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労災保険とは|手続き方法と申請手順をわかりやすく簡単に解説!
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2019.9.26

労災保険とは|手続き方法と申請手順をわかりやすく簡単に解説!

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
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労災保険(労働者災害補償保険:労働保険とも言う)とは、通勤・業務中に発生した労働災害への保険給付制度のことをいいます。労働者が安心して働くことができるように、国により設置された制度です。

 

労災保険は個人で加入するのではなく、会社自体が加入をし、当該会社で働く全ての人が対象となります。

 

厚生労働省の発表によると、平成30年の労働災害に見舞われた人数(休業4日以上の死傷者数)は127,329人とされ、労働災害の件数は3年連続で増加しているとのことでした。近年、労災保険の需要は増しているのかもしれません。

参考:平成30年の労働災害発生状況を公表

 

労災保険についての理解が足りない場合、労働災害に見舞われた際に本来受け取れるはずの給付を受け取れないなどということもあるかもしれません。

 

まずは、労災保険の概要を把握し、可能ならば、労災保険の適切な申請方法も知っておくとよいでしょう。

 

こちらの記事では、労災保険とはどのような制度なのか、また、労災保険の保険料率や給付の手続きについてわかりやすく解説します。

 

これから労災申請をする方、労災手続き中の方、労災保険について知りたいという方は是非参考にしてください。

 

関連記事 労働保険の労災保険と雇用保険|制度と加入手続き

関連記事 雇用保険と社会保険の違いを保障と加入条件で解説【未加入時の対策付き】

 

 

目次

労災保険とは国が取り扱っている保険のこと|労災保険の概要をわかりやすく解説

労災保険とは、労働者、またはその遺族の生活を守るための国が取り扱っている社会保険のことです。

 

労災保険は、正しくは「労働者災害補償保険」といいます。世間では「労災」と略されることが通常かもしれません。(以下、「労災保険」とします)

 

労災保険は労働者災害保険法に基づいた制度です。

 

第一条 労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

引用:労働者災害保険法

 

怪我や病気の対象になる社会保険(公的機関が費用の一部を負担して加入者の生活補償をするための制度のこと)といえば、健康保険を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、健康保険と労災保険はカバーする範囲が異なります。

 

また、健康保険の場合には治療費の一部は自己負担ですが、労災保険により治療する場合は治療費の自己負担はありません。

 

また、休業時の手当についても、健康保険は傷病手当金(健康保険法などに基づいて、被保険者が負傷や疾病で業務に就くことが不可能な場合に、療養中の生活保障として保険者から給付された補償のこと)が支給されますが、労災保険の場合はこれよりも手厚い休業補償給付を受けることが可能です。

 

(傷病手当金)

第九十九条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

引用:健康保険法

 

では、労災保険はどのような事案に馴染み、どのような人が対象となっているのでしょうか。以下、労災保険の概要について、わかりやすく簡単にご紹介します。

 

労災保険の対象者とは|労災保険は基本的には全ての労働者が対象

原則として、労災保険は働いて賃金の支払いを受ける労働者のすべてが対象となっています。

 

正社員、契約社員、アパート、アルバイト、派遣などといった雇用形態に労災保険の給付は左右されません。労災保険法上の「労働者」に該当すれば、どのような雇用形態であっても労災保険の適用を受けます。

 

例えば、日雇いのアルバイト週20時間未満の従業員といった雇用保険(雇用保険法に基づいた失業・雇用継続などに関する保険制度のこと)の適用のない労働者の場合も、不法就労の外国人労働者であっても、1日限りのアルバイトだとしても労災保険上は「労働者」に該当し、労災保険は適用されます。

 

このような「労働者」がたとえ雇用1日目に労働災害に遭ったとしても、所定の手続きを実行すれば、労災保険給付を受けることができます。

 

(目的)

第一条 雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。

引用:雇用保険法

 

なお、労災保険の適用のある労働者が死亡した場合、遺族が所定の遺族給付を受ける事もできます。

 

第三条 この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。

引用:労働者災害補償保険法

 

ここでいう「労働者」かどうかは、以下の2点から判断されます。

 

  1. 会社から賃金の支払いを受けている
  2. 使用従属関係にある

参考:特別加入制度|厚生労働省

 

このように、労災保険は労働者であれば誰でも適用対象となる保険ですが、あくまで労働者が業務上傷病を負った場合の保険です。

 

そのため、労働者に該当しない代表取締役や個人事業主は労災保険の適用を受けません(もっとも、代表取締役や個人事業主であっても所定の手続きを履践して労災保険に特別加入することで、労災保険の適用を受けられる場合もあります)。

 

他方、代表取締役のように業務執行権のある取締役ではなく、会社から指揮命令を受けて職務を行う名目的な取締役であれば、「労働者」として労災保険の適用の余地がないわけではありません。

 

もっとも、取締役は形式的には「労働者」には該当しないため、実質判断で適用の可否が決まりますので、必ずしも労災保険の適用があるわけではないことに注意しましょう。

 

家族従業員は労災保険の適用外

家族従事員は、事業主と同居及び生計を同じにしている場合には原則として労働者ではなく労災保険の適用外とされています。

 

(定義)

第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

引用:労働基準法

 

しかし、以下の点に当てはまれば家族従事者であっても労働者としてみなされ、労災保険が適用となる場合があります。

 

  • 事業主が同居の親族以外の労働者を使用して業務を行う際に、事業主の指揮命令に従っていることが明確である。
  • 就労形態が当該事業場の他の労働者と同様である。

 

例えば、事業主と別居している家族従業員は労働基準法上で労働者として認められることになり、労災保険が適用されることとなります。

 

