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雇用保険に未加入だとどうなる?リスク・確認方法・発覚時の対処法を解説

更新日
このコラムを監修
富永 慎太朗
弁護士
雇用保険に未加入だとどうなる?リスク・確認方法・発覚時の対処法を解説

雇用保険とは、労働者の失業時や休業時に生活を支えるために設けられている公的保険です。

一定の条件を満たす従業員を雇う場合、会社は雇用保険に加入させなければいけません(雇用保険法第7条)。

ただし、なかには雇用保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、未加入のままになっているケースもあります。

雇用保険に未加入の場合、違法行為として会社側に罰則が科されたり、従業員側は手当や給付金を受け取れなくなったりするおそれがあります。

本記事では、雇用保険の加入条件や未加入の場合のリスク、未加入かどうかの確認方法や、未加入が発覚した場合に取るべき対応などを解説します。

雇用保険に未加入の会社はブラック企業の可能性あり!

雇用保険の加入対象であるにもかかわらず未加入のままになっている場合、法律違反であるだけでなく「ブラック企業」の可能性もあります。

ブラック企業で働き続けていると、会社から不当な扱いを受けて肉体的にも精神的にもダメージが溜まり、うつ病や適応障害などの病気を発症するリスクがあります。

現在の職場環境や待遇に不満があるなら、転職することも検討しましょう。

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【結論】雇用保険に未加入の会社は違法となる

会社が雇用保険の加入義務に違反している場合、違法行為として処罰対象になります。

具体的には、会社側に対して「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑」が科されるおそれがあります(雇用保険法第83条1号)。

雇用保険の未加入が発覚して罰則が科されるまでの基本的な流れは、以下のとおりです。

  1. 従業員がハローワークや労働基準監督署などに相談する
  2. 会社に対して実態調査がおこなわれる
  3. 違反を是正するように指導・勧告がおこなわれる
  4. 検察に引き継がれて罰則が科される(指導・勧告を無視するなどの悪質な場合)

なお、あくまでも処罰対象となるのは会社だけであり、従業員は罰せられません

ただし、従業員も本来受け取れたはずの手当や給付金を受け取れなくなったりするなど、大きな不利益を被るリスクがあります。

雇用保険未加入の場合の4つのリスク

雇用保険未加入の場合、従業員側には主に以下のようなリスクがあります。

  1. 従業員が失業手当を受け取れない
  2. 従業員が育児休業給付金を受け取れない
  3. 従業員が介護休業給付金を受け取れない
  4. 従業員が再就職関連の給付を受けられない

ここでは、雇用保険未加入の場合のリスクについて解説します。

1.従業員が失業手当を受け取れない

雇用保険未加入の場合、従業員は失業手当(基本手当)を受給できない可能性があります。

失業手当とは、会社を辞めて失業中の一定期間に支給されるお金のことです。

失業手当を受け取るためには雇用保険に一定期間加入していなければならず、自己都合退職の場合と会社都合退職の場合では以下のような加入実績が必要です。

  • 自己都合退職の場合:退職前2年間に通算して12ヵ月以上雇用保険に加入していること
  • 会社都合退職の場合:退職前1年間に通算して6ヵ月以上雇用保険に加入していること

