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最低賃金法(さいていちんぎんほう)とは、使用者が労働者に対して支払う給与の最低額を定めた法律のことで、各都道府県ごとにその額が定められており、労働者の安定した生活や労働力の向上がその目的です。
しかし、この最低賃金を下回る額での労働を強いられていたり、気づかぬままに正当な給与を支払われていなかったというケースも発生しています。
そこで今回は、最低賃金法の概要をしっかりと理解し、ご自身が最低賃金をきちんと受け取っているのか、もしも受け取っていない場合にはどのような対処をしていけば良いのかなどについて解説していきたいと思います。
まずはじめに、最低賃金法の概要をいくつかの項目に分けて解説していきます。
まずはじめに、最低賃金法はなぜ定められているのでしょうか?
冒頭でもお伝えしたとおり、最低賃金法の目的は「労働者の生活の安定と労働力の向上」です。
労働をすることの対価として、人間らしい生活が送れるよう賃金を支給し、その労働力をさらに上げていこうという目的で、この制度が創設されました。
もしも最低賃金が決まっていなければ、会社の裁量によっていくらでも給与を下げることができ、その対価に見合わない額しか支給されないという事態にもなりかねません。
それでは労働者の生活は安定が見込めませんし、その労働力も発揮されないですよね。
そんな状況になってしまうのを防ぐためにも、この最低賃金法が定められています。
最低賃金のその額は、各都道府県によって様々です。
では、その額はいったいどのようにして決められるのでしょうか?
最低賃金は、まず「中央最低賃金審議会」という公益代表、労働者代表、使用者代表で構成される会議によって審議され、そこで最低賃金が決定されます。
そこで決定された最低賃金が、今度は各都道府県にある「地方最低賃金審議委員会」に持ち込まれ、そこでその額の審議をおこないます。
地方最低賃金審議委員会での慎重な審議を経て、最終的には各都道府県の労務局長の判断によって、正式な最低賃金が制定されるという流れです。
最低賃金には、次に紹介する2種類が存在します。
それぞれについて見ていきましょう。
まず地域別最低賃金とは、どんな労働者にも平等に与えられた最低賃金のことです。
産業や職種は問わず、各都道府県の事業所で働く全ての労働者に対してこの権利が与えられています。
続いて、特定最低賃金という制度についてです。
特定最低賃金とはその名のとおり、「特定の産業に対して定められた最低賃金」のことを指します。
各都道府県の労務局長によって地域別最低賃金が決定されますが、その額よりも高い賃金を設定すべきだと判断された特定の産業に与えられる賃金設定で、最低賃金審議会の調査審議を経たあとに、決定されます。
この最低賃金法は、各都道府県によってその額に違いがあります。
ここでは主要都市における最低賃金の額、また、なぜ都市によってその額に違いがあるのかについて、考えていきたいと思います。
都道府県名 |
最低賃金時間額【円】 |
発効年月日 |
|
北海道 |
835 |
(810) |
平成30年10月1日 |
青 森 |
762 |
(738) |
平成30年10月4日 |
岩 手 |
762 |
(738) |
平成30年10月1日 |
宮 城 |
798 |
(772) |
平成30年10月1日 |
秋 田 |
762 |
(738) |
平成30年10月1日 |
山 形 |
763 |
(739) |
平成30年10月1日 |
福 島 |
772 |
(748) |
平成30年10月1日 |
茨 城 |
822 |
(796) |
平成30年10月1日 |
栃 木 |
826 |
(800) |
平成30年10月1日 |
群 馬 |
809 |
(783) |
平成30年10月6日 |
埼 玉 |
898 |
(871) |
平成30年10月1日 |
千 葉 |
895 |
(868) |
平成30年10月1日 |
東 京 |
985 |
(958) |
平成30年10月1日 |
神奈川 |
983 |
(956) |
平成30年10月1日 |
新 潟 |
803 |
(778) |
平成30年10月1日 |
富 山 |
821 |
(795) |
平成30年10月1日 |
石 川 |
806 |
(781) |
平成30年10月1日 |
福 井 |
803 |
(778) |
平成30年10月1日 |
山 梨 |
810 |
(784) |
平成30年10月3日 |
長 野 |
821 |
(795) |
平成30年10月1日 |
岐 阜 |
825 |
(800) |
平成30年10月1日 |
静 岡 |
858 |
(832) |
平成30年10月3日 |
愛 知 |
898 |
(871) |
平成30年10月1日 |
三 重 |
846 |
(820) |
平成30年10月1日 |
滋 賀 |
839 |
(813) |
平成30年10月1日 |
京 都 |
882 |
(856) |
平成30年10月1日 |
大 阪 |
936 |
(909) |
平成30年10月1日 |
兵 庫 |
