労働災害が原因のけがや病気が後遺症として残った場合、労災保険の「障害補償給付」を受け取れます。
しかし、申請手続をしても、支給決定が得られなかったり、納得のいく障害等級にならなかったりする場合があります。
そのような場合に備えて、早い段階から障害補償給付の仕組みやポイントなどを知っておくのが重要です。
この記事では、労災による後遺障害が残ってしまった方に向けて、後遺障害や障害補償給付の基礎知識、後遺障害の等級の認定基準、受け取れる給付金の種類と金額、症状固定から等級認定を受けるまでの大まかな流れ、認定結果に納得がいかない場合の対処法などを解説します。
また、弁護士に相談・依頼するメリットも確認しましょう。
労働災害で後遺障害を負ったあなたへ
労働災害が原因で後遺障害を負ったけど、どのような補償が受けられるかわからず悩んでいませんか?
結論からいうと、労災が原因で後遺障害が残ると給付金を受け取ることが可能です。
もし、後遺障害の認定に納得がいかない場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
弁護士に相談すると以下のようなメリットを得ることができます。
- 後遺障害に関するアドバイスが受けられる
- 依頼すれば、障害補償給付の申請手続を一任できる
- 依頼すれば、会社に対する損害賠償請求に対応してもらえる
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この記事に記載の情報は2023年12月05日時点のものです
労災によって後遺障害が残ると給付金を受け取れる
労災保険制度で受け取れる給付金には、療養補償給付、休業補償給付、傷病補償年金、遺族補償給付など、さまざまな種類があります。
このうち、労働災害によって後遺障害が残った場合に受け取れるのが、障害補償年金や障害補償一時金といった「障害補償給付」です。まずは、後遺障害や障害補償給付の基礎知識について確認しましょう。
後遺障害とは「治療を尽くしても完治せずに症状が残っている状態」のこと
労災保険制度における後遺障害とは、業務・通勤が原因で負ったけがや病気が治った(症状固定した)ときに、身体に一定の後遺症が残っている状態を指します。
労災保険制度では、障害補償給付の対象になっているため、所轄の労働基準監督署長に労災申請し、認定された場合は障害等級に応じて年金または一時金を受け取ることができます。
後遺障害の等級は認定基準(障害等級表)によって決定される
障害補償給付には、第1級~第14級の障害等級が設けられています。
このうち、第1級が最も障害が重く給付金も高額になり、第14級が最も障害が軽く給付金が低額になります。
障害等級は、原則として障害等級表に記載されている認定基準に応じて決定されます。
以下で、第1級~第14級それぞれの認定基準について確認しましょう。
障害等級第1級の認定基準
- 両眼が失明したもの
- そしゃく及び言語の機能を廃したもの
- 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
- 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
- 両上肢の用を全廃したもの
- 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
- 両下肢の用を全廃したもの
障害等級第2級の認定基準
- 一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
- 両眼の視力が0.02以下になったもの
- 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
- 両上肢を手関節以上で失ったもの
- 両下肢を足関節以上で失ったもの
障害等級第3級の認定基準
- 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
- そしゃくまたは言語の機能を廃したもの
- 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
- 両手の手指の全部を失ったもの
障害等級第4級の認定基準
- 両眼の視力が0.06以下になったもの
- そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
- 両耳の聴力をまったく失ったもの
- 一上肢をひじ関節以上で失ったもの
- 一下肢をひざ関節以上で失ったもの
- 両手の手指の全部の用を廃したもの
- 足をリスフラン関節以上で失ったもの
障害等級第5級の認定基準
- 一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
- 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 一上肢を手関節以上で失ったもの
- 一下肢を足関節以上で失ったもの
- 一上肢の用を全廃したもの
- 一下肢の用を全廃したもの
- 両足の足指の全部を失ったもの
障害等級第6級の認定基準
- 両眼の視力が0.1以下になったもの
- そしゃくまたは言語の機能に著しい障害を残すもの
- 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
- 一耳の聴力をまったく失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- せき柱に著しい変形または運動障害を残すもの
- 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
- 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
- 一手の五の手指または母指を含み四の手指を失ったもの
障害等級第7級の認定基準
- 一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
- 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 一耳の聴力をまったく失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
- 一手の母指を含み三の手指または母指以外の四の手指を失ったもの
- 一手の五の手指または母指を含み四の手指の用を廃したもの
- 一足をリスフラン関節以上で失ったもの
- 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
