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新型コロナ感染は労災の対象か?補償内容と傷病手当金との違いも解説

更新日:2020年10月25日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
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新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行していますが、仕事中に新型コロナウイルスを感染した場合に労災の対象になるのかは気になるところですよね。

 

例えば、テレワークが進まず、満員電車で会社へ通勤しなければならない状況の下、新型コロナに感染してしまったということもあるかもしれません。

 

では、このような場合に果たして労働災害や通勤災害に認定されるものなのかを解説します。

 

 

労働問題に関するアンケート

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回答後に、意見をまとめた集計結果がご覧いただけます。【回答・閲覧期限2020/10/30まで】

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労災(労働災害)とは?

労災とは、「労働災害」の略語であり業務が原因となり生じた傷病のことをいいます。

 

業務災害

業務災害と認められるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の両方を満たすことが必要です。 業務遂行性とは、発生した傷病が使用者の指揮命令下で生じていることを意味します。

 

例えば、社内でパソコンを操作していたり、倉庫で物品の整理などをしていたりというタイミングで事故が生じれば、業務遂行性は明らかです。

 

また、営業で外回りに行っている時や出張中の事故もオフィス外ではあるものの、会社の指揮命令下にあることは認めやすいと思われ、これが認められれば業務遂行性は認定されます。

 

業務起因性とは

傷病が業務に「起因」していること、すなわち業務に内在する危険が発現したことにより事故に至ったことを意味します。

 

たとえば、オフィス内に階段がある場合、階段で足を滑らせて転んでしまうことはオフィスに内在する危険の発露といえます。そのため、このような事故は業務に起因するものであることは明らかです。

 

また、会社で長時間労働が恒常的に行われている場合に、長時間労働のストレスで精神失調に陥ったというケースでも、長時間労働に内在する危険が発露したものと評価できるので、業務起因性は否定されません。

 

このように、業務起因性は発生した傷病の原因が、業務に内在する危険といえるかどうかという観点から判断されます。 労働災害として認定されるためには、発生した傷病についてこの「業務遂行性」と「業務起因性」の両方を満たすことが必要なのです。

 

通勤災害

通勤災害とは通勤や退勤途中の事故により生じた傷病を意味します。

 

この通勤や退勤は、会社の業務に従事するために通常予定された移動や会社での業務を終了した後に通常予定される移動を意味します

 

そのため、休日に自己判断で会社へ忘れ物を取りに行ったという場合や、帰り道に寄り道をして友達と飲みに行ったという場合には、その移動中に事故にあったとしても通勤災害とは認められません。

 

ただし、子供の保育園の送迎や夕食の買い物で帰り道沿いにあるスーパーで買い物をする場合など、日常生活のために必要な活動のために一時的に経路を外れた場合に過ぎないのであれば、日常的な経路に戻れば通勤の範囲内として認められるようです。

 

 

従業員を雇う事業主は労災保険に加入する義務がある

労基署により労働災害である旨の認定を受けることができれば、労災保険を通じて手厚い補償を受けることができます。

 

そして、事業主は、従業員を一人でも雇うのであれば、これが正社員でも契約社員でもパート社員でも、必ず労災保険に関する届出を行う必要があります(派遣社員については派遣元で届出を行うことになります。)。

 

この届出は全て事業主側で行うべきものであり、労働者側で対応を要するものではありません。なお、雇用保険や社会保険と異なり、労災保険の保険料は事業主が100%負担します。

 

故意に加入していない場合はペナルティも

労災保険への必要な届出を行わず、支払われるべき労災保険料が未納となっている場合、事業主は遡って労働保険料を徴収される可能性があります。

 

また、この場合、保険料に追徴金が加算される可能性もあります。

 

なお、保険関係成立届を提出していない期間中に労働災害が発生し、労災保険給付を行った場合は、労災の補償となった金額の全額または一部を企業が補填しなければならないこともあります。

参考:厚生労働省|労働保険の成立手続

 

 

労災保険の加入方法と保険料について

労働保険(労災保険と雇用保険の総称)の加入義務が発生した企業は、「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署又は公共職業安定所に保険関係が成立した日の翌日から10日以内に提出する必要があります。

 

また、その年度分の保険料を概算保険料として申告・納付しなくてはいけません。こちらは保険関係が成立した日の翌日から50日以内に行います。

 

また、労災保険料は業種によって細かく保険料が定められており、従業員に支払う賃金の総額に労災保険料率を掛けて算出します。

 

賃金に含まれるのは、給与や賞与などで、従業員の平均給与×従業員数で賃金の総額を求めます。

 

【参考】

厚生労働省|労働保険の成立手続 

厚生労働省|労災保険率表

 

 

傷病手当金との違い

傷病手当金とは、健康保険の被保険者が病気やケガのために会社を休まなければいけない状況になった場合に、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。

 

支給条件

業務外の病気やケガによる療養のために就労が困難であること、不就労期間中に会社から賃金が支払われないことが条件となります。連続して3日間(待期)の後、4日目以降に仕事に就けなかった日数に対して支給され、最長で1年6ヶ月まで権利が継続します。

 

支給されている傷病手当金の金額は、以下の通りです。

 

支給金額

支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

 

労災保険は業務上の災害(傷病)に対して支払われることに対して、傷病手当金は業務外の災害(傷病)に対して支払われます。

 

そのため、両者は二者択一の関係にあり、両方受給することはできません。また、労災による給付を受けている期間中は業務外の災害に巻き込まれたとしても傷病手当金は支給されません。

参考:全国健康保険協会|病気やケガで会社を休んだとき

 

 

仕事で新型コロナウイルスに感染したら労災は認められるか?

