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カスハラを会社が守ってくれないときの対処法|会社への損害賠償請求を中心に解説

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このコラムを監修
弁護士法人若井綜合法律事務所
澤田剛司 弁護士
弁護士
カスハラを会社が守ってくれないときの対処法|会社への損害賠償請求を中心に解説

カスタマーハラスメント(以下カスハラ)への対処は会社側がおこなう必要があります。

しかし、適切な対処がおこなわれず、会社が守ってくれないケースも少なくありません

もしカスハラ被害が放置されている場合、労働者はどのような対応ができるのでしょうか。

本記事では、カスハラ被害に遭っている方に向けて、以下の内容について説明します。

  • カスハラ被害から会社が守ってくれないときの4つの選択肢
  • カスハラ被害から守ってくれない会社に損害賠償請求をする要件
  • カスハラ被害から守ってくれない会社に損害賠償を請求する方法
  • カスハラ被害に遭ったときに労働者側が取っておくべき対応 など

カスハラ被害から守ってくれない会社に対して、適切な請求をおこなえるようになりましょう。

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カスハラ被害から会社が守ってくれないときの4つの選択肢

会社がカスハラ被害から守ってくれないときの対処法は、以下のとおりです。

  1. 上司や担当部署などに相談する
  2. 会社に見切りを付けて退職する
  3. 会社に対して損害賠償を請求する
  4. 警察に相談して被害届を提出する

ここでは、カスハラ被害から会社が守ってくれないときの対処法について解説します。

1.上司や担当部署などに相談する

まずは直属の上司や人事部、社内の相談窓口へ相談しましょう。

相談しておけば、会社側がカスハラ被害を把握していた証拠になります。

報告には、記録が残るメールやチャットなどを利用することをおすすめします。

上司や担当部署へ報告しておくべき内容
  • 被害を受けた日時
  • 被害を受けた場所
  • 相手の具体的な言動 など

カスハラ被害が複数回ある場合は、できる限りその都度報告するほうが望ましいです。

2.会社に見切りを付けて退職する

会社がカスハラ被害から守ってくれない場合は、退職を検討するのも一つの方法です。

「たかがカスハラで退職なんてできない…」などと考える必要はまったくありません。

実際、近年はカスハラ被害に耐えかねて、転職を検討している人も増えています。

我慢は自分のためにならないので、退職を選択肢に入れることをおすすめします。

もし会社に退職を申し出るのが難しい場合は、退職代行を使うのもよいでしょう。

3.会社に対して損害賠償を請求する

カスハラを理由に健康被害を負った場合は会社に対して損害賠償を請求できます。

会社は、カスハラから従業員を守る安全配慮義務を負っています(労働契約法第5条)。

会社が守ってくれなかった場合には、安全配慮義務違反が認められる可能性が高いです。

カスハラがきっかけでうつ病や適応障害などを発症した場合は検討するとよいでしょう。

なお、安全配慮義務違反については、以下のページで解説しているため確認してください。

4.警察に相談して被害届を提出する

カスハラが犯罪に該当する可能性があるなら、警察への相談・通報を検討しましょう。

たとえば、以下のような被害に遭った場合は、被害届が受理される可能性が高いです。

  • 土下座を要求される→強要罪
  • 物を投げつけられる→暴行罪
  • 「無能」などと馬鹿にされる→侮辱罪
  • 「慰謝料を払え」などと脅される→恐喝罪

警察に相談する際は、録音データなど被害を裏付ける証拠を持参するのがおすすめです。

証拠があるほうが事件性の判断がしやすく、警察に被害届を受理してもらいやすいです。

カスハラ被害から守ってくれない会社に損害賠償請求をする要件

カスハラ被害を理由に会社に損害賠償を請求する際の要件は、以下のとおりです。

  • 会社に予見可能性があったか
  • 会社が結果回避義務を果たしているか
  • 安全配慮義務違反と心身の不調に因果関係があるか

ここでは、カスハラを理由に会社へ損害賠償を請求するための要件を確認しましょう。

1.会社に予見可能性があったか

まず会社が、従業員の心身への危害が発生することを認識している必要があります。

一般的には、以下のような基準で予見可能性があったかどうかが判断されています。

  • 従業員への危害の発生を事前に具体的に予測できたか
  • 通常、気を付ければその危害について知ることができたか

昨今は、カスハラの認知度が高まっているため「知りませんでした」は通用しません。

特にカスハラの報告をされていた会社・職場では予見可能性があったと判断されます。

カスハラの被害があった段階で、通常は予見可能性を満たしているといえるでしょう。