海外派遣者は労災保険の適用外

海外の事業場に所属して、その事業場の指揮命令に従って業務を行う海外派遣者の場合には、労働災害補償保険法が属地主義を採用していることから、日本の労災保険の適用はありません。

 

そのため、企業側で当該海外勤務者について特別加入の手続きを取らない限り、海外勤務者は日本の労災補償を受けることはできません(一時的な海外出張など日本の事業所における指揮命令関係の延長にあるような場合は、海外勤務中の事故であっても労災適用となります)。

 

第三条

○2 前項の規定にかかわらず、国の直営事業及び官公署の事業(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)別表第一に掲げる事業を除く。)については、この法律は、適用しない。

引用:労働者災害補償保険法

 

労災保険の特別加入制度とは

労災保険の適用される「労働者」以外にも、労災保険適用を認めるための制度です。

 

特別加入は以下のような「労働者」以外の者について、所定の手続きを実行することで認められます。特別加入の手続きは、対象者の属性ごとに異なります。

 

  • 中小事業主など
  • 一人親方(建設業や個人タクシーなどで労働者を雇わずに自分ひとり、あるいは家族だけで事業を行う事業主のこと)など
  • 特定作業従事者(介護作業などの労働災害の発生率が高い作業に従事している者のこと)
  • 海外派遣者

 

中小事業主について

中小事業主(中小企業の代表者・個人事業主)については、業種ごとに使用する労働者数の範囲内にある事業者に対象が限定されます。

 

金融業・保険業・不動産業・小売業 50人以下
卸売業・サービス業 100人以下
その他の事業 300人以下

 

一人親方について

運送、土木、漁業、林業その他一定の事業に従事する一人親方その他自営業者についても特別加入が認められています。

 

特定作業従事者について

特定作業従事者の場合には、介護従事者や、ある一定規模以上の大きな農業を行い、危険度の高い機械などを使用して農作業を行なっている者が特定作業従事者として認められます。

 

なお、労災保険に特別加入が可能な特定作業従事者は以下の6つになります。

 

  1. 特定農作業従事者
  2. 指定農業機械作業従事者
  3. 国または地方公共団体が実施する訓練従事者
  4. 家内労働者及びその補助者
  5. 労働組合などの常勤役員
  6. 介護作業従事者

参考:特定作業従事者として特別加入が認められる範囲|厚生労働省

 

海外派遣者について

海外派遣者は労災保険の適用外でご紹介した通り、海外に派遣された労働者に関しては原則として労災保険の適用がありません。しかし、海外勤務者については一定の条件を満たす場合に、労災保険への特別加入が認められます。

 

海外派遣者が労災保険に特別加入するためには以下の2件の要件を満たす必要があります。

 

  1. 派遣元の国内の事業について、労災保険の関係が成立している。
  2. 派遣元の国内の事業が有期事業(建設業など一定の予定期間に終了する事業のこと)である。

 

労災保険は労働災害補償保険法上の「労働者」を対象とする制度であるが、一定の条件を満たしていれば「労働者」以外の者について特別加入により制度適用を受けることが可能となる。

 

労災保険の保険料は企業が負担する

労災保険の保険料は従業員の賃金総額に労災保険料率(労災保険料を決定するための数値)を乗じて算出します。全額を会社が負担するため、従業員の負担はありません。

 

ここでいう賃金総額には毎月の給与だけでなく、賞与などの支払分も含まれます。労災保険の保険料は制度対象となる従業員に支払われる賃金総額に所定の労災保険料率を掛けて算出します。

参考:確定保険料・一般拠出算定基礎賃金集計表

 

労災保険料率は3年ごとに見直しがなされることになっています。また、保険料率は細かく分けられ、業種ごとに決められています。例えば、コンクリート製造業では13/1000、金属材料品製造業(鋳物業を除く。)では5.5/1000がそれぞれの保険料率として定められています。

 

(単位:1/1,000)

事業の種類 労災保険率
林業 60
道路新設事業 11
食料品製造業 6
コンクリート製造業 13
金属精錬業(非鉄金属精錬業を除く。) 6.5
交通運輸事業 4
通信業、放送業、新聞業又は出版業 2.5
卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業 3

(平成30年4月1日施行)

参考:平成30年度からの労災保険料率

 

業種によって保険料率が様々に異なるのは、事業の内容によって労働災害の危険性も異なるためであると思われます。

 

なお、労災保険は労働者を保護するための保険であり、労働者を一人でも雇用する会社には加入が義務付けられています

 

また、上記に記した通り他の社会保険とは異なり保険料の全額を事業主が負担するため、労働者の負担はありません。

 

労災保険に関する労働災害の種類

労災保険の給付対象となる災害には以下のような種類があります。

 

  1. 通勤災害
  2. 業務災害

参考:労災保険給付の概要

 

以下、通勤災害と業務災害について詳しく解説していきます。

 

通勤災害|通勤中の労災

通勤災害とは、通勤中の事故などで怪我、病気、障害、死亡に至った場合のことを指します。

 

例えば、通勤途中に駅で転び怪我をした場合には労災保険の適用が認められる可能性があります。

 

なお、通勤災害とはあくまで「就業に関する」移動の際に見舞われた労働災害のことで、寄り道して合理的な経路から外れた場合や、経路の途中で通勤と無関係の行為をした場合には対象外となる可能性があります。

 

例外として、日用品の購入や、日常生活上で必要な最低限の行為のために通勤経路から外れた場合は、なお通勤災害として認められる余地があります。

参考:通勤災害|東京労働局

 

通勤災害として認められるためには、就業に関する移動であることが前提。

詳しくは業務災害・通勤災害の具体的基準をご覧ください。

 

業務災害|労働中の労災

業務災害とは、労働関係から生じた業務上の怪我、病気、障害、死亡のことを指します。

 

