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インフルエンザの社員に出勤強要は出来ない|出勤停止の扱いや強要被害の対処法

更新日:2021年05月12日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
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インフルエンザに感染した社員に出勤を命じることができるのか?

 

社員は雇用契約に基づいて会社の指示・命令に従う義務がありますし、会社に出勤することも雇用契約に基づく社員の基本的義務です。そのため、会社が出勤を命じた場合、社員はこれに従わなければならないのが原則です。


では、インフルエンザに罹患した社員に対し、会社が出勤を命じることはできるのでしょうか

 

結論からいえば、インフルエンザに罹患し、他に感染のリスクがある場合に、会社は出勤を命じることはできませんし、社員もインフルエンザに罹患していることを理由としてこれを拒否することができる場合が多いと思われます。以下、詳細に説明します。

 

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この記事に記載の情報は2021年05月12日時点のものです

インフルエンザに感染した社員に対して出勤の強制を命じることはできない

社員は雇用契約に基づいて会社の指示・命令に従う義務がありますし、会社に出勤することも雇用契約に基づく社員の基本的義務です。そのため、会社が出勤を命じた場合、社員はこれに従わなければならないのが原則です。

 

 

会社に許容される裁量の範囲を超えるような命令は法的有効性が否定

会社は社員に対して業務上必要な命令を行うことができるという原則は上記のとおりですが、当該原則にも当然限界があります。すなわち、業務上の必要性・相当性を踏まえ、会社に許容される裁量の範囲を超えるような命令は法的有効性が否定され、社員を従わせることはできません

 

また、仮に業務命令の有効性が否定されない場合でも、社員側でこれに従うことができない「正当な理由」があれば、これに従わないことについて義務違反として責任を問われることもありません。

 

インフルエンザの社員を出勤させることが非常識

この点、インフルエンザは高熱などの症状が出ることが多く、本人の肉体には相当の負担がかかる疾病です。このように既に病気により重い負担を被っている社員に対し、更に業務を命じて肉体的負荷を与えることが非常識極まりないことは当然でしょう。

 

また、インフルエンザは感染性の高い疾患であることは常識であり、出勤すれば他職員に感染するおそれがあります。このような感染拡大となり得る行為を会社が慎むべきこともまた当然でしょう。

 

このように、常識的見地からすれば、会社は、インフルエンザを発症した社員に対し、出勤を命じて業務に従事させるべきでないことは当然であり、このことは業務の必要性がどれほど高くても左右されません。

 

したがって、会社がインフルエンザに罹患した社員に対して出勤等を命じることは、業務上の相当性を超えるというほかなく、会社はそのような命令を下すことはできないということになります。

 

社員がインフルエンザ感染を理由に出勤拒否することは当然

また、社員側も、インフルエンザに罹患した状態で無理に仕事をすれば、これが重篤化し、最悪死に至るおそれすらあります。このような身体・生命に多大な危険を伴うような業務命令については、その安全が確保されない限りこれに従わないことは「正当」な対応といえます。

 

したがって、社員は自身がインフルエンザに罹患していることを「正当な理由」とすることで、会社からの命令を拒否することが可能と考えます。以上のとおり、インフルエンザに罹患した社員に対して出勤等を命じることは、会社側から見ても、社員側から見ても許容されないというべきです。

 

出勤等を強いることはハラスメントとして損害賠償の対象となり得る

会社がインフルエンザに罹患している社員に対して出勤等を命じた場合、会社にはどのような責任が生じるのでしょうか。

 

上記のとおり、会社はインフルエンザに罹患した社員に出勤等を命じることができませんので、これを強いた場合は無理やり義務のないことを行わせたこととなり、当該行為は社員に対するハラスメント行為として、不法行為責任を負う可能性があります

 

また、会社は社員の安全・健康に配慮する義務(安全配慮義務)を労働契約法に基づいて負担していますので、このような病人を無理に出社させる行為が、当該義務に違反しているという観点から、債務不履行責任を負う可能性もあります。

 

いずれにせよ、会社は自身の行為について法的な責任を負う可能性があり、この場合、社員に生じた損害(精神的損害を含みます)について賠償しなければならないということになります。

