パワハラ・セクハラ・未払い残業代・過重労働・リストラなどの労働トラブルが起こった際に、専門家に相談したくても費用がネックになり、相談が出来ず泣き寝入りしてしまう方が多くいらっしゃいます。
そんな方々を、いざという時に守るための保険が弁護士費用保険です。
労働トラブルに限らず、交通事故や離婚トラブル、子供のいじめなど様々な法律トラブルでも利用可能です。
弁護士保険で法律トラブルに備える
損害賠償請求とは、他人の行為・物により損害を被った際に、加害者側に対して損害の補償を求めることをいい、交通事故の被害者が加害者に対して治療費を請求することなどが代表例です。
損害賠償請求は自力でおこなうことも可能ですが、実は、本来受け取れるはずの賠償額を受け取れないリスクや、請求自体が認められないリスクなどがあります。
本記事では、弁護士なしで損害賠償請求をおこなうデメリットのほか、弁護士に依頼すべき理由や、弁護士費用を用意できない場合の対処法について詳しく紹介します。
はじめに、損害賠償請求を「弁護士なしでおこなう」または「自力でおこなう」ことのデメリットについて解説します。
弁護士なしで裁判をおこなうことを、本人訴訟といいます。
令和4年の調査によると、地方裁判所での民事訴訟において、本人訴訟の割合はわずか7%にすぎず、原告側(訴えを起こす側)の90%に弁護士がついていました。
確かに、法律上は本人訴訟で損害賠償請求をおこなうことも可能で、自力でやれば弁護士費用の節約にもつながります。
しかし本人訴訟はリスクが大きいため、メリットとリスクを慎重に検討しなければなりません。
本人訴訟の具体的なリスク・デメリットについては、次項で詳しく解説します。
ここからは、弁護士なしで損害賠償請求をおこなうデメリットを9つ紹介します。
本人訴訟を検討されている方は、あらかじめ確認しておきましょう。
弁護士なしで損害賠償請求をおこなう場合、まず直面するのが法律の複雑さです。
法律は専門的で多岐にわたり、ひとつの事例でも多くの法律条文が関わることがあります。
また単に法令に書かれている文言だけではなく、過去の裁判例や学説、場合によっては海外の事例まで理解しなければなりません。
たとえば、不法行為に基づく損害賠償請求の場合、民法709条を中心に請求を組み立てることとなります。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法709条 e-gov法令検索
民法709条にいう『過失』とは、「結果発生の予見可能性を前提とした結果回避義務違反である」と説明するのが判例・学説の一貫した理解であり、弁護士が作成する書面には必ずこうした文言がでてきます。
ところが条文にそのようなことは書かれていないため、自力で損害賠償請求をすると、単に「過失があった」とだけ述べてしまい、相手方から「過失の主張が不十分である」と反論されるようなケースが多いのです。
このように、法律を使いこなすためには条文以外の知識が非常に重要となるため、しっかりと理解するためには膨大な時間と労力が必要となってしまいます。
自力で損害賠償請求をおこなうと、適切な主張・立証、相手方への反論ができず、不利になってしまう可能性があります。
たとえば、民法709条に基づいて損害賠償請求をおこなう場合、主張・立証しなければならない点は次の通りです。
<損害賠償請求にあたり主張すべきこと>
このような、請求を立証するために必要な項目を『要件事実』といいますが、こちらも条文からは読み解きづらく、分かりやすく解説している書籍・Webサイトもほとんどありません。
このうち、一部でも主張・立証が欠けてしまうと、損害賠償請求は認められません。
しかし、これらの事実を立証する証拠を収集・評価・提出することは難しく、無理に自力でおこなうと証拠が不足してしまったり、相手方の弁護士から厳しく追求されたりするリスクがあります。
本人訴訟では、本来ならば賠償を請求できる損害を見落とし、賠償額が少なくなってしまう可能性があります。
損害賠償請求では、直接的な損害だけではなく、間接的な損害や精神的苦痛に対する慰謝料なども請求可能ですが、実際にどの範囲で請求できるかはケースバイケースです。
素人目には実際にどの範囲・どの金額を請求すべきかの判断は難しく、過度に請求すれば訴訟費用が高額となり、過小に請求すれば費用倒れになってしまいかねません。
