社労士と弁護士の違いを徹底解説|役割・業務・依頼内容などを比較
- 「社労士と弁護士は何が違うの?」
- 「労働トラブルは、どちらに相談すればいいのだろう…」
このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
社労士(社会保険労務士)と弁護士は、どちらも法律に関わる専門家ですが、対応できる業務や役割には大きな違いがあります。
たとえば、社労士は労務管理や社会保険手続き、就業規則の作成などを得意とする一方、弁護士は訴訟対応や代理交渉など、法律トラブル全般に対応できる点が特徴です。
本記事では、社労士と弁護士の違いについて、役割・業務範囲・対応できる内容などを比較しながらわかりやすく解説します。
それぞれに依頼すべきケースや選び方のポイントについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
社労士と弁護士の違い早見表
まずは、社労士と弁護士の違いについて整理しておきましょう。
社労士(社会保険労務士)は、労働や社会保険に関する手続き・労務管理を専門とする国家資格です。
一方、弁護士は、法律問題全般を取り扱う国家資格であり、交渉や裁判などの紛争対応をおこなえる点が大きな特徴です。
どちらも法律の専門家ではあるものの、対応できる業務や役割には明確な違いがあります。
まずは、両者の違いを表で確認してみましょう。
| 項目 | 社労士 | 弁護士 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 労務管理や社会保険手続きを支える専門家 | 法律トラブル全般を解決する専門家 |
| 主な業務 | 社会保険・労働保険の手続き、就業規則作成、労務相談など | 交渉代理、訴訟対応、契約書チェック、法律相談など |
| 得意分野 | 労務管理、助成金、労災申請、就業規則整備など | 未払い残業代請求、解雇トラブル、損害賠償請求など |
| 交渉・裁判対応 | 原則不可(※一部例外あり) | 可能 |
| 主な相談先 | 企業の人事担当者・経営者 | 労働者・企業の双方 |
社労士と弁護士の役割に関する違い
社労士と弁護士の違いを理解するうえで、まず確認しておきたいのが「法律上の使命」です。
両者はともに国家資格ですが、法令で定められている役割の方向性は大きく異なります。
ここでは、それぞれの法律に明記されている使命を確認しながら、役割の違いを整理します。
1.社労士|労働・社会保険の法令を円滑に実施することなど
社会保険労務士の使命は、社会保険労務士法に定められています。
第一条 社会保険労務士は、労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施を通じて適切な労務管理の確立及び個人の尊厳が保持された適正な労働環境の形成に寄与することにより、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上並びに社会保障の向上及び増進に資し、もつて豊かな国民生活及び活力ある経済社会の実現に資することを使命とする。
この条文からもわかるとおり、社労士は「労働」と「社会保険」に特化した国家資格です。
主な役割は、労働関連法令や社会保険制度を適切に運用し、企業の労務管理や働きやすい職場環境づくりを支援することにあります。
具体的には、以下のような業務を取り扱います。
- 社会保険・労働保険の手続き
- 就業規則の作成や変更
- 給与計算や労務管理の助言
- 年金に関する相談
とくに年金分野は、社労士の代表的な専門領域のひとつです。
老齢年金や障害年金、遺族年金など、公的年金制度に関する相談対応や申請サポートをおこなうケースも少なくありません。
このように社労士は、企業や労働者が日常的に直面する「労務・社会保険の手続きや制度運用」を支える専門家です。
一方で、裁判や相手方との法律交渉など、紛争解決を代理人としておこなうことは原則としてできません。
そのため、社労士は「トラブルを解決する専門家」というよりも、「労務管理や制度運用を円滑に進める専門家」と理解するとわかりやすいでしょう。
2.弁護士|基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること
弁護士の使命は弁護士法に次のように定められています。
第一条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務をおこない、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。
弁護士は、特定の分野に限定されることなく、法律問題全般を取り扱える国家資格です。
労働問題はもちろん、離婚・相続・刑事事件・企業法務・債権回収など、幅広い法的トラブルに対応できます。
なかでも大きな特徴となるのが、「依頼者の代理人として交渉や裁判をおこなえる権限」を持っている点です。
たとえば、未払い残業代請求や不当解雇などの労働トラブルが発生した場合、弁護士は依頼者の代理人として会社側と直接交渉できます。
さらに、交渉で解決に至らなかった場合には、労働審判や訴訟などの法的手続きを通じて、問題解決を図ることも可能です。
また、企業法務の分野では、人事労務だけではなく、以下のような幅広い業務に対応しています。
