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ホーム > 労働問題コラム > 労務問題 > 不当労働行為とは|不利益な取扱いとなる5つの行為と罰則を簡単に解説

不当労働行為とは|不利益な取扱いとなる5つの行為と罰則を簡単に解説

更新日:2021年07月28日
ゆら総合法律事務所
阿部由羅
このコラムを監修
不当労働行為とは|不利益な取扱いとなる5つの行為と罰則を簡単に解説

不当労働行為(ふとうろうどうこうい)とは、労働者に保障された団結権を使用者が阻害する行為を意味します。労働組合法は、第7条によって5つの行為を不当労働行為と定め、これを禁止しています。

 

労働組合法は、労働者の団体行動権を保障するため、使用者に「不当労働行為」を禁止しています。労働組合の活動などを正当な理由なく阻害した場合、不当労働行為として違法になりますので、使用者としては十分注意が必要です。

 

不当労働行為救済制度は、憲法で保障された団結権等の実効性を確保するために、労働組合法に定められている制度です。労働組合法第7条では、使用者の労働組合や労働者に対する次のような行為を「不当労働行為」として禁止しています。

引用元:厚生労働省

 

労働組合側は、使用者から不当労働行為を受けた場合は、弁護士に相談しながら法に則った不服申立てを行いましょう。

 

この記事では、不当労働行為のパターンや、法的な救済方法などについて詳しく解説します。

 

 

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この記事に記載の情報は2021年07月28日時点のものです
目次

不当労働行為の概要とは

不当労働行為(ふとうろうどうこうい)とは、労働者に保障された団結権を使用者が阻害する行為を意味します。

 

労働組合法第7条によって、下記の行為を不当労働行為と定め、これを禁止しています。

 

(不当労働行為)

第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。

二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。

四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

引用元:労働組合法第7条

 

労働者が使用者と対等な立場を確保するためのもの

労働者の労働条件その他待遇は本来的には使用者と労働者が対等な関係で決定すべき事柄です。しかし、労働者と使用者では交渉力に差があり、労働者の方が相対的に地位は低いと考えられてきました。

 

そのため、労働者には、使用者と対等な交渉力を得て自身の正当な権利・利益を確保すべく、労働組合を作り、使用者と交渉する権利(団結権、団体交渉権)が憲法で保障されているのです。

 

憲法で労働者に団体行動権を保障

日本国憲法28条では、労働者に団結権・団体交渉権その他の団体行動権が認められています。団体行動権の趣旨は、使用者と労働者の間にある交渉力格差を是正することにあります。

 

第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

引用元:日本国憲法28条

 

多くの会社では、使用者の方が労働者よりも、マンパワー・資金力・知識などの観点から強い力を持っています。この交渉力格差を利用して、使用者が労働者を搾取する構図ができ上がってしまっては問題です。

 

そのため労使の交渉力格差を是正し、労働者を保護することを意図して、日本国憲法は労働者に団体行動権を保障しています。しかし、使用者側が労働者の団体行動自体を制限することを認めてしまうと、団体行動権の趣旨が没却される結果となってしまいます。

 

そこで労働組合法7条によって、使用者による「不当労働行為」を禁止し、労働者の団体行動権の保障が図られているのです。

 

 

不当労働行為に当たる5つの禁止行為とパターンについて

労働組合法7条に規定される不当労働行為について、具体的なパターンをそれぞれ見てみましょう。

 

組合活動などを理由に不利益な取り扱いをする行為

労働者が労働組合に関連する活動をしたことなどを理由として、解雇その他の不利益な取り扱いをすることは、不当労働行為に該当します(労働組合法7条1号本文)。

 

具体的には、以下を理由とする不利益な取り扱いは、労働組合法上違法となります。

 

  • 労働組合の組合員であること
  • 労働組合に加入したこと
  • 労働組合を結成しようとしたこと
  • 労働組合の正当な行為をしたこと

 

労働組合への非加入・脱退を雇用条件とする行為(黄犬契約)

労働組合に加入しないことや、労働組合から脱退することを条件として、使用者が労働者を雇い入れる契約を俗に「黄犬契約(こうけんけいやく)」と呼んでいます。黄犬契約は労働組合の活動を阻害し、団体行動権の趣旨を没却するため、不当労働行為に当たり違法です(労働組合法7条1号本文)。

 

