いわゆる『ブラック企業』といわれる会社では、サービス残業が当たり前となっていることが多々あります。
「毎日終電近くまで残業して心も体もボロボロ…。」一刻も早く辞めたいと思っている方も多いでしょう。
もし辞めるのであれば、未払い分の残業代を回収しておきたいところです。
残業代の請求権には時効があり、原則は過去2年分しか請求できません。また、残業代の請求には残業を行ったことを立証するための証拠を集めておく必要があります。
この記事では、ブラック企業に都合のよいようにまるめこまれないための知識、残業代を回収する手順、残業代請求の際に頼りになる相談先などについて詳しく解説します。
残業代請求は労働者に認められた当然の権利です。未払い分をきちんと回収していきましょう。
残業代請求の確実性を高める方法を知りたい方限定
未払い残業代の請求には、内容証明郵便や労働審判など、個人でできることも多くありますが、「証拠が少ない」「請求しているけど相手にされていない」といった対応をされている場合、弁護士に相談することで、それまで悩んでいたことがすぐに解決できる可能性も高いです。
ただ、弁護士と言っても「何をしてくれるのか、費用が高いのでは?」という不安も多いと思います。そこで、実際に残業代請求に長年関わり、最前線で活躍する弁護士にインタビューをし、【残業代請求を弁護士に無料相談・依頼するとどう解決してくれるのか?】くわしく聞いてみました。
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ブラック企業が残業代についてよく使う言い訳

残業が発生すれば、企業は当然残業代を支払わなければなりません。しかし、ブラック企業といわれる企業は、もっともらしい理由付けで支払いを免れようとする傾向があると言われています。
企業側の言い分が正しいかどうかは、法令に照らして判断する必要があります。この項目では、ブラック企業でよく使われる未払い残業代についての言い訳の是非を見極める方法を紹介します
就業規則に残業代が発生しないと書いてある
信じられない話ではありますが、「就業規則に残業代が発生しないと記載がある」ということを理由として、残業代の支払いを拒む会社があるとかないとか噂があります。
就業規則には労働時間や労働条件、賃金などについて書かれており、その内容は原則として企業が自由に決められます。しかし、これにも限界があり、法令に違反するような内容を就業規則に定めても、その規定は効力を持ちません。
残業をすれば残業代を発生することは法令で決められたルールです。そのため、たとえ就業規則であっても「残業代が発生しない」という内容を定めることはできませんし、仮に定めてあっても法律的には無効です。
上記の噂の真偽は一切不明ですが、仮に「就業規則に書いてある」という一見もっともらしい主張をされたとしても、きちんとした知識を持っていればおかしいと判断できるでしょう。
みなし残業代以上の金額は払う必要がない
残業代について説明を求めたところ、会社から「残業代は定額で支給しているから、それ以上は支払う必要がない」という説明を受けることもあるようです。
企業が、みなし残業代制度を実施すること自体は違法ではありません。しかし、誤った法的理解のもとで制度運用がされている場合も少なくありません。
みなし残業代制度はあくまで一定額を割増賃金として支給することで、実際に支払うべき割増賃金から定額支給分を控除することができるにとどまります。
本来支払うべき割増賃金の支払い義務が消えるということは一切ありません。そのため、定額支給しているからそれ以上の残業代を支払う必要がないかのような説明は、明らかに誤りです。
また、みなし残業代制度を実施するためには、雇用契約上、基本給部分と残業代部分が明確に区別されており、かつ残業代として支払われていることが、客観的に明らかである必要があります。
みなし残業代としての支給要件を満たしていない場合には、残業代の支払いとは認められないことになります。
【関連記事】みなし残業(固定残業代制度)とは?メリットや違法性を解説
会社は残業の指示していない
従業員が勝手に残業をしたのだから、残業代を支払う必要がないという説明をする企業もあります。
確かに、残業を要するか否かは会社側が判断すべき事項であり、労働者側には残業をする権利はありません。そのため、指示していない残業行為について、賃金を支払う必要がないとする主張は一見もっともらしく見えます。
しかし、形式的には残業を指示していなくても、実質的に残業の指示があったと評価されることは少なくありません。
例えば、現実的ではない分量の仕事を任されたために残業を余儀なくされたような場合、会社が残業していることを知りながら、あえて指導することなく放置していたような場合、労働者に対して黙示の指示があったと評価される可能性が高いといえます。
このような場合には「会社が明示的に指示していない」と主張したとしても、裁判所に認められる余地は少ないでしょう。
30分未満の残業は含まれない
ブラック企業に限らず、意外と多いのが残業時間の切り捨てです。
残業時間は、10分や30分単位で計算されるので、端数の時間については残業代は支払われないなどと、企業側から説明を受けたことはありませんか?
労働時間を15分とか30分などの一定単位で集計すること自体は適法です。しかし、単位時間に満たない労働時間を一律で切り捨ててしまうことは許されません。
労働時間は、原則として、1分単位で集計・計算されることが求められており、一律の切り捨て処理をして残業代を支払わないということはできないのです。
例外として、1ヶ月間の時間外労働、休日労働、深夜労働を集計した際に、その合計時間に一定の端数が生じる場合、当該端数について四捨五入的な処理を行うこと(例えば30分単位で労働時間を集計するにあたり、15分未満は0分とする一方、15分以上は30分として集計すること)は許されています。
ブラック企業から残業代を回収するための手順

