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いつもどおり起床したら熱が出ていた、前日の夜から体調が悪かったなど、会社に出勤できなくなるケースは珍しくありません。
しかし、会社に有給休暇を申請したところ、「当日の休暇申請は欠勤だ」といわれてしまい、理不尽に感じている方もいるはずです。
「有給あるのに欠勤扱い?」と思われるかもしれませんが、有給休暇は取得条件が決まっており、基本的には事前の申請が必要です。
本記事では、有給休暇の取得条件や欠勤との違い、休暇取得でトラブルになったときの相談先をわかりやすく解説します。
有給休暇の付与などは労働基準法第39条に規定があり、「労働者の請求する時季に与えなければならない」とされています。
勤め先に取得理由を伝える義務もないため、熱があるかどうかに関わらず、「申請すればいつでも取得できる」と理解している方も多いでしょう。
しかし、当日の休暇申請は会社側が難色を示す場合が多く、有給休暇の残日数があっても欠勤扱いにされるケースが少なくありません。
有給休暇の取得は正当な権利行使といえますが、会社側にも時季変更権があるため、原則的なルールを理解しておく必要があります。
有給休暇は事前申請が原則になっており、当日の申請は認められません。
始業時間を過ぎて「熱があるから休みたい」などと連絡した場合、その時点で欠勤扱いになるため、有給を使いたいときは会社の承諾が必要です。
また、会社には有給休暇の時季変更権があり、事前に休暇申請した場合でも、当日の業務運行に支障をきたすと判断されたときは、休暇の取得時季を変更できます。
風邪で休むときなど、当日の休暇申請を欠勤扱いにしたくない場合、原則として始業開始前に有給休暇を申請しなければなりません。
有給休暇の事後申請や当日申請があった場合、会社側には柔軟対応が求められます。
法律上は事前の休暇申請が原則になっているため、事後申請や当日申請を認めなくても違法にはなりません。
しかし、業務遂行が不可能な体調不良や、家族の急病が有給休暇の取得理由であれば、当日や事後の申請を認めないわけにはいかないでしょう。
事前申請はあくまでも原則的な考え方とし、従業員にやむを得ない事情があり、業務運行に支障がなければ、当日や事後の休暇申請を認める対応も必要です。
当日の有給申請が欠勤に扱いになったときは、就業規則に「やむを得ない事由で前日までに請求できないと認めた場合に限り、欠勤日を有給休暇に振替える 」などの文言がないか確認してください。
有給休暇には以下の取得条件があるため、労使間で一定のルールを守らなければなりません。
会社側も労働基準法を正しく理解していないケースが多いので、権利を侵害されないように基礎知識を身に付けておきましょう。
有給休暇は取得可能な時期が定められており、以下の要件をすべて満たしたときに付与されます。
長期間の病欠や休職があった場合でも、雇用契約を解除しない限り勤務が継続するため、6ヵ月以上の雇用で8割以上勤務していると、有給休暇の付与が認められます。
産前産後休暇や育児休暇、介護のための休暇も同様の考え方です。
有給休暇の取得単位は原則「1日」ですが、労使間の協定があれば、5日以内に限り時間単位で取得できます。
いわゆる「時間休」と呼ばれる休暇であり、3時間や4時間などの単位で取得できるため、午前中は子どもの授業参観、午後から出社という働き方も可能です。
取得可能な1日分の時間数を計算する場合、1日の所定労働時間に端数があるときは時間単位に切り上げます。
たとえば、1日の所定労働時間が7時間30分であれば、端数の30分を切り上げて8時間とし、「8時間×5日=40時間」まで時間単位の有給休暇を取得できます。
なお、労使間で協定を結ぶ際、時間単位で有給休暇を取得する対象者を決めますが、一部の従業員を除外するときは、業務運行に支障をきたす場合に限られます。
有給休暇の取得目的では対象者を決められないため、「育児中の従業員」などの指定はできません。
パート社員やアルバイトについても、雇用日から6ヵ月以上の継続的な勤務があり、全労働日の8割以上を出勤していると、有給休暇を取得できます。
たとえば、6ヵ月で120日出勤する契約であれば、6ヵ月経過したときに96日以上出勤していれば有給休暇が発生します。
会社によってはパート社員などの有給休暇を勘違いしており、「正社員しか取得できない」などと思い込んでいるケースがあるので注意が必要です。
有給休暇を事前申請しておけば、原則として取得理由は問われません。
会社は時季変更権を行使できますが、正常な業務運行を確保する義務もあるため、「繁忙期だから休まれると困る」などの理由では休暇申請を拒否できません。
有給休暇の取得で人手不足になる場合、会社は代替要員を確保するなど、企業努力が求められるでしょう。
有給休暇の日数は以下のようになっており、勤続期間に応じています。
【正社員の有給休暇日数】
