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みなし残業(固定残業)が違法になるケースとは?違法な場合の対処法も解説

このコラムを監修
富永 慎太朗
弁護士
みなし残業(固定残業)が違法になるケースとは?違法な場合の対処法も解説

みなし残業を導入している会社の中には、運用方法が不適切で違法になることもあります。

会社側の運用方法に問題がある場合、従業員は会社から未払い残業代を回収できる可能性があります。

ただし、未払い残業代を回収するためには証拠の準備や会社との交渉などの対応が必要で、十分な知識を身に付けておかないと請求手続きが難航するおそれがあります。

対応に困って泣き寝入りするような事態を避けるためにも、本記事でみなし残業の違法性や、未払い残業代の請求方法なども押さえておきましょう。

本記事では、みなし残業の定義やメリット・デメリット、みなし残業が違法になるケースや、みなし残業が違法な場合の対処法などを解説します。

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みなし残業制(固定残業代制)とは

みなし残業制(固定残業代制)とは、あらかじめ一定時間分の残業代を毎月の給与に含めて支給する制度のことです。

みなし残業自体は合法であり、実際に多くの会社が導入しています。

ただし、運用方法を誤るとペナルティやリスクが発生するおそれがあるため、会社側は制度内容を正しく理解して適切に運用しなければいけません。

運用方法が不適切な場合、会社に対して労働基準監督署による是正勧告がおこなわれたり、労働基準法違反として「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑」が科されたりする可能性があります(労働基準法第119条1号)。

また、従業員への未払い残業代が発生し、労働審判や訴訟などに発展する場合もあります。

みなし残業制(固定残業代制)の制度内容について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

みなし残業のメリット・デメリット

みなし残業は、会社側と従業員側の双方にメリット・デメリットがあります。

ここでは、みなし残業の主なメリット・デメリットについて解説します。

みなし残業のメリット

まず、会社側の大きなメリットは「残業代の計算が楽になる」という点です。

みなし残業を導入した場合、みなし残業時間までの残業代については固定化されるためいちいち計算せず済み、通常よりも給与計算の手間を軽減できます

さらに、一定の残業代が固定化されることで通常よりも給与総額の大幅な変動が起きにくくなり、人件費のシミュレーションがしやすくなるというのもメリットです。

一方、従業員側にも「毎月安定した収入を得られる」というメリットがあります。

みなし残業が導入された場合、実際の残業時間がみなし残業時間に満たない月でも、みなし残業代は減額されずに全額受け取ることができます

みなし残業のデメリット

次に、会社側の大きなデメリットは「人件費が上がる可能性がある」という点です。

みなし残業を導入した場合、あまり残業が発生していない月でもみなし残業代を全額支払わなければならないため、みなし残業時間の設定を誤ると人件費が上がることもあります

さらに、制度内容を正しく理解しないまま運用してしまうと、労働基準監督署から是正勧告を受けたり、未払い残業代が発生して裁判手続きに発展したりするおそれもあります。

一方、従業員側にも「長時間労働につながる可能性がある」というデメリットがあります。

みなし残業が導入された場合、「みなし残業時間分は残業するべき」などの誤解が広がって無駄な残業を強いられたり、定時で帰りにくい雰囲気が形成されたりすることもあります。

みなし残業が違法になる5つのケース

みなし残業が違法になり得る代表的なケースとしては、以下の5つがあります。

  1. みなし残業代を基本給に含めて求人募集している場合
  2. 就業規則や雇用契約書に明記されていない場合
  3. みなし残業代を除いた基本給が最低賃金を下回っている場合
  4. みなし残業時間を超えた分の残業代が支払われていない場合
  5. みなし残業時間が月45時間を上回っている場合

ここでは、どのような場合に違法となる可能性があるのかを解説します。

1.みなし残業代を基本給に含めて求人募集している場合

みなし残業代を基本給に含めて求人募集している場合、違法となる可能性があります。

みなし残業を採用している会社が求人募集する際は、みなし残業に関する事項を明示しておかなければいけません。

厚生労働省では、主に以下のような事項を明示するように求めています。

  • みなし残業代を抜いた基本給の金額
  • みなし残業代の労働時間や金額の計算方法
  • みなし残業時間を超過する時間外労働・ 休日労働・深夜労働には割増賃金が別途発生する旨 など

2.就業規則や雇用契約書に明記されていない場合

みなし残業について就業規則や雇用契約書に明記されていない場合も、違法となる可能性があります。

会社がみなし残業を導入するためには、みなし残業に関する事項を就業規則や雇用契約書などに明記し、従業員に対して周知しなければいけません(労働基準法第15条1項)。

具体的には、会社側は以下のような事項を明記・周知しておく必要があります。

  • みなし残業を実施する旨
  • 基本給やみなし残業代の金額
  • みなし残業時間やみなし残業代の計算方法
  • みなし残業時間を超過する時間外労働・ 休日労働・深夜労働での割増賃金の支払い方法 など

