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退職金の平均額をケースごとに解説|退職金の種類と計算方法・傾向についても解説

更新日
下地法律事務所
下地 謙史
このコラムを執筆
退職金の平均額をケースごとに解説|退職金の種類と計算方法・傾向についても解説

転職や就職を検討する際、退職金がいくらもらえるかは気になるところです。
定年退職にしろ、中途退職にしろ、金額によってその後の生活が左右されることもあります。

 

退職金の額は、退職金を支払う会社の経済力はもちろん、勤続年数や退職事由などによっても大きく違います。

 

この記事では、退職金のケース別平均額をはじめ、2種類の退職金制度や退職金を支払ってもらえない場合の対処方法などを解説します。 

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ケース別でみる退職金の平均相場

 

退職金の金額は、個々のケースによりさまざまです。

大きく分けると、

・企業規模
・業種
・学歴
・勤続年数
・退職事由

などによって異なります。

実際、退職金はどのようなケースでどのくらいもらえるものなのでしょうか?相場をみていきましょう。

 

民間企業|退職金の平均金額

まず民間企業の退職金平均額からみてみましょう。
なお、退職金の金額は令和4年に人事院が公表した「民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について」の資料をもとにしています。
また、掲載している退職金とは、退職一時金と企業年金を合計した「退職給付額」を指します。

 

定年退職の場合

勤続20年以上の従業員が定年退職した場合、退職金の平均額は以下のとおりです。

【定年退職時 退職給付額の平均金額】

勤続年数

退職給付額の平均金額

勤続20年

617万円

勤続30年

1,450万円

勤続35年

2,331万円

勤続40年

2,157万円

  
【参考】民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について(令和4年)|人事院

 

会社都合退職の場合

リストラや早期退職優遇制度などの場合、通常の退職金より上乗せされます。

【会社都合退職時 退職給付額の平均金額】

勤続年数

退職給付額の平均金額

勤続20年

1,290万円

勤続30年

3,812万円

勤続35年

3,211万円

勤続40年

2,792万円

【参考】民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について(令和4年)|人事院

 

大企業・上場企業|退職金の平均金額

退職金の金額は、会社の規模によって異なります。
厚生労働省中央労働委員会が公表している「令和元年賃金事情等総合調査」をもとに、大企業の退職金をみてみましょう。


調査は、以下に該当する企業を対象としておこなわれました。

【医療施設以外】次のいずれにも該当する企業
・    資本金5億円以上
・    労働者1,000人以上

【医療施設】
・    病床数が400床以上

 

大卒/3年・5年・10年 勤続年数ごとの退職金平均額

大卒者の会社都合・自己都合のそれぞれのモデル退職金は以下のとおりです。

※大学卒、事務・技術労働者、総合職相当、調査産業計

勤続年数(年齢)

会社都合

自己都合

3年(25歳)

68万円

32万円

5年(27歳)

123万円

63万円

10年(32歳)

312万円

186万円

15年(37歳)

588万円

407万円

20年(42歳)

965万円

801万円

25年(47歳)

1,426万円

1,287万円

30年(52歳)

2,012万円

1,898万円

35年(57歳)

2,455万円

2,368万円

38年(60歳)

2,686万円

2,659万円

定年

2,511万円

-


【参考】令和元年退職金、年金及び定年制事情調査|厚生労総省中央労働委員会

 

大企業に勤める大卒者の定年退職金は、平均2,500万を超える額です。

退職金は、会社都合と自己都合で金額が大きく異なります。
勤続5年目に自己都合で退職すると、退職金は会社都合退職のおよそ半額、10年以上では100万円以上の差があります。

 

高卒/3年・5年・10年 勤続年数ごとの退職金平均額

高卒者の会社都合・自己都合のそれぞれのモデル退職金は以下のとおりです。

※高校卒、事務・技術労働者、総合職相当、調査産業計

勤続年数(年齢)

会社都合

自己都合

3年(21歳)

58万円

34万円

5年(23歳)

96万円

56万円

10年(28歳)

230万円

150万円

15年(33歳)

421万円

310万円

20年(38歳)

719万円

609万円

25年(43歳)

1,122万円

1,017万円

30年(48歳)

1,537万円

1,451万円

35年(53歳)

