未払い給料を会社に請求したい方へ
給料未払いについて「労働基準監督署に相談すれば解決する」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、労働基準監督署は、明確な根拠や証拠がないと動いてくれないことも多々あります。
また、労働基準監督署が動いてくれたとしても、会社との話し合いの仲介はしてもらえず、是正勧告には強制力がないので、必ずしも解決できるとは限りません。
その点、弁護士であれば以下のような対応が望めます。
- 自分の代わりに会社へ請求してくれる
- 給料未払いの証拠がない場合は証拠の集め方をアドバイスしてくれる
- 労働審判や労働訴訟などの裁判手続きも一任できる
労働基準監督署では対応してくれない案件でも、弁護士であれば解決できることもあります。
労働弁護士ナビには、初回相談無料・土日対応可の事務所も多数掲載しています。
一人で悩まずに、まずはお近くの弁護士にご相談ください。
給料の支払いは雇用者の義務です。
しかし、その義務を果たさない会社も少なからず存在します。
給料未払い(賃金未払い)が発生したときに、労働基準監督署に相談すれば解決できると思いますか?
問題を解決できないケースがほとんどです。
労働基準監督署は雇用者が法令を遵守しているか監督する機関ですので、会社に対して代理で交渉してもらえるわけではありません。
給料未払いは法令違反ですので、労働基準監督署による指導や是正勧告などによって適切に給料が支払われる可能性はありますが、個別の紛争を解決できない点に注意が必要です。
この記事では、雇用者の法令違反を是正したい人のために労働基準監督署がやってくれること・やってくれないこと、最大限活用する方法などを紹介します。
また、どういう場合に弁護士に相談するべきかを解説していますので、あわせて参考にしてください。
労働基準監督署は給料未払いに対応してくれる?対応が難しい場合とは
会社から給料未払いにされているとき、労働基準監督署に相談して対応してくれるのは、企業による違反事実が相当明白なケースに限られます。
つまり、給料が未払いになっていても、以下のような場合には何もしてくれない可能性が高くなります。
- 給料が未払いである証拠がそろっていない場合
- 会社に対して未払い請求をおこなっていない場合
- 優先順位が低いと判断される場合
給料が未払いである証拠がそろっていない場合
労働基準監督署は、企業の労基法違反の責任を追及する機関です。
労働基準法違反は刑事罰もあり得る違法行為です。
労働基準監督署は域内の企業がきちんと法律を守っているかどうかを監督し、違法行為があった場合は行政指導などで是正を促し、是正されない場合は刑事事件として立件することもあります。
ただ、労基署は公的機関であるため、「証拠」や「根拠」がないとただちに是正に動いてくれないのが難点です。
明白な給与未払いなどの違反行為があれば対応しますが「証拠のないこと」には動いてくれない傾向が強くなります。
つまり、あなたが実際に給料未払いで悩んでいた場合でも、根拠を明示しなかったら何もしてくれない可能性が高くなってしまいます。
給料が未払いである典型的な証拠としては次のようなものが挙げられます。
- 給与明細書
- タイムカード
- 源泉徴収票
- 雇用契約書
- 給与が振り込まれる預金通帳 など
会社に対して未払い請求をおこなっていない場合
一般的に、給料が未払いになったら労働者は会社に請求します。
請求されても支払われない場合は悪質な労基法違反です。
つまり、未払い給料を請求したことのない状態で相談にいくと「まずは支払いを請求してみては?そうしたらきちんと支払われるようになるかもしれない」と言われてしまう可能性があります。
そこで、労働基準監督署に未払い給料の問題を相談するならば、まずは内容証明郵便などを使って会社に請求書を送り、会社が「対応しなかった」事実を作りましょう。
優先順位が低いと判断される場合
労働基準監督署には労働者からさまざまな相談や通報が寄せられますが、人的・物的資源は有限です。
すべてに対応するのは困難ですから、効率を図るため、重大な案件から順番に処理していきます。