- 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
- 両足の足指の全部の用を廃したもの
- 外貌に著しい醜状を残すもの
- 両側のこう丸を失ったもの
障害等級第8級の認定基準
- 一眼が失明し、または一眼の視力が0.02以下になったもの
- せき柱に運動障害を残すもの
- 一手の母指を含み二の手指または母指以外の三の手指を失ったもの
- 一手の母指を含み三の手指または母指以外の四の手指の用を廃したもの
- 一下肢を5センチメートル以上短縮したもの
- 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
- 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
- 一上肢に偽関節を残すもの
- 一下肢に偽関節を残すもの
- 一足の足指の全部を失ったもの
障害等級第9級の認定基準
- 両眼の視力が0.6以下になったもの
- 一眼の視力が0.06以下になったもの
- 両眼に半盲症、視野狭さくまたは視野変状を残すもの
- 眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
- そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの
- 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
- 一耳の聴力をまったく失ったもの
- 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 一手の母指または母指以外の二の手指を失ったもの
- 一手の母指を含み二の手指または母指以外の三の手指の用を廃したもの
- 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの
- 一足の足指の全部の用を廃したもの
- 外貌に相当程度の醜状を残すもの
- 生殖器に著しい障害を残すもの
障害等級第10級の認定基準
- 一眼の視力が0.1以下になったもの
- 正面視で複視を残すもの
- そしゃくまたは言語の機能に障害を残すもの
- 14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
- 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
- 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
- 一手の母指または母指以外の二の手指の用を廃したもの
- 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
- 一足の第一の足指または他の四の足指を失ったもの
- 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
- 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
障害等級第11級の認定基準
- 両眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの
- 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
- 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
- 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
- 一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- せき柱に変形を残すもの
- 一手の示指、中指または環指を失ったもの
- 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
障害等級第12級の認定基準
- 一眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの
- 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
- 7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
- 一耳の耳かくの大部分を欠損したもの
- 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの
- 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
- 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
- 長管骨に変形を残すもの
- 一手の小指を失ったもの
- 一手の示指、中指または環指の用を廃したもの
- 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったものまたは第三の足指以下の三の足指を失ったもの
- 一足の第一の足指またはほかの四の足指の用を廃したもの
- 局部にがん固な神経症状を残すもの
- 外貌に醜状を残すもの
障害等級第13級の認定基準
- 一眼の視力が0.6以下になったもの
- 一眼に半盲症、視野狭さくまたは視野変状を残すもの
- 正面視以外で複視を残すもの
- 両眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの
- 5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
- 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
- 一手の小指の用を廃したもの
- 一手の母指の指骨の一部を失ったもの
- 一下肢を1センチメートル以上短縮したもの
- 一足の第三の足指以下の一または二の足指を失ったもの
- 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したものまたは第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
障害等級第14級の認定基準
- 一眼のまぶたの一部に欠損を残し、またはまつげはげを残すもの
- 3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