1,984万円

1,926万円

60歳

2,423万円

2,303万円

定年

2,379万円

-


【参考】令和元年退職金、年金及び定年制事情調査|厚生労総省中央労働委員会


大企業では、高卒者の定年退職金は2,300万を超えています。
また、高卒者でも同様に、退職事由で退職金の平均額が大きく異なります。
さらに大卒者と比較すると、高卒者の退職金の平均金額は少ないことがわかります。

 

中小企業|退職金の平均金額 

では、中小企業の場合はどうでしょうか。
東京都産業労働局が公表している「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」をもとに、大卒・高卒それぞれの退職金の平均額について、勤続年数と退職事由に分けてみてみましょう。

なお、この調査は以下に該当する企業を対象におこなわれました。

 

  •  従業員数10人から299人
  •  東京都内に所在

 

大卒/3年・5年・10年 勤続年数ごとの退職金平均額

大卒者の会社都合・自己都合のそれぞれのモデル退職金は、以下のとおりです。
※調査産業計

勤続年数

会社都合

自己都合

1年

15万円

9万円

3年

34万円

23万円

5年

60万円

42万円

10年

148万円

113万円

15年

266万円

214万円

20年

425万円

353万円

25年

598万円

524万円

30年

785万円

705万円

33年

915万円

835万円

定年

1,118万円

-

【参考】中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)|東京都産業労働局

            
中小企業と大企業の退職金平均額を比較すると、中小企業の退職金は大企業の半分程度であることがわかります。特に定年時の退職金は、大企業では2,686万円、中小企業では1,118万円と、約1,500万円もの差がありました。
また中小企業の場合、会社都合でも自己都合でも退職金額の差は大企業ほど大きくないのも特徴です。

 

高卒/3年・5年・10年 勤続年数ごとの退職金平均額

※調査産業計

勤続年数

会社都合

自己都合

1年

9万円

6万円

3年

25万円

18万円

5年

45万円

34万円

10年

114万円

89万円

15年

209万円

168万円

20年

333万円

278万円

25年

471万円

407万円

30年

622万円

543万円

35年

774万円

692万円

37年

834万円

744万円

定年

1,031万円

-

【参考】中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)|東京都産業労働局


高卒者の場合、退職事由によって、勤続5年でおよそ10万円、10年で25万円の差があります。
中小企業の中には退職金の制度そのものがない企業も多いです。
退職を検討しているのであれば、制度の有無を確認しておきましょう。

 

 国家公務員|退職金の平均金額

公務員の退職金については、計算方法や平均額が公開されています。
ここでは人事院が公表している「民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について(令和4年)」のデータを紹介しましょう。
なお、掲載している退職給付額は、共済年金給付額と退職手当を合計した金額です。

 

【国家公務員 退職給付額の平均金額】
勤続年数    退職給付額の平均金額

勤続年数

退職給付額の平均金額

30年定年

1,866万円

35年定年

2,426万円

40年定年

2,371万円


【参考】民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について(令和4年)|人事院

 

なお、各省各庁では早期退職募集制度にもとづいて応募認定退職を採用しており、この場合の退職手当は以下のようになっています。

【応募認定退職者 退職給付額の平均金額】

勤続年数

退職給付額の平均金額

20年応募認定退職

1,539万円

30年応募認定退職

2,375万円

35年応募認定退職

2,616万円

40年応募認定退職

2,502万円


【参考】民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について(令和4年)|人事院

 

地方公務員|退職金の平均金額 

地方公務員の場合はどうでしょうか。
総務省が公表している「令和3年 地方公務員給与の実態」によると、以下のようになっています。なお、数値は25年以上勤務した後の定年退職などによる退職手当総額の平均金額です。

 

【地方公務員 25年勤務後の退職手当の平均額】

職員区分

平均退職手当額

一般職員

2,115   万円

教育公務員

2,256   万円

警察官

2,225   万円


【参考】令和3年 地方公務員給与の実態|総務省

 

地方公務員の退職金は約2,100万~2,200万円で、職員区分による大きな差はありません。

 

業種別・学歴別|退職金の平均金額

退職金の金額は、業種によっても大きく異なります。
続いては、中小企業の各業種別に、定年時のモデル退職金の金額についてみてみましょう。
なお、数値は東京都産業労働局が公表している「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」をもとにしています。