ブラック企業は、未払い残業代を請求したところで、素直に応じない可能性もあります。
確実に回収するためにも、手順をきちんと確認しておきましょう。
残業をしたという証拠を集める
未払い残業代の立証責任(特に、労働者が実際に就労した時間数の立証責任)は請求する側にあります。
以下のような証拠を集めておくとよいでしょう。
- タイムカード
- 雇用契約書
- 給与明細
- メールの送受信記録
-
パソコンのログイン記録 など
特に重要となるのが、労働者の実際の残業時間を証明する証拠です。タイムカードはもちろん、パソコンのログイン記録やメールの送受信記録も役立ちます。
また未払い残業代金を計算するためには、『1時間あたりの基礎賃金』を割り出さなくてはなりません。それは月給や所定労働時間から計算するので、雇用契約書、給与明細なども集めておきましょう。
すでに退職していて、証拠を集めるのが難しい場合、弁護士経由で証拠を開示させることもできます。
【関連記事】
残業代請求時に認められやすい証拠と、証拠がない時の対処方法
証拠保全とは|証拠が集まらない時の証拠保全の進め方
未払い残業代の正確な計算をする
未払い残業代の計算は複雑で、正しい計算方法を知らないと請求時に損をする可能性があります。
残業代の計算式は以下の通りです。
残業代=1時間あたりの基礎賃金×残業時間×割増率(1.25%)
1時間あたりの賃金=基準賃金÷月平均所定労働時間
|
【具体例】
基準賃金が20万円、月平均所定労働時間160時間、残業時間40時間の場合
1時間あたりの基礎賃金=200000÷160=1,250円
残業代=1250×40×1.25%=62,500円
|
上記は簡単な計算例であり、実際はもっと複雑になります。正確な残業代を計算したい方は、弁護士や社労士に金額を算出してもらうのも一つの手です。
より詳しく残業代の計算方法を知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
【関連記事】
正確な残業代を計算する5つのステップ
固定残業代(みなし残業)の仕組み|適正な残業代の計算方法
会社に請求書を内容証明郵便で送る
会社に残業代を請求する場合、書面を『配達証明付きの内容証明郵便』で送付するとよいでしょう。
口頭でも問題はないのですが、「知らない」「聞いていない」と白を切られる場合もあります。書面であれば請求をしたことが形として残ります。
内容証明郵便であれば、郵便局が書面の内容や届いたことを証明してくれるため、より効果的です。
【関連記事】自分でできる!残業代を内容証明郵便で請求する際の書き方と例文
労働基準監督署に申告する
未払い残業代の証拠が十分に集まっているのであれば、労働基準監督署に申告を行うのも有効です。
労働基準監督署は、企業が労働基準法などを守っているかどうかを監督している公的機関であり、労働者から労働基準法違反について通報があった場合、必要な調査を行うことになります。
調査の結果、労働基準法に違反していると判明した場合には、是正勧告や指導を行ってくれます。
また、労働トラブルに関する相談窓口にもなっているため、残業代請求に関する具体的なアドバイスが欲しい場合は利用してみるとよいでしょう。
労働審判の申立てを行う
労働審判は紛争解決手続きの一種で、裁判に比べて簡潔かつ素早い結論が出るというメリットがあります。

引用元:労働審判手続|裁判所
裁判官1名と労働審判官2名からなる労働委員会が、労働者と雇用主双方の言い分を聞いたうえで、話し合いでの解決(調停成立)を目指します。
原則として審理は3回以内。それまでに調停が成立しなかった場合は審判(解決案の提示)がなされます。
審判内容に不満があれば異議申立てを行うと、通常訴訟に移行します。
他方、異議申立てが行われなかった場合、審判は確定し、その効力は裁判判決と同様です(合意により成立した調停も同様の効力をもちます)。
訴訟を起こす
話し合いや労働審判での解決が望めない場合は、裁判で争うこともできます。
裁判は慎重かつ重厚な手続きであるため、判決が下されるまで時間がかかるというデメリットはあります。しかし、その反面、場合によっては労働審判などと比較して回収金額を増やせるかもしれません。
いずれも一長一短であるため、どのような手続きを選択すべきかは、依頼する弁護士とよく相談すべきでしょう。