ただし、使用者が労働者を雇い入れる際に、労働者の過半数を代表する労働組合への加入を雇用条件とする労働協約を締結することは認められます(同号但し書き)。このような労働協約は、労使間における団体交渉の窓口を一本化し、交渉を円滑化するという正当な目的があるからです。

 

判例

黄犬契約が登場する裁判例

本件は、平成12年に結成された申立人情報労連・東京カンテイ労働組合が被申立人株式会社東京カンテイに団体交渉を申し入れたところ、被申立人会社は団体交渉には応じたものの、〈1〉会社役員らが組合役員らに対し、申立人情報産業労働組合連合会への加入を非難したり、組合の解散や組合からの脱退の勧奨を行い、あるいは従業員の採用に際し労働組合に加入しないことを雇用条件(黄犬契約)としたとして、また、〈2〉労働協約、便宜供与、賞与、賃金改定、給与制度及び昇給昇格基準等に関する団体交渉に誠実に応じなかったとして申し立てられた事案である。

裁判年月日 平成16年 6月10日

裁判所名 東京地裁

裁判区分 判決
事件番号 平15(行ウ)577号
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
裁判結果 請求棄却

Westlaw Japan文献番号 2004WLJPCA06100004

 

労働者の代表者との団体交渉を正当な理由なく拒む行為

使用者が、雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを、正当な理由なく拒否することは不当労働行為に当たります(労働組合法7条2号)

 

団体行動権の実効性を確保するため、使用者には団体交渉のテーブルに着くことが義務付けられているのです。なお、使用者は単に交渉のテーブルに着くだけでなく、労働者側との間で誠実な態度で交渉を行う必要があると解されています

 

ただし、正当な理由がある場合については、例外的に団体交渉を拒否することが可能です。使用者が団体交渉を拒否できる具体的なケースについては、後で詳しく解説します。

 

判例

昇給及び一時金等を交渉事項とする団体交渉申入れに対し、団体交渉を開催したものの、予め用意された回答書を読み上げるのみで、具体的な説明をせず、財務資料等の提示や説明要求に応じなかったことが誠実交渉義務違反であるとした中央労働委員会の救済命令の取消請求がされた。

 

原告(使用者)の一連の対応は、被告補助参加人(労働組合)の交渉事項について、実質的な協議、交渉を行い、合意に達するよう努める態度がみられないもので不誠実なものであったとして、不当労働行為の成立を認め、救済命令発令後に行われた団体交渉も、救済命令を履行したものとはいえないとして、救済命令の取消を求める請求を棄却した事例

 

裁判年月日 平成20年 7月 3日

裁判所名 東京地裁

裁判区分 判決
事件番号 平19(行ウ)698号
事件名 不当労働行為救済命令取消請求事件
裁判結果 請求棄却

Westlaw Japan文献番号 2008WLJPCA07038005

 

このケースでは決算書が開示されないと実効性のある交渉が困難であることを理由に、会社が資料を開示しなかった態度・姿勢が「団体交渉拒否」に該当すると判断されたのです。

 

また清和電器産業事件(東京地裁平成2年4月11日判決)では、会社が直接話し合うことを拒否し、電話か文書のみで回答しようとしたことが「団体交渉の拒否」にあたるとされました。

 

労働組合に対する支配・介入・経理上の援助に当たる行為

労働組合を使用者がコントロールできる状況が発生すると、使用者と労働者が対等に交渉を行うという前提が崩れてしまいます。

 

そのため使用者が労働組合に対して強制力を及ぼしたり、懐柔したりする以下の行為が、不当労働行為として禁止されています(労働組合法7条3号本文)。

 

  • 労働組合の結成、運営を支配し、またはこれに介入すること
  • 労働組合の運営のための経費の支払いにつき、経理上の援助を与えること

 

ただし、経理上の援助については、以下の例外が設けられています(同号但し書き)。

 

  • 労使間の協議、交渉の時間について賃金を通常どおり支払うこと
  • 福利その他の基金に対する使用者の寄附
  • 労働組合に対する最小限の広さの事務所の供与

 

要するに、組合活動を円滑に行うための合理的なサポートは認めるものの、労働組合が使用者に依存してしまうような過度な経理上の援助は認めないという考え方がとられているのです。

 

