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ホーム > 労働問題コラム > パワハラ > マタニティハラスメントとは?裁判事例で見る違法性と対策

マタニティハラスメントとは?裁判事例で見る違法性と対策

更新日:2021年07月28日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
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マタニティハラスメント(マタハラ)とは、妊娠、出産、子育てなどをきっかけとして嫌がらせや不利益な扱いを受けることです。マタハラは法律で禁止されており、会社側に防止措置が義務付けられています。

 

この記事では、マタハラの違法性や対処方法について裁判事例とともにご紹介します。

 

 

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この記事に記載の情報は2021年07月28日時点のものです
目次

マタニティハラスメント(マタハラ)の定義と違法性

マタニティハラスメント(マタハラ)は、女性の妊娠、出産、子育てをきっかけとして行われる嫌がらせや不利益な取り扱いです。

 

この項目では、マタハラの定義や内容、違法性などについてご紹介します。

 

マタニティハラスメント(マタハラ)の定義

厚生労働省では、マタハラを以下のように定義しています。妊娠、出産、子育てを理由とした嫌がらせや不利益な取り扱い(降格・解雇・雇い止めなど)は法律によって禁止されています。

 

妊娠・出産等に関するハラスメントとは

 「職場」※1において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関る言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」※2や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」※2の就業環境が害されることです。

※1 「職場」…通常就業している場所以外でも、出張先や参加が強制されている宴会なども含みます。

※2 「労働者」…正社員だけではなく、パートタイム労働者、契約社員、派遣労働者等を含みます(派遣労働者については、派遣元、派遣先ともに妊娠・出産等に関するハラスメントやセクシュアルハラスメントの防止措置を講じる必要があります)。

引用元:厚生労働省|03 職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント

 

また、マタハラは2つのタイプがあるとされています。

 

種類

内容

具体例

制度等の利用への嫌がらせ型マタハラ

女性が妊娠・出産の際に利用するさまざまな制度を利用したことをきっかけに嫌がらせをしたりする

「育休を取得するなら辞めてもらう」「自分だけ定時で帰るのが迷惑だってわからないのか」等

状態への嫌がらせ型マタハラ

妊娠・出産をしたことや体調などによって労働能率が低下したこと、就業制限や業務の変更を受けたことなどの状態に関して嫌がらせ等をする

「つわりぐらいで休むなら会社をやめろ」「(同僚から)あなたが妊娠したせいで私たちの仕事が増えた」等

 

また、会社は労働者から、育児休業の取得を申請された際、正当事由が限り拒否することはできません。産前産後休暇、育児休暇の取得の後すぐに不利益な取り扱いを受けた場合もマタハラと認定される場合があります。

 

マタハラ経験者によるハラスメント被害の内容と違法性

引用元:厚生労働省|妊娠等を理由とする不利益取扱いに関する調査の概要

 

厚生労働省が2015年に行った調査によると、マタハラを経験した女性の4割以上は「迷惑」「辞めたら?」などの発言を受けていたことがわかります。

 

これらのマタハラ発言は会社側に防止措置をする義務があります。

 

マタハラは男女雇用機会均等法違反

第十一条の二 事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
引用元:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第十一条

 

また、妊娠・出産などをきっかけとした解雇や降格などの不利益な取り扱いは、男女雇用機会均等法で禁止されています。

 

第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
引用元:
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第二章 第一節

 

 

マタハラが起こる原因

マタハラは法律で禁止されているのですが、実際問題として起きています。この項目では、マタハラが起こる原因について考えられるものをご紹介します。

 

上司・管理職が「専業主婦世代」だから

引用元:厚生労働省|共働き等世帯数の年次推移

 

共働き世代は、1990年代後半から男性雇用者と無職の妻からなる世帯の数を上回っています。2019年時点では約68%が共働き世帯となり、過半数を超えるようになりました。

 

一方で現在上司や管理職といった世代の方は、共働き世代がまだ少数派であったころに就職をしています。上司・管理職世代の方の中には「女性は結婚したら家に入るもの」という認識がまだ強いのかもしれません。

 

実際に業務に支障が出てしまう

妊娠・出産前後は、「つわり」や強烈な眠気で業務効率が落ちてしまいます。子供が生まれれば、病気で呼び出され会社を休まなければなりません。

 

どれも仕方がない理由なのですが、それによって実際に業務に支障をきたしてしまうのは事実なのです。そのため、周囲の人は「休んでばかり」「仕事を任せられない」と思うこともあるでしょう。

 