【中小企業 各業種別の定年時のモデル退職金】

業種

高卒

大卒

建設業

1,177万円

1,313万円

製造業

1,080万円

1,148万円

情報通信業

864万円

1,154万円

運輸業、郵便業

821万円

893万円

卸売業、小売業

1,019万円

1,088万円

金融業、保険業

高専・短大1,557万円

1,725万円

不動産業、物品賃貸業

1,353万円

学術研究、専門・技術サービス業

高専・短大895万円

1,007万円

生活関連サービス業、娯楽業

1,129万円

1,104万円

教育、学習支援業(学校教育を除く)

656万円

サービス業(他に分類されないもの)

1,019万円

996万円


【参考】中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)|東京都産業労働局

 

高卒者の実績のない業種については、高専・短大卒者の平均額を記載しています。
業種によって定年時の退職金の金額に100万円単位で差があり、特に「金融業、保険業」と「教育、学習支援業(学校教育を除く)」の金額には約1,000万円もの開きがあります。

 

女性の退職金は育児休暇の取得によって変わることがある

退職金制度がある企業ならば、性別にかかわらず退職金は支給されます。
しかし、女性従業員で育児休暇の取得実績がある人は注意が必要です。

 

多くの企業では退職金を算出する際、勤続年数で金額が変わります。
育児休暇期間を勤続年数にカウントしない企業の場合、その分退職金を減額することになるのです。

たとえば就職から10年で退職した場合でも、育児休暇を1年取得していると、勤続年数は9年ということになります。
わずか数ヶ月の違いでも退職金の金額が変わるので、要注意です。

 

ただし、勤続年数に産休・育休を含むかどうかは、企業によって異なります。
退職金や勤続年数の算出方法も企業により異なるので、事前に確認しておきましょう。

 

退職金制度の仕組み

退職金の平均額を確認したところで、退職金制度の仕組みそのものを解説しましょう。退職金とは、従業員が退職する際に在職中の会社への貢献度に応じて支払われるお金です。

退職金の3つの特性

企業が従業員に退職金を支払う目的には、「功労報償」「賃金の後払い」「生活保障」の3つの特性があります。
 

功労報償

在職時の従業員の会社への貢献に対して、功労報償としてお金が支払われます。よって退職金は、在職年数の長い人や役職の高かった人、貢献度の高かった人の場合に高額になる傾向があります。自己都合退職の場合には減額されるのも、功労報償的な性質があるからです。

 

賃金の後払い

退職金には「賃金の後払い」としての性質もあります。在職中には賃金を全額もらっているわけではなく、退職時に退職金としてまとめてもらえる部分があるということです。
 

生活保障

退職金には、退職後の労働者の生活保障を補う意味合いもあります。多くの人が老後の生活資金にしたり、失業中の生活費に充てたりするでしょう。
 
退職金を支給するとき、会社は「功労報償」としての性質にしか言及しないケースがありますが、実際には上記の3つの性質があります。特に「賃金の後払い」としての性質があるため、雇用契約書や就業規則等に退職金の規定があるにも関わらず、退職金を不払いとすることは許されません。
また、懲戒解雇のケースでは会社の就業規則の定めや懲戒事由によるものの、必ずしも全額不支給にできるとは限らないのです。
 
退職金について、まずはこの3つの重要な要素を理解しておきましょう。
 

退職金は2種類ある

退職金には大きく分けて以下の2種類があります。

 

退職一時金

退職一時金とは、退職時に一括で受け取れる退職金です。たとえば「退職時に1,000万円もらった」場合、その1,000万円は退職一時金です。一般的に「退職金」という場合、「退職一時金」を指すケースが多くなっています。

 

企業年金(退職年金)

もう1つの退職金は「企業年金」と呼ばれるものです。「退職年金」ともいわれます。これは、複数回に分割して受け取る退職金です。退職後10年間など期間が限定されるケースや、終身支給が続くケースもあり、支給される金額もさまざまです。
 
企業「年金」とはいっても「厚生年金」などの「公的年金」とは異なり、あくまで会社で定められた退職金制度にもとづく支給金です。「分割払いの退職金」と理解すると良いでしょう。
 
退職一時金と企業年金の違いは、一括で受け取るか分割で受け取るかという点です。これ以外にも「前払い制度」を導入している企業も稀にあります。

退職一時金と企業年金の両方がある会社も多い

退職金制度の内容は、各企業によってさまざまです。多いのは「退職一時金」のみとしているパターンと「退職一時金と企業年金を併用しているパターン」です。退職一時金制度と前払い制度を併用している会社もあります。
 