3.みなし残業代を除いた基本給が最低賃金を下回っている場合

みなし残業代を除く基本給が最低賃金を下回っている場合は、違法となります。

基本給には最低賃金が設定されており、会社は最低賃金を上回る金額に設定したうえで、みなし残業代を加算しなければいけません。

なお、最低賃金は「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。

最低賃金の計算方法や計算例を確認しておきたい方は「最低賃金のチェック方法は?|厚生労働省」をご覧ください。

4.みなし残業時間を超えた分の残業代が支払われていない場合

みなし残業時間を超えた分の残業代が支払われていない場合、違法となる可能性があります。

実際の残業時間がみなし残業時間に満たない場合でも、会社はみなし残業代を全額支払う必要があります。

実際の残業時間がみなし残業時間を超えた場合には、会社はみなし残業代に加えて超過分の残業代を支払わなければいけません

なお、以下のように労働時間数や時間帯によって割増率は異なります

労働状況 時間 割増率
時間外労働 1日8時間、週40時間を超えた部分の労働時間 25%以上
時間外労働
(1ヵ月60時間超え)
月60時間を超える時間外労働の時間 50%以上
休日労働 法定休日の労働時間 35%以上
深夜労働 22時00分~5時00分の労働時間 25%以上
時間外労働+深夜労働 時間外労働+深夜労働の時間 50%以上(25%+25%)
休日労働+深夜労働 休日労働+深夜労働の時間 60%以上(35%+25%)

5.みなし残業時間が月45時間を上回っている場合

みなし残業時間が月45時間を上回っている場合も、違法となる可能性があります。

労働基準法では「1日8時間・週40時間」という法定労働時間が定められており、原則として会社は法定労働時間を超えて従業員を働かせることはできません(労働基準法第32条)。

会社と従業員で36協定という労使協定を結べば法定労働時間を超えた時間外労働が可能となりますが、時間外労働には「原則月45時間・年間360時間」の上限が定められています。

なお、特別条項付き36協定を結んでいて臨時的な特別の事情がある場合は、例外的に「月45時間・年間360時間」を超える時間外労働が認められることもあります。

36協定の特別条項や上限について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

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みなし残業が違法な場合の5つの対処法

みなし残業の運用方法が不適切な場合、会社から未払い残業代を回収できる可能性があります。

未払い残業代の請求を考えているなら、以下のような対応を検討しましょう。

  1. 残業代未払いの証拠を集める
  2. 会社に内容証明郵便を送付する
  3. 労働基準監督署に申告する
  4. 労働審判や訴訟をおこなう
  5. 弁護士に相談する

ここでは、それぞれの手続きの進め方を解説します。

1.残業代未払いの証拠を集める

未払い残業代を請求する場合、まずは証拠集めが必要です。

証拠集めを済ませておかないと、会社が証拠不足を理由に請求を拒否したり、裁判でも自分の請求が認めてもらえなかったりするおそれがあります。

具体的には、以下のようなものが証拠として有効です。

残業代請求で有効な証拠 具体例
①実際の労働時間に関する資料 タイムカード・勤務表・業務日報など
②労働条件や契約内容に関する資料 就業規則・雇用契約書・労働条件通知書など
③給与の支払い状況に関する資料 給与明細・銀行口座の写しなど