雇用保険に加入していないと、失業しても失業手当が支給されず、十分な貯蓄がなければ生活費の捻出に困るおそれがあります。

失業手当の申請方法や支給金額の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

2.従業員が育児休業給付金を受け取れない

雇用保険未加入の場合、従業員は育児休業給付金を受給できない可能性があります。

育児休業給付金とは、原則1歳または1歳2ヵ月未満の子どもを育てるために育児休業を取得した場合に支給されるお金のことです。

育児休業給付金を受け取るためには、以下のような雇用保険の加入実績が必要です。

  • 育児休業の開始日以前の2年間で、雇用保険の被保険者期間が12ヵ月以上あること

雇用保険に加入していないと、育児休業を取得しても育児休業給付金が支給されず、十分な貯蓄がなければ子育て費用の捻出に困るおそれがあります。

3.従業員が介護休業給付金を受け取れない

雇用保険未加入の場合、従業員は介護休業給付金を受給できない可能性があります。

介護休業給付金とは、家族を介護するために介護休業する場合に支給されるお金のことです。

介護休業給付金を受け取るためには、以下のような雇用保険の加入実績が必要です。

  • 介護休業の開始日以前の2年間で、雇用保険の被保険者期間が12ヵ月以上あること

雇用保険に加入していないと、介護休業を取得しても介護休業給付金が支給されず、十分な貯蓄がなければ金銭的に困窮するおそれがあります。

介護休業給付の申請方法や支給金額の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

4.従業員が再就職関連の給付を受けられない

雇用保険未加入の場合、従業員は以下のような再就職関連の給付を受けられない可能性があります。

  • 再就職手当:失業手当の支給が一定期間残っており、早期に1年以上の雇用が見込める安定した仕事に再就職した場合に支給されるお金
  • 就業促進定着手当:再就職手当を受給しており、再就職先で6ヵ月以上雇用されて前職よりも給与が減った場合に支給されるお金
  • 就業手当:失業手当の支給が一定期間残っており、再就職手当の支給対象外の形態で再就職した場合に支給されるお金
  • 常用就職支度手当:障害者などの就労が困難とされる失業者が、1年以上の雇用が見込める安定した仕事に再就職した場合に支給されるお金

各手当の申請方法や支給金額の計算方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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雇用保険の加入条件は2つ

雇用保険には以下のような加入条件が定められています。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 31日以上の雇用見込みがあること

①と②を満たす従業員を1人でも雇う場合、会社は従業員を雇用保険に加入させる必要があります。

ここでは、雇用保険の加入条件について解説します。

1.1週間の所定労働時間が20時間以上であること

1つ目の条件は「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」です。

所定労働時間とは、会社が就業規則や労働契約で定める労働時間のことです。

休憩時間を除いた始業から終業までの時間を指し、法定労働時間である「1日8時間・週40時間」を超えない範囲で設定されます。

なお「契約上の所定労働時間は週20時間未満ではあるものの、一時的にシフトが増えて週20時間を超えた」というようなケースについては、基本的に適用対象外となります。

2.31日以上の雇用見込みがあること

2つ目の条件は「31日以上の雇用見込みがあること」です。

以下のいずれかに該当する場合も、雇用保険の適用対象となります。

  • 雇用期間の定めがない場合
  • 雇用期間が31日以上の場合
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇い止めの明示がない場合
  • 雇用契約に更新規定はないものの、同様の契約で31日以上の雇用実績がある場合

雇用保険の場合、雇用形態に関係なく加入が義務付けられているため、アルバイトやパートでも上記の条件を満たしていれば加入する必要があります。

雇用保険が未加入かどうか確認する2つの方法

自分が雇用保険に加入しているかどうかわからない場合は、以下の方法で確認しましょう

  1. 給与明細を確認する
  2. ハローワークに問い合わせる

ここでは、雇用保険が未加入かどうか確認する方法を解説します。

1.給与明細を確認する

雇用保険の加入・未加入をすぐに確認したいなら、毎月交付される給与明細を見ましょう

給与明細の控除欄に「雇用保険料」として金額の記載があれば、雇用保険に加入していることがわかります。

ただし、なかには「会社が雇用保険料を天引きしておきながら、実際は雇用保険の加入手続きをおこなっていない」というような悪質なケースもあります

雇用保険料として金額の記載があるものの、本当に加入しているかどうか不安な場合は、次に解説する方法で確認しておきましょう。

2.ハローワークに問い合わせる

雇用保険の加入・未加入を確実に確認したいなら、ハローワークに問い合わせましょう

ハローワークに問い合わせる場合、基本的には以下のような流れで手続きを進めます

  1. ハローワークで雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票を入手する
  2. 雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票を作成し、ハローワーク窓口に提出する
  3. 雇用保険被保険者資格取得届出確認照会回答書が届き、結果が通知される

雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票は、ハローワークのホームページでも入手可能です。

印刷方法や印刷時の注意事項については「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」をご確認ください。

雇用保険に未加入だった場合の3つの対処法

自分が雇用保険に加入していないことが発覚した際は、以下の対応を検討しましょう

  1. 会社に対して雇用保険の加入を要求する
  2. 雇用保険料を後納する
  3. 会社に対して損害賠償請求をおこなう

ここでは、雇用保険に未加入だった場合の対処法について解説します。

1.会社に対して雇用保険の加入を要求する

雇用保険に未加入だった場合は、会社に加入するように伝えましょう

たとえば「担当者がうっかり加入手続きを忘れていた」というようなケースであれば、迅速な対応が望めます。

もし会社側が対応を渋る場合は、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士なら、どのように動くべきか法的視点から的確にアドバイスしてくれますし、弁護士を味方に付けることで会社側の態度が大きく変わる可能性もあります。

2.雇用保険料を後納する

雇用保険に未加入だった場合は、雇用保険料の後納も検討しましょう。

従業員が失業手当を受け取るためには、雇用保険に一定期間加入していなければならず、雇用保険の加入期間に応じて失業手当の支給期間も変わります

特に「退職前に雇用保険の未加入が発覚した」という場合は、雇用保険料を後納しないと失業手当を一切受け取れなかったり、短期間しか受け取れなかったりするおそれがあります。

原則として、雇用保険は過去2年間まで遡って加入・後納することが可能です。

ただし、給料から雇用保険料が天引きされており、天引きの事実を確認できる給与明細などの書類が揃っている場合は、例外的に2年を超えて遡れる可能性があります。

3.会社に対して損害賠償請求をおこなう

雇用保険に未加入だった場合は、会社に対して損害賠償請求するという選択肢もあります。

会社が雇用保険の加入手続きを怠ったことで、本来受け取れたはずの手当や給付金が受け取れずに生活に悪影響が出た場合は、賠償金を獲得できる可能性があります。

ただし、法律知識や交渉経験のない素人では、内容証明郵便の送付・会社との交渉・裁判などの請求手続きに適切に対応できないおそれがあります。

会社に対する損害賠償請求を検討している場合は、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士なら、正確な損害額や請求手続きの進め方をアドバイスしてくれますし、損害賠償請求の代行を依頼することもでき、スムーズかつ納得のいく形での問題解決が望めます。

雇用保険の未加入に関するよくある質問5選

ここでは、雇用保険の未加入に関するよくある質問について解説します。

1.雇用保険に未加入は違法ですか?会社に対する罰則は?

雇用保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、加入しないのは違法です。

雇用保険の加入義務に違反している場合、会社側に対して「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑」が科されるおそれがあります(雇用保険法第83条1号)。

なお、あくまでも処罰対象となるのは会社だけであり、従業員は罰せられません

2.雇用保険に加入していなかったらどうなる?

雇用保険に加入していないと、会社側には罰則が科されるおそれがありますが、従業員側も手当や給付金を受け取れなくなったりするリスクがあります。

たとえば、以下のような手当や給付金を受け取るためには雇用保険の加入実績が必要です。

  • 失業手当
  • 育児休業給付金
  • 介護休業給付金
  • 再就職関連の給付

雇用保険に加入していないと、失業時や休業時などに給付が受けられず、十分な貯蓄がなければ金銭的に困窮するおそれがあります。

3.パートやアルバイトでも雇用保険の加入対象になる?

パートやアルバイトでも雇用保険の加入対象になります。

雇用保険の場合、雇用形態に関係なく加入が義務付けられているため、アルバイトやパートでも以下の条件を満たしていれば加入する必要があります。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 31日以上の雇用見込みがあること

4.雇用保険未加入の場合、泣き寝入りするしかない?