例えば、自分の不手際や他人の不手際で怪我をした場合にも「業務災害」ということになり労災保険の補償を受け取ることができます。

 

なお、業務時間内であっても業務に関係のない私的な行為が原因となった怪我や、故意に怪我を負った場合には業務災害ではないと評価される可能性があります。

 

例えば、建設現場などにおいて、業務中にクレーンの操作ミスで怪我を負った場合には業務災害となるのが原則ですが、およそ業務とは関係のないクレーン操作(例えば休憩時間中にクレーンで遊んでいたような場合)については、業務災害であることが否定される可能性が高いです。

参考:業務災害|福島労働局

 

業務災害として認められるためには、業務と負った傷病などの間に一定の因果関係が必要。

 

詳しくは業務災害・通勤災害の具体的基準をご覧ください。

 

労災未加入・労災隠しは法律違反

労災保険の加入は、労働者を雇用している事業主の義務となっています(常時5人未満の個人経営の農業等は例外)。

 

労働基準法で規定された労働者を一人でも雇用する事業所は、労災保険の強制適用事業となります。強制適用事業所の場合には、事業が開始された日に労災保険の保険関係が成立します。

参考:厚生労働省:労働保険の成立手続

 

強制適用事業所の場合には、労災保険の加入は義務付けられていますが、このような加入手続きをとっていない会社が存在する可能性は否定できません。

 

しかし、労災保険の強制適用事業所(労働者を雇用している事業所)で労働災害が発生し、労災保険による補償が必要になった場合、事業所が労働保険関係成立届(労働保険に加入する場合に労働基準監督署に提出する書類)などの手続きをしていなかったとしても、労働者には労災保険の給付が行われることになっています。

 

また、労働災害が発生した際には労働監督署への報告が義務付けられています。しかし、労災事故の届け出をすると、保険料が増額されたり企業側に不利益となったりする場合があります。

 

また、労災事故の報告手続自体が煩雑であるということもあり、企業側で労災事故について正しく報告していないというケースもあるようです。このようなケースを「労災隠し」と呼ぶことがあります。

参考:労災隠しは犯罪です

 

一定の労働災害について企業は報告義務を負っていますので、労災隠しは法律違反となる可能性があります。

 

(労働者死傷病報告)

第九十七条 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

2 前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、様式第二十四号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

引用:労働安全衛生規則

 

ご自身が務める会社が労災保険にきちんと加入しているのか、労災保険が機能しているのかをきちんと把握しておくべきでしょう。

 

関連記事 労災隠しの実態と違法性とは|労災隠しされた場合の対処法3つ|労働問題弁護士ナビ

関連記事 雇用保険と社会保険の違いを保障と加入条件で解説【未加入時の対策付き】

 

労災保険の補償内容|労災給付の支払いや金額

労災保険の適用が認められた場合、どのような給付を受けられるのでしょうか。

 

労災保険の給付は補償の種類ごとによって異なります。以下で労災保険の補償内容についてわかりやすく説明します。

 

労災保険で受け取れる給付金・一時金

労災保険で受け取れる給付金をご紹介します。

 

労災保険には、怪我や病気を治療するための給付や、障害を負った際に程度に応じて支給される給付など、様々な種類の給付金が存在しています。

 

労災保険給付の種類

労災保険給付の目安

労災保険の内容

特別支給金の内容

療養給付・療養補償給付

業務災害又は通勤災害による傷病により療養するとき(労災病院や 労災指定医療 機関等で療養を受けるとき)

必要な療養の給付

なし

 

業務災害又は通勤災害による傷病により療養するとき(労災病院や労災指定医療 機関等以外で療養を受けるとき)

必要な療養費の全額

なし

休業給付・休業補償給付

業務災害又は通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき

休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額

休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額

 

傷病年金・傷病補償年金

業務災害又は通勤災害による傷病が療養 開始後1年6ヶ月を経過した日又は同日後において次の各号のいずれにも該当することとなったとき

  1. 傷病が治っていないこと
  2. 傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること

障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から245日分の年金

(傷病特別支給金)
障害の程度により114万円から100万円までの一時金

(傷病特別年金)
障害の程度により算定基礎日額の313日分から245日分の年金

障害(補償)給付

 

 

 

 

障害補償年金・障害年金

業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったとき

障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から131日分の年金

(障害特別支給金)
障害の程度に応じ、342万円から159万円までの一時金

(障害特別年金)
障害の程度に応じ、算定基礎日額の313日分から131日分の年金

障害補償一時金・障害一時金

業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残ったとき

障害の程度に応じ、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金

(障害特別支給金)
障害の程度に応じ、65万円から8万円までの一時金

(障害特別一時金)
障害の程度に応じ、算定基礎日額の503日分から56日分の一時金

遺族(補償)給付

遺族補償年金・遺族年金

業務災害又は通勤災害により死亡したとき

遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245日分から153日分の年金

(遺族特別支給金)
遺族の数にかかわらず、一律300万円

(遺族特別年金)
遺族の数等に応じ、算定基礎日額の245日分から153日分の年金

遺族補償一時金・遺族一時金

 

(1)遺族(補償)年金を受け得る遺族が ないとき

(2)遺族補償年金を受けている方が失権し、かつ、他に遺族(補償)年金を受け得る者がない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき

 

給付基礎日額の1000日分の一時金(ただし、(2)の場合は、すでに支給した年金の合計額を差し引いた額)

 

(遺族特別支給金)
遺族の数にかかわらず、一律300万円

(遺族特別一時金)
算定基礎日額の1000日分の一時金(ただし、(2)の場合は、すでに支給した特別年金の合計額を差し引いた額)

 

