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過労死で労災認定を受ける基準と給付を受けるために知っておくべきこと

更新日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
過労死で労災認定を受ける基準と給付を受けるために知っておくべきこと

過労死の労災認定をされるには、厚生労働省が定める基準を満たしており、なおかつ証拠を十分に揃えておく必要があります。

 

令和元年の精神障害に係る労災請求は2,060件あったものの、実際に支給を受けられたのは509件で、請求した人の内約4人に1人にも満たないことが厚生労働省の統計からわかっています。

 

過労死の労災認定をされる可能性を高めるためには、過労死や労災認定基準についてよく理解し、適切に対処する必要がありそうです。今回は、過労死の種類、厚生労働省が定める過労死の認定基準、労災保険制度の概要、申請時の注意点についてご説明します。

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過労死の2種類の原因とそれぞれの認定基準

長時間労働が続くと、①脳や心臓、もしくは②精神に異常をきたすようになります。ご自分、もしくはご家族に過労死の可能性がある場合には、まずは病院に行き診断書をもらってきましょう。ここでは、過労死の原因についてお話していきます。

 

脳・心疾患

労災がおりる可能性がある脳・心疾患には例えば次のようなものがあります。
 

【脳疾患】

  • 脳出血
  • くも膜下出血
  • 脳梗塞
  • 高血圧性脳症

【心疾患】

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心停止
  • 解離性大動脈瘤

脳・心疾患だとなんでもいいわけではなく、生活習慣や持病ではなく、労働が原因でなければ労災はおりません。上記の症状は、厚生労働省が正式に発表している対象疾病ですから、まずはこの中に該当するか確かめてみましょう。

 

脳心臓疾患支給決定件数

引用元:厚生労働省|脳・心臓疾患の請求、決定及び支給決定件数の推移

 

過労自殺・ストレスによる精神障害

数で言えば、脳・心疾患よりも精神障害で過労死する人が多い傾向があるようです。具体的な数字で比較してみましょう。令和元年の脳・心疾患の請求件数は936件ですが、精神障害の申請件数は2,060件で、過労死全体の約69%が精神障害に起因していると推定できます。

 

認定基準の対象になる精神障害

精神および行動の障害

引用元:厚生労働省|認定基準の対象となる精神障害かどうか

厚生労働省では、上記のリストに載っている精神障害は認定基準の対象となるとしています。労災を申請するには、上記の対象傷病を発症しており、なおかつ業務起因性であると証明する必要があります。業務起因性については、次でお伝えします。

 

業務が原因になっていると証明しなければならない

では、何をもって業務が原因で過労死したといえるのでしょうか。厚生労働省では、業務による明らかな過重負荷という言葉を使っていますが、これは簡単に言えば「脳・心疾患、精神障害になるほどの負担を仕事から受けている」ということです。

どんな負荷を受けていれば労災認定をできるのかに関して、厚生労働省の基準を参考にしながら確認していきましょう。

 

過労死とみなされる労働時間の目安

過重負荷の中でもわかりやすいのが労働時間です。詳細は『過労死ラインは80時間|労働時間の減らし方と労災認定の基準』にもありますが、1ヶ月の時間外労働時間が100時間、もしくは6ヶ月間の平均労働時間が80時間の場合は、発症との関連性が強いとみなされます。

 

厚生労働省で定められている認定要件

業務による明らかな過重負荷の認定要件として、期間が短い順番に①異常な出来事、②短期間の過重業務、③長期間の荷重業務の3つがあります。

 

異常な出来事

発症の前日までに、業務上で変わったことがあった人はここに該当します。異常な出来事には次の3種類です。
 

  1. 精神的負荷
  2. 身体的負荷
  3. 作業環境の変化

例えば、1は人身事故等でショックを受けたこと、2は業務上の事故で身体にダメージを負ったこと、3は猛暑日に作業して熱中症になったことなどがあげられます。

 

短期間の過重業務

発症前1週間程度に起こった過重負荷はここに該当します。

 

長期間の荷重業務

発症前6ヶ月程度の過重負荷はここに該当します。

 