たとえば労災の死亡事故や大がかりな残業代未払いなどは重大です。
一方、1人の労働者の少額な給与未払いの場合、残念ながら軽微な事案と評価され、たとえ違反事実があっても後回しにされる可能性が考えられます。
労働基準監督署に給料未払いで動いてもらうコツ
労働基準監督署に相談をしても、対応してもらえなければ相談にいく意味が薄くなります。
そのため、動いてもらうには以下のように行動することがおすすめです。
- 「相談」ではなく「申告(通報)」を行う
- メールや電話での相談を利用しない
- 給料の未払いを証明する証拠を用意する
- わかりやすく説明する資料を作成する
- 弁護士に意見書を書いてもらう
「相談」ではなく「申告(通報)」をおこなう
1つ目のポイントは、「相談」ではなく「申告」をすることです。
というのも、何度もお伝えしている通り、労働基準監督署は雇用者の法令違反を是正する機関だからです。
給与を未払いにされたとき、「どうすればよいでしょうか?」と相談するのは、労働基準監督署の趣旨からずれています。
「給与未払いの会社を処罰してください」と「申告(違反の通報)」をするのが適切な行動なのです。
つまり、労働基準監督署に行くときには「給料未払いで労働基準法違反の会社だから違反を申告しに来た」というスタンスで臨むことで、すぐに対応してくれる可能性が高まります。
メールや電話での相談を利用しない
2つ目のポイントは、メールや電話ではなく、対面で報告することです。
労働基準監督署は、労働者からの通報を面談だけではなくメールや電話でも受け付けています。
しかしメールや電話の場合、どうしてもインパクトが弱くなりますし関係する資料なども十分に提出できません。
面談の場合は平日の昼間に労働基準監督署に行かなければならないので、少々不便ですが対応を促すためには実際に足を運んで企業の違法行為を訴えるべきです。
給料の未払いを証明する証拠を用意する
3つ目のポイントは、未払い給料の証拠を提示することです。
労働基準監督署を動かすためには、未払い給料の「証拠」が必要です。
通報前に、できるだけたくさんの証拠を集めましょう。
たとえば
- 以前には給与が振り込まれていた通帳(途中で振込が止まっているもの)
- あなたから会社へ給料を請求したときの請求書(内容証明郵便など)
- 会社からの返答や話し合いをしたときの録音データ
- 同僚も給与未払いになっているなら同僚の証言を書面化したもの
などがあるとよいでしょう。
ただし、上記のような典型的な証拠がないことも考えられます。
そういったときは、ケースバイケースで証拠を集めなければなりません。
個別具体的な証拠の集め方は弁護士にアドバイスがもらえます。
わかりやすく説明する資料を作成する
4つ目のポイントは、わかりやすい資料を作成することです。
労働基準監督署に相談したときに、職員に「わかりやすく伝える」ことが重要です。
何が起こっているのか伝わらなければ「再度整理してきてください」と言われてしまう可能性もあります。
今までの出来事を時系列にまとめるなどしてわかりやすく説明する資料を用意しましょう。
弁護士に意見書を書いてもらう
自分ではうまく説明できる自信がない場合には、弁護士に相談して事案の説明書や意見書を書いてもらう方法も有効です。
労働基準監督署に相談すると、調査官は関係者への聞き取りや資料の収集などをしますが、調査をし尽してくれるとは限りません。
事案が複雑なケースでは、弁護士が作成した意見書を提出すると調査官に事実関係が伝わりやすくなるでしょう。
ただし、弁護士に意見書を書いてもらうのであれば、「弁護士の意見書を持って労働基準監督署に行く」のか「弁護士に依頼して未払い給与の請求を代理でおこなってもらうか」はどちらが効率的か一考するべきでしょう。
労働基準監督署への相談・報告は、「給与が未払いである」ことの法令違反を伝えているにすぎません。
あなたの代理人となってこれまでの未払い給与を会社に請求してほしいのであれば、弁護士の方が有効です。
労働基準監督署に相談・申告に行く際の注意点
給料の未払いを労働基準監督署に相談・申告へ行くとき、注意しておかねばならないことがいくつかありますので解説します。