- 一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
- 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
- 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
- 一手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
- 一手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
- 一足の第三の足指以下の一または二の足指の用を廃したもの
- 局部に神経症状を残すもの
後遺障害が2つ以上ある場合は「併合」または「併合繰上げ」となる
労災による後遺障害が2つ以上残った場合、併合または併合繰上げという処理がおこなわれ、これにより全体として1つの障害等級が決まります。
併合と併合繰上げのどちらになるかは、残った障害の状態で異なります。
- 障害等級第13級以上の後遺障害が1つあり、それ以外は第14級の後遺障害である場合→併合
- 障害等級第13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合→併合繰上げ
併合として処理される場合は、重いほうの障害等級がその人の障害等級になります。
一方、併合繰上げとして処理される場合は、重いほうの障害等級を1級~3級繰上げしたものがその人の障害等級となります。
併合繰上げのときにどの程度繰上げされるかは、以下のように残っている障害の状態によって変わります。
【障害の状態と繰上げの内容】
障害の状態
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繰上げの内容
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第13級以上の障害が2つ以上
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重いほうの障害等級を1級繰上げ
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第8級以上の障害が2つ以上
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重いほうの障害等級を2級繰上げ
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第5級以上の障害が2つ以上
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重いほうの障害等級を3級繰上げ
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【等級別】労災で後遺障害が残った場合の給付額
労災で後遺障害を負った場合に受け取れる給付金の種類や金額は、労働基準監督署によって認定された障害等級に応じて変わります。
ここでは、障害等級ごとにどの程度の給付金を受け取れるのかについて確認しましょう。
給付金の種類
後遺障害を負った労働者が受け取れる給付金の種類は、障害等級が「第1級~第7級」と「第8級~第14級」で変わります。
大きな違いは、第1級~第7級は年金形式の給付金が多く、第8級~第14級は一時金形式の給付金となります。
それぞれの労働者が受け取れる給付金の種類は、以下のとおりです。
障害等級
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繰り上げの内容
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第1級~第7級
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・障害(補償)年金
・障害特別支給金
・障害特別年金
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第8級~第14級
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・障害(補償)一時金
・障害特別支給金
・障害特別一時金
|
給付金の計算方法
障害補償給付の給付金の計算方法は、給付金の種類によって異なります。
給付金の種類
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給付金の計算方法
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障害(補償)年金
障害(補償)一時金
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給付基礎日額×指定された日数分
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障害特別支給金
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指定された金額
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障害特別年金
障害特別一時金
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算定基礎日額×指定された日数分
|
障害(補償)年金や障害(補償)一時金の計算で用いられている「給付基礎日額」とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する金額を指します。
労働災害の発生日または医師による診断日より直前3ヵ月に支払われた賃金の合計額を、その期間の日数で割った1日あたりの賃金額が、給付基礎日額になります。
また、障害特別年金や障害特別一時金の計算で用いられている「算定基礎日額」とは、労働災害の発生日または医師による診断日以前の1年間に支払われた特別給与(ボーナスなど)の総額を365日で割った金額のことです。
ボーナスなどの賃金は、通常の給付基礎日額には反映されずに、こちらの特別年金・特別一時金に反映されるようになっています。
障害等級ごとの給付額の一覧
障害等級ごとの給付額は、以下のとおりです。
障害等級第1級の場合
給付金の項目
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給付内容
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障害(補償)年金