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残業代請求をする際に頼りになる相談先一覧
個人で未払い残業代請求をすることも可能ですが、交渉をスムーズかつ有利に進めたいのであれば、専門家に依頼したほうが、回収できる可能性は高まります。
前述した労働基準監督署以外には、以下のような相談先があります。
・社労士
・弁護士
・労働組合・ユニオン
社労士は、弁護士以上に労働関連法に精通した専門家といえますが、原則として代理人となることができません。労働者の代わりに会社と交渉を行ったり、裁判で代理人として活動することができないのです。
とはいえ、残業代請求に関する相談にのることはできるので、具体的なアドバイスを受けたい方にはおすすめです。
労働組合も社労士と同様、代わりに交渉することはできません。
企業との交渉を代行してほしい、未払い残業代を回収するためなら裁判も辞さないという場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
詳しくは次の項目をご覧ください。

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ブラック企業からの残業代回収を弁護士に依頼すべき理由
未払い残業代の回収を弁護士に依頼する利点は3つあります。
①手続きを丸投げにできる
個人で法的手段を取ることが難しい理由のひとつは、手続きが複雑で、調べながら手続きを進めていくには時間がかかりすぎるという点です。
冒頭でもお伝えしましたが、残業代請求には時効があります。準備に時間がかかってしまうと遡れる期間が短くなってしまうこともあり、請求できる金額が少なくなるかもしれません。
②きちんとした対応が期待できる
個人の交渉には、企業側が強気の対応で、脅しのようなことを行うことがあるかもしれません。
弁護士が相手となれば、最終的に裁判となることも考えられるため、うかつな対応をすれば自分たちの首を絞めてしまいます。
未払い残業代についての問題が長引いても企業側にメリットはないため、穏便に解決しようと歩み寄りが期待できるでしょう。
③回収できる残業代が多くなる可能性がある
労働問題に精通した弁護士であれば、これまでの判例や経験を元に残業代を計算することができます。
残業にならないと思っていたところまで労働時間に含めることができるということもありえます。
【関連記事】残業代請求を弁護士に相談するメリットと費用・解決事例
労働基準法違反の企業から未払い残業代回収に成功した事例
ここでは、労働基準法違反の企業から、未払い残業代の回収に成功した事例をいくつか紹介します。
未払い残業代および遅延損害金などを含め約900万円を回収できたケース
36協定の上限を超えて設定されていた固定残業代の有効性について争われた事例。
36協定では、1ヶ月あたりの残業時間の上限を45時間までと定めており、特別の事情がある場合のみ延長することができます。
このケースでは、原告の固定残業代が36協定の上限を超える時間分の対価額に設定されていましたが、裁判所はこの固定残業代は無効であるとしました。
判決では、おおむね原告の主張が認められて、残業代および遅延損害金などを含め約900万円の回収に成功しました。
裁判年月日 平成28年 2月17日
裁判所名 東京地裁
裁判区分 判決 事件番号 平27(ワ)8277号
事件名 残業代請求事件
裁判結果 一部認容、一部棄却
Westlaw Japan文献番号 2016WLJPCA02176001
【関連記事】36協定(サブロク協定)とは|仕組み・限度時間・違法時の対処法まで
労働基準監督署の是正勧告から未払い残業代の支払いがされたケース
労働基準監督署の是正勧告を受けたJR西日本が、社内調査を行ったところ、約1万4,200人に未払い残業代あることが発覚した。
約80万1,200時間分、支払合計額は約19億9千万円にものぼります。中には、1,192時間分、約456万円もの未払い残業代があった方もいたようです。
JR西、残業代20億円未払い 1万4千人に支払いへ|朝日新聞
まとめ
ブラック企業から残業代を回収しようと考えている方は、まず証拠を集めることから始めましょう。
残業代請求に役立つ証拠
・タイムカード
・雇用契約書
・給与明細
・メールの送受信記録
・パソコンのログイン記録 など
|
残業代が支払われてないことを立証する責任は、請求側にあります。また正確な未払い残業代を計算するためにも必要となります。
退職後は証拠集めが難しくなりますので、できれば在職中に集めておきたいところです。
ご自身で残業代請求をするのが難しいという方は、社労士・弁護士・労働基準監督署などに相談するとよいでしょう。
特に裁判してでも残業代を回収したい方は弁護士への依頼がおすすめです。
当サイトでは、労働問題が得意な弁護士を探すことができるので、まだ依頼する弁護士が決まっていない方はご活用ください。

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