労働者なら誰でも加入している雇用保険ですが、もし未加入だったと判明したら…!?
考えたくないことかもしれませんが、残念ながら加入していない中小企業は少なからず存在します。
それではどうして雇用保険へ加入しない企業があるのでしょうか。
また、加入していなかったとき、労働者としてどういった対処ができるのかご紹介します。
雇用保険に未加入の会社はブラック企業の可能性大!
従業員が一人でもいれば加入の義務があるのが雇用保険。にも関わらず加入していない会社は確実にブラック企業です。そんな会社に勤め続けることは、いずれ肉体・精神共に大きなダメージを受けることに繋がります。自分がブラック企業に勤めていると分かった場合は早々に転職することをおすすめします。
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会社が雇用保険未加入だったときの罰則
一定数以上の従業員を雇用する会社は、被保険者資格を有する労働者を雇用保険に加入させる義務があります。
仮に、会社がこの義務に違反した場合、罰則を受けることになってしまうのでしょうか。
具体的な罰則
事業主は上記義務に違反した場合、懲役6か月以下もしくは罰金30万円が科せられるとの定めが有ります(雇用保険法83条1号)。
元から加入届けを出していない、もしくは被保険者資格者がいない等の虚偽の届けを出したときも罰則の対象とされています。
罰則を受ける流れ
ただ、実際、企業に対して上記罰則が直ちに適用されるということはなく、
- 通常は違反の事実について労働局等に申告が有り
- 同申告に基づく調査で違反事実が認められ
- 違反を是正するよう指導・勧告が繰り返され
- それでも違反を是正しない悪質なケース
について罰則適用の可能性があるという流れです。
公益通報者の保護
辞めたあとに会社の不正を通報したい、そう考えている人もいると思います。
ただ誰が通報したのか判明して、企業からの報復があるかもしれないという不安があってできない人もいるでしょう。
しかし、当局は申告について匿名を希望すれば企業にみだりに個人情報を開示することはありません。
また、公益通報者保護法により、通報者は企業からの不当な取り扱いから保護されています。
2022年6月の法改正後は、「内部調査に従事する者が、公益通報者を特定させる情報を漏えいしてはいけないこと」「通報者が役員または退職後1年以内の者(派遣社員を含む)であっても保護されること」と保護の範囲が拡大されました。
どのような内容の通報で、どこに通報すれば保護されるかなど、詳しくは消費者庁のサイトをご覧ください。
【参考】公益通報者保護法と制度の概要|消費者庁
雇用保険に加入しているかどうか確認する方法
では自分がきちんと雇用保険に加入しているかどうかはどのような方法で確認すればいいのでしょうか。以下でご紹介します。
給与明細を確認する
まず毎月受け取る給与明細を見てみましょう。控除項目に「雇用保険」の項目があるかどうか確認して、記載があって給与より一定額天引きされていれば加入していることになります。
もしここで明細に見当たらなかったら、次の方法をとります。
被保険者資格取得を確認する
次の手段として、会社住所を管轄しているハローワークへ行き、被保険者資格取得を確認することです。
雇用保険は労働者一人ずつに個別の番号が割り振られています。そのため雇用保険に加入していれば、自身専用となる番号が残されているのです。
ハローワークの指定窓口で「雇用保険に加入しているかどうか知りたい」と伝えれば案内してもらえます。
ただ時と場合によっては即日教えてもらえるとは限りませんので、ご注意ください。
雇用保険に加入する条件と方法
基本的に一般社員なら誰でも加入することが義務付けられています。
平成29年1月1日以前は65歳未満であることも条件でしたが、以降は65歳以上でも雇用保険への加入対象となりました。(参考:厚生労働省)
加入にはいくらか条件が必要ですが、中でもアルバイトやパートで雇用されている人もいると思います。
ではそうした方は、どのような条件を満たさなくてはいけないのでしょうか。
パートタイム労働者の加入条件
アルバイトやパートタイムなど、短時間での労働時間で働くときでも以下の条件を満たしていれば雇用保険への加入となります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある人を雇っているかどうか
上記2つの条件を満たしていれば、正規・非正規に関係なく雇用保険に加入しなければなりません。
31日以上の雇用見込みについて
条件の1つである31日以上の雇用見込みについて、よく分からない人もいるでしょう。具体的に条件が適用されるのは次のようなケースです。