葬祭料・葬祭給付

業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行うとき

315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分)

なし

介護給付・介護補償給付

障害(補償)年金又は傷病(補償)年金受給者のうち第1級の者又は第2級の者(精神神経の障害及び胸腹部臓器の障害の者)であって、現に介護を受けているとき

常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、104,290円を上限とする)。
ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が56,600円を下回る場合は56,600円。
随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、52,150円を上限とする)。
ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が28,300円を下回る場合は28,300円。

 

なし

二次健康診断等給付

定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する一定の項目について異常の所見があるとき

二次健康診断。
特定保健指導。二次健康診断の結果に基づく医師又は保健師の保健指導

 

なし

参考:労災保険で受け取れる給付金

 

以下、各項目について詳しく説明します。

 

療養給付・療養補償給付

労災保険により、怪我や病気などが治癒するまでの費用が給付されます。また、労災病院、労災指定医療機関では療養の現物給付が行われます。

 

ここでいう治療とは、一般的な医療を行なった場合でも、その医療効果が期待できない、症状が固定された状態のことを含みます。

 

そのため、症状が固定した場合には、療養補償給付は終了します。しかし、障害がある場合には、障害補償給付の対象となります。

参考:療養の給付 | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会

 

休業給付・休業補償給付

休業給付は、怪我や病気で労働することができずに賃金を受けられない場合に、休業4日目から給付されます。

参考:休業(補償)給付の請求手続

 

傷病年金・傷病補償年金

労働中の怪我や病気が療養を開始して1年6ヶ月経過しても治癒していない場合や、障害等級に該当する場合に障害の程度に応じて給付されます。

参考:傷病(補償)年金

 

障害(補償)給付

障害給付は、労災保険適応の怪我や病気が治癒した後に一定の障害が残った場合に支払われます。

 

障害給付は障害の程度に応じて2つに分けられます。

 

障害補償年金・障害年金

障害補償年金は怪我や病気が治癒した後に、障害等級第1級から第7級に該当する障害が残った場合に給付されます。

 

障害補償一時金・障害一時金

障害補償一時金は怪我や病気が治癒した後に、障害等級第8級から第14級に該当する障害が残った場合に給付されます。

参考:障害補償年金・障害補償一時金 - 厚生労働省

 

遺族(補償)給付

遺族給付は、労災保険対象の労働者が死亡した際に遺族の人数などに応じて支払われます。給付の種類には遺族補償年金、遺族特別年金があります。

 

なお、遺族補償年金の給付を受けられる遺族は、死亡した労働者の配偶者(内縁関係を含む)や18歳までの子供や60歳以上の父母などです。これは、死亡当時に労働者の収入によって生計を維持されていたとみなされるためです。

 

遺族補償年金・遺族年金

遺族補償年金・遺族年金は、労働者が業務災害又は通勤災害により死亡したときに給付されます。

 

遺族補償一時金・遺族一時金

該当する遺族がいない場合には、遺族補償一時金が遺族に給付されることとなっています。

 

葬祭料・葬祭給付

労災保険対象の労働者が死亡して、葬祭を行う際に、葬祭を行う人を対象に給付されます。

参考:遺族(補償)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続|厚生労働省

 

介護給付・介護補償給付

介護給付は、障害補償年金、あるいは傷病補償年金受給者のうち、現に介護を受けていて障害等級第1級、または第2級の精神・神経障害及び胸腹部臓器障害に当てはまる人に給付されます。

 

ただし、病院などに入院していたり、特別養護老人ホームなどの施設に入所していたり、障害者支援施設で生活保護を受けている場合には、入所先において十分な介護サービスが提供されているとみなされるため、給付されないことになっています。

参考:介護(補償)給付の請求手続|厚生労働省

 

二次健康診断等給付

二次健康診断等給付は、直近に受けた定期健康診断で、血圧、血中脂質、血糖などの肥満にかかる全ての検査で異常値と診断された上で、脳血管疾患または心臓疾患の症状を有していない場合に支給されます。

参考:二次健康診断等給付について | 東京労働局

 

労災保険として認められる範囲

労災保険が適用されるかは、厚生労働省や労働基準監督署が定めた基準に基づいて、労働基準監督署によって厳格に審査されます。

 

では、具体的にはどのようなケースが労災保険の対象となるのでしょうか。以下を参考にしてください。

 

業務災害・通勤災害の具体的基準

業務災害が労災保険給付の対象となるには、業務遂行性業務起因性という2つの要素が基準となっています。

 

業務遂行性とは、労働者が使用者との指揮命令関係に置かれていた状態で起きた災害である、つまり、怪我をした時に業務に従事していたかどうかの基準です。

 

業務起因性とは、業務と怪我や病気の間に一定の因果関係があり、傷病の発生が業務に内在する危険により生じたものかどうかを判断する基準のことです。

 

災害が業務上であることを認められるためには、業務起因性が認められる必要があり、その前提条件として業務遂行性が認められる必要があります。業務遂行性は3つに分類されます。

 

  1. 事業主の管理下・支配下で業務に従事している→業務を行う上で必要な行為や、作業中の用便、飲水などの生理的行為や反射的行為など
  2. 事業主の管理下・支配下にあるが業務に従事していない→休憩時間に事業場内で休んでいる場合や、事業主が通勤専用に提示した交通機関を利用した場合など
  3. 事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している→出張などの外出、営業の外回りなど

参考:業務災害とは(業務上の負傷・疾病) | 福島労働局

 

業務災害となり得るケース

  • 工場での作業を行なっている際に、ベルトコンベヤーなどの機材に指が挟まり怪我を負った場合
  • 業務中にトイレへ向かう際に怪我を負った場合
  • 建設現場での転落

 