 

 

インフルエンザの社員に対する正しい対処法

会社は、社員がインフルエンザに罹患した場合、どのように対応するのが正しいのでしょうか。

 

この点について決まったルールはありませんので、医学的見地を踏まえた常識的な対応をするべきということになるでしょう。この点は、学校での取扱いが参考となるかもしれません。

 

すなわち、学校保健安全法施行規則では、インフルエンザの場合の登校停止について、以下のような基準をもうけています。

 

  • 新型インフルエンザや特定鳥インフルエンザの場合…治癒するまで
  • 季節性のインフルエンザの場合…発症後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児の場合は3日)を経過するまで

 

したがって、会社としても従業員のインフルエンザの状態を的確に把握しつつ、上記のようなルールを参考としながら、問題のない時期まで出社命令を控えるという対応を講ずるべきでしょう。

 

(出席停止の期間の基準)

第十九条 令第六条第二項 の出席停止の期間の基準は、前条の感染症の種類に従い、次のとおりとする。

第一種の感染症にかかつた者については、治癒するまで

二 第二種の感染症(結核及び髄膜炎菌性髄膜炎を除く。)にかかつた者については、次の期間。ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りでない。

インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H五N一)及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあつては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで

ロ 百日咳にあつては、特有の咳が消失するまで又は五日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで。

ハ 麻しんにあつては、解熱した後三日を経過するまで。

ニ 流行性耳下腺炎にあつては、耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹 が発現した後五日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで。

ホ 風しんにあつては、発しんが消失するまで。

ヘ 水痘にあつては、すべての発しんが痂皮化するまで。

ト 咽頭結膜熱にあつては、主要症状が消退した後二日を経過するまで。

三 結核、髄膜炎菌性髄膜炎及び第三種の感染症にかかつた者については、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。

四 第一種若しくは第二種の感染症患者のある家に居住する者又はこれらの感染症にかかつている疑いがある者については、予防処置の施行の状況その他の事情により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。

五 第一種又は第二種の感染症が発生した地域から通学する者については、その発生状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間。

六 第一種又は第二種の感染症の流行地を旅行した者については、その状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間。

引用元:学校保健安全法施行規則

 

インフルエンザに罹患した場合に出勤を強いられた場合の対処法

インフルエンザにかかった社員について会社は出勤を命じることができないこと、出勤を強いた場合は損害賠償責任を負う可能性があることは上記のとおりです。しかし、現実にはそういった対応をとる“ブラック企業”も存在するかもしれません。

 

仮にそのような不当な出社命令を受けた場合、社員としてどのように対応すればよいのでしょうか。

 

医師の診断に基づいて出社できない旨を説明する

会社から出勤を命じられた場合、医師にインフルエンザに罹患しており安静を要する旨診断してもらうという方法があり得ます。

 

医師を受診していれば上記診断結果はカルテに記載されますので、会社が特に必要としない限り診断書の発行までは不要であり、会社には「そのように診断されている」と説明すれば、大体の場合はそれで足ります(一応、きちんと説明したことを証拠として残すべく、メール等で連絡しておきましょう。)。

 

診断書の発行をする

もし、会社が「診断書を提出しろ」と指示するのであれば、診断書を作成してもらい、これを会社に提出してください(会社が指示するのであれば、診断書の作成費用は会社負担とするべきでしょう。)。

 

社員側で行うべきことは基本的には上記で尽きます。なお、当然ですが、このような病欠については無給扱いとなるのが通常です。

 

そのため、無給は辛いということであれば有給休暇の申請をして休むという方法もあります。

 

インフルエンザで欠勤する際によくある疑問

有給休暇を取得してもよい?

有給休暇の取得は労働者の権利であり、取得について特段の理由は要りません。そのため、インフルエンザで欠勤する場合に、有給休暇を取得することも当然できます。

 

労働者側で有給休暇を取得する旨明確に伝えて休んだのに、企業がこれを有給扱いとしないことは、労働基準法違反であり、場合によっては会社に「6か月以下の腸液または30万円以下の罰金刑」が科される可能性があります(労働基準法第118条)。

 

もしもこのような不当な扱いを受けた場合には、労働基準監督署への通報も検討するべきかもしれません。

 

病欠について何かしらの手当はもらえるの?