損害賠償請求には、たとえば事故報告書や医療記録、証拠写真、目撃証言など、多くの書類や証拠の準備が必要です。
これらの書類を適切に収集し、整理するのには非常に手間がかかり、また、何が必要なのかを見極める知識も求められます。
もし準備不足や証拠不備のまま争うと、請求が認められなかったり、賠償額を減額されてしまうリスクがあります。
特に相手方に弁護士がついている場合は、相手方にとって有利な証拠ばかりを裁判官が受け取ることとなり、非常に不利な立場に立たされてしまいます。
損害賠償請求の過程で、法廷での尋問がおこなわれることがあります。
この尋問は、原告や被告、証人に対しておこなわれるもので、裁判官が判断を下すうえで非常に重要な証拠のひとつです。
弁護士なしで尋問をおこなう場合、適切な質問を考え、効果的に証言を引き出すのは非常に困難であり、尋問が不十分であれば裁判官に悪い心証を与えてしまいます。
また、相手方の弁護士が巧妙に質問を仕掛けてくる場合もあり、対応を誤ると不利な証言を引き出されてしまう危険性もあります。
本人訴訟では手続きの遅れや不適切な対応により、裁判が長期化してしまう可能性が高くなります。
たとえば、法的知識や経験の不足により裁判所からの指示に適切に対応できず、書類の提出が遅れることも珍しくありません。
また、相手方の主張に対して効果的な反論ができないため、争点を整理できずに裁判が長引いてしまうこともあります。
さらに、和解の機会を適切に判断できず、不必要に裁判を継続してしまう可能性あるでしょう。
裁判の長期化は、精神的・経済的負担を増大させるだけではなく、最終的な賠償金額にも悪影響を及ぼす可能性があります。
損害賠償請求の手段には、訴訟以外にも民事調停やADR(裁判外紛争手続)など、さまざまな手続きがあります。
民事調停やADRは、訴訟と比べて迅速な解決を期待できるものの、いずれも裁判所を介した法的手続であることの変わりはなく、場合によっては訴訟以上に交渉や和解のテクニックが重要となります。
訴訟にいたっては、民事訴訟法に基づいた厳格な手続きを踏まなければならず、用意すべき書面・証拠も極めて複雑です。
弁護士なしでこれらの専門的な手続きに対応するのは非常に困難であり、リスクが高いといえるでしょう。
弁護士なしで損害賠償請求をおこなうと、全ての手続きを自力で対応しなければならないため、大きな精神的ストレスがかかります。
法的手続きには、書類の作成や証拠の収集といった事務的な作業だけではなく、相手方との交渉・折衝など、精神的な負担となる作業も多く含まれます。
また、自力で請求をおこなうことにより紛争が長期化すると、常にストレスを抱える状態になり体調を悪くする可能性も高まるでしょう。
自力で損害賠償請求をする場合には、仕事を休まざるを得ない状況が頻繁に発生します。
裁判所の期日は平日の日中に設定され、多くの法律事務所も平日しか営業していないため、裁判所への出廷・相手方弁護士との交渉のたびに休暇を取得しなければならないからです。
特に裁判が長期化する場合には、頻繁に休暇を取得することとなり、業務に支障をきたす可能性があります。
弁護士に依頼した場合でも、証言のために出廷しなければならない場合もありますが、多くの手続きを弁護士が代行するため、出廷の回数を大幅に減らすことが可能です。
ここまでは、損害賠償請求を自力でおこなうデメリットやリスクについて解説しました。
以下では弁護士に損害賠償請求の対応を依頼するメリットを5つ紹介します。
弁護士に依頼する大きなメリットは、さまざまなケースに対して臨機応変に対応してもらえる点です。
損害賠償請求は、労働問題、交通事故、医療過誤など、分野ごとに特有の法律や判例が存在し、それぞれに適した対応が求められます。
弁護士であれば、示談交渉が有利な場合は迅速に交渉を進め、訴訟が必要な場合は適切に準備をおこなってくれます。
また、相手方の出方に合わせて柔軟に方針を変更することもできます。
そのため状況に応じて最適な判断を下し、依頼者にとって最も有利な結果を導き出してくれるので、依頼者は安心して手続きを任せられるでしょう。
弁護士に損害賠償請求手続きを依頼することで、適正かつ根拠のある賠償金額を計算してもらえます。