通勤災害となり得るケース

  • 会社に向かう途中で体調不良となり、病院で診察を受けた後に事故に遭い怪我を負った場合
  • 自宅から会社に出勤している途中で電車と接触して死亡した場合
  • 休憩中に会社から徒歩5分の自宅で昼食後、会社に戻る途中に事故にあった場合

 

通勤災害の場合には、事業場と生活拠点等との間を移動中の事故であったことが認められる必要があります。

 

通勤災害に該当し得る移動においては3つあげられます。

 

  1. 住居と就業場所との間の往復
  2. 就業場所から他の就業場所への移動
  3. 住居と就業場所との間の往復に先行、あるいは後続する住居間の移動

 

通勤とは合理的な経路・方法をとっている必要があり、途中に逸脱をした場合や、その後の移動は通勤とは認められない可能性があります。

 

ただし、通勤時の逸脱または中断が日常生活上で必要な行為であり、厚生労働省で定める止むを得ない事由により行う最小限度のものである場合には、逸脱あるいは中断の間を除いて通勤と認められます

 

なお、厚生労働省で定められた逸脱・中断の例外となる最低限度の行為とは以下の4つです。

 

  1. 日用品の購入
  2. 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校(幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校)において行われる教育。その他これらに準ずる教育訓練であって、職業能力の開発向上に相応するものを受ける行為
  3. 選挙権の行使
  4. 病院や診療所において診察、または治療を受けること

参考:通勤災害について | 東京労働局

 

労災が給付される可能性が低いケース

労災保険の支給が認められるには、業務災害又は通勤災害に該当する必要があります。これら災害に該当しない場合には労災保険給付を受けることはできません。

 

例えば、以下のような場合には労災保険給付がされない可能性があります。

 

通勤災害

  • 業務終了後に同僚と飲みに行き、その帰宅途中で事故に遭った場合
  • 業務終了後に帰宅しないでそのまま旅行に行き、その途中で事故に遭った場合

 

業務災害

  • 業務中に業務とは関係のない私的行為を行い、結果、怪我を負った場合
  • 業務中に業務とは無関係の事情で第三者から暴行を受けて被災した場合

 

精神疾患と労働災害

業務上の負荷(ストレス)により精神疾患を患ったような場合であっても、労災保険の支給の対象とはなり得ます。

 

例えば、長時間労働に恒常的に従事させられたことでメンタル不調となったような場合や、職場でパワハラやセクハラが繰り返されてメンタル不調となったような場合がその典型例と言えます。

 

しかし、精神疾患については業務に原因がある場合と私生活に原因がある場合、又はその両方に原因がある場合など複合的な要因が考えられることから、当該疾患が業務に起因するものかどうかの判断が難しい場合があります。

 

そこで、国は、労災実務における業務と精神疾患との因果関係の認定に関し、指針となる考え方を公表しています。

 

厚生労働省によると、精神障害の労災認定の要件は以下の3つです。

 

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること。
  2. 認定基準の対象となる精神障害の発病前、おおむね6ヶ月の間に業務による強い心理的負荷が認められること。
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと。

 

業務による強い心理的負荷が認められるとは

業務による具体的な出来事があり、その出来事とその後の状況が労働者に強い心理的負荷を与えたことを「業務による強い心理的負荷が認められる」状況であるといいます。

厚労省は、一般的に強い心理的負荷となり得る事象をあげた上、それが強度のストレスとなる場合、中程度のストレスとなる場合、弱いストレスとなる場合などに区分して例示していますので、興味がある方は厚労省のサイトをご確認ください。

関連リンク:精神障害の労災補償について|厚生労働省

 

心理的負荷の強度は、労働者がその出来事とその後の状況を主観的にどのように受け止めたのかでは評価せず、同種の労働者(職種・職場における立場や職責、年齢、経験などが類似する人をさす)が一般的にどのように受け止めるか、という観点に注視して評価します。

 

精神障害として労災認定される代表的なもの

うつ病急性ストレス反応など

精神障害として認定対象になる可能性が低いもの

アルコール依存薬物依存など

引用:精神障害の労災認定

 

関連記事 パワハラをされた人が労災認定を得るための条件と全手順

 

治療が終了した過去の傷病について労災を申請する場合

労災保険の給付は過去に遡って請求することができますが、それぞれに時効が設けられています。

 

例えば、療養(補償)給付であれば治療費が確定した日の翌日から2年、休業補償給付であれば休んだ日毎にその翌日から2年が時効として設定されています。

 

気がついたら手遅れだった、ということにならないためにも、労災の申請は早めに行なっておくべきでしょう

 

労災保険給付の種類

時効

時効の起算日

傷病(補償)年金給付

監督署長の職権により移行されるため請求時効はない。

監督署長の職権により移行されるため請求時効はない。

療養(補償)給付

2年

療養の費用を支払った日ごとにその翌日から

休業(補償)給付

2年

休業の日ごとにその翌日から

障害(補償)給付

5年

怪我や病気が治癒した日の翌日から

介護(補償)給付

2年

介護を受けた月の翌月の初日から

遺族(補償)給付

5年

労働者が死亡した日の翌日から

葬祭料(葬祭給付)

2年

労働者が死亡した日の翌日から

二次健康診断等給付

2年

一次健康診断の受診日から3ヶ月以内

未支給の保険給付・特別支給金

それぞれの保険給付と同じ

それぞれの保険給付と同じ

参考:労災保険給付の請求の時効 | 茨城労働局

 

過労死・過労自殺のケース

過労死とは、過重な業務により脳血管や心臓血管について一定の病気を発症し、それが増悪して死亡に至るケースをいいます。

 

過労自殺は、過重な業務に起因して何らかの精神疾患を発症し、判断能力が低下した結果、自殺に至ってしまうケースをいいます。

 