「企業年金のみ」または「前払い制度のみ」にもできますが、そういった制度で運用されているケースはほとんどみられません。
 
退職一時金制度と企業年金制度の両方が併用されている場合、一部が退職時に一括で支払われて、残りは企業年金として分割で支払われることが多いです。両方が支給される場合、退職一時金が少なくても残りの企業年金が多ければ、退職金が「少額」とはいえません。退職金の金額が多いか少ないかは、退職一時金と企業年金の合計額で判断する必要があります。

 

企業ごとに制度の有無が異なる

中には、「退職時には退職金を必ずもらえるだろう」と思っている人もいるでしょう。
 しかし、退職金制度を導入するかどうかは各企業の自由な判断に任せられており、退職金制度はなくてもかまわないものです。退職金制度がない会社でも、労働基準法などの法令違反にはなりません。非上場の中小企業などでは退職金制度がない会社も多数存在します。
 

退職金制度の有無

下のグラフは、人事院が公表している「民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について(令和4年)」と、東京都産業労働局が公表している「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」を参考に、退職金制度の有無についてまとめたものです。

【参考】民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について(令和4年)|人事院 
【参考】中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)|東京都産業労働局

 

上のグラフをみると、中小企業では退職金制度がない会社も多いようです。

退職金制度のない企業では、従業員が退職しても一切退職金を要求できません。できれば就職前に、「退職金制度の有無」について確認しておくべきでしょう。もしも今勤めている会社における取り扱いを知らないのであれば、退職金制度があるかないかは調べておくべきです。
 
退職金制度については、会社に「退職金規程」が設けられている場合や、会社の就業規則内に書かれている場合があります。
 
また退職金規程や就業規則などで明確に退職金制度が定められていなくても、これまでの慣例によって退職金が支給されてきた実績があれば、退職金制度があるとみなされる可能性があります。慣例があるのに退職金を支払ってもらえなかった場合には、これまでの事例に従って退職金を支払ってもらえるケースもあるので、あきらめずに会社に請求してみましょう。

 

近年は成果報酬型が増えている

退職金にはいくつかの「計算方法」があります。大きく分けると「年功型」と「成果報酬型」に分類され、近年は成果報酬型を採用する企業が増えています。

 

年功型

年功型は、勤続年数に応じて退職金の金額が上がっていく計算方法です。勤続年数が長い人ほど会社への貢献度が高いという考え方の元、長年勤続した人の場合には退職金が高額になります。
 
年功型の退職金制度は、「年功序列型の賃金体系」との相性が良くなっています。退職金計算の際に「退職時の基本給」を基準にするからです。年功序列型では勤続年数が長い人ほど退職時の基本給が高くなるので、その分、退職金も高額になる、という単純な計算です。
 
たとえば公務員は、年功型で基本給を基準とする退職金制度が採用されています。

 

成果報酬型

もう1つの計算方法は成果報酬型です。こちらは労働者の在職中の会社への貢献度に応じて退職金額が決定されます。
 
成果報酬型では、在職中の役職や職能、目標達成率などに応じて個別に金額が算定されます。重要なポストについていた人、職能が高かった人、高い目標を設定してその目標達成率が高かった人などは、受け取る退職金が高額になります。
 
成果報酬型の退職金制度の場合、基本給を基準としないケースが多いです。また年功序列型ではなく能力によって給与が変動する賃金体系との相性が良くなっています。
 
最近では在職中の役職や職能、目標達成率などを「ポイント」という数字にして、ポイント数の合計によって退職金額を計算する「ポイント制退職金制度」を導入する企業も増加しています。

 

 成果報酬型の企業が増えている背景

従来の日本企業では、年功型の退職金制度を導入している例が多数でした。しかし年功型の場合、従業員の能力や貢献度とは無関係に「在職期間の長い労働者へ高額な退職金が支払われてしまう」ので、在籍時の仕事に対するモチベーションが上がりにくくなります。
 
また会社への貢献度が高かった人材への退職金が低くなるなど、不公平な結果が生じることも考えられます。
 
そこで近年では、成果報酬型の退職金制度を導入する企業が増えています。成果報酬型ならば、会社に貢献した従業員に高額な退職金を支給できますし、在職中の従業員のモチベーションも上がりやすくなります。
 
ただし、会社に適正に評価してもらえなかった人は、がんばっても退職金を減らされてしまうデメリットもあります。
 
最近は、創立以来年功型の退職金制度を採用してきたけれども、制度変更によって成果報酬型を導入する企業が多くなってきています。自社に退職金制度がある場合、導入されている制度が「年功型」「成果報酬型」のどちらであるかは一度確かめてみましょう。
 

退職金はいつからもらえる?