雇用日以降の勤続期間 |
付与される休暇日数 |
6ヵ月 |
10労働日 |
1年6ヵ月 |
11労働日 |
2年6ヵ月 |
12労働日 |
3年6ヵ月 |
14労働日 |
4年6ヵ月 |
16労働日 |
5年6ヵ月 |
18労働日 |
6年6ヵ月以上 |
20労働日 |
【パートタイム労働者の有給休暇日数】
週の所定労働日数 |
1年間の所定労働日数 |
雇用日以降の継続勤務期間:単位は年 |
||||||
0.5 |
1.5 |
2.5 |
3.5 |
4.5 |
5.5 |
6.5以上 |
||
4日 |
169~216日 |
7 |
8 |
9 |
10 |
12 |
13 |
15 |
3日 |
121~168日 |
5 |
6 |
6 |
8 |
9 |
10 |
11 |
2日 |
73~120日 |
3 |
4 |
4 |
5 |
6 |
6 |
7 |
1日 |
48~72日 |
1 |
2 |
2 |
2 |
3 |
3 |
3 |
パート社員やアルバイトの有給休暇は比例的な付与になるため、所定労働日数や継続勤務期間によって取得可能な日数が変動します。
有給休暇は労働基準法で保障されており、休暇日数も給与の計算にカウントされます。
一方、欠勤は労働契約違反になるため、休んだ日は給与計算には含まれず、残業や休日出勤でカバーする扱いもありません。
賃金は労働への対価として支払われるので、「働いていない従業員には給与の支払いもない」というノーワーク・ノーペイの原則が適用されています。
労働者側の一方的な都合で仕事を休んだ場合、以下の欠勤控除もあるので注意が必要です。
休暇申請が欠勤扱いになると、欠勤控除される可能性があります。
欠勤控除とは、欠勤した日数・時間に相当する額を給与から差し引くものです。
事前申請で取得した有給休暇や、会社都合による休暇は欠勤控除の対象外ですが、以下のようなケースは給与を減額されるかもしれません。
申請期限を過ぎても、けがや病気は有給休暇を認められる場合もありますが、二日酔いなどの体調不良は却下されるでしょう。
欠勤したときの控除額には1日単位と時間単位があり、以下のように金額を計算します。
欠勤の単位 |
控除額の計算手順 |
1日単位 |
(1)1日あたりの賃金計算:固定給÷所定労働日数 (2)欠勤控除額の計算:1日あたりの賃金×欠勤日数 |
時間単位 |
(1)1時間あたりの賃金計算:固定給÷所定労働日数÷1日の所定労働時間 (2)欠勤控除額の計算:1日あたりの賃金×欠勤時間 ※欠勤時間は1分単位になるため「1時間あたりの賃金÷60」で計算 |
固定給には基本給や通勤手当などを含めますが、基本給または「基本給+諸手当」のどちらから欠勤控除するのか、会社側に決定権があります。
有給休暇の取得にはさまざまなルールがあるため、会社側がよく理解していないケースも珍しくありません。
労働者が以下の扱いを受けたときは、会社側の労働基準法違反となります。
会社が正当理由なく有給休暇の申請を却下する、または時季変更権を行使した場合、違法となります。
休暇取得日の人員配置や業務運行に問題がなければ、会社は事前申請された有給休暇を取得させなければなりません。
有給休暇を取らせる代わりに、自宅に仕事を持ち帰らせる行為も違法です。
有給休暇の取得は労働者側の権利になるため、原則として会社側は取得を強制することはできません。
年度末に有給の残日数をまとめて消化させるなど、強制的な休暇取得には応じる必要がありません。
なかなか上司に言い出しにくいこともあると思いますが、有給休暇を使わないという意思表示は忘れずおこなうようにしましょう。
会社が有給休暇を認めたにも関わらず、給与計算の際に欠勤扱いとして給料を減給した場合も、労働基準法に違反します。
有給休暇は所定労働時間に含まれるため、休んでいても給与計算にカウントしなければなりません。
上記の扱いを受けた場合は、以下の相談窓口に速やかに相談しましょう。
事前申請した有給休暇が欠勤扱いされるなど、困ったときには以下の相談窓口を利用してください。
賃金不払いなどの問題が発生しているときは、弁護士への相談も検討しておきましょう。
有給休暇の取得でトラブルになった場合、話を大きくしたくないときは社内の労務担当者に相談してください。
労務担当者は従業員の休暇取得などを管理しており、就業規則や労働関係法にも精通しています。
有給申請に関して直属の上司と意見の食い違いがある場合、労務担当者を交えるとスムーズに解決できるケースがあります。
休暇申請の拒否などが常態化し、全社的な問題になっているときは、労働組合に相談してみましょう。
労働組合には団体交渉権や団体行動権などがあり、組織的に会社側と交渉してくれるため、慢性化している労働問題を解決できる可能性があります。
なお、不当な理由で欠勤控除となった場合、労働組合を通じて再発防止などを交渉できますが、減額された給与の回収は対応してもらえません。