- 契約書の作成・チェック
- 債権回収
- M&Aや事業承継
- コンプライアンス対応
- 株主トラブルや企業間紛争への対応
このように、弁護士は「法律トラブルの解決」を中心に、法的リスクへの対応全般を担う専門家です。
社労士が労務管理や社会保険制度の運用を支える役割を担うのに対し、弁護士は、交渉・裁判を含めた紛争解決まで対応できる点が大きな違いといえるでしょう。
社労士と弁護士の業務内容に関する違い
社労士と弁護士は、いずれも法律に基づいて業務をおこないますが、取り扱う事務の範囲や代理権の有無に大きな差があります。
ここでは、法律上の規定を踏まえながら、それぞれの業務内容を比べてみましょう。
1.社労士|労働保険・社会保険の申請書の提出など
社労士の業務範囲は、社会保険労務士法第2条に規定されています。
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。
一の三 労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、再審査請求その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る。以下この号において「申請等」という。)について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)について、代理すること(第二十五条の二第一項において「事務代理」という。)。
一の四 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第六条第一項の紛争調整委員会における同法第五条第一項のあつせんの手続並びに障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)第七十四条の七第一項、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第三十条の六第一項、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第十八条第一項、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第四十七条の八第一項、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)第五十二条の五第一項及び短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)第二十五条第一項の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること。
一の五 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百八十条の二の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第一条に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)第六条に規定する労働争議に当たる紛争及び行政執行法人の労働関係に関する法律(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二十六条第一項に規定する紛争並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)をいう。以下単に「個別労働関係紛争」という。)に関するあつせんの手続について、紛争の当事者を代理すること。
一の六 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が百二十万円を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る。)に関する民間紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第二条第一号に規定する民間紛争解決手続をいう。以下この条において同じ。)であつて、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること。
二 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含み、申請書等を除く。)を作成すること。
三 事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること(これらの事項に係る法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査することを含む。)。
条文の内容を整理すると、社労士の主な業務は以下のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 申請書作成 | 労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成 |
| 提出代行 | 申請書等の提出手続きの代行 |
| 事務代理 | 行政機関等に対する申請等の事務代理 |
| 帳簿書類作成 | 就業規則、労働者名簿、賃金台帳などの作成 |
| 相談・指導 | 労務管理や社会保険に関する相談・指導 |
