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退職金制度は、多くの企業が採用しており、2015(平成27)年度に内閣府がおこなった調査でも、約85%の企業が「退職金制度がある」と答えています。
労働者にとって一番気になるのは、もしリストラされた場合退職金は支払われるのか、退職金の上乗せや増額交渉ができるのかという点でしょう。
退職金にはいくつかのポイントがあります。
ここでは退職金が支払われる条件や、退職金増額交渉のポイントについて紹介します。
退職金とは労働者の退職にあたって会社が支払う賃金です。
退職金そのものは法律上支払い義務のあるものではなく、支払われるかどうかは会社と労働者の契約内容(雇用契約、就業規則)次第です。
したがって、契約上会社が退職金を支払うことが決まっていない場合には、リストラであろうが、解雇であろうが、会社から退職金が支払われることはありません。
東京都産業労働局が2016年に調査した結果によると、退職金制度を実施する会社における退職金は30代〜50代で給与の4.1ヶ月〜20.2ヶ月分と幅広くなっています。
これは退職金制度の内容が会社によってまちまちであるからと思われます。
したがって、下表はあくまで「目安」であり相場ではないことに注意してください。
勤続年数 |
年齢 |
自己都合退職 |
|
支給金額(円) |
支給月数 |
||
10 |
32 |
¥1,148,000 |
4.1ヵ月 |
15 |
37 |
¥2,251,000 |
7.1ヵ月 |
20 |
42 |
¥3,805,000 |
10.3ヵ月 |
25 |
47 |
¥5,626,000 |
14.4ヵ月 |
30 |
52 |
¥7,490,000 |
17.7ヵ月 |
勤続年数 |
年齢 |
会社都合退職 |
|
支給金額(円) |
支給月数 |
||
10 |
32 |
¥1,527,000 |
5.5ヵ月 |
15 |
37 |
¥2,847,000 |
8.9ヵ月 |
20 |
42 |
¥4,577,000 |
12.4ヵ月 |
25 |
47 |
¥6,467,000 |
16.6ヵ月 |
30 |
52 |
¥8,560,000 |
20.2ヵ月 |
会社はリストラを実施する際に、希望退職者を募ります。
この場合、希望者を増やすために通常の退職金に上乗せした割増退職金を支払うということが往々にしてあります。
「プレジデントオンライン」では、大手企業の割増退職金を図のように試算しています。
退職金が基本給を基準として設定されている場合、基本給が下がれば当然退職金額も下がります。
したがって、降給されたときは退職金に影響がないか、まず社内規程をチェックするべきでしょう(わからなければ人事に聞きましょう)。
退職金は勤続年数を基準に設定されていることも多いです。
そして、私傷病や育児・介護などで休業した場合、当該休業期間を勤続年数から除外している会社もあるようです。
このような会社で休業期間がある場合、これが勤続年数から除外された結果、同年数が短くなって退職金が減額されるという可能性は否定できません。
なお、内閣府の調査結果では、育児などによる休暇については、「勤続年数に含めない」と回答した企業が34.6%でした。
育児や介護によって休業すると、休業期間中は雇用保険などからの給付金を受け取れる場合があるため、公平性を保つための減額と考えられます。
リストラ退職金は、法律上の規定がないため、支払わなくても違法にはなりません。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
引用元: 労働基準法 | e-Gov法令検索
上記のとおり、退職金が支払われるかどうかは会社と労働者の契約内容次第です。
リストラされる場合には必ず退職金がもらえるというのは誤解であるため注意しましょう。
リストラにあたって希望退職を募る場合には、割増退職金を支給する場合が多いことは上で記載しました。
このような割増退職金は通常は全社一律におこなわれますので、個別の労働者との交渉によってこれが上下・変動するということはあまりありません。
しかし、全社的リストラではなく個別の退職勧奨によって退職を求められた場合には、割増退職金を増額するよう交渉することは可能だと思います。
その際の留意点を以下に記載します。
退職勧奨は個別の面談に基づいておこなわれます。
この面談については可能な限り、面談の日時・内容を記録に残してください。
面談の記録は退職金の交渉だけでなく、不当な退職勧奨を受けたことの証拠として活用できます。
有給休暇が残っている場合は、買い上げを求めるという方法もあり得ます。
しかし、会社に有給休暇買取の義務はないため、あくまでお願いベースの交渉です。
個別の退職勧奨を実施しているということは、会社はできるだけ早くあなたに会社を辞めてほしいと考えているはずです。
そのため、退職時期を早める交換条件として割増退職金の増額を求めることもできます。
残業代などが未払いの場合、割増退職金の増額とは別に、残業代請求が可能です。
ただし、一方で残業代請求権を放棄することを条件に、割増退職金の増額を求めるということもあり得るかもしれません。
退職金は収入と認められるお金なので、所得税や住民税の対象になります。
ただし、「退職所得」と呼ばれる所得になるため、通常の収入とは異なる計算方法になります。
退職所得控除の計算方法は勤続年数によって変わります。
勤続年数が20年以下の場合は、勤続年数に40万円をかけたものが退職所得控除額です。
勤続年数が20年超の場合、退職所得控除額の計算方法は以下のとおりです。
法律上、会社は退職金支払義務を負いません。
そのため、雇用契約書や社内規定で明記されていない限り、会社には退職金の支払い義務はありません。
あくまでも会社内でどのような規定になっているかが重要な問題となります。
社内規定に退職金が明記されていない場合でも、労働者と会社の間で退職時に一定の金銭を支払う慣行が成立しているという場合、労使慣行として会社に退職金支払義務があると認められる場合があります。
もっとも、このような労使慣行成立の有無は難しい問題であるため、弁護士などの専門家に相談したほうが無難です。
本記事では、退職金についての基本事項と応用的な事項を簡単に説明しました。
参考となれば幸いです。
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