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【令和2年新設】労働者協同組合法とは?メリットや問題点を解説

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【令和2年新設】労働者協同組合法とは?メリットや問題点を解説

労働者協同組合法(ろうどうしゃきょうどうくみあいほう)とは、働く人が自ら出資して運営に携わることができる「協同労働」という新しい働き方を実現する法律です。労働者協同組合を非営利法人として簡便に設立することを目的としています。

これまで地域の課題に取り組む人々はNPOや企業組合などの形態で活動していましたが認可を得ることに時間がかかったり、活動分野が限定されたりしていました。

労働者協同組合法は、「労働者協同組合」に関わる規制を整備し、これらの課題の克服を図っています。これにより、人口減少問題を抱える地方や新型コロナの影響で脆弱化した地域を立て直す鍵となることが期待されています。

この度の法制化によって、労働者の働き方が一つ増えたと言えるかもしれません。

この記事では労働者協同組合法とはどのような法律であるか、法律が可決・成立したことによって企業や労働者にどのような影響があるかを解説します。

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労働者協同組合法とは?

労働者協同組合法とは、働く人が自ら出資して運営に携わることができる「協同労働」に関し、組織の設立、管理その他必要事項を定めた法律です。

現在、通常想定されている雇用関係は、「使用者」と「労働者」に明確に分けられていますが、労働者協同組合法によって新たに法制化された労働者協同組合は「組合員」が出資・経営・労働という3つの役割を担います。使用者の指揮命令下での労働のみならず、事業運営に意見が反映されることへのやりがい等も期待でき、多様な働き方が生み出されたり新たな雇用機会を創出したりするかもしれません。

また、この法律では組合と組合員との間で労働契約の締結が義務付けられ、労働者としての保護も図られています。

このような組織運営について法整備がされたことは、地域活性化に資すると歓迎の声が多く見受けられます

しかし、一方でまだ課題が残されていることも確かです。この項目では労働者協同組合法成立の経緯や目的など労働者協同組合法の概要をわかりやすく解説します。

【参考】

労働者協同組合 |厚生労働省

労働者協同組合の法制化を – JAPAN WORKERS' CO-OPERATIVE UNION

労働者協同組合法成立の経

少子高齢化が進み人口減少が著しい地域においては、介護・障害福祉など幅広い分野で多様なニーズが生じています。

介護や福祉などの事業を行う非営利組織は以前から存在していますが、多くは法人格を持たず、任意団体として事業を行なってきました(認可を受けてNPO法人や企業組合などの形態をとる組織も存在します)。

しかし、法人格を持たないがゆえに契約の主体となれなかったり、NPO法人の設立・維持の手続きが煩雑であることとなど多くの問題を抱えているため、以前から対策が求められていました

この度の労働者協同組合法の成立によって、「労働者協同組合」として法人格が与えられ、かつNPO法人などよりも簡単な手続きで設立できるため、例えば訪問介護や学童保育、町づくりなど、地域の需要と合致した事業が誕生し、多様な雇用機会につながり、担い手が増えることが期待できるでしょう。

労働者協同組合法の目的

労働者組合法では以下のように目的が規定されています。

(目的)

第一条 この法律は、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする。

第三条 組合は、次に掲げる基本原理に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とするものでなければならない。

一 組合員が出資すること。

二 その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること。

三 組合員が組合の行う事業に従事すること。

2 (以下省略)

【引用】労働者協同組合法

同法では、組合員が出資すること、それぞれの意見を反映して事業が行われること、組合員自ら事業に従事することが必要であり、これらを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする、と明示されています

労働者協同組合法の目的

  • 多様な就労機会の創出
  • 地域の需要に応じた事業の実施
  • 持続可能で活力ある地域社会の実現

 

事業の例

  • 訪問介護などの介護や福祉関連
  • 学童クラブなどの子育て関連
  • 農産物の加工などの地域づくり関連
  • 自立支援などの困窮者支援関連

 

労働者協同組合法の特

労働者協同組合法によると、組合員は出資・経営・労働の役割を担っており、自ら組合の事業に出資して働き、運営に関与する必要があります。

第三条 組合は、次に掲げる基本原理に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とするものでなければならない。

一 組合員が出資すること。

二 その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること。

三 組合員が組合の行う事業に従事すること。

2 (以下省略)

【引用】労働者協同組合法

一般的な働き方では、会社が労働者を雇用し、使用者の指揮命令のもとで労働者が働くかたちとなっており、出資・経営・労働が分離しています。

一方で、労働者協同組合では、働く人自らが出資・労働・運営に関わります。

労働者協同組合では仕事を通じて収入だけでなく、やりがいや労働への満足感を得ることが期待できます。

ダイアグラム が含まれている画像自動的に生成された説明

労働者協同組合法の成立で実現すること

前述しましたが、労働者協同組合法の成立によって労働者(組合員)が出資・経営・労働を担うことになります。

現状、社会や地域のために協同で活動し、事業に発展させていくにはいくつかの困難が生じます。例えば、組織に法人格を持たせて活動しようとするとNPO法人の活用が考えらえますが、設立手続が煩雑でハードルがあります。

また、単なる任意団体の構成員という立場の場合は、「労働者」ではないため、労働法制による保護が受けられないという問題もあります。労働者協同組合法の成立によって、会社とは異なる「労働者協同組合」という事業体が新たに設けられることで上記の課題解決につながると考えられています。

なお、現在新型コロナウイルスの拡大によって経済や雇用に関する環境悪化が懸念されていますが、労働者協同組合法が新しい働き方を生み出すことによって、雇用の受け皿として活用されるかもしれません。巷では副業やフリーランスといった働き方改革が広がっていますが、労働者協同組合という新しい働き方も今後注目されるでしょう。