労働委員会への申立てなどを理由に不利益な取り扱いをする行為

後述のとおり、不当労働行為を受けた労働組合は、労働委員会に対する審査を申し立てることができます。この審査(不服申立て)制度は、不当労働行為を禁止する労働組合法上の規制の実効性を確保するために、重要な意味を持っていることは言うまでもありません。

 

したがって、労働者が使用者に気を遣ったり怯えたりすることなく、自由に労働委員会への審査申立てなどを行える状況を確保する必要があります。

 

上記の観点を踏まえて、労働者・労働組合に対する萎縮効果が生じることを防ぐため、労働委員会などに対する審査申立てなどがあったことを理由とする解雇その他の不利益な取り扱いは不当労働行為に該当するとされています(労働組合法7条4号)。

 

 

使用者が団体交渉を拒否できる「正当な理由」とは?

前述のとおり、使用者が労働組合との団体交渉を正当な理由なく拒否することは、不当労働行為に該当します。

 

しかし団体交渉をこれ以上継続する意味がない場合や、労働者側の交渉態度に問題がある場合などについては、使用者が団体交渉を拒否する正当な理由があるといえるでしょう。

 

以下では、使用者が正当な理由に基づき、労働組合との団体交渉を拒否できるケースの具体例を解説します。

 

労使間の団体交渉が行き詰まっている場合

労使間で譲歩の余地が存在しない場合には、これ以上団体交渉を引き延ばしても時間の無駄になります。この場合は、いたずらに交渉を引き延ばすのではなく、労働審判や訴訟などに場を移して解決策を探る方が建設的です。

 

よって、労使間の団体交渉が行き詰まっている場合には、使用者側が団体交渉を拒否することができます。ただし、本当に交渉の余地がないかどうかについては、労使間できちんと意見を出し合いすり合わせてみなければわかりません。

 

たとえば労使で出し合った意見が大きくかけ離れているからといって、それだけで交渉の余地がないと判断するのは時期尚早でしょう。

 

前述のとおり、使用者には労働組合との団体交渉のテーブルに着き、誠実に交渉を尽くす義務があります。したがって、交渉の余地なしと早計に判断することなく、労使の歩み寄りの道を模索することが大切です。

 

訴訟で決着済みの事項について団体交渉の申入れが行われた場合

労使が訴訟の場で徹底的に主張を戦わせた結果、判決によって権利義務の内容が確定している場合、その内容について交渉により変更する余地はないと考えられます。

 

そもそも訴訟手続きは、交渉では解決できないほどにこじれてしまった問題を解決するために利用されます。それなのに判決に不満がある労働組合側が、再度使用者に対して交渉を持ちかけるとしたら、紛争の不当な蒸し返しと捉えられても仕方がないでしょう。

 

よって訴訟で決着済みの事項について、労働組合側から団体交渉の申入れが行われた場合には、使用者側は団体交渉を拒否しても問題と思われます。

 

使用者側弁護士の同席を労働組合側が拒否した場合

団体交渉の場に弁護士を同席させるかどうかは、労使それぞれの当事者の自由です。使用者側としても、労使交渉において弁護士のアドバイスを受けながら、法的に適切な妥協点を探ることは重要です。

 

労働組合といえども、使用者が弁護士に相談することを阻止する権利はありません。

 

この点は実際の労使交渉の現場においても同様で、使用者・労働組合の双方は、交渉の場に弁護士を同席させることが認められます。それにもかかわらず、使用者側弁護士の同席を労働組合側が拒否するケースがたまに見受けられます。

 

このような場合、使用者が労使交渉に臨むに当たって準備・態勢を整えることを、労働組合側が不当に妨害したと評価されても仕方がありません。したがって、使用者側弁護士の同席を労働組合側が拒否した場合には、使用者側は団体交渉の申入れを拒否することができるでしょう。

 

労働組合側が暴力行為を働いた場合

団体交渉は平和裏に行われる必要があり、交渉中・交渉外での暴力行為は、いかなる理由があっても許されません。

 

たとえば代表者以外の労働者を結集して労使交渉の場に乱入するなど、労働組合側の威圧的な行為があった場合、健全な交渉を行うことができる環境が整っているとは到底言えません。

 

最近ではあまり見られない例ではありますが、このような暴力行為を受けた使用者が団体交渉の中止を申し入れることには、正当な理由があると考えられます。

 

こうしたケースにおいて使用者としては、暴力行為の再発防止策を講ずることを労働組合側に対して求め、万全が確認されるまでは労使交渉を無期限延期するという対応が適切でしょう。

 

いかなる場合に「正当な理由」が認められるかはケースバイケースですので、対応にお困りの場合はお早めに弁護士にご相談ください。

 

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不当労働行為の救済手段は?