871 |
(844) |
平成30年10月1日 |
奈 良 |
811 |
(786) |
平成30年10月4日 |
和歌山 |
803 |
(777) |
平成30年10月1日 |
鳥 取 |
762 |
(738) |
平成30年10月5日 |
島 根 |
764 |
(740) |
平成30年10月1日 |
岡 山 |
807 |
(781) |
平成30年10月3日 |
広 島 |
844 |
(818) |
平成30年10月1日 |
山 口 |
802 |
(777) |
平成30年10月1日 |
徳 島 |
766 |
(740) |
平成30年10月1日 |
香 川 |
792 |
(766) |
平成30年10月1日 |
愛 媛 |
764 |
(739) |
平成30年10月1日 |
高 知 |
762 |
(737) |
平成30年10月5日 |
福 岡 |
814 |
(789) |
平成30年10月1日 |
佐 賀 |
762 |
(737) |
平成30年10月4日 |
長 崎 |
762 |
(737) |
平成30年10月6日 |
熊 本 |
762 |
(737) |
平成30年10月1日 |
大 分 |
762 |
(737) |
平成30年10月1日 |
宮 崎 |
762 |
(737) |
平成30年10月5日 |
鹿児島 |
761 |
(737) |
平成30年10月1日 |
沖 縄 |
762 |
(737) |
平成30年10月3日 |
全国加重平均額 |
874 |
(848) |
- |
※括弧書きは、平成29年度地域別最低賃金
上に挙げたように、都市によってこれだけの差があります。
東京と沖縄ではなんと200円以上も違いがあります。
では、その理由としては一体どういったことが考えられるのでしょうか?
まず考えられるのは、首都圏、特に東京は基本的に物価が高いからということです。
たしかに東京で賃貸を借りる場合、その家賃は他の地域に比べてとても割高です。
同じ間取りであっても、場合によっては倍近く違うということもよくありますので、いかに東京の物価が高いのかがわかりますね。
しかし、はたしてそれだけで最低賃金が上がるのかというと、少し疑問が残ります。
なぜなら、全国に一般的に流通している食料品や衣料品、または漫画や雑誌などに関しては、都市によって違いがあるわけではなく、家賃以外で生活にかかるお金にそこまで違いがあるとは思えないからです。
なので、ただ単に物価が高いから最低賃金も上がるということは、少し考えにくいといえるでしょう。
東京の最低賃金が高い理由としては、集積の経済という点からも考えられます。
集積の経済とは下記のとおりです。
集積の経済(しゅうせきのけいざい)とは、異業種の企業が集中して立地することで得られる外部経済のことをいう。都市経済学において、都市の成立要因のひとつとして指摘されている。
引用:Wikipedia
もう少し簡単に説明すると、企業や人が多く集まり、そこに競争が生まれることによって、経済の流れがさらに活発化するということです。
すると結果的に、人やモノの輸送効率が上がったり、生産性も向上していきます。
集積の経済によって企業の経営が活発化し、その企業がより多くの利益を上げることに成功すれば、それが労働者に還元されるというのも自然な考え方ですよね。
特に現代は東京の一極集中化が進み、そこに経済活動が集まってきているので(集積の経済化)、それによって最低賃金も引き上げられていると考えられます。
最低賃金が各都道府県によって違うということはおわかりいただけたかと思いますが、もしも自分がその最低賃金を下回る額での給与しかもらっていない場合には、会社側に請求する必要があります。
ここではその流れについて、解説していきます。
それではここで、最低賃金がきちんと支払われている確認するために、実際の計算例をもって解説していきます。
もしも給与体制が時給制の場合であれば、そのままその金額をご自身の都道府県の最低賃金と照らし合わせ、確認してください。
ここでは月給制で固定給、住まいが東京のAさんを例に考えてみたいと思います。
まずはじめに、最低賃金に含まれる賃金について、図解を用いて説明していきます。
この図のように、【賃金+諸手当(皆勤手当や通勤手当、家族手当を除く)】の基本的な賃金が、最低賃金を計算する際の対象となります。
臨時に支払われる結婚手当や賞与、または時間外手当は含まれませんので、注意が必要です。
それではここで、固定給で月給制、東京住まいのAさんを例にして、計算例を考えていきます。
計算式は【Aさんの月給×12ヶ月÷総所定労働時間】となります。
この計算結果が東京都の最低賃金である958円を上回っていれば、正当な賃金を支給されているということになります。
まずはAさんの月給や総所定労働時間、その他労働条件などを確認していきます。
*Aさんの例 年間総所定労働日数:270日 月給:25万円 (内訳:基本給20万円、通勤手当1万円、家族手当2万円、皆勤手当2万円) 一日の労働時間:8時間 |
こちらで計算してみます。
ここに挙げた通勤手当、家族手当、皆勤手当の3つは最低賃金の対象とはならず、基本給の20万円がその対象となります。