子育てに対する理解と経験のなさから事情を想像できない

マタハラ問題では、よく「子育てに理解がない」という言葉が出てきます。これは早退やお休みを頻繁にしなければならない状況がどのようなものか想像できていないからかもしれません。

 

  • 「(妊娠・出産前後)普段は元気だけど、日によって体調が変わりやすい…」
  • 「子供が37.5度以上の熱を出すとお迎えに行かなければならない」(ただし、平熱は37度前後)
  • 子供が入院した場合は「24時間付き添い」を病院に求められる

 

このようなことは、子育てをしている女性にとっては当たり前の知識・経験ですが、周囲の人からはなかなか理解が得られないものです。

 

理解不足からのマタハラを予防するためにも、妊娠・出産や保育園の入園などが決まった際に、一度上司に自分から伝えておくことも必要です。

 

 

マタニティハラスメント(マタハラ)裁判3事例

この項目では、実際にあったマタハラ裁判の事例をご紹介します。

 

育児休暇明けの解雇は無効と判断された事例

育休明け「インドに転勤するか…」 解雇無効の判決

 育休明けの解雇は育休法などに違反するとして、東京都内の女性がドイツ科学誌の出版社日本法人に解雇の無効確認や慰謝料220万円などを求めた訴訟の判決が3日、東京地裁であった。地裁は解雇を無効と認め、慰謝料55万円と未払い賃金の支払いを命じた。

引用元:朝日新聞|育休明け「インドに転勤するか…」 解雇無効の判決

 

裁判を起こした女性は、育休明けの復職時に「インドへの転勤」もしくは「収入が大幅に下がる役職への転換」を提示され、拒否したところ解雇された。

 

育児休暇取得による不利益な取り扱いは、育児介護休業法でも禁止されています。

第十条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
引用元:
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第二章

 

妊娠中の配置転換から復職後も変わらず会社に損害賠償請求した事例

マタハラ降格に賠償命令、女性が逆転勝訴

 広島市の病院に理学療法士として勤務していた女性が妊娠を理由に降格されたことが、男女雇用機会均等法に反するかが争われ、最高裁が違法と初判断した訴訟の差し戻し控訴審判決が17日、広島高裁であった。野々上友之裁判長は降格を適法とした一審・広島地裁判決を変更し、精神的苦痛による慰謝料も含めてほぼ請求通り約175万円の賠償を病院側に命じた。女性が逆転勝訴した。
引用元:
日本経済新聞|マタハラ降格に賠償命令、女性が逆転勝訴

 

この事例では、妊娠時に「軽易な業務への転換」を行った後、復職した後も降格されたままになってしまい、元の役職への地位確認と労働賃金の差額分を会社に求めたものです。

 

労働者の合意がない降格は、違法になる可能性が高いため、今回の裁判では女性の主張が認められました。

 

妊産婦や子育て中の女性への制度設定で和解した事例

マタハラ訴訟 日航、客室乗務員と和解 東京地裁

 妊娠によって無給休職となったのはマタニティーハラスメントで違法だとして、日本航空客室乗務員の神野(じんの)知子さん(42)が日航に休職命令の無効と未払い賃金など約338万円を求めた訴訟は28日、東京地裁(佐々木宗啓裁判長)で和解が成立した。神野さんに対して一定の金額が支払われるとみられる。

 原告の代理人弁護士によると、日航は今年度から原則として、妊娠した客室乗務員のうち希望者全員を地上勤務に就けることを約束。来年度からは申請者に短時間勤務か普通勤務かの希望を聞き、原則として希望に応じた地上勤務に就けることなどで合意した。

引用元:毎日新聞|マタハラ訴訟 日航、客室乗務員と和解 東京地裁

 

この裁判では、会社側が働く女性のための制度整備をすることで和解という結果になりました。

 

マタハラ裁判は、単純に勝訴、敗訴という問題ではなく、依頼者にとって納得のいく解決案がでるということも重要なのです。

 

 

 

マタニティハラスメント(マタハラ)をやめさせるための対処方法

マタハラなどのハラスメント問題は、一人で抱え込まず周囲を巻き込むことが重要です。この項目では、マタハラをやめさせるためにできる対処方法についてご紹介します。

 

社内相談窓口にマタハラ被害を報告・相談する

マタハラは、会社側に防止措置が義務付けられているため、必ず社内相談窓口などを利用してハラスメント被害を報告・相談してください。

 

なお、会社側の対処法は、労働審判や裁判などで重要なポイントになるため、相談日時・内容は記録に残しておくと良いでしょう。

 