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給付基礎日額の313日分
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障害特別支給金
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342万円
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障害特別年金
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算定基礎日額の313日分
|
障害等級第2級の場合
給付金の項目
|
給付内容
|
障害(補償)年金
|
給付基礎日額の277日分
|
障害特別支給金
|
320万円
|
障害特別年金
|
算定基礎日額の277日分
|
障害等級第3級の場合
給付金の項目
|
給付内容
|
障害(補償)年金
|
給付基礎日額の245日分
|
障害特別支給金
|
300万円
|
障害特別年金
|
算定基礎日額の245日分
|
障害等級第4級の場合
給付金の項目
|
給付内容
|
障害(補償)年金
|
給付基礎日額の213日分
|
障害特別支給金
|
264万円
|
障害特別年金
|
算定基礎日額の213日分
|
障害等級第5級の場合
給付金の項目
|
給付内容
|
障害(補償)年金
|
給付基礎日額の184日分
|
障害特別支給金
|
225万円
|
障害特別年金
|
算定基礎日額の184日分
|
障害等級第6級の場合
給付金の項目
|
給付内容
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障害(補償)年金
|
給付基礎日額の156日分
|
障害特別支給金
|
192万円
|
障害特別年金
|
算定基礎日額の156日分
|
障害等級第7級の場合
給付金の項目
|
給付内容
|
障害(補償)年金
|
給付基礎日額の131日分
|
障害特別支給金
|
159万円
|
障害特別年金
|
算定基礎日額の131日分
|
障害等級第8級の場合
給付金の項目
|
給付内容
|
障害(補償)一時金
|
給付基礎日額の503日分
|
障害特別支給金
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65万円
|
障害特別一時金
|
算定基礎日額の503日分
|
障害等級第9級の場合
給付金の項目
|
給付内容
|
障害(補償)一時金
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給付基礎日額の391日分
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障害特別支給金
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50万円
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障害特別一時金
|
算定基礎日額の391日分
|
障害等級第10級の場合
給付金の項目
|
給付内容
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障害(補償)一時金
|
給付基礎日額の302日分
|
障害特別支給金
|
39万円
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障害特別一時金
|
算定基礎日額の302日分
|
障害等級第11級の場合
給付金の項目
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給付内容
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障害(補償)一時金
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給付基礎日額の223日分
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障害特別支給金
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29万円
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障害特別一時金
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算定基礎日額の223日分
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障害等級第12級の場合
給付金の項目
|
給付内容
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障害(補償)一時金
|
給付基礎日額の156日分
|
障害特別支給金
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20万円
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障害特別一時金
|
算定基礎日額の156日分
|
障害等級第13級の場合
給付金の項目
|
給付内容
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障害(補償)一時金
|
給付基礎日額の101日分
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障害特別支給金
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14万円
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障害特別一時金
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算定基礎日額の101日分
|
障害等級第14級の場合
給付金の項目
|
給付内容
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障害(補償)一時金
|
給付基礎日額の56日分
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障害特別支給金
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8万円