2.会社が結果回避義務を果たしているか

カスハラ被害を把握した会社が、どのような対策を講じていたかもポイントになります。

対策を講じていないと評価される場合と講じたと評価される場合は、以下のとおりです。

対策を講じていないと評価される場合 ・根拠もなく謝罪するよう命令された
・「客だから仕方ない」と放置された
・「カスハラ禁止」のポスターだけ掲示していた など
対策を講じていたと評価される場合 ・カスハラ被害に関する調査がおこなわれた
・被害者を守る目的で配置転換がおこなわれた
・カスハラ対応を正社員がおこなうようにした など

会社側の安全配慮義務違反があるかどうかは、対策が十分かどうかで変わってきます。

十分な対策がおこなわれていない場合は、損害賠償を請求できる可能性が高まるでしょう。

3.安全配慮義務違反と心身の不調に因果関係があるか

安全配慮義務違反によって健康被害が生じたかどうかは非常に重要なポイントです。

対策を講じていないと評価される場合 ・根拠もなく謝罪するよう命令された
・「客だから仕方ない」と放置された
・「カスハラ禁止」のポスターだけ掲示していた など
対策を講じていたと評価される場合 ・カスハラ被害に関する調査がおこなわれた
・被害者を守る目的で配置転換がおこなわれた
・カスハラ対応を正社員がおこなうようにした など

カスハラによって直接的な被害を負っている場合は安全配慮義務違反を証明しやすいです。

一方、うつ病や適応障害などでは、ほかの要因があったことを疑われる可能性があります。

この因果関係の証明は難しいため、損害賠償を請求する際の大きな課題となるでしょう。

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カスハラ被害から守ってくれない会社に損害賠償請求する方法

会社への損害賠償の具体的な請求方法には以下のようなものが考えられます。

  • 会社に対して直接請求する
  • 労働審判手続きを利用する
  • 民事訴訟を提起して争う

ここでは、会社に損害賠償請求をする際の具体的な手続きについて説明します。

1.会社に対して直接請求する

まず、会社に対して直接、損害賠償を請求する方法が考えられます。

会社に対して直接請求する際の大まかな流れは以下のようになっています。

  1. 会社に内容証明郵便を送る
  2. 会社と安全配慮義務違反について話し合う
  3. 合意ができた場合は合意書・和解書を作成する
  4. 指定した口座に会社から慰謝料が振り込まれる

会社が安全配慮義務違反を認めている場合は、直接請求でも慰謝料を受け取れます。

しかし、必ずしも認めるわけではないため、話し合いが進まないケースもあります。

もし話し合いが進まない場合は、労働審判や訴訟などに移行する必要があるでしょう。

2.労働審判手続きを利用する

労働審判では、裁判所の労働審判員を介した労働トラブルの解決を目指します

労働審判をおこなう際の大まかな流れについては、以下のようになっています。

  1. 裁判所に対して労働審判の申立てをする
  2. 相手方(会社側)から答弁書が提出される
  3. 通常3回まで審理や話し合いがおこなわれる
  4. 話し合いによる解決が難しい場合は労働審判が下される
  5. 異議申立てがない場合は労働審判が確定する

一般的に、労働審判では話し合いによる「和解成立」で終了することが多いです。

しかし、場合によっては裁判所から労働審判という判断が下されることもあります。

なお、労働審判は絶対ではないため、不満がある場合は異議申立ても認められています。

3.民事訴訟を提起して争う

通常の民事訴訟を提起して、法廷で安全配慮義務違反について争うことも可能です。

労働審判をしていた場合は異議申立てをすると、訴訟へと移行することになります

  1. 裁判所に訴状または異議申立書を提出する
  2. 相手方(会社側)から答弁書が提出される
  3. 法廷で安全配慮義務違反について争う
  4. 裁判所から判決が下される

訴訟をおこなった場合、裁判所から最終的な判断が下されることになります。

これにより会社側に安全配慮義務違反があったのかを明確にすることができるでしょう。

守ってくれない場合に備えてカスハラ被害に遭ったときに取るべき対応

カスハラ被害に遭ったときには、以下の対応を取ることをおすすめします。

  • 安全配慮義務違反の証拠を集めておく
  • 体調不良がある場合は病院を受診する
  • 早めに労働問題が得意な弁護士に相談する

ここでは、カスハラ被害に遭ったときに取るべき対応について説明します。

1.安全配慮義務違反の証拠を集めておく

会社の安全配慮義務違反を証明するために、以下のような証拠を集めておきましょう。

安全配慮義務違反の証明に役立つ証拠の例
  • カスハラ被害の報告書
  • 作業報告書・業務日報
  • タイムカード・勤怠表
  • 上司などへの相談履歴
  • カスハラ対応マニュアル
  • カスハラ現場の録画映像 など