弁護士は過去の判例や類似事案を参考にしつつ、被害の程度・治療費・休業損害・慰謝料など、様々な要素を考慮して金額を算出し、将来的な損害も見据えた計算が可能です。
さらに相手方から提示された金額が適切かどうかを判断し、必要に応じて交渉することもできるので、より適正な賠償金額を得られる可能性が高まるでしょう。
弁護士に損害賠償の対応を依頼することで、交渉や手続きがスムーズに進むことを期待できます。
弁護士は法律の専門家として、必要書類の作成や提出、相手方との交渉、裁判所とのやり取りなど、さまざまな手続きを熟知しています。
一般の人が戸惑うような複雑な手続きも迅速かつ正確におこなえるので、裁判所や相手方の弁護士とのやり取りも円滑に進めてくれます。
ほかにも、弁護士同士のネットワークを活用して効率的に情報を収集したり、弁護士会を通じて職権調査をおこなうことで、一般人であればアクセスできない情報を調査することもできます。
弁護士に依頼することで、損害賠償請求に伴う精神的なストレスを大幅に軽減できます。
本人訴訟では、そもそも何らかの被害を受けたことによりダメージを負っているところに、さらに法的な手続きという大きなストレスが加わるため、精神的負担は非常に大きいものとなります。
弁護士に依頼すると、代わりに相手方の保険会社とやり取りしてくれたり、依頼者の味方になって適切なアドバイスをくれたりするので、自分で全てを処理しなければならないという重圧から解放されます。
損害賠償請求に伴う精神的な負担を大きく減らし、仕事や学校、治療に専念できるようになるのは弁護士に依頼する大きなメリットといえます。
弁護士に損害賠償請求を依頼することで、より有利な条件で問題を解決できる可能性が高まります。
たとえば、示談交渉では相手方の弱点をつきながら交渉し、訴訟では裁判官に対し説得力のある主張を展開してくれるので、より高額な賠償金を引き出すことも期待できます。
逆に相手方に弁護士がついている場合には、相手側が圧倒的に有利となる危険性が高くなるため、早急に弁護士に相談しましょう。
損害賠償請求をする状況によっては自力で請求しても問題ないケースもあります。
ただし必ずしもデメリットやリスクがゼロになるとは限らないため、できる限り弁護士に相談することをおすすめします。
損害賠償請求において、相手方との間で全く争点がないようなときは、弁護士なしで対応しても問題ない場合があります。
争点がない場合とは、事実関係が明確であって解釈の余地がなく、相手方が全面的に非を認め、賠償金額についても合意が取れているようなケースです。
しかし、一見単純にみえる事案であっても、専門家の視点からみると実は複雑な争点が潜んでいたり、後になって後遺障害が生じるようなケースもあるため、完全に安心はできません。
そのため、少なくとも一度は弁護士に相談し、本当に争点がないか確認してもらうことをおすすめします。
少額訴訟で損害賠償請求をおこなう場合には、弁護士なしで対応できることがあります。
少額訴訟とは、請求額が60万以下の場合に利用できる訴訟であり、通常の訴訟よりも手続きが簡略化されているため、短期間で結論が出る手続きです。
そもそも少額訴訟は、一般の人でも気軽に裁判所を利用できるように設計された制度であり、裁判官も通常訴訟と比べて柔軟に対応してくれるため、法律の専門知識がなくても利用しやすいのです。
ただし、相手方が弁護士を立てている場合や、複雑な法律問題が絡む場合には、やはり弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
弁護士に支払う費用の内訳は、①着手金、②報酬金、③その他の費用に大きく分けられ、それぞれの概要を簡単にまとめると次のようになります。
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弁護士に支払う金額は、事案の難易度や損害賠償の額、地域によって変動するため、明確な基準というものはありません。
参考までに以下では「(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準」をもとに、およその相場を紹介していきます。
弁護士は、依頼者・相談者からの要望があれば詳細な見積もりを作成することが法律により求められているため、実際の費用感については弁護士との面談時に相談してみましょう。