社労士は、企業が日常的におこなう労務手続きや制度運用をサポートする専門家です。
たとえば、従業員の入退社に伴う社会保険・雇用保険の手続きや、就業規則の整備、助成金申請などを担います。
また、「働き方改革関連法」への対応や、長時間労働対策、ハラスメント防止体制の整備など、近年は労務コンプライアンスに関する支援を依頼されるケースも増えています。
さらに、一定の研修・試験を経て登録された「特定社労士」は、個別労働関係紛争における「あっせん手続き」の代理業務をおこなうことも可能です。
ただし、裁判所での訴訟代理や、広範な法律上の交渉を単独でおこなうことは原則として認められていません。
2.弁護士|訴訟の代理や高度な法律問題の相談など
弁護士の業務範囲は、弁護士法第3条に定められています。
第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
弁護士は、労働問題に限らず、法律事務全般を取り扱うことが可能です。
主な業務内容を整理すると、以下のようになります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 訴訟代理 | 民事訴訟、労働審判などの代理 |
| 交渉代理 | 当事者の代理人として相手方と交渉 |
| 行政不服申立て | 行政庁に対する審査請求や再審査請求 |
| 法律相談 | 法律問題全般に関する助言 |
| 企業法務 | 契約書チェック、コンプライアンス体制整備、M&Aなど |
弁護士の大きな特徴は、「依頼者の代理人として法的交渉や裁判をおこなえる権限」を持っている点です。
たとえば、未払い残業代請求や不当解雇、ハラスメント問題など、すでに会社との対立が発生しているケースでは、弁護士が代理人として会社側と交渉し、必要に応じて労働審判や訴訟を提起できます。
また、企業側からの依頼については、契約トラブルや債権回収、株主対応など、人事労務以外の法的リスクにも幅広く対応しています。
このように、社労士が「労務管理や社会保険制度の実務」を担うのに対し、弁護士は「紛争解決を含む法律問題全般」に対応できる点が大きな違いです。
【悩み別】社労士に相談・依頼したほうがよいケース
ここまで、社労士と弁護士の役割や業務内容の違いを確認してきました。
では、実際にどのような場面で、どちらに相談するのが適切なのでしょうか。
具体的なケースをみていきましょう。
1.労災の申請などをしたい場合|社労士に相談する
社労士に相談・依頼できるのは、主に日常的な労務管理や社会保険に関する内容です。
たとえば、労災保険の給付申請をおこないたい場合や、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の手続きが必要な場合は、社労士が専門とする分野です。
社会保険および労働保険の加入・喪失手続きは法令に基づいて正確におこなう必要があり、誤りがあると給付に影響が生じる可能性があります。
手続きに不安がある場合には、社労士に依頼することで適切な処理が期待できます。
また、社会保障制度全般について疑問がある場合にも、社労士への相談が有効です。
制度の仕組みや受給要件について整理し、どのような対応を取るべきか助言を受けることができます。
さらに、給与計算や残業代の算定など、日常的な労務管理に関する相談も社労士の専門領域です。
労働基準法や就業規則の内容を踏まえた適切な計算方法について助言を受けることで、将来的なトラブルの予防にもつながります。
2.労働トラブルが生じている場合|弁護士に相談する
一方で、未払い残業代や不当解雇、ハラスメントなど、すでに労働トラブルが生じている場合には、弁護士への相談が適しています。
弁護士は、当事者の代理人として相手方と交渉することができます。
交渉で解決に至らない場合には、労働審判や訴訟などの法的手続きを通じて解決を図ることも可能です。
また、契約書や就業規則の内容を法的観点から精査し、紛争の予防につなげるリーガルチェックも弁護士の業務に含まれます。
条項に不明確な点や法令に抵触する内容が含まれている場合には、紛争の原因となるおそれがあります。
弁護士に確認を依頼することで、法的リスクを軽減可能です。
さらに、労働問題に限らず、コンプライアンス体制の整備や社内規程の見直しなど、総合的な法的リスク管理をおこないたい場合にも弁護士が適しています。
複雑な事案を整理し、法的な観点から戦略的に対応することができる点が強みです。
さいごに|「ベンナビ労働問題」で弁護士を探して相談してみよう!
社労士と弁護士は、いずれも法律に基づいて業務をおこなう国家資格者です。
しかし、その役割や業務範囲、代理権の有無には明確な違いがあります。
労災申請や社会保険手続き、給与計算など、制度の運用や日常的な労務管理が中心であれば社労士への相談が適しています。
一方で、未払い残業代請求や不当解雇、ハラスメントなど、すでに紛争が生じている、または交渉や法的手続きが必要な場合には、弁護士への相談が必要です。
労働トラブルは、対応が遅れるほど不利になることがあります。
とくに相手方との交渉や訴訟を視野に入れる場合には、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
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