退職金を受給するための最低勤続年数はどれくらいでしょうか。
大企業と中小企業で少し異なるので、それぞれみてみましょう。

なお下記に示すグラフは、大企業の最低勤続年数は厚生労働省中央労働委員会が公表している「令和元年賃金事情等総合調査(確報)(令和元年)」を、また中小企業の最低勤続年数は東京都産業労働局が公表している「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」を参考に、独自にグラフ化したものです。
 
【参考】令和元年賃金事情等総合調査(令和元年)|厚生労働省中央労働委員会

 
【参考】中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)|東京都産業労働局

 

大企業では、退職事由が会社都合の場合、1年未満でも53%の企業で退職金が支給されます。
対して中小企業では、会社都合で辞める場合でも、退職金をもらうために3年以上の勤続年数が必要になる企業が36%ありました。

 

退職金には税金がかかる場合がある

退職金を受け取るとき、税金がかかる可能性があるので注意が必要です。「所得税」が差し引かれるため、退職金規程による支給額がそのまま支払われるわけではありません。
 
ただし退職金には退職後の生活保障などの性質もあるため、税制で優遇措置を受けられます。

 

退職所得控除について

退職金にかかる税金計算の際には「退職所得控除」が適用されます。退職所得控除の金額は以下のとおりです。

 

 勤続年数が20年以下

勤続年数が20年以下の場合、以下のように計算します。
退職所得控除額=40万円×勤続年数
ただし80万円に満たない場合には80万円が控除額となります。
 たとえば勤続年数が10年の方であれば、40万円×10年=400万円が退職所得控除額です。

 

勤続年数が20年を超える

勤続年数が20年を超える場合、以下のように計算します。
退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20年)

たとえば勤続年数が30年の方であれば、800万円+70万円×10年=1,500万円が退職所得控除額となります。
 

退職所得額について

所得税の課税対象となる金額は、「退職所得額」です。これについては以下の計算式によって算定します。
 
退職所得額=(退職金の金額-退職所得控除額)×1/2

退職所得額がマイナスになる場合には退職金に税金はかかりません。
 

計算の具体例

たとえば退職金が1,500万円で、勤続年数が25年・35年の方の場合、それぞれの退職所得控除額と退職所得額は以下のように計算します。

【退職金が1,500万円、勤続年数25年】
退職所得控除額=800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円
退職所得額=(1,500万円-1,150万円)×1/2=175万円
・・・所得税がかかる金額は175万円

【退職金が1,500万円、勤続年数35年】
退職所得控除額=800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円
退職所得額=(1,500万円-1,850万円)×1/2=-175万円
・・・退職所得額がマイナスなので、退職金に税金はかからない

勤続年数が長くなると退職金が増額されるだけでなく、税制上も有利になるといえます。

退職金が支払われない場合の対処法とは

「退職金をもらえる」と期待していたのに、退職時に支払われないケースもあります。そんなとき、退職金を適正に受け取るにはどうすれば良いのでしょうか?状況ごとに対処方法を紹介します。

退職金制度があるか確認

退職金が支給されない場合、まずは勤務先に退職金制度があるかどうか、確認が必要です。
そもそも退職金は法律上必ず支給義務があるとは限らないからです。会社が任意に退職金制度を用意していない限り、労働者は基本的に退職金を請求できません。
退職金規程の有無や、就業規則の中に退職金に関する事項が含まれていないか確認しましょう。雇用条件通知書や雇用契約書などに退職金についての記載がある可能性もあります。

過去に退職金支給実績がないか確認

退職金規程や就業規則などの明文による退職金規程がない場合でも、「労使慣行」によって退職金を請求できる可能性があります。過去の退職者に対して会社が退職金を支給しており、それが社内慣行となっている場合、労働者は退職時に退職金を請求できる可能性があります。
 