労働者や労働組合が、使用者から不当労働行為を受けた場合に備えて、労働委員会に対する不服申立て手続きが設けられています。以下では、労働委員会に対する不服申立て手続きの概要について解説します。

 

都道府県労働委員会に対して審査の申立てを行う

不当労働行為に対する不服申立てをする際には、まず都道府県労働委員会に対して審査の申立てを行います。

 

申立ての後は、「調査」、「審問(公開で証人喚問などを行う)」を経て、「合議」で不当労働行為にあたるかどうかを判断します。労働委員会が不当労働行為にあたると判断した場合、会社に対し、一定の被害回復措置を講ずべき旨を述べる「救済命令」が出されることになります。

 

この「救済命令」に対して不服がある場合、中央労働委員会への再審査申立て、地方裁判所への取消訴訟(行政訴訟)提起などの異議申立て措置が予定されています。

 

申立ての期限は、不当労働行為の終了日から1年以内です(労働組合法27条2項)。

 

(不当労働行為事件の審査の開始)
第二十七条 労働委員会は、使用者が第七条の規定に違反した旨の申立てを受けたときは、遅滞なく調査を行い、必要があると認めたときは、当該申立てが理由があるかどうかについて審問を行わなければならない。この場合において、審問の手続においては、当該使用者及び申立人に対し、証拠を提出し、証人に反対尋問をする充分な機会が与えられなければならない。
2 労働委員会は、前項の申立てが、行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から一年を経過した事件に係るものであるときは、これを受けることができない。

引用元:労働組合法27条2項

 

労働委員会に対する主張内容を検討したり、不当労働行為の証拠資料を準備したりする作業にはそれなりに時間がかかるので、弁護士に相談しながら速やかに準備を進めましょう。

 

審査手続きの流れ

審査申立てがあった後、都道府県労働委員会において行われる審査手続きの流れは以下のとおりです。

 

①調査

当事者双方の主張を聞いたうえで、争点や証拠の整理を行います。

 

②審問

公開の審問廷において、証人尋問などを行います。

 

③合議(公益委員会議)

公益委員の合議により事実認定を行い、事実認定に基づいて不当労働行為に当たるかどうかを判断します。

 

④救済命令または棄却命令

不当労働行為が認められた場合、都道府県労働委員会から使用者に対して救済命令が発令されます(労働組合法27条の12第1項)。これに対して不当労働行為が認められなかった場合、棄却命令が発令されます(同)。

 

不服がある場合は中央労働委員会に対する再審査の申立てが可能

都道府県労働局によって発せられた救済命令または棄却命令について不服がある当事者は、中央労働委員会に対して再審査の申立てをすることが認められています。

 

再審査の申立ての期限は、救済命令・棄却命令の交付を受けてから原則15日以内です労働組合法27条の15第1項。ただし、天災その他やむを得ない理由がある場合は、その理由が止んだ日の翌日から起算して1週間以内)。

 

再審査の手続きは、都道府県労働委員会における審査と基本的に同じですが、不服申立ての範囲に絞って審査が行われます。

 

労働委員会による処分に対しては取消訴訟を提起できる

  1. 労働委員会の処分については、取消訴訟によってその適法性を争うことが認められています(労働組合法27条の19第1項)。
  2. 使用者が取消訴訟を提起する期限は、救済命令・棄却命令の交付日から30日以内です(同)。
  3. これに対して、労働者側の出訴期間については6か月以内と長めに設定されています(行政事件訴訟法14条1項)。

 

なお取消訴訟は、都道府県労働委員会・中央労働委員会のいずれによる処分に対しても提起することが可能です。つまり都道府県労働委員会の処分(救済命令・棄却命令)が行われた後、中央労働委員会への再審査請求を経ずに、直接取消訴訟を提起することも認められます。

 

損害賠償・慰謝料の請求

会社の不当労働行為は、労働者に対する違法な権利侵害行為に該当する可能性があります。そのため、不当労働行為を民法上の不法行為であると構成して損害賠償を請求する余地があります。

 

金額はケース・バイ・ケースですが、過去には総額705万円の損害賠償支払いが命じられた事例もあります。(サンデン交通事件|広島高裁平成14年1月24日判決)