- 是正勧告や指導に強制力はない
- 申告したことが会社に発覚する可能性がある
- 他機関を紹介される可能性がある
是正勧告や指導に強制力はない
労働基準監督署は刑事処分も含めて、企業に指導勧告をおこなっています。
悪質な違反については刑事事件として送検することもありますが、企業に対して未払い給料の支払いを「命令」する権限はありません。
金銭支払いの命令権を持つのは裁判所になります。
つまり、労働基準監督署に申告して動いてもらえたとしても、必ずしも企業が給料を払ってくれるようになるとは限らない、強制力がないことにはあらかじめ覚えておきましょう。
申告したことが会社に発覚する可能性がある
労働基準監督署に申告をし、労働基準監督署から実際に企業に連絡を入れ、調査や指導勧告などの対応をとったとき、「誰が通報したのか」企業側に知られてしまうリスクがあります。
そうなると、申告した労働者の社内的な立場が悪くなるケースもみられます。
もちろん労働基準監督署への通報は正当な行為ですから、これを理由に解雇などの不当な処分をすることは違法で認められません。
そのような不当解雇は無効なので、解雇されても争うことができますし解雇通知後の賃金も請求可能です。
ただし、現実的に労働者と会社の関係が悪化し、働きづらくなる可能性が高まりますので、今後も会社で働き続けたいと考えている場合は慎重な判断をしましょう。
他機関を紹介される可能性がある
労働基準監督署に相談や申告をしても、労働基準監督署では「給料未払い」についての民事的な問題解決能力はありません。
労働者と企業の間に入って話し合いの仲介などをおこなえるのは「都道府県の労働局」です。
労働局は労働基準監督署と同じ厚生労働省関係の機関で関係が深いこともあり、労働基準監督署では対応が難しいときには、労働局の和解あっせんを紹介される例が多数です。
和解あっせんの利用は無料なので、会社と話し合ってみたい場合には利用するとよいでしょう。
なお労働基準監督署に通報をせず、当初から労働局の和解あっせんを申し込むことも可能です。
給料未払いを弁護士に相談する3つのメリット
給料未払いに対して労働基準監督署が必ずしも動いてくれるとは限らないことはおわかり頂けたかと思います。
以下のケースでは、弁護士へ相談することをおすすめします。
- 手元に証拠がない
- 証拠の集め方がわからない
- 労働基準監督署に相談したけれども動いてくれなかった
ここでは、給料未払いを弁護士に相談するメリットを解説します。
会社に代理で未払い給料を請求してもらえる
弁護士は労働者の代理人となって企業に対し、未払い給料を請求できます。
弁護士名で内容証明郵便による請求書を送ったら多くの企業が深刻に受け止めて、きちんと未払い給与の支払いに応じるようになります。
会社との交渉や合意書の締結なども任せられて安心です。
もし、証拠等がないない場合、もっとも有効なのは「弁護士に相談する」ことでしょう。
証拠がなくても相談にのってもらえる
弁護士は労働基準監督署と違い「証拠がない」ことだけで相談を断ることは少ないでしょう。
弁護士は訴訟も扱っていますから、将来裁判となった場合も見据えて、適切な証拠の集め方をアドバイスしてくれます。
現在手元に証拠がない場合でも弁護士に教えてもらって証拠を集め、会社に未払い給料を請求して払わせることができる事例も多々あります。
労働審判や労働訴訟を起こす場合に対応してもらえる
会社が任意で給料を払ってくれないなら労働審判や労働訴訟を起こす必要がありますが、弁護士にはこうした裁判手続きも任せられます。
また弁護士は刑事告訴や告発の代理権も持っているので、労働基準監督署への申告を弁護士に代わりにおこなってもらったり、付き添ってもらったりすることも可能です。
会社による未払い給料の問題で悩んでいるならば、労働問題が得意な弁護士に相談をして適切な対処方法を聞いてみましょう。
最後に
会社で給料を未払いにされたら、日々の生活にもかかわる非常に重大な問題です。
困ったときには労働基準監督署に「申告」するのもよいですし、難しそうと感じる場合には労働問題が得意な弁護士を探して相談してみるのがよいでしょう。