ポイントは、カスハラそのものではなく会社の体制不備を指摘する証拠を集めることです。

安全配慮義務違反の立証は難しいため、関係しそうな証拠は全て集めるのがおすすめです。

また、時間の経過とともに証拠集めは困難になるため、早めに集めるようにしましょう。

2.体調不良がある場合は病院を受診する

カスハラ被害を理由に心身の不調がある場合は早めに病院を受診しましょう。

カスハラ被害に遭った場合の主な受診先
  • うつ病や適応障害などの場合→心療内科など
  • 身体的なけがを負った場合→整形外科など

病院への受診は早期の回復だけでなく、カスハラによる健康被害の証明にも役立ちます

受診した際は症状や経緯などをしっかりと担当医に対して説明することが望ましいです。

また、カスハラでも労災認定される可能性があるため、診断書を取得しておきましょう。

3.早めに労働問題が得意な弁護士に相談する

カスハラ被害に遭った際は、早めに弁護士に相談しておきましょう。

弁護士に相談・依頼するメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 安全配慮義務違反について判断してもらえる
  • 証拠集めに関してのアドバイスをしてくれる
  • 労災トラブルに関してのサポートをしてくれる
  • 損害賠償請求や刑事告訴のサポートをしてくれる
  • 退職する際の手続きや交渉などを代理してくれる など

カスハラ被害に関連する法的手続きは多岐にわたるため、弁護士のサポートは必須です。

無料相談を受け付けている法律事務所も多いので、まずは相談することをおすすめします。

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カスハラ被害で会社側の安全配慮義務違反が認められた2つの事例

カスハラ被害で安全配慮義務違反が認められたケースには以下のようなものがあります。

  • 看護師が入院患者から暴力を振るわれたケース
  • 教員が保護者からの理不尽な要求について謝罪させられたケース

ここでは、会社・組織の安全配慮義務違反が認められた2つの事例について説明します。

1.看護師が入院患者から暴力を振るわれたケース

看護師が入院患者から暴力を振るわれた事案です(東京地裁平成25年2月19日判決)。

「病院側が看護師を守る体制を整えていなかった」と安全配慮義務違反が認められました。

事案の概要
看護師は患者から暴力を振るわれている間、ナースコールで助けを求めていました。
しかし、ほかの看護師が駆けつける体制が整っていなかったため暴力を受けてしまいます。
看護師はこの暴力によって適応障害を発症し、就労が困難となり休職することになりました。
判決の概要
裁判所は、ナースコールが鳴った際に「ほかの看護師が駆けつける体制を整えていなかったこと」について、病院側の安全配慮義務違反を認めました。
また、すぐにほかの看護師が駆け付けていれば暴力は回避できたとして、義務違反と被害の因果関係も認めています。

2.教員が保護者からの理不尽な要求について謝罪させられたケース

教員が保護者から理不尽な要求をされた事案です(甲府地裁平成30年11月13日判決)。

なお、こちらの事案についてはパワーハラスメントなど複数のトラブルを含んでいます。

事案の概要
教員は児童宅を訪れた際に、その家の飼い犬に噛まれてしまいます。
そのけがの補償でトラブルになり、児童の父と祖父が学校へ訪問して非難します。
校長は事態を収めるために教員に謝罪するよう命じ、この一連の出来事がきっかけで教員はうつ病を発症してしまいます。
判決の概要
裁判所は、本件について「その場を穏便に収めるために安易に当該教員に対して謝罪するよう求めた」と判断しています。
また、日常的なパワハラ行為も認めており、それでうつ病を発症したと評価しました。
最終的に治療費・慰謝料など約295万円の損害賠償金が認められています。

さいごに|カスハラ被害から守ってくれない会社を訴えることもできる!

会社には従業員を守る義務があり、カスハラ対策を十分おこなう必要があります。

カスハラ対策が不十分であり被害に遭った場合は、会社に損害賠償を請求できます

しかし、損害賠償を請求する際は、大きな負担がかかることが予想されるでしょう。

もしどうしても訴えたい場合は、弁護士に依頼することも検討するほうが望ましいです。

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本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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