過労死・過労自殺は「過労死等」として、以下のように定義されています。

 

(定義) 第二条この法律において「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患 を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又は これらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。

引用:過労死等防止対策推進法

 

過労死・過労自殺も、業務に起因してこれが生じたものであると認められれば、労災保険給付の対象となります。

 

関連記事 5分でわかる過労死とは|定義と主な症状をわかりやすく解説

関連記事 過労死基準は80時間以上の残業|厚生労働省の基準と過労死防止策|労働問題弁護士ナビ

 

労災保険が認められなかった場合の対処法については以下の項目をご覧ください。

 

労災保険手続きの流れ

労災の申請について、「手続きが面倒そう」、「会社に迷惑がかかる」などと考える方もいるかもしれません。

 

確かに、労災保険の申請のためには用意する書類も多く、手間もかかります。ですが、申請の流れを把握しておくことで申請の負担が軽くなることが想定できます。

 

労災申請をスムーズに行うためには、労災の申請方法や流れを整理しておきましょう。

 

労災保険の流れ

 

労災保険申請の大まかな流れは以下になります。

 

  1. 会社に労働災害を報告
  2. 病院を受診
  3. 労働基準監督署に請求書を提出
  4. 労災認定(非認定の場合には審査のやり直しを請求できるリンク)
  5. 指定の医療機関に支払いがある、または、請求人の振込口座に支払いがある

参考:労災保険請求のための ガイドブック

 

会社に労働災害を報告

労働災害が発生した場合には、直ちに会社へ報告しましょう。業務が関係して病気になった場合には、気がついた時点で会社に報告すると良いでしょう。

 

通常の会社では、労災の手続きに必要な申請書などを用意してくれます。また、手続き自体も会社が行うことが通常とされています。

 

会社が労働災害の事実を認めず、手続きを進めてくれないという場合には、労働基準監督署(労働基準法等の違反行為などの是正のための指導・勧告・処分を行う行政機関のこと)に直接申請することも可能です。

 

関連記事 労働基準監督署(労基署)とは|役割/相談できる事/メリットを簡単に解説

 

病院を受診|労災指定病院外の場合には診断書を出してもらう

通勤途中・業務中に怪我や病気になった際には病院で診断書を作成してもらいます。この時、労災指定医療機関(労災指定病院)で治療を受けた場合には無償で医療サービスを受けられます。

 

労災指定医療機関(労災指定病院)とは、労災保険側が指定した医療機関のことをいいます。労災指定病院では、指定外の医療機関と比べると、労災保険の手続きを比較的容易に行うことができます。

 

また、労災指定医療機関(労災指定病院)以外で治療を受けた場合には、治療費を自己負担で精算後に負担した分について療養給付リンクを受け取ることになります。

 

労災指定外の医療機関を受診する場合には、労災であることを伝えて診断書を作成してもらいます。

 

労災指定病院であれば医療費精算の手間が減るため、労災目的で受診をする場合には労災指定病院を選択しましょう。受診する前に労災指定病院かどうかを確認しておくべきでしょう。

関連リンク:厚生労働省 労災保険指定医療機関検索

 

労働基準監督署に労災申請をする

労災の手続きは会社側が行うことが通常となっています。しかし、会社側が労災の手続きを取らない場合には、自らで労働基準監督署に労災申請をする必要があります。

 

労災の申請に必要な書類は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることが可能です。

関連リンク:災保険給付関係請求書等ダウンロード

 

以下で、申請に必要な書類について説明します。

 

様式第5号は労災指定病院を受診する場合に必要

様式第5号とは、労災指定病院を受診する際に必要な、療養の給付請求書のことをいいます。様式第5号は、受診する病院に提出します。

 

様式第5号に記入する主な項目は以下になります。

 

様式第5号に記入する主な項目
労働保険番号
申請者の住所・氏名・年齢など
事故の詳細
事業所の名称など
申請者および会社(事業主)の押印(または署名)

 

また、通勤災害の場合には様式第16号の3を提出します。

 

様式第7号は労災指定病院以外を受診する場合に必要

様式第7号とは、労災指定病院以外を受診する際に必要な、療養の費用請求書のことをいいます。様式第7号は、治療を行なった病院ではなく、労働基準監督署に提出する必要があります。

 

通勤災害の場合には様式第16号の5を提出します。

 

様式第8号は休業補償を受ける場合に必要

様式第8号とは、休業補償を請求する際に必要な請求書のことをいいます。様式第8号は、労働基準監督署に提出する必要があります。

 

通勤災害の場合には、様式第16号の7を提出します。

 

労災保険の申請に必要な書類一覧

労災保険の種類

必要な書類

提出先

療養(補償)給付

 

労災指定病院で受診した場合

様式第5号

様式第16号の3

※通勤災害

治療を行なった病院

労災指定病院以外で受診した場合

様式第7号

様式第16号の5

※通勤災害

労働基準監督署

休業(補償)給付

様式第8号

様式第16号の7

※通勤災害

障害(補償)給付

様式第10号

様式第16号の7

※通勤災害

遺族(補償)給付

様式第12号

様式第16号の8

※通勤災害

様式第15号

様式第16号の9

※通勤災害

葬祭料(葬祭給付)

様式第16号

様式第16号の10

※通勤災害

介護(補償)給付

様式第16号の2の2

二次健康診断等給付

様式第16号の10の2

受診をした病院

 

労災保険の給付には労災保険給付関係請求書が必要

労災保険の給付には、受診する病院、あるいは労働基準監督署に、労災保険給付関係請求書の提出が必要です。

 

労災保険給付関係請求書の入手方法は以下の3つです。

 