 

2つの労働組合が存在する旅客等運送会社で、その一方の組合員に新車の割当てをしない取扱いが、合理的理由のない配車差別であり、不利益取扱い、支配介入の不当労働行為に当たるとして、当該組合及び組合員らからの損害賠償請求が認められた事例。
タクシー会社が、労働組合の組合員に新車の割当てをしなかったことを不当労働行為とし、各組合員に90万円、組合に50万円の損害賠償を命じた原判決が維持された事例。

裁判年月日 平成11年 8月24日

裁判所名 広島高裁

裁判区分 判決
事件番号 平10(ネ)328号
事件名 損害賠償請求控訴事件 〔サンデン交通事件・控訴審〕
裁判結果 棄却 上訴等 上告

Westlaw Japan文献番号 1999WLJPCA08246004

 

不当労働行為の結果、解雇された場合

上記の通り不当労働行為は、違法行為であるため、不当労働行為を構成する解雇などの人事行為は法的効力を否定されます。また、不当労働行為が違法な権利侵害となるような場合は、別途損害賠償請求も可能です。

 

例えば、労働組合への加入・活動などを理由として労働者を解雇し、当該解雇が不当労働行為に該当すると判断された場合、労働者側は以下のような主張が可能となります。

 

  1. 解雇が無効であるとして従業員の地位があることの確認を求める
  2. 無効な解雇により就労ができなかった期間についての賃金を請求する
  3. 違法な解雇により精神的苦痛を被ったとして慰謝料を請求する

 

 

不当労働行為によって使用者に科されるペナルティ

不当労働行為をした使用者は、民事上の損害賠償・過料・刑事罰という3通りのペナルティを受ける可能性があります。

 

民事上の損害賠償

不当労働行為によって、労働者個人や労働組合が損害を受けた場合、使用者はその損害を賠償する義務を負います(民法415条1項または709条)。

 

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

引用元:民法415条

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用元:民法709条

 

特に労働者を解雇するなど、不利益取扱いが不当労働行為に当たる場合については、損害賠償の金額が大きくなりやすいので注意が必要です。

 

そのため、使用者が労働者に対して不当労働行為に当たるおそれがある処分などを行おうとする場合には、事前に弁護士のリーガルチェックを受けることをお勧めいたします。

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救済命令違反に対する過料・罰則

取消訴訟なしで救済命令が確定したケースで、その後に使用者が救済命令に違反した場合には「50万円以下の過料」に処されます(労働組合法32条第二文)。

 

これに対して、取消訴訟を経て救済命令が確定したケースでは、その後に救済命令に違反した使用者には「1年以下の禁錮もしくは100万円以下の罰金またはこれらを併科」という刑事罰が科されます(同法28条)。

 

このように、取消訴訟を経た場合とそうでない場合で、使用者に対する公的な処分の重さに差があるのが特徴的です。特に使用者が取消訴訟の判決に従わない場合、刑事罰という非常に重い制裁が科されてしまうので注意しましょう。

 

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まとめ

使用者の不当労働行為を法律上禁止することにより、労働者の団体交渉権の実効性を確保し、労使間で労働条件などに関する公正な交渉が行われることが期待されています。

 

使用者としては、労働組合から団体交渉の申入れがあった場合には誠実に対応し、不当労働行為の禁止に抵触しないように十分注意しなければなりません。

 

これに対して労働者・労働組合側が使用者から不当労働行為を受けた場合には、速やかに異議を申し立てると同時に、法律上の不服申立て手続きをとることを検討しましょう。

 

労使いずれの立場でも、不当労働行為に関する紛争に巻き込まれた場合には、弁護士に相談してアドバイスを受けることが有効です。相手方との交渉へ臨むに当たって、法的な観点を踏まえた万全の準備を整えることができるでしょう。

 

また、不服申立てには煩雑な手続きが必要になりますが、弁護士に依頼をすることによってスムーズに対応することが可能になります。

不当労働行為に関する労使紛争については、お早めに弁護士にご相談ください。

 

参照元一覧

厚生労働省|不当労働行為とは

東京都労働委員会|不当労働行為の事例

東京都労働委員会|不当労働行為救済制度の概要

 

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この記事の監修者
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阿部由羅 (第二東京弁護士会)
西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て、ゆら総合法律事務所代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
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本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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