労働者が私的な病気により欠勤した場合には、当然、労務提供がありませんのでその分の賃金は支払われません(ノーワークノーペイの原則)。

 

そのため、上記のように有給権を行使した場合や会社が特別に有給扱いとする優遇のルールを実施していない限り、病欠分について手当等が支払われることはありません。

 

なお、インフルエンザが大流行し、会社が安全配慮義務の観点から事業場全体を閉鎖し、結果、インフルエンザに罹患していないのに休業を余儀なくされたという場合には、休業手当を請求できる場合もあります。

 

これは病欠に伴う欠勤ではなく、会社都合による欠勤だからです。

 

傷病手当金の受給は可能?

インフルエンザで長期欠勤するということは考えにくいですが、仮にインフルエンザから合併症等を発症し、長期の休業を余儀なくされることとなった場合には、健康保険組合から傷病手当金を受け取れる可能性があります。

 

傷病手当金とは、業務外の病気やけがにより就労困難な状態に陥った場合に、労働者の生活維持の観点から健康保険組合が支給するお金です。以下の要件を満たす必要があります。

 

  • 業務外の理由によるけがや病気で欠勤する
  • 連続して4日以上労務不能の状態が続いている
  • 休んでいる期間の給与が支給されない

 

具体的な申請手続きは通常会社が代行しますので、もしこのような事態に陥った場合には早めに会社担当者に申請について相談しましょう。

 

職場復帰するにあたって医師の証明書は必要?

インフルエンザ程度であれば、職場復帰のために敢えて治癒証明を求められることは少ないと思われます。

 

もっとも、会社においてこれを必要とする正当な理由(例えば、インフルエンザが大流行しており、職場内での二次感染について慎重に対応しなければならない等)がある場合、その提出を求められることもあるかもしれません。

 

この場合は、社員側で敢えてこれを拒否する理由もありませんので、会社の費用負担の下で診断書を発行してもらい、これを会社に提出すれば良いかと思われます。

 

今後かからないための効果的なインフルエンザ予防対策

インフルエンザにかかると、仕事ができなくなるだけではなく命に関わるリスクもあります。特に妊婦や呼吸器系・循環器系、肝臓・腎臓病などの持病のある方、代謝障害のある方などは症状が重篤化しやすいので注意が必要です。

 

インフルエンザにかからないため、以下のような予防方法を徹底してみてください。

 

ワクチン接種

まずは早めのワクチン接種が有効です。ワクチンを接種しておけば該当する型のインフルエンザに対する耐性ができるので、罹患するリスクが大きく低下します。

 

流行してからでは遅いので、インフルエンザが流行る前に医療機関でワクチンを受けておきましょう。

 

うがいや手洗い、消毒の徹底

外出して帰宅したときには、必ずうがいと手洗いを行います。指の間までしっかり石鹸をつけて冷水で洗い流しましょう。アルコールを含有する消毒液で手を消毒する対策も有効です。

 

乾燥を避ける

冬は乾燥しがちですが、乾燥すると人の気道粘膜における防御機能が低下してしまうため、インフルエンザにかかりやすくなります。室内でも加湿器を使い、50~60%程度の適切な湿度を維持しましょう。

 

日頃からの健康管理

免責力を高めるため、毎日の健康管理も重要です。睡眠時間は充分にとり栄養のある食事を取って健康に留意しましょう。

参考:健康寿命を延ばす3つのメリットと今日からできる10の取り組み

 

外でマスクをする

できるだけ人混みや繁華街への外出を控え、どうしてもそういった場所に行かねばならないときには「不織布製のマスク」を着用すると予防につながります。

 

まとめ

インフルエンザと出社命令について簡単に解説しました。ほとんどの企業では社員がインフルエンザに罹患した場合に出社や勤務を強制するということはありません(そのようなことをしても会社にとって害悪でしかないからです。)。

 

労働者側も、インフルエンザに罹患した場合、自分のことはもちろんのこと職場の他職員のことも考慮して、ゆっくりと休養し、病気を治すことに専念しましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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