毎日通う職場で無視されたり、悪口をいわれたりするといったモラハラ行為を受けるほどつらいことはありません。
何とか対処したいけれど、
- 「具体的にはどうすればよいのだろうか?」
- 「そもそもこれはモラハラにあたる行為なのだろうか?」
などと悩んでいる方もいるでしょう。
誰かを無視したり、人格を否定するような言動で相手に精神的苦痛を与えたりする行為はモラハラです。
不法行為にあたり、あまりにひどい場合は加害者や会社に対して慰謝料を請求できる可能性もあります。
今回は、職場でのモラハラとはどのような行為を指すのかを解説するほか、被害に遭った場合の対処法を紹介します。
職場でのモラハラに悩んでいるあなたへ
職場でモラハラを受けているけど、どう対処すればいいかわからず悩んでいませんか?
結論からいうと、モラハラは総合労働相談コーナーやみんなの人権110番、法テラスに相談することができます。
今すぐ職場でのモラハラを解決して加害者を責任追及したい場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
弁護士に相談すると以下のようなメリットを得ることができます。
- モラハラの内容がどの法律に違反しているか判断してもらえる
- どのような証拠を集めればいいかアドバイスしてもらえる
- 依頼すれば、複雑な訴訟の手続きを一任できる
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職場でのモラハラは加害者や会社に責任追及できる
無視や嫌がらせ行為は、モラハラに該当します。
相手の人格を侵害する行為であり、不法行為に相当するため、加害者やそのような行為を許容する会社に対して損害賠償請求をおこなえる可能性もあるのです。
まずはモラハラの概要や、ほかのハラスメントとの違いについて理解しておきましょう。
モラハラには明確な定義や判断基準がない
モラハラとは「モラルハラスメント」の略で、一般的に、言葉や態度によって相手に精神的苦痛を与える行為をいいます。
しかし、明確な定義はなく、法律で定められているわけではありません。
とはいえ、相手の人格権を侵害する行為は不法行為となるため、人格を傷つけられたことを立証できれば、損害賠償請求をおこなえる可能性が高いでしょう。
ほかのハラスメントとの違い
職場でのハラスメント行為には、ほかにもパワハラやセクハラがあります。
これらのハラスメントと、モラハラはどのように違うのでしょうか。
モラハラとパワハラ
モラハラとパワハラの1番の違いは、当事者同士の立場の差です。
パワハラが目上の者から立場の低い者に対しておこなわれる行為であるのに対し、モラハラは立場に関係なく起こり、同僚が加害者となるケースもあります。
それゆえ、周囲に気づかれないケースも多いでしょう。
モラハラの特徴
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パワハラの特徴
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・立場に関係なくおこなう
・ほかの人が気づかないところでおこなわれるケースもある
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・立場が上の者が下の者に対しておこなう
・公然とおこなわれるケースが多い
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モラハラとセクハラ(セクシャルハラスメント)の特徴
モラハラとセクハラの大きな違いは性的な要素を含むかどうかという点です。
セクハラは異性からおこなわれるのがほとんどであるのに対し、モラハラは同性・異性を問わずおこなわれます。
また、セクハラでは性的行為の強要など身体的な暴力を含むケースがあるのに対し、モラハラは言葉による精神的な暴力が中心です。
モラハラの特徴
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セクハラの特徴
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・同性・異性を問わず受ける
・言葉の暴力が主
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・性的な嫌がらせをされる
・異性から受けることが多い