では、新型コロナウイルス感染症に仕事で感染した場合には労災として認められるのでしょうか。

 

厚生労働省は、業務又は通勤に起因して発症したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となるとされています。しかし、新型コロナウイルス感染症はウイルス性の病気であり、感染経路を明確に特定することは通常は困難です。

 

そのため、新型コロナウィルスへの罹患が労働災害や通勤災害と認定されるケースは非常に限定的であると思われます(例えば、労働者がインフルエンザに罹患したとしても、これが労働災害や通勤災害と認定されるケースはほぼありませんので、新型コロナウィルスについても同じことが言えると思われます。)。

 

以下、事例毎に簡単に検討してみましょう。

参考:厚生労働省|新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け) 

 

満員電車での通勤していたところ感染した

もし、通勤の際の満員電車が感染源であることが明確に証明できれば、通勤災害として認める余地はあります。

 

しかし、現実問題としてこのような証明は不可能と言えます。したがって、満員電車に乗っていたという理由だけでは、仮に新型コロナウィルスに罹患したとしても、通勤災害と認められる余地は事実上ないと思われます。

 

新型コロナウイルス感染症が流行している地域へ出張したところ新型コロナウィルスに感染した

新型コロナウイルス感染症が流行している海外へ出張した際に、新型コロナウィルスに感染したような場合、感染が出張期間中の業務に起因することを証明できれば、労働災害として認定される余地はあると思われます

 

しかし、感染が確実に出張期間中であることを証明することは容易ではなく、例えば出張前に感染していないことが明白であり、出張期間中に発症したというわかりやすいケースでないと、なかなか難しいかもしれません。

 

また、仮に出張期間中であっても、出張中の活動の全てが業務となるものでもありませんので、結局、業務を通じて感染したかどうかの証明ハードルを超えられない可能性も高いと考えます。

 

新型コロナウィルスの感染リスクが高い職場で就労していた

コールセンターなどの密集した空間で働いており、換気や十分な距離を取らずに働く環境が継続された結果、同環境下で新型コロナウイルス感染症の集団感染が発生したしたという場合には、職場内での感染の可能性が高いとして労災認定を受ける余地はあるかもしれません。

 

また、新型コロナウイルス感染症の治療に専従していた医師や看護師が感染したような場合も、業務を通じた感染である可能性が高いとして、労災認定される可能性は相当程度あると思われます。

 

労災保険の申請方法

労働災害や通勤災害の事務処理は、労働者自身が行うのではなく、勤務先の人事や総務の担当者が対応することが一般的です。

 

基本的には手続に要する各種保険給付請求書を作成し、事業主と労働者が必要な証明を行い、労働基準監督署に提出します。

 

具体的には、療養(補償)給付の請求手続、休業(補償)給付と傷病(補償)年金の請求手続などです。

 

【関連記事】

労災保険の申請に診断書は必要?|診断書の様式と費用を解説

 

労災認定により受け取れる補償内容

労災にはさまざまな補償があります。それぞれの内容について紹介します。

 

療養給付

療養給付とは、業務災害または通勤災害に起因する病気や怪我について、病院等で治療する場合に医療費が支給されます。

 

労災病院や労災指定病院であれば治療行為という現物での提供を受けることになります。

 

また、これらの病院以外で労災の治療を受ける場合は、支払った治療費について労災認定後に労基署から給付を受けることになります。

 

いずれにせよ、労災認定を受ければ労働者は治療費を自己負担する必要がありません。

 

休業補償給付・休業特別支給金

業務災害または通勤災害に起因する病気や怪我の療養のために、仕事ができない(出勤できない)日が4日以上となった場合に支給されます。

 

たとえば、病気で20日間休まなくてはいけないとしたら、3日分を差し引いた17日分が対象です。

 

支給される金額は、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額です。また、特別支給金として休業1日につき 給付基礎日額の 20%相当額も支給されるので、合計で給付基礎日額の80%支給されることになります。

 

障害補償給付

障害補償給付は、労災による病気や怪我で障害が残った場合に年金または一時金として給付されるものです。

 

障害(補償)年金は、 業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合に支払われます。

 

また、障害(補償)一時金〕は、等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合に支払われるとのことです。 特別支給金というものも別で支払われて、障害特別支給金第1級342万円〜第14級8万円を一時金として受け取ることができます。

 

傷病年金

傷病年金は、業務災害または通勤災害に起因する病気や怪我が療養開始してから1年6 カ月を経過した日または同日後において完治していなかったり、傷病による障害の程度が傷病等級に該当したりすると受け取ることができるとのことです。