着手金とは、弁護士への正式な依頼の際に必要な費用であり、結果がどうであれ返金されることはありません。
(旧)弁護士報酬基準によると、着手金の基準は以下の通り定められています。
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たとえば、1,000万円の損害賠償訴訟を弁護士に依頼する場合、着手金の額は以下のように計算されます。
1,000万円 × 5% +9万円 = 59万円
ただし、交通事故案件など一部の案件については、着手金を無料としている法律事務所・弁護士も多くあるので相談時に確認しておきましょう。
報酬金とは、弁護活動が成功して利益を得られた場合に支払う費用のことで、不成功(全面敗訴)の場合には支払う必要はありません。
(旧)弁護士報酬基準では、報酬金の基準について次の通り定められています。
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たとえば、2,0000万円の損害賠償請求訴訟を弁護士に依頼し、1,000万円の限度で支払いが認められたときは、報酬金の計算は以下の通りとなります。
1,000万円 × 10% + 18万円 = 118万円
着手金・報酬金のほか、弁護士に支払う費用として以下のものがあります。
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初回相談を無料としている弁護士・裁判所も増えているものの、多くの場合は2回目以降の相談は有料となるため注意が必要です。
およその相場としては30分ごとに5,000円〜25,000円ほどであり、1時間10,000円が基準となります。
近年では、弁護士の稼働時間に応じて報酬を支払う『タイムチャージ制』を導入している弁護士も増えているため、事前にしっかりと料金体系を確認しておきましょう。
最後に、弁護士費用が用意できない場合に弁護士に相談・依頼する方法について紹介します。
どうしても費用をかけずに弁護士に依頼したい場合は参考にしてください。
金銭的な余裕がない場合には、法テラス(日本司法支援センター)の利用を検討してみましょう。
法テラスは法務省が管轄している公的機関であり、民事・刑事を問わず、法律問題に困っている人への無料法律相談や、弁護士費用の立替制度を提供しています。
立て替えられた費用は、事件終了後に分割で返済することができるため、初期費用の負担を大幅に軽減することが可能です。
ただし、立替制度を利用するためには収入や資産状況に関する条件をクリアする必要があるので、法テラスの公式サイトで確認してください。
また、自分で弁護士を選ぶことはできないため、特定の案件に慣れていない弁護士や、性格が合わない弁護士を紹介される可能性があるというデメリットもあります。
費用がない場合の対処法として、分割払いに対応してくれる弁護士・法律事務所を探すのもひとつの方法です。
一部の法律事務所では、依頼者の経済的状況に配慮し、弁護士費用を分割払いで受け付けている場合があります。
具体的な支払条件や分割の回数などは、法律事務所によって異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
交通事故などの一部の案件に関しては、着手金を無料とし、完全成果報酬型で依頼を受け付けている場合もあるため、法律事務所の公式サイトなどをよく確認することをおすすめします。
損害賠償請求は自力でおこなうことも可能ですが、多くの時間を費やす必要があり、精神的にも大きな負担となってしまいます。
また、無理に自力で手続きを進めると、本来得られるはずだった賠償額を得られなかったり、請求自体が通らなかったりすることも珍しくありません。
弁護士に依頼すれば、専門的な知識・経験に基づき、最適な手段を検討してもらえるだけでなく、適正な賠償額を受け取れる可能性が高くなります。
金銭的な余裕がない場合でも、法テラスや分割払いサービスを利用すれば弁護士に依頼できるため、まずは初回無料相談を受け付けている弁護士に相談してください。
無料相談後に依頼は必須ではないので、安心して利用しましょう
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