もしも以前に退職された方で退職金を受け取った人がいるなら、連絡をとって具体的な状況を確認しましょう。
 
多数の退職金受給者がいれば、慣行によって退職金を請求できる可能性が高くなるので、できるだけ多くの事例を集めることが重要です。

懲戒解雇など不支給事由がある場合

懲戒解雇の場合、退職金が不支給とされるケースが多々あります。
会社との競業避止義務に違反した場合なども同じです。
 
ただしこのように退職金の不支給事由があっても、必ずしも「全額不支給が相当」とは限りません。過去の裁判例でも退職金を全額不支給にできるのは、その事由が当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要であるとされています(東京高判平成15年12月11日労判867号5頁)。
つまり背信性が強く、これまでの功労がすべて無になってしまうほどの事情があって、はじめて退職金を全額不支給にできるのです。
 
そこまでに至らない場合、「解雇理由の内容や会社の被った損害の程度、解雇に至った経緯、過去の勤務態度などの諸事情を考慮して合理性を有する範囲についてのみ、退職金を一部不支給とできる」と判断されています(札幌地判平成20年5月19日LLI/DB L06350238)。
 
以上より、懲戒解雇や競業避止義務違反などで解雇されて退職金を全額不支給とされても、状況に応じては退職金を請求できる可能性があります。あきらめずに労働問題に詳しい弁護士に相談してみてください。
 

退職金を請求する

支払われるべき退職金が支払われないなら、会社へ退職金を請求する必要があります。まずは会社の退職金制度を確認して支払われるべき退職金を計算し、会社側へ請求をおこないましょう。
 
請求の際には「内容証明郵便」の利用をおすすめします。退職金の支払いを請求した事実を残せるからです。
 

交渉して合意し、支払いを受ける

会社に退職金を請求したとき、すぐに請求どおりに支払われるとは限りません。会社側から反論があり、交渉が必要となるケースも多々あります。
 
その場合、いくらの退職金をいつまでにどういった方法で支払うのか、話し合って取り決めましょう。合意ができたら、後日争いになることを防ぐためにも退職金支払いについての合意書を作成し、その内容に従って支払ってもらうようにしましょう。
 

労働審判を申し立てる

会社と交渉しても支払ってもらえない場合には、労働審判を利用して会社に退職金を求めましょう。労働審判とは、裁判所による労働トラブルを解決するための専門手続です。
 
裁判所において行われる手続ですが、「訴訟」とは異なります。原則3回までで終了することから、スピーディに解決できます。和解による解決率も高いので、労働トラブル解決には非常に有効です。
 
ただし、話し合いで相手と折り合いがつかなければ、最終的に裁判所が「審判」によって退職金支払いの必要性や金額を決定します。納得のいく審判を得るためには十分な証拠による立証が必要となるので、事前準備が大切です。会社側が代理人をつけてきたら、自身で手続を行う労働者側は対応が難しくなる場合が多いのではないかと思われます。会社側が代理人をつけた場合には、弁護士に依頼して対応してもらうのが得策です。

 

労働訴訟を起こす

労働審判でも解決できなければ、最終的に訴訟を起こして退職金を請求する必要があります。特に未払い退職金が高額な場合には、時間と手間をかけても請求するべきといえるでしょう。
訴訟では法律的な主張と立証が必要とされ、素人では対応が難しくなります。労働問題に精通した弁護士に依頼して、万全の体制で臨みましょう。

 

時効に注意

退職金請求権には「時効」があるので注意が必要です。退職金支給時期から5年が経過すると、退職金請求権の時効が成立して請求できなくなってしまいます(労働基準法第115条)。時効を完成させないためには、その前に会社に対し、退職金を請求する必要があります。
 
退職金が未払いになっているなら、できるだけ早期に証拠を集めて弁護士等に相談し、支払いを請求しましょう。

 

まとめ

退職金の平均金額は、勤続年数や業種、会社が採用している退職金制度の内容によっても大きく変わってきます。まずは自社の退職金制度を調べて、どのくらい退職金をもらえるのか把握しておくと良いでしょう。
万一退職金が支払われなかったら、すぐに労働トラブルに詳しい弁護士に相談して回収の可能性を高めることが大切です。今後退職される際の参考にしてみてください。

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この記事の執筆者
下地法律事務所
下地 謙史 (第一東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部より、慶應義塾大学法科大学院へ飛び級入学。司法試験に合格後、都内の法律事務所勤務を経て下地法律事務所を開業。(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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