 

傷病によって3等級に分かれており、それぞれ異なる日数分の給付基礎日額を受け取ることができます。

 

さらに、特別支給金もあるので、傷病特別支給金第1級は114万円・第2級は107万円・第3級は100万円という具合に一時金も支払われます。

 

遺族補償給付

遺族補償給付は、労災により当該従業員が死亡した場合に残された遺族に支払われますが、年金受給する遺族がいるかどうかで年金または一時金のどちらで支払われるかが決まります。

 

遺族(補償)年金として受け取る場合は、年金額は遺族の人数に応じて計算に用いる日数が異なるとのことです。また、遺族の人数に関係なく特別支給金が300万円一時金で支給されます。

 

葬祭料給付

業務災害または通勤災害により死亡した方の葬祭を行うために支払われる給付です。

 

31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額または給付基礎日額の60日分を比べて金額が多い方が採用されます。

参考:厚生労働省|保険給付・特別支援金の種類

 

介護給付

介護給付は、業務災害または通勤災害が原因となり障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受給している場合に、一定の障害を有して介護を受けている場合に支給されます。

 

 

労災認定を受ける際に気をつけるポイント

労災を申請するに当たり気をつけたいポイントがいくつかあります。誤った手続きをしないためにきちんと確認しましょう。

 

労災病院・労災指定医療機関を利用する

労災について医療機関を受診する場合は、労災病院や労災指定医療機関を利用することを推奨します。

 

これら医療機関であれば、労働災害と認定される場合には、医療費を一時的にも負担する必要がないので、安心して治療を受けられます。

 

ただし、新型コロナウイルス感染症の場合は受診できる医療機関が限られているため、「新型コロナウイルス帰国者・接触者相談センター」に連絡して、相談センターの指示に従って受診をする必要があることには留意してください。

 

保険証の利用に注意

労災について病院を受診する場合には、労働災害である旨を申告してください。この場合には、健康保険は利用することができません。

 

もし、労働災害であることを申告せずに受診してしまい、健康保険を利用してしまったという場合には、受診先に労災である旨を伝えて切替の処理を依頼しましょう。

 

なお、上記のような労災指定医療機関以外の病院を受診した場合、健康保険を適用しない高額の医療費を一時的に立て替える必要が生じますので注意しましょう。

 

また、当初労災として受診していても、最終的に労働災害と認定されなかった場合には、遡って健康保険を利用することは可能ですので、安心してください。

 

労災と傷病手当金を同時に申請

新型コロナウイルス感染症に罹患した場合のように、業務災害や通勤災害と認定されるのが微妙なケースでは、まずは健康保険に傷病手当金を申請しつつ、労働災害として申請をするという対応もあり得ます。

 

というのも、傷病手当金は就労困難であることがわかればすぐに支給されますので、生活に不安があるような場合にはまずは傷病手当金の申請を先行するべきです。

 

そして、労働災害として認定された場合には、労災として補償を受けることができますので、すでに受給している傷病手当金を返金すれば問題ありません。

 

 

事業主が労災の証明を拒否した場合

労働基準監督署に労災申請を行う場合、通常は事業者側で対応します。

 

しかし、労働災害であることが微妙な事案の場合、事業主が協力を拒否することがあります。この場合でも、労働者が自ら労働災害として申請を行うことは可能であり、事業主の協力が得られない旨を記載すれば、事業主による証明欄の記載も必要ありません。

 

もし、新型コロナウイルス感染症への感染について、自身は労災と考えているが、事業主はこれを否定しているという場合には、所管の労働基準監督署へ相談しながら、自ら労災申請を行うことも検討してみてください。

参考:公益財団法人労災保険情報センター|労災保険給付請求手続き

 

労働基準監督署の決定に不服の場合

労災や通災の補償給付は、労働基準監督署が必要な調査を行い、労働災害や通勤災害と認定されて初めて支給されます。

 

そのため、労働基準監督署が労災認定しなかったり、通勤災害と認定しないという結論を出した場合には、これら給付を受けることはできません。この決定に納得がいかない場合は労基署に対して審査請求や再審査請求という不服申立ての手続を取ることができます。

 

この不服申立てによっても判断が覆らない場合には、行政訴訟を提起することで労基署の判断を取り消すよう求めることができます。

 

このように、労災の決定を争う場合、複数のステップを履践する必要があり、手続には相当の手間やコストが掛かるということは理解しておきましょう。

 

まとめ

一人でも従業員を雇う事業主は必ず労災保険に加入(必要な届出)を行う必要があり、この場合の保険料は全額事業主負担となります。

 

実際に、業務中または通勤中に病気や怪我をした場合は、労基署に労働災害や通勤災害として申請を行うことが可能であり、労基署が労災・通災と認めれば、労働者は療養給付や休業補償給付などの補償を受けることができます。

 

新型コロナウイルス感染症に感染したことが通勤災害や労働災害と認定されるケースは極めて限定的と思われ、労働者と事業主で労働災害・通勤災害であるか否かで判断が割れることも想定されます。

 

このような場合に、独力での対応が難しければ弁護士への相談も検討してみてください。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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