以下の記事では、証拠が集まらない場合の対処法について解説しているので、証拠集めに困った際はご覧ください。

2.会社に内容証明郵便を送付する

証拠集めを済ませたら、会社に未払い残業代の支払いを求めましょう

請求方法は複数ありますが、まずは未払い残業代の金額や支払方法などを記載した「内容証明郵便」を送付するのが一般的です。

内容証明郵便とは「いつ・誰が誰に対して・どのような内容の文書を送付したのか」を郵便局が証明してくれるサービスです。

内容証明郵便を送付することで、会社に対して未払い残業代を請求した事実が記録され、裁判手続きをおこなう際は証拠としても機能します。

送付後は会社側と交渉を重ねていき、交渉がまとまれば合意書を作成したのち、合意内容に従って未払い残業代が支払われます

3.労働基準監督署に申告する

内容証明郵便の送付や交渉では解決が難しい場合は、労働基準監督署に申告するのも有効です。

労働基準監督署とは、会社が法律を適切に守って事業活動をおこなっているかどうかのチェックや、違反企業に対する行政指導などをおこなう機関です。

残業代未払いの事実を申告することで、労働基準監督署が会社に対して立ち入り調査を実施し、是正勧告がなされて社内体制が改善する可能性があります。

ただし、労働基準監督署の場合、申告しても対応を後回しにされるケースもあれば、証拠不足などを理由に十分な対応が行われないケースもあります

そのため、残業代回収に向けてすぐに動いてほしいなら、弁護士に相談することも有効な選択肢といえます。

4.労働審判や訴訟をおこなう

直接やり取りしても解決が難しい場合は、裁判手続きに移行しましょう

主な裁判手続きとしては「労働審判」や「訴訟」があり、まずは労働審判を利用するのが一般的です。

労働審判とは、裁判官や労働審判員で構成された「労働審判委員会」が仲介役となって裁判所で話し合いをおこない、原則3回以内の期日で問題解決を目指す手続きです。

話し合いで合意できれば調停成立となって未払い残業代が支払われ、合意できなければ労働審判委員会による審判が下されます。

審判に対して異議の申し立てがあった場合は、訴訟へと移行します。

訴訟では、裁判所で未払い残業代に関する主張立証をおこない、主張立証が尽くされたタイミングで裁判官の判決または和解となって終了します。

5.弁護士に相談する

残業代未払いのトラブルでは、弁護士が心強い味方になってくれます

弁護士なら、証拠の集め方・交渉の進め方・裁判手続きの流れなどのアドバイスが受けられますし、自力での対応が不安なら代理人として代行してもらうことも可能です。

多くの法律事務所では初回無料相談を実施しているので、未払い残業代の請求を考えているなら一度相談してみることをおすすめします。

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みなし残業が違法な場合に弁護士に相談・依頼する3つのメリット

みなし残業の運用方法が不適切な場合、弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットが望めます

  1. 正確な未払い残業代を計算してくれる
  2. 未払い残業代の請求手続きを一任できる
  3. 未払い残業代を回収できる可能性が高まる

ここでは、弁護士がどのようなサポートをしてくれるのかを解説します。

1.正確な未払い残業代を計算してくれる

弁護士に依頼すれば、正確な未払い残業代を計算してくれます

残業代請求では、請求する側が未払い金額を計算するのが一般的です。

タイムカードなどで残業時間を確認し、割増率を当てはめて計算しなければならず、相応の時間や労力がかかる作業ですし、慣れていないと計算ミスが起きるおそれもあります。

弁護士なら面倒な計算作業を代わってくれて、スムーズに未払い金額を把握できます

2.未払い残業代の請求手続きを一任できる

弁護士に依頼すれば、未払い残業代の請求手続きを代行してくれます。

内容証明郵便の送付・会社との交渉・労働審判・訴訟など、未払い残業代を回収するためには多くの手続きを踏まなければいけません。

全て自分で対応すると大きな時間的負担・精神的負担がかかりますし、素人では慣れない手続きに戸惑ったりして問題解決が長引くおそれもあります。

弁護士に代行してもらえば請求手続きの負担を大幅に軽減できますし、複雑な裁判手続きにもミスなく適切に対応してくれます。

3.未払い残業代を回収できる可能性が高まる

弁護士に依頼すれば、未払い残業代を回収できる可能性が高まります

会社によっては、内容証明郵便を送付しても一切反応がなかったり、あれこれ理由を付けて反論してきて交渉が難航したりする場合もあります。

弁護士なら法律知識や交渉ノウハウを活かして尽力してくれるため、会社側が支払いを渋るようなケースでも早期回収・全額回収が期待できます。

なかには弁護士に対応を代わってもらうだけで会社側に本気度が伝わり、態度が一変して支払いに応じたりすることもあります。

みなし残業の違法性に関するよくある質問3選

ここでは、みなし残業の違法性に関するよくある質問について解説します。

1.みなし残業制度は違法ですか?やめたほうがいい?

みなし残業自体は違法なものではなく、実際に多くの会社が導入しています。

制度内容を正しく理解し、適切に運用されていればまったく問題ありません。

ただし、運用方法が不適切な場合は、労働基準監督署による是正勧告・労働基準法違反による刑事罰・従業員との労働審判や訴訟などに発展するおそれがあります。

2.みなし残業は何時間までOKですか?

みなし残業時間については、法律で明確な上限は規定されていません。

ただし、36協定の上限に合わせて「原則月45時間・年間360時間」とするのが一般的です。

月45時間を超えると違法になる可能性がありますが、「特別条項付き36協定を結んでいて臨時的な特別の事情がある」というようなケースでは例外的に認められることもあります。

3.みなし残業が違法になるケースは?

みなし残業が違法になり得る代表的なケースとしては、以下の5つがあります。

  1. みなし残業代を基本給に含めて求人募集している場合
  2. 就業規則や雇用契約書に明記されていない場合
  3. みなし残業代を除いた基本給が最低賃金を下回っている場合
  4. みなし残業時間を超えた分の残業代が支払われていない場合
  5. みなし残業時間が月45時間を上回っている場合

ただし、素人では違法性の有無を見極められないおそれがあります。

少しでも勤務先の対応がおかしいと感じたら、まずは弁護士への相談をおすすめします。

さいごに|みなし残業のトラブルに遭ったら、ベンナビ労働問題で相談を

みなし残業の運用方法が不適切な場合、会社から未払い残業代を回収できる可能性があります。

ただし、スムーズに請求手続きを済ませるためには法律知識や交渉経験などが必要となるため、自力での対応が不安なら弁護士にアドバイスやサポートを求めましょう。

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