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障害特別一時金
|
算定基礎日額の56日分
|
労災による後遺障害の等級認定を受けるまでの流れ
障害補償給付を受け取るためには、所轄の労働基準監督署長に申請書類を提出し、後遺障害の等級認定を受ける必要があります。
ここでは、けがや病気の症状固定から審査結果の通知を受けるまでの流れを確認しましょう。
①医師から症状固定の診断を受ける
障害補償給付の申請をするためには、まず医療機関で治療を受けて、医師から症状固定(治ゆ)の診断を受ける必要があります。
症状固定とは、医学上の一般的な治療を継続したとしても、その治療効果が期待できなくなった状態のことを指します。
症状固定となった場合、医師に労災申請に必要な後遺障害診断書を作成してもらえます。
②申請書類を準備して労働基準監督署長に提出する
医師から症状固定の診断を受けたら、障害補償給付の申請書類を準備します。
申請に必要な主な書類は、障害補償給付・複数事業労働者障害給付支給請求書、医療機関・医師から受け取った後遺障害診断書、レントゲン写真などとなっています。
これらの申請書類を用意できたら、所轄の労働基準監督署長に提出しましょう。
障害補償給付・複数事業労働者障害給付支給請求書の記入例
労働基準監督署長で使用する請求書には、業務災害用の「障害補償給付・複数事業労働者障害給付支給請求書(様式第10号)」と通勤災害用の「障害給付支給請求書(様式第16号の7)」があります。
業務災害用の請求書を作成する場合は、以下の記入例を参考にしてください。
引用元:障害補償給付請求書記入例|厚生労働省
③労働基準監督署にて審査がおこなわれる
障害補償給付の請求書を提出したら、後日、労働基準監督署にて面談がおこなわれることがあります。
面談当日は、労働基準監督署の調査官または地方労災医員という医師による質疑応答がおこなわれて、請求書や診断書などでは判断できないことを中心に確認されます。
また、必要に応じて治療を担当した医療機関や医師に対して照会もおこなわれます。
④認定結果が通知される
請求書の提出から3ヵ月程度経ち、労働基準監督署による審査が終わると、「障害補償給付の支給決定通知書(不支給決定通知書)」や障害等級が重度の場合は年金証書が届きます。
支給決定通知書には支給額、平均賃金、障害等級などが記載されています。この通知内容に問題がなければ、障害補償給付の年金や一時金などが振り込まれます。
後遺障害の認定結果に納得いかない場合の対処法
障害補償給付の不支給決定通知書を受け取った方や、支給決定通知書だったが障害等級に納得がいかないという方もいるでしょう。
このように認定結果に納得がいかない場合は、審査請求、再審査請求、取消訴訟などをおこなうことができます。
ここでは、後遺障害の認定結果に納得がいかなった場合の対処法について確認しましょう。
①労働者災害補償保険審査官に審査請求する
障害補償給付の決定に不服がある場合は、都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をおこなうことができます。
審査請求を受け付けた審査官は、不服内容を確認し正しいか、不当でないかを判断します。不服内容に理由があると判断した場合は、労働基準監督署の決定の全部または一部取消しをしてくれます。
なお、審査請求には請求期間があるため、「認定結果を知った日の翌日から3ヵ月以内」に請求する必要があります。
②労働保険審査会に再審査請求する
①の労働者災害補償保険審査官がおこなった裁決に不服がある場合は、労災保険・雇用保険の給付処分に関する行政不服審査をおこなっている「労働保険審査会」に対して再審査請求をすることができます。
再審査請求を受け付けた労働保険審査会でも審理がおこなわれ、不服内容の当否を判断してくれます。
なお、再審査請求の請求期間は「決定書の謄本が送付された日の翌日から2ヵ月以内」となっています。
③原処分または裁決の取消訴訟を提起する
①の審査請求または②の再審査請求の結果に納得がいかない場合は、地方裁判所に対して原処分または裁決の取消訴訟を提起することができます。
取消訴訟とは行政訴訟の一種であり、裁判所が処分や裁決の内容を確認し、取り消すかどうかを判断する手続のことです。
勝訴(認容判決)となった場合は、処分や裁決が取り消されます。
労災で後遺障害が残ったら弁護士への相談・依頼がおすすめ
労災で後遺障害が残り、障害補償給付の申請を検討しているなら、労働問題が得意な弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談・依頼すれば、後遺障害に関するアドバイスが受けられたり、障害補償給付の申請手続を一任できたりします。
ここでは、障害補償給付について弁護士に相談・依頼するメリットを紹介します。
後遺障害に関するアドバイスが受けられる
適切な後遺障害認定を受けるためには、医療機関で適切な検査や治療を受けていること、支給決定が得られやすい診断書を作ってもらうこと、労働基準監督署での面談対策をしていることなど多くのポイントがあります。
労働問題が得意な弁護士に事前に相談しておけば、早い段階から後遺障害認定に関する有益なアドバイスが受けられます。
障害補償給付の申請手続を一任できる
弁護士に障害補償給付の申請手続を依頼した場合、不備や間違いが少ない請求書を作成してくれますし、妥当でない障害等級になった場合には不服申立ての手続にも対応してくれます。
障害等級は1段階違うだけでも受け取れる給付金が大きく変わるため、納得のいく等級で認定してもらうためにも、弁護士に依頼するのがおすすめです。
会社や加害者への損害賠償請求も対応してくれる
労働災害の被害に遭っている場合、会社や加害者に対して損害賠償請求できる可能性があります。
弁護士に相談・依頼している場合は、損害賠償請求ができるかどうかを判断してくれたり、実際の請求手続にも対応してくれたりします。
その結果、労働災害による被害・損害をしっかりとカバーできるでしょう。
最後に|自力での申請が不安な方は弁護士に相談を
労災の後遺障害で受け取ることのできる給付金は、労働基準監督署が認定する障害等級で変化します。
そのため、十分な給付金を受け取るためには、後遺障害の内容に合った等級が適切に認定されていることが重要です。
しかし、妥当な障害等級を得るのに不安のある方には、労働問題が得意な弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
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