- 雇用期間が定められていない
- 雇用期間が決まっていて、その期間が31日以上のとき
- 雇用期間が最初31日未満だったが、途中からそれ以上の雇用が決まったとき
- 雇用契約に更新について記載されており、31日未満で雇止めとする規定がないとき
雇用保険に未加入でも受け取れる失業保険
雇用保険に加入していれば、失業した後に失業保険を申請することができます。
しかしもし雇用保険が未加入だったら、肝心の失業保険がもらえなくなってしまいます。
そんなときは会社、もしくはハローワークをはじめとした外部窓口に相談しましょう。
雇用保険に未加入だったとき、失業保険は受け取れないのかというと、そんなことはありません。きちんと手続きをすれば、雇用保険へ加入・失業保険の支給対象になることができます。
2年間の未納金を支払えば受け取れる
勤めていた企業で雇用保険に加入していなかったら、原則として2年間さかのぼって保険料を納めれば加入が認められます。
ただし3年以上勤めていたら、それ以上先の期間は保険料を納めることができません。
会社が加入しない理由
雇用保険は労働者にとってのセーフティーネットです。
それなのにどうして企業のなかには加入したがらないのか、疑問が湧く人もいるでしょう。
単純な話、雇用保険の負担を重荷に感じているからという理由が一番に考えられます。
令和4年度の雇用保険料率は、次のとおりです。
【令和4年4月1日~令和4年9月30日】
事業の種類
|
⓵労働者負担
|
⓶事業者負担
|
⓵+⓶
雇用保険料率
|
一般
|
0.3%
|
0.65%
(失業保険などの保険料率:0.3%)
(雇用保険二事業の保険料率:0.35%)
|
0.95%
|
農林水産・清酒酒造
|
0.4%
|
0.75%
(失業保険などの保険料率:0.4%)
(雇用保険二事業の保険料率:0.35%)
|
1.15%
|
建設
|
0.4%
|
0.85%
(失業保険などの保険料率:0.4%)
(雇用保険二事業の保険料率:0.45%)
|
1.25%
|
【令和4年10月1日~令和5年3月31日】
事業の種類
|
⓵労働者負担
|
⓶事業者負担
|
⓵+⓶
雇用保険料率
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一般
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0.5%
|
0.85%
(失業保険などの保険料率:0.5%)
(雇用保険二事業の保険料率:0.35%)
|
1.35%
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農林水産・清酒酒造
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0.6%
|
0.95%
(失業保険などの保険料率:0.6%)
(雇用保険二事業の保険料率:0.35%)
|
1.55%
|
建設
|
0.6%
|
1.05%
(失業保険などの保険料率:0.6%)
(雇用保険二事業の保険料率:0.45%)
|
1.65%
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参考:令和4年度雇用保険料率のご案内|厚生労働省
雇用保険を受給できる条件
雇用保険に未加入だった場合、失業保険などの手当を受け取ることができません。
その救済措置として2年さかのぼって保険料を支払えば、加入したと認められます。
ですが失業保険をはじめとする恩恵を受け取るにはある一定の条件を満たしている必要があります。その条件とは、次のようなものです。
- 退職日から2年さかのぼり、被保険者資格が通算12か月以上ある
- すぐにでも働く意思がある
- いつでも働ける
- 積極的に就活をしているが、就職ができない
雇用保険料は2年をさかのぼることはできますが、退職時までに12か月以上を支払えなければ受給条件を満たすことができないのです。
勤務開始から退職日まで12か月未満だと、肝心の失業保険を受け取ることはできません。
必ずしも受給できるわけではない、その点をきちんと把握しておきましょう。
まとめ
勤めている企業が雇用保険に未加入だった、そう言われて驚かない人はいないでしょう。
会社に直談判をして加入するよう申立てをして、それでだめならハローワークなどの外部窓口を利用してみてください。
救済措置として2年間さかのぼって保険料を支払えば、加入していたと認められます。
ただ長く勤めていればいるほど、労働者にとって損をしているので毎月の給与明細で確認は怠らないよう気を付けたいところです。