  1. 労働局・労働基準監督署
  2. 厚生労働省のホームページ
  3. 病院・農協などに置いてある場合もある

 

以下は様式第16号の3の記入例になります。

 

労災保険請求書の記入例

 

労災保険請求書の記入例

 

また、労災保険給付関係請求書の提出の際には会社(事業主)の証明が必要になります。

関連リンク:ダウンロード用(OCR)様式|厚生労働省

 

会社(事業主)からの証明が用意できない場合

労災保険の給付には会社(事業主)からの証明が必要になりますが、事案によっては会社において業務と傷病との因果関係が認め難いことを理由として、会社から事業主証明を拒否される可能性もあります。

 

そういった場合には、会社が証明を提出しなかった旨を記載した「証明拒否理由書」を用意して、申請書を提出します。

 

また、既に退職している場合にも、在職中であった時に発生した事故について会社に事業主証明をもらうことが可能です。証明を取得できない場合には、証明拒否理由書を提出します。

 

労働基準監督署による調査|労災の認定・非認定の判断

労働者、または会社から労災の請求書が提出されたとしても、すぐに労災と認められるわけではありません。請求書の提出後に行われる、労働基準監督署の調査によって労災か否かが判断されます。

 

労働基準監督署によって、労働者や会社に対して聞き取り調査を行います。また、労働者を治療した医療機関に対して調査を行う場合もあります。

 

調査は、厚生労働省や労働基準監督署が定めた基準に基づいて行われます。

 

労災の給付

労働基準監督署によって労災が認められると、労災保険の給付が行われます。

 

現金が支給される場合、支払いが行われると、厚生労働省から通知が送付されます。

参考:労災保険給付の受給者の皆様へ

 

労災保険の給付を受け取ることができるのは休業してから4日目以降

労災保険の給付を受けとることができるのは、休業してから4日目以降の賃金補償とされています。

 

ですので、休業3日目までは、会社から賃金を受け取ることになります。会社から受け取れる金額は療養費用全額および、休業費用の6割であると、労働基準法によって定められています。

 

(休業補償)

第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

引用:労働基準法

 

休業してから4日目以降の療養費用および休業補償などは、労災保険から療養給付や休業(補償)給付として受け取ります。

 

労災保険の手続きを行う際の注意点

労災保険の申請を行う場合に知っておくべき事項をご紹介します。

 

労災申請にかかる日数は申請内容によって異なる

労災の認定には、1〜3ヶ月程度の期間がかかると言われています。ただし、これは単純な事故であった場合です。

 

ストレスによる精神疾患や、過労死などの業務との関連性が不明瞭である場合には、労災の認定まで半年〜1年以上かかることもあります。

 

労災申請には時効がある

治療が終了した過去の傷病について労災を申請する場合という項目でもご説明した通り、労災保険の申請には給付金ごとに時効が存在します。

 

時効を過ぎてしまうと、労災保険の給付を受けることはできません。それぞれの給付の時効を確認しておきましょう。

 

労災保険で支給される金額

労災保険で支給される金額は以下が目安になります。

 

療養のために休業する場合

労災保険の給付種類

労災保険の給付額

療養(補償)給付

療養費の全額

休業(補償)給付

休業4日目から休業1日につき休業給付基礎日額の60%

傷病(補償)年金

療養開始後1年6ヶ月経過しても治らず、その傷病が重い場合:年金給付基礎日額の313日分(障害等級1級)〜245日分(障害等級3級)の年金

 

休業給付基礎日額と年金給付基礎日額

休業給付基礎日額とは、給与基礎日額(労働基準法においての平均賃金)を元に算出された、休業補償給付または休業給付の金額のこと。

参考:労災保険給付における給付基礎日額

 

第八条 給付基礎日額は、労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額とする。この場合において、同条第一項の平均賃金を算定すべき事由の発生した日は、前条第一項第一号及び第二号に規定する負傷若しくは死亡の原因である事故が発生した日又は診断によつて同項第一号及び第二号に規定する疾病の発生が確定した日(以下「算定事由発生日」という。)とする。

引用:労働者災害補償保険法

 

年金給付基礎日額とは、給与基礎日額を元に算出された、給付される年金の金額のこと。

 

第八条の三 年金たる保険給付の額の算定の基礎として用いる給付基礎日額(以下この条において「年金給付基礎日額」という。)については、次に定めるところによる。

一 算定事由発生日の属する年度(四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下同じ。)の翌々年度の七月以前の分として支給する年金たる保険給付については、第八条の規定により給付基礎日額として算定した額を年金給付基礎日額とする。

引用:労働者災害補償保険法

 

障害が残った場合

労災保険の給付種類

労災保険の給付額

障害(補償)年金

年金給付基礎日額の313日分(障害者等級1級)〜131日分(障害者等級7級)の年金

障害(補償)一時金

給付基礎日額の503日分(障害者等級8級)〜56日分(障害者等級14級)の一時金

 

被災労働者が死亡した場合

労災保険の給付種類

労災保険の給付額

遺族(補償)年金

遺族数に応じて年金給付基礎日額の153日分〜245日分の年金

遺族(補償)一時金

遺族補償年金受給資格者がいない場合、その他の遺族に対して給付基礎日額の1,000日分の一時金

葬祭料(葬祭給付)

315,000円+給付基礎日額の30日分(最低保障額は給付基礎日額の60日分)

 

常時または随時介護が必要な場合

労災保険の給付種類

労災保険の給付額

介護(保障)給付

1日あたり、常時介護は10,950円随時介護は52,480円が上限

 

脳・心臓疾患に関する異常所見がある場合

労災保険の給付種類

労災保険の給付額

二次健康診断等給付

脳血管および心臓の状態を把握するための二次健康診断および、医師などによる特定保健指導

参考:労災保険制度の概要

 