総所定労働時間は、【270日×8時間=2160時間】となりますね。
対象となる賃金と、年間総所定労働時間が算出されたので、これを上に挙げた計算式に当てはめてみると、【20万円×12ヶ月÷2160時間】となります。
これを計算すると「1,111円」という答えが出るので、この場合のAさんは、東京都の最低賃金を上回る給与を受け取っているということがわかりました。
もしもこの計算をした結果、最低賃金を下回る給与を支給されていた場合は、その差額を会社側に請求する必要があります。
その際は、会社側に内容証明郵便を用いて請求書を送付しましょう。
内容証明郵便には「催告」の意味も込められているので、普通郵便で送るよりも強い意思を表明することができます。
まずはご自身の労働条件を確認し、それを上の計算式に当てはめて、最低賃金を下回っているという証拠を揃えましょう。
それをもって、会社側に内容証明郵便で請求書を送付するというのが一般的な流れです。
この手順を踏んでもその差額が支払われない場合は、専門家に相談するべきでしょう。
相談先としては、労基局、弁護士などが挙げられます。
労基局への相談は、メールやFAX、電話などでも可能です。
また、労基局へは匿名でも相談することができますから、気軽に利用することができます。
しかし、労基局へは毎日たくさんの相談が持ち込まれているため、全ての相談に充分な対応をしてくれるとは思えません。
時間をかけてしっかりとした相談をしたかったり、緊急性のある相談をしたい場合には、集めた証拠を持って実際に労基局へ訪問することをおすすめします。
弁護士に相談するということも、とても有効な手段となります。
弁護士に相談することにより、もしも裁判にまで発展してまった際の心強い存在になります。
弁護士に相談するにはその分費用もかかってきますが、無料の電話相談をおこなっている方もいますし、まずはそれを使って気軽に相談してみるのも良いかと思います。
弁護士は法律に特化した職業ですので、確実な解決を望んでいる場合には、一番適した相談相手といえるでしょう。
最低賃金を支払わないのは、最低賃金法第40条に違反していることになり、使用者は罰せられます。
最低賃金法第40条には、
第四条第一項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、五十万円以下の罰金に処する。
引用元:最低賃金法|e-Gov法令検索
このように書かれていますので、もしも最低賃金より下回る額での支給をしていた場合、その使用者は50万円以下の罰金を支払う必要がある可能性があります。
最低賃金法が適用されるのは、もちろん社員だけではありません。
アルバイトやパートなど、その仕事に従事する全ての労働者に適用されます。
使用者であっても労働者であっても、ここはしっかりと抑えておきましょう。
今回は、最低賃金法の全体像について解説してきました。
時給制での給与であれば、その額はすぐに確認することができますが、月給制の場合、なかなかその額を確認することは難しいかと思います。
もしもご自身がきちんとした額の給与をもらえているのかに不安がある場合には、ぜひこの記事を参考に、その額を計算してみてください。
その結果、もしも最低賃金を下回っているのであれば、自信をもって会社側に請求をしていきましょう。
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まずは会社に確認しましょう。本来であれば、給料は毎月1回以上決まった日に支払わなければならないことが、法律で定められています。
したがって、給与支給日が不定期という時点で、会社の対応は法令に違反している可能性が高です。そのため、まずは会社に、会社のルール上、いつが給与支払日であるのか確認して下さい。
確認の結果、会社が給与支給日を明確にしないような場合や給与支給日とされる日に給与が支払われないような場合は、会社にその理由を明確にし、それを踏まえて第三者機関に証拠を用意して相談することをおすすめします。
労働基準監督署に相談して対応してくれるのは、企業による違反事実が相当明白なケースに限られます。
労働基準監督署は、企業の労基法違反の責任を追及する機関ですので、明白な給与未払いなどの違反行為があれば対応しますが証拠がないことには動いてくれない傾向があります。
ですので、給与未払いに関する証拠を集め、会社に対しても未払い請求を行うなど行動をおこしましょう。そして、労働基準監督署には相談ではなく「会社を処罰してください」という申告をするスタンスで臨むことで、対応してくれる可能性が高まります。
休業の原因が大災害の場合には、雇用保険の「激甚災害の特例」を利用できる可能性があります。これは台風や地震など甚大な被害をもたらす災害があった場合に「激甚災害」として国が特別に指定することにより、労働者を救済する制度です。激甚災害によって休業を余儀なくされる場合は、この制度が適用になるかを確認してみましょう。
労働基準法第24条とは?賃金支払い5原則をわかりやすく解説
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