・身体的な暴力を含む場合がある
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職場でのモラハラの具体例
モラハラは身体的な暴力と異なり、表面化しにくいのが特徴です。
ここでは、職場におけるモラハラの具体例を紹介します。
言葉で精神的苦痛を与える行為
暴言や侮辱、誹謗中傷や陰口といった言葉の暴力は典型的なモラハラです。
例
- 「ハゲ」「デブ」など見た目の特徴をからかう
- 「仕事ができない」など業務上必要な範囲を超えた発言をする
- 「デブ」「辞めろ」「死ね」など人格否定や脅迫ともとれる発言をする
ほかにも、小さな仕事のミスを執拗に責めたり、本人がひどく傷つく言葉を投げかけたりする行為はモラハラに該当します。
プライベートについて過度に干渉する行為
むやみに人のプライベートに干渉し、侮辱する行為もモラハラにあたります。
例
- 独身の同僚に「その年齢でなぜ結婚しないのか?」などと、何度もしつこく聞く
- 再婚した同僚のことを「離婚したばかりでもう再婚するなんてありえない」と言いふらす
- 休日の付き合いを強要する
- プライベートの趣味を馬鹿にする
業務に関係ないがゆえに相談しにくく、相談しても真剣に取り合ってもらいにくい点が厄介です。
職場で孤立するように仕向ける行為
標的とする相手から、必要なコミュニケーションの機会を奪い、周囲から孤立するように仕向ける行為もモラハラです。
(例)
- 挨拶されても無視をする
- 一人だけ職場の忘年会やランチに呼ばない
- 会議で発言しようとすると遮る
- 業務上のメールに返信しない
小学生のいじめのような行為によって、被害者は孤独を感じざるを得なくなります。
過剰に仕事を押し付ける行為
業務に関して過大な要求をするのもまた、モラハラです。
(例)
- 明らかに納期に間に合わないほどの量の仕事を押し付ける
- 本人には知識やスキルがない業務を嫌がらせ目的で与える
- 業務上明らかに不要な業務をさせる
標的となった本人が困ったり、頑張っても失敗したりするのを見て憂さ晴らしを目的としているのです。
過小な仕事しか与えない行為
反対に、本人の能力よりも程度の低い仕事をさせるのもモラハラのひとつです。
(例)
- 本来の業務を与えない
- 業務上必要なメールや資料を標的の社員にだけ与えない
- 新人でもないのに雑用だけを延々とさせる
被害者は「自分は職場に必要のない人材では?」と感じ始め、精神的に孤立していきます。
職場でのモラハラの対処法
職場でモラハラ被害に遭ったら、次のような方法で対処するとよいでしょう。
社内・社外の対応窓口に相談する
モラハラを受けているなら、つらい気持ちを一人で抱え込まず、だれかに相談しましょう。
上司や同僚に相談するのもよいかもしれませんが、「気にしすぎだ」として片付けられてしまったり、有益なアドバイスを得られなかったりするかもしれません。
社内に相談窓口が設けられているなら、利用するのがおすすめです。
客観的に状況を捉え、的確なアドバイスをもらえることもあるでしょう。
社内にそのような窓口がないなら、下記のような社外の専門機関を利用することをおすすめします。
総合労働相談コーナー
各種ハラスメントを含む、あらゆる労働問題について相談に乗ってくれる窓口です。
各都道府県の労働局内に設置されていることが多く、厚生労働省のホームページで全国の所在地を確認できます。
みんなの人権110番
法務省の常設相談所として設立された窓口で、人権問題に関する電話相談を受け付けてくれます。
モラハラの場合は暴言や誹謗中傷が絡むケースが多々あるため、こちらへ相談するのもよいでしょう。
電話番号などの詳細は法務省のHPで確認できます。
法テラス
法テラス(日本司法支援センター)の利用もひとつの方法です。
どのような法に抵触するか、具体的な法的措置として何があるのかなどを相談できます。
会社にハラスメント差止要求書を送付する
会社に対して直接ハラスメント行為を訴え、差し止めを求めたいならハラスメント差止要求書を送付する方法があります。
会社に直接提出してもかまいませんが、あとになって「そのような文書は受け取っていない」などのトラブルになるのを防ぐためにも、内容証明郵便を利用するのがおすすめです。
内容証明郵便とは、郵便局が、誰が、誰あてに、いつ、どのような内容の郵便を送ったかを証明してくれるサービスです。
併せて配達証明サービスも利用すれば、会社が受け取ったという証拠も得られます。