会社にハラスメント差止要求書を送付する

会社にマタハラ被害を相談しても、「ハラスメントがおさまらない」「問題が解決されない」という場合は、ハラスメント差止要求書を送付します。

 

ハラスメント差止要求書は、以下のような形式で、ハラスメントの内容や望んでいる対処法などを明記して郵送します。

 

マタハラを労働局に相談する

マタハラなどの男女雇用機会均等法に違反するハラスメントは、各都道府県に設置されている雇用・環境均等(部)室で相談することができます。マタハラを雇用環境均等室に相談すると、話し合いなどを中心とした問題解決のアドバイスやあっせんを受けることができます。

関連リンク:厚生労働省|都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧

 

マタハラを労働基準監督署に申告する

マタハラは労働基準法違反にあたるため、労働基準監督署に申告することも可能です。労働基準監督署では、労働者からの申告があった際、実態調査や指導などを行います。

 

なお、労働基準監督署では、労働者と会社側との「歩み寄り」による解決が中心になります。そのため、双方が望む解決案が全く異なる場合は、問題解決が難しい場合があります。

関連リンク:厚生労働省|全国労働基準監督署の所在案内

 

労働審判を申し立てる

労働局や労働基準監督署での問題解決が難しい場合は、労働審判を申し立てるのもひとつです。労働審判は地方裁判所に申立書を提出することで手続きができます。労働問題を専門とした審判官と審判員が、原則3回以内の期日で解決のための判断を下します。

 

なお、労働審判での結果に納得がいかない場合は、通常訴訟(裁判)に移行します。

 

 

 

マタニティハラスメント(マタハラ)で解雇・働けなくなった場合の対処方法

マタハラを受けて、「解雇されてしまった」「肉体的にも精神的にも仕事を続けられなくなった」という場合は、解雇の無効と求めたり損害賠償を請求したりしましょう。

 

マタハラ解雇は無効・撤回を求めることができます。この項目では、解雇の無効・撤回や損害賠償を求めるための対処方法についてご紹介します。

 

マタハラ解雇にあった場合は「拒否」の姿勢を示す

マタハラによって解雇を言い渡されてしまったら、まず拒否する姿勢を目指しましょう。曖昧な態度をとったり、とりあえず「はい」と応えたりすると合意があるとみなされる場合があります

 

理不尽な理由による解雇は、必ず拒否しましょう。

 

解雇の無効・撤回を求める通知書を会社に送付する

マタハラ解雇は解雇が無効になる可能性があります。そのため、解雇無効・撤回を求める通知書を会社に送付することができます。

 

解雇無効を求める労働審判を申し立てる

解雇されてしまった場合も、労働審判を申し立てることが可能です。労働審判では、解雇の無効を求めたり、解決金(慰謝料)などを決めることができます。

 

通常訴訟(裁判)で地位確認・損害賠償請求を行う

労働審判での結果に納得がいかない場合は通常訴訟(裁判)に移行します。訴訟では、解雇の無効・撤回やマタハラなどの不法行為による損害の賠償請求を行います。

 

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:
民法

 

なお、訴訟を起こす場合は弁護士の力が必要不可欠とるなるため、早い段階で相談するようにしましょう。

 

 

マタニティハラスメント(マタハラ)を弁護士に相談してできること

マタニティハラスメント(マタハラ)は労働法の解釈の違いなどから起きることもあるため、弁護士などの専門家に問題解決を依頼することをお勧めします。

 

会社への文書通知や代理交渉が可能

「ハラスメント差止要求書」や「解雇無効の通知書」などの書面を弁護士に作成してもらうことで、より効力の強い文書を会社に送付することができます。

 

また、労働審判や裁判での交渉、ハラスメントの中止を求める会社との交渉などを代理で行うことが可能です。

 

労働審判・裁判での弁護

労働審判では、ハラスメントの中止や問題解決のための交渉を行います。労働審判なども弁護士に依頼することであなたの心強い味方となってくれます。

 

また、裁判に移行した際も、引き続き弁護を依頼することが可能です。

 

 

 

マタニティハラスメント(マタハラ)は我慢する時代ではない

働く女性に対して行われるマタハラは、労働者として許されない行為ですが、現実問題としてマタハラは往々に「ある」ことです。

 

その一方で、近年では共働き世帯の増加に伴い、お母さんが働いていることが「普通」になってきています。

 

もうマタハラは我慢する時代ではないので、職場で「働きづらい」「このままでは働き続けるのが難しい」と感じたら、早い段階で問題解決のための行動を起こしましょう。

 

 

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この記事の監修者
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梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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