労災で健康保険を使用してしまった場合

労災として病院を受診する場合には、健康保険証は使用しません。

 

もし、健康保険証で受診してしまった場合には早急に受診した医療機関に連絡をし、労災への切り替えを依頼しましょう。

 

医療機関で労災への切り替えが間に合わないという場合には、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合に連絡をして、労災への切り替えを依頼します。その後、労災保険の申請書を持参して、改めて医療機関を訪ね、費用請求を行います。

関連リンク:全国健康保険協会

 

証拠が非常に重要

労災保険の対象であると認められるためには、労働基準監督署に労災であることを示す証拠が重要になります。これは、労働基準監督署は証拠資料を元にして、労災であるかを判断するためです。

 

例えば、どれだけの労働時間であったかを証明することはタイムカードや勤怠記録などで証明できるために比較的容易ですが、パワハラやセクハラが原因で健康を害したことを証明するためには、客観的な資料を集める必要があり少々難しいかもしれません。

 

そういった場合には、メールや通話記録など、様々な媒体の記録が証拠となることもあります。労災と認められるために、諦めずに些細な証拠でも探すように心がけると良いでしょう。

 

労災として認定されなかった場合の対処法

労働基準監督署から、労災と認定されなかった場合にはどのように対応すれば良いのでしょうか。

 

この項目では、労災として認定されなかった場合の対処法についてご紹介します。

 

労働基準監督署に審査請求(ただし3ヶ月以内に行う)

労働基準監督署に労災として認定されなかった場合には、労働局に審査請求(不服申し立て)を行うことができます。ただし、不服の申し立ては3ヶ月以内に行う必要があります

 

再審査の手続きは、労働局か労働基準監督署に審査請求書を提出するだけなので、比較的容易に再審査を請求することができます。

関連リンク:再審査請求書等

 

また、労働局による審査請求で結論が覆らない場合には、労働者は労働者災害補償保険審査官(厚生労働相に任命された審査官のこと)に審査のやり直しを請求することができます。

 

(所掌事務)

第二条 労働者災害補償保険審査官は、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第三十八条第一項の規定による審査請求の事件を取り扱う。

引用:労働保険審査官及び労働保険審査会法

 

なお、労働者災害補償保険捜査官による判断でも結論が変わらなければ、国の労働保険審査会(労災保険や雇用保険の給付に関して第2審として審査を行う国の機関のこと)に再審査を申し立てることが可能です。それでも結論が覆らない場合には、行政訴訟を起こすことができます。

参考:労働保険審査会

 

弁護士に相談する

労働基準監督署に審査請求しても認められない場合には、弁護士などに相談することも一つの手段となります。

 

専門知識を有した弁護士に相談することで、行政庁に対する手続きや裁判での行政訴訟について必要なアドバイスをもらうことができます。

 

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医師からの意見書を取得

労災保険の給付は、業務時や通勤時に傷病を負った場合に認定されます。

 

そのため、労働基準監督署による審査の際には、どのような経緯で傷病発症に至ったのかがポイントとなることがあります。

 

傷病発症までの経緯を証明するために、担当の医師に発症のメカニズムなどについて意見書を作成してもらうことも一つの手となります。

 

また、障害が残ってしまった場合には、医師の後遺障害診断書の内容が重要視されます。後遺障害診断書上で特に問題となる症状の記載がない場合には、労働基準監督署は労災として認定せず、障害補償給付は行われないことになります。

 

担当の医師と相談の上、納得がいかない場合には、別の医師にセカンドオピニオン(担当医以外の第三者的な立場の医師に意見を求める行為)を聞きに行くこともよいかもしれません。

 

労災を証明する書類を収集する|労災の非認定を避けるには

上記で述べた通り、労災であると認定されるには、傷病に業務が関係していることを示す証拠が重要です

 

労災の非認定に不服申し立てを行う場合、結論が覆される可能性は低いため、有効な追加資料を用意するべきでしょう。

 

また、労災の証明は、転倒や交通事故といった単純な事故であれば比較的容易に行えますが、うつ病などといった精神疾患や過労死の場合には労働災害であることを証明することは難しくなります。

 

労災として認定されるためには、これらの結果を引き起こすような業務状況であったのかどうかを示す必要があります。

 

業務状況を示すための主な証拠は以下のような資料になります。

 

  • 勤怠記録、タイムカード
  • 入退室時間の記録
  • 交通ICカードの記録
  • 職場でのハラスメント行為の記録、録音など

 

また、これらの証拠は会社側が労災を否定した場合にも有効です。

 

労災が認められない場合には傷病手当も検討する

労災が認められない場合には、傷病手当の申請を検討すると良いでしょう。

 

例えば、うつ病などの精神障害で業務起因性が認められない場合には労災は非認定となりますが、健康保険では怪我や病気によって仕事ができなくなってしまった人のために傷病手当が認められています。

 

傷病手当では、平均月収の約3分の2が支給されることになっています。労災が非認定だった時のことを想定し、念のために労災と傷病手当のどちらも申請しておくと良いかもしれません。

 

また、健康保険と労災保険は同時に受けることはできず、受け取れる給付はどちらか一つになります。よって、傷病手当を受け取った後に労災保険の給付が認められた場合には、その差額のみが労災保険として給付されます。

参考:傷病手当について

 

労災保険手続きの流れを把握しましょう

労災に関しての手続きは様々な制度が設けられており、簡単な手続きとは言えません。

 

しかし、労働災害に見舞われ、労災保険制度を利用する可能性は誰にでもあります。

 

いざという時に労災保険の給付をスムーズに行うためにも、手続きの流れを正確に把握しておくできなのではないでしょうか。

 
この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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