何をもって負荷があったと判断するのか

負荷の種類には何があるのでしょうか。厚生労働省が公開している負荷要因は次の通りです。
 

負荷の程度を評価する

引用元:厚生労働省|要因ごとの不可の程度を評価する視点

上記のどれに該当するのかを確認しましょう。最近のニュースを見る限りでは、労働時間・拘束時間の長い勤務に該当する事件が多いように思います。

 

過労死で労災認定された事例

過労死で労災認定

ここでは、過労死で労災認定された事例を見ていきましょう。

 

くも膜下出血で死亡の男性、長時間労働による過労死認定

ある製造会社の下請け会社で、46歳の男性が亡くなった事例です。被害者が死亡する前の2ヶ月間、80時間の時間外労働があったことが明らかになっています。福井労働基準監督署は、死因を長時間労働と判断したようですが、時間外労働の証拠を揃えられたのが大きかったのではないでしょうか。
 

参考:朝日新聞|パナ下請け契約社員の過労死認定 深夜に長時間労働

 

長時間労働で適応障害発症、労災認定へ

大手電機会社勤務の男性31歳が160時間を超える残業の末に適応障害を発症し、神奈川労働局藤沢労働基準監督署によって労災認定されました。被害者は「早く死にたい」「逃げたい」などとばかり考えていたようです。生きてはいたものの、過労死まで紙一重だったように思います。
 

参考:毎日新聞|三菱電機 31歳男性の労災認定 違法残業で適応障害に

 

大手広告会社女性新入社員、過労の末自殺

新入社員で当時24歳だった女性が過労の末に自殺しました。労基署が認定した彼女の1ヶ月間の時間外労働は105時間だったといいます。激務の末に疲労やストレスが溜まっていた様子が伺えます。
 

参考:朝日新聞|電通の女性新入社員自殺、労災と認定 残業月105時間

 

労災保険制度とは

労災保険とは、社会保障の一種で、労働者が業務上の理由で病気や怪我をして、障害を負ったり、死亡したりした際に保険金を給付する仕組みです。ここでは、具体的にどんな補償があるのかを見ていきましょう。

 

給付内容

死亡した場合

  • 遺族年金
  • 遺族一時金
  • 冠婚葬祭料

被害者が死亡した場合、上記の給付を受けられます。遺族年金では、遺族の人数に応じて給付基礎日額の131日~313日分の年金を受け取れます。遺族一時金では、給付基礎日額の1000日分(約3年分)を受け取れます。給付基礎日額の計算方法は次の通りです。

 

ご存命の場合

  • 療養給付
  • 休業給付
  • 障害年金
  • 障害一時金
  • 傷病年金
  • 介護給付

参考:厚生労働省|労災保険給付等一覧
 

上記のように手厚い補償が受けられます。過労死前に仕事を辞めても、労災が認定されれば当面は生活には困りませんから、ぜひ生きてるうちにこの制度を利用してほしいものです。

 

労災申請をするにあたって覚えておきたいこと

最後に、労災を申請する際に忘れてはいけないポイントをお話します。

 

医師に診断書をもらう

まずは、厚生労働省が指定した病気にかかっている証明が必要です。医師からの診断書は何よりの証拠になりますから、かならず用意しましょう。

 

証拠を集めておく

その他にも、労働が原因で病気になったと証明するものが必要です。例えば、
 

  • 日記(ボールペン書きが好ましい)
  • タイムカード
  • 高速道路のETC記録
  • スマホやパソコンに残っているデータ

などがあります。できるだけ証拠を集めておいた方が確実に労災がおりますから、週80時間以上の時間外労働をしている人は日常的に記録を残しておくといいでしょう。

 

損害賠償請求ができる場合もある

労災の補償を受けるだけでなく、過労死をさせた企業は安全配慮義務を怠ったわけですから、訴えることも可能です。休業補償や慰謝料を請求できますが、10年で時効になりますから早めに行動しましょう。

 

まとめ

いかがでしたか?労災認定されるには、
 

  • 認定基準の対象となる病気に発症しており
  • 業務による明らかな過重負荷があった

と証明できねばなりません。長時間労働をされている人は証拠を残しておくことで、いざ辞めようと思ったときに金銭的な補償を受けられます。きちんと療養して再起するためにも、ぜひ労災を利用しましょう。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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