雇用保険未加入でも泣き寝入りする必要はありません。

会社に対して雇用保険の加入を要求すれば、すぐに応じてくれることもあります。

会社が雇用保険の加入手続きを怠ったことで、本来受け取れたはずの手当や給付金が受け取れずに生活に悪影響が出た場合は、賠償金を獲得できる可能性もあります。

なかなか加入手続きを進めてくれない場合や、会社に対して損害賠償請求をおこないたい場合は、弁護士に相談してサポートを求めましょう

5.雇用保険未加入だった場合、遡って加入することは可能?

雇用保険未加入だった場合、遡って加入することが可能です。

原則として、雇用保険は過去2年間まで遡って加入・後納できます

なお、給料から雇用保険料が天引きされており、天引きの事実を確認できる給与明細などの書類が揃っている場合は、例外的に2年を超えて遡れる可能性があります。

さいごに|会社が雇用保険に加入してくれない場合は、弁護士に相談を

雇用保険が未加入のままで会社が動いてくれない場合は、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士なら、今後やるべきことをアドバイスしてくれるだけでなく、自分の代理人となって会社と争ってもらうこともでき、自分で対応するよりもスムーズな問題解決が望めます

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富永 慎太朗
弁護士
(福岡県弁護士会)
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編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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労働審判は通常の裁判とは何が違うのでしょうか?

労働審判とは、2006年4月に導入された、地方裁判所で職業裁判官(労働審判官)1人と使用者側有識者、労働者側有識者(労働審判員)各1名ずつの合計3人で構成された労働審判委員会の下で、使用者と労働者の間の紛争を適正かつ迅速に解決するための審判制度です。労働審判の目的は、給与の不払いや解雇などといった事業主と個々の労働者の間で発生した労働紛争を、迅速・適正かつ効果的に解決することです。

労働審判の流れを解説|労働審判を活用する際の手続きと解決フロー
労働審判で申し立てられる内容はどのようなものがあるのでしょうか?

労働問題であれば、権利・利益の大小関わらず労働審判を申し立てることができます。実際の手続では特に賃金関係と解雇関係の事件が主を占めています。
例えば、残業代・給与・退職金や賞与の未払いといった賃金に関する問題や、不当解雇・雇い止め・退職勧奨といった雇用に関する問題が多いです。

公務員でも労働審判を申し立てることはできるのでしょうか?

原則として、公務員の労働審判はできません。
公務員は、国家公務員法や地方公務員法に基づいて登用されており、民間の労働者とは立場が異なります。そのため、公務員と国・地方自治体との紛争は民事に関する紛争に該当しないものとして、労働審判の対象にはなりません。

労働審判で必要になる弁護士費用はどれくらいになるのでしょうか?

弁護士費用は弁護士事務所によって金額が違うため、決定的に「いくら」という決まりはありません。
一般的に20~40万円+成功報酬(請求金額の15%~20%前後)の合計60~100万円程あたりが相場になっていますが、報酬基準は事務所単位で設定されており、報酬額も事案に応じて変動します。
弁護士に相談、依頼時に労働審判の申し立てにかかる費用がどれくらいかかるかをしっかり確認しましょう。

労働審判の弁護士費用相場と費用を無駄なく抑える方法
労働審判がどれくらいの期間で行われるのでしょうか?

申立から終結まで平均75日(約2ヶ月半)ほどとなっております。原則3回以内で審理を終結しなければならないと法律で定められており、実際にも97%以上が3回以内、7割は2回以内で終結しています。
通常訴訟では一審手続は2年以内のできるだけ短い期間内に終えることが努力目標とされているにすぎず、回数も8~10回程度と多く、いかに労働審判に迅速性があることがわかります。
また、労働審判から通常訴訟に移行した場合でも、労働審判で,基本的に双方の主張立証は出尽くしているため、最初から通常訴訟を起こした場合よりも解決までの時間は短くて済みます。

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