労働者協同組合法のメリッ

労働者協同組合法には以下のようなメリットがあります。

  • 働き方の選択肢が増える
  • 組合を簡単に作れる
  • 地方自治体と連携できる

 

働き方の選択肢が増える

協働労働という働き方が認知されることで、働き方の選択肢が増えるというメリットがあります。

労働者協同組合では労働者(組合員)の意思が運営に反映されやすいため、それぞれが働きやすい環境を作ることが期待できるでしょう。

今後は自営、雇用労働の他に、仲間と協同して組合を作り自分たちが主体的に経営を担いながら働くという新たなスタイルが生まれることになるでしょう。

組合を簡単に作れる

組合を簡単につくれる点もメリットの一つです。労働者協同組合法によると、基本的に3人以上の発起人がいれば組合を設立できます。

(発起人)

第二十二条 組合を設立するには、その組合員になろうとする三人以上の者が発起人となることを要する。

【引用】労働者協同組合法

組合を簡単につくれる仕組みとして、企業組合やNPOのように所管長の認可や認証が不要であること、業種に制限のあるNPOと違い基本的に業種に制限がないことがあげられます。

また、組合と組合員との間で労働契約の締結が義務付けられており、労働者保護に配慮している点もメリットといえるかもしれません。

地方自治体と連携できる

労働者協同組合は非営利団体に位置付けられているため、地方自治体と連携を取りやすいといえるでしょう。業務委託の入札の時に他の団体より不利になることもありませんし、地域の多様なニーズに対応した事業づくりが叶うため自治体と協力し合えるでしょう。

また、これらのメリットから地方や過疎地域での仕事創出が期待できるかもしれません。例えば、後継者のいない中小零細企業の継業や、子育て・介護などの公共性の高い分野で活用されるでしょう。

労働者協同組合法の問題

労働者協同組合法で考えられる問題点を解説します。

  • 労働者としての保護が適切に受けられないかもしれない
  • 労働条件の悪化が懸念される

 

労働者としての保護が適切に受けられないかもしれない

労働者協同組合法では、以下のとおり、原則として組合は組合員との間で労働契約を締結しなければならないと規定されています。

(労働契約の締結等)

第二十条 組合は、その行う事業に従事する組合員(次に掲げる組合員を除く。)との間で、労働契約を締結しなければならない。

一 組合の業務を執行し、又は理事の職務のみを行う組合員

二 監事である組合員

2 第十四条又は第十五条第一項(第二号を除く。)の規定による組合員の脱退は、当該組合員と組合との間の労働契約を終了させるものと解してはならない。

【引用】労働者協同組合法

しかし、「組合の業務を執行」する組合員はこの対象ではなく、労働契約の締結が義務付けられていません。

また、仮に労働問題が発生した場合、組合の業務を執行する組合員につき、労働法制上の「労働者」性があると認められるかは不透明です。労働者保護の観点から、保護として十分か否かについては課題が残ります。なお、日本労働弁護団は労働者協同組合法案について、「協同組合で働く組合員が労働者として必要十分な保護が受けられない余地を残す点で問題を有する。」と声明を出していました。

【参考】労働者協同組合法案についての声明 _ 日本労働弁護団

労働条件の悪化が懸念される

労働者協同組合法では、組合員による出資、運営、労働の一体的な構造を想定しています。

このような組織構造の場合、運営の立場と労働の立場で利害相反が起きかねません。これにより、賃金や労働条件が不当に切り下げられることとなると、働き手の利益が損なわれるだけでなく、安値受注などの温床につながり、ひいては地域の労働市場に悪影響を及ぼす懸念もあります。

【参考】協同労働 働き手の利益を第一に|朝日新聞デジタル

労働者協同組合法の施行日はいつ?

厚生労働省によると、一部を除いて公布後2年以内で施行されることになっているようです。

一 施行期日 この法律は、一部を除き、公布後2年以内の政令で定める日から施行すること。 (附則第1条関係)

【引用】労働者協同組合法概要|厚生労働省

目安として2022年4月あたりには施行されるかもしれません。

実際どうなの?労働者協同組合法に対する国民の意

労働者協同組合法について、疑わしいと感じている方が多く見受けられました。

また、NPOとの違い・優位性について疑問を持っている方もいました。

NPOは事業の分野が限られており、出資が認められていません。そのため、寄付や参加者からの借り入れなどに頼ることになり、経営基盤が脆弱になりやすいのです。

労働者協同組合では出資が認められているためNPOよりも経営基盤が強化されているといえるでしょう。

 

企業組合

NPO法人

労働者協同組合

出資

×

設立

認可主義

認証主義

準則主義

活動

営利

非営利

非営利

また、労働者協同組合は準則主義であるため、公証人による定款の認証を受け登記すれば設立できます。一方のNPO法人は認証主義であるため、所轄庁の認証が必要です。

まとめ

労働者協同組合法における労働者協同組合は、所轄庁の許可や認証なしに、3人以上の発起人で設立することが可能です。これまで地域事業を担ってきた企業組合やNPOよりも手続きが簡単となっているため、広く活用されることでしょう。

労働者協同組合法によって、高齢化や過疎化が進む地域において、それぞれが抱える課題に応じた事業の取り組みが促進され、多様な就労機会が創出されることが期待されます。

法律の施行は、一部の地域を除いて公布日から2年以内の政令で定める日とされています。労働者協同組合法の施行によって、持続可能な活力のある地域社会の実現が叶うかもしれません。

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