確実に回収したい場合は弁護士に相談しましょう。
有給休暇のトラブルを労働基準監督署に相談すると、会社に是正勧告してもらえるケースがあります。
労働基準監督署には勤怠管理などの帳簿を閲覧する権限や、司法警察の機能もあるため、正当事由のない休暇申請の拒否があれば、会社を指導してくれます。
ただし、労働基準監督署は過労死などの問題解決を優先しており、人命に関わらない休暇取得などのトラブルについては、後回しにされる可能性があります。
証拠がなければ相談に応じてくれないケースもあるので、休暇申請のやりとりを記録したメモや、給与明細などの資料を準備しなければならないでしょう。
有給休暇の申請却下なども含め、その他の労働トラブルも発生しているときは、弁護士に相談してください。
弁護士への相談は敷居の高さを感じるかもしれませんが、初回は無料相談になるケースが多いので、出費を気にする必要がありません。
サービス残業や賃金不払い、パワハラなどの問題も発生しているときは、賃金の回収や慰謝料請求も弁護士に依頼できます。
有給休暇や賃金関係のトラブルは重大な権利侵害ですが、力関係ではどうしても労働者側が不利になるため、困ったときは早めに弁護士へ相談してみましょう。
有給休暇と欠勤扱いは法解釈を誤ってしまうケースが多いため、以下のQ&Aも参考にしてください。
原則的なルールを理解しておけば、有給取得に関するトラブルを回避できます。
有給休暇の買取りは原則として禁止です。
ただし、以下のような状況で買取りが認められる場合もあります。
労働基準法の規定を上回る有給休暇を付与している場合や、退職時に有給休暇が残っているときは、例外的に買取りが認められます。
有給休暇は付与から2年経過後に時効となり、労働者が権利行使できなくなるため、消滅した日数を会社が買い取っても問題なしとされています。
なお、就業規則に有給休暇買取りの定めがない場合、会社には買い取ってもらえないでしょう。
会社側が認めた場合に限り、欠勤を有給休暇の扱いにできます。
ただし、自己管理を怠った結果の体調不良など、正当事由のない有給取得は認められないでしょう。
事前申請していれば無断欠勤にはなりませんが、欠勤控除される可能性は十分あります。
有給休暇は取得理由を問われませんが、病気休暇はけがや病気などの療養を目的としています。
病気休暇は半日や1日単位で取得し、定期的な通院に利用するケースが多いでしょう。
病気休暇は基本的に給料が保障されており、通院などに利用しても、勤務実績などの基準を満たすとボーナスを受け取れる場合もあります。
なお、病気休暇中の給与や賞与については、会社ごとに支給基準を設定できるので、就業規則や賃金規定などの確認が必要です。
会社の休職制度を利用した場合、欠勤扱いにはなりません。
無断で会社を休むと欠勤扱いになりますが、休職の場合は事前の話し合いによって労使が合意しています。
休職と欠勤は基本的に無給ですが、傷病による休職であれば、健康保険組合や協会けんぽの傷病手当金を受け取れます。
欠勤は会社側に労務提供できないため、何度も欠勤を繰り返すと解雇理由にされる可能性があります。
急病の家族を看護するなど、やむを得ない事情を考慮してもらえる場合もありますが、基本的には労働契約違反です。
欠勤しないように指導されているにも関わらず、改善の見込みがないときは、普通解雇になる恐れがあるでしょう。
なお、会社側から解雇を告げられても、就業規則に特段の定めがなく、解雇理由にも納得できないときは、弁護士に相談してください。
欠勤扱いで休むときは、会社に正直な理由を伝えてください。
会社は正常な業務運行を確保しなければならないため、病気が理由の欠勤であれば、症状や復帰できる日なども伝えておく必要があります。
上司のメールアドレスやLINEアカウントなどを知っていても、欠勤の連絡は電話を使うのがビジネスマナーとされることが一般的です。
しかし電話がつながらない場合、メールやチャットツールでの連絡を認めている会社であれば利用しても問題ありません。
連絡の際は、誰か一人でなく自分の業務に関係する人全員に送ることで、見落としを防ぐことができます。
人事評価などを考慮すると、欠勤よりも有給で休んだほうが得といえます。
欠勤は人事評価のマイナス要素となり、昇格や手当の査定などにも影響するため、長期的にみると生涯賃金も低くなってしまいます。
有給休暇は労働者の意思で自由に取得できますが、原則として事前報告が必要です。
当日の休暇申請は労働契約に違反する可能性があるため、やむを得ない事情がない限り、有給休暇は計画的に取得しなければなりません。
ただし、ルールどおりに申請しても会社が休暇を認めないときや、強引に有給休暇を取得させる場合は、明らかな労働問題といえます。
有給休暇の取得や欠勤の扱いに疑問が生じたときは、少しでも早く弁護士に相談しておきましょう。
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