような手段を使ってくる企業が出てきます。結局のところはイタチごっこです。だからこそ、国や企業に頼らず、労働者一人一人が出来ることをやっていきましょう。

 

企業に欲しがられるような人材になること

「働いても給料が良くならない・・・」と思っている方は、給料を良くするために何か自分で行動しましたか?例えば、転職です。今の会社に不満があっても、他の会社でやっていける自信が無いから転職を躊躇するのだと思います。

 

スキルを磨いたり、資格を取ったり、研究をしてみたり、会社のためではありません。自分のためにです。自分に自信が付き「月に◯万円の給料がもらえないんだったら、他の企業に行こうかな」と少し目線を上げた考え方ができるようになれば、選択肢も増え、仕事は自分で見つけられるものだと気づきます。

 

悪質な企業に対抗するには労働者から動くこと

例えば、粗悪な労働環境で働いていても、労働者側から声を上げなければ「いつか良くなるだろう」と思っていても、良くなることはありません。そのために労働基準監督署や労働問題を得意とする弁護士がいます。

 

今いる環境を改善したいと考えているのであれば、一度労働基準法に詳しい専門家に相談してみてはいかがでしょうか。「労働問題の相談を受けてくれる窓口まとめと問題解決のヒント

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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