利用条件等もあるので、下記郵便局のホームページを確認しながら準備しましょう。
また、差止要求書にどのような内容を記載すればよいのかは以下を参考にしてください。
書き方がわからない場合は弁護士に相談することをおすすめします。
転職する
モラハラが横行するような職場に自ら見切りをつけるのも、現実的な対処法です。
特に、証拠がなく解決に至りにくいケースではただ我慢するという考えになりやすいものです。
しかし、それではいつまで経っても状況は改善されませんし、何より自分にとってよくありません。
会社はほかにもたくさんありますし、自分に合ったよい雰囲気の職場も必ずあります。
心配な場合は、あらかじめ転職エージェントへ相談すれば、職場の雰囲気や会社のコンプライアンスに対する意識も確認したうえで入社できるでしょう。
ただし、転職をする必要がない状況にありながら、転職をする必要があるものではありません。
モラハラの加害者や会社を訴える方法
モラハラの加害者や会社を許せない場合は、刑事・民事ともに訴えられる可能性があります。
以下の流れに沿って準備を進めましょう。
訴えるためにはモラハラの証拠が必要
裁判所に訴える場合は民事事件であれ刑事事件であれ、証拠が必要です。
モラハラの証拠としては次のようなものが有効でしょう。
モラハラの証拠として有効なもの
- モラハラを受けている様子を録画・録音したもの(ICレコーダー、スマートフォンのカメラなど)
- 暴言や誹謗中傷をされたときのメール、LINE
- モラハラの内容を詳細かつ継続的に記録したメモ
- モラハラの現場を見た同僚の証言
- 医師の診断書(精神障害を発症した場合)
民事訴訟を起こす|慰謝料などを請求したい場合
モラハラの加害者に損害賠償請求をしたければ、民事訴訟を提起します。
請求できるのは精神的苦痛に対する慰謝料のほか、休職や退職に追い込まれたことによる逸失利益、精神疾患を治療するための通院費や治療費です。
実際に獲得できる損害賠償金額は事案によって大きく異なり、数十万円程度のケースから数百万円にのぼるケースまでさまざまです。
金額の増減は、モラハラ行為の悪質性や被害に遭っていた期間の長さ、モラハラが原因で罹患した精神疾患の程度などによって決まります。
刑事告訴をする|極めて悪質で犯罪が成立し得る場合
モラハラ行為の悪質性によっては、脅迫罪や強要罪、侮辱罪、名誉棄損罪が成立し、刑事責任を問える可能性があります。
刑事責任を問いたい場合は、準備のうえ告訴しましょう。
ただし、職場でのモラハラが、全て犯罪に当たるとは限りません。
成立要件を満たさなければならないため、まずは弁護士へ相談するのが賢明です。
弁護士のアドバイスのもと、刑事告訴すべき案件か、民事訴訟や任意の交渉で解決すべき案件なのかを判断しましょう。
モラハラのトラブルでは弁護士に依頼するのがおすすめ
モラハラ被害に遭い、加害者に責任を問いたいなら、次の理由から弁護士に依頼することをおすすめします。
状況に応じて適切な解決策を判断してくれる
モラハラの対処方法には、社内や社外の相談窓口を利用する、会社に差止請求書を送るなどいくつかの方法があります。
どの方法を取るべきか、自身の状況によるでしょう。
弁護士に相談や依頼をすれば、依頼者の状況や会社の様子を鑑み、どのように対処するのがベストか判断してくれます。
適切な対処が期待できるため、モラハラで苦しめられている状況から着実に脱却できるでしょう。
どのような証拠を集めればよいかアドバイスしてくれる
加害者や会社に対して何らかの責任追及を考えている場合は、モラハラ被害を立証する証拠が必要です。
弁護士に相談すれば、集めるべき証拠についてのアドバイスももらえます。
加害者や会社に責任を問える可能性が高まるでしょう。
民事訴訟や刑事告訴などの手続きを一任できる
民事訴訟や刑事告訴などの法的手続きは、不慣れな方にとっては煩雑に感じられるものです。
弁護士に依頼すれば、会社との交渉から訴訟手続きまで全て任せることができます。
自分でおこなわねばならないことはほとんどないうえ、望む結果を得られる可能性も高まるでしょう。
最後に|職場でのモラハラに悩んでいる方は弁護士に相談
毎日顔を合わせなければならない職場の方からのモラハラはつらいものです。
ストレスからうつ病などの精神疾患を患ってしまう方もいるでしょう。
そのような状態になるまで我慢する必要はありません。
できるだけ早急に弁護士に相談し、一日も早く解決することをおすすめします。