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【弁護士監修】過労死の裁判事例と認定が出た際の給付制度

更新日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
【弁護士監修】過労死の裁判事例と認定が出た際の給付制度

過労死をめぐる裁判は、2015年12月の電通女性社員の過労死自殺などで大きく話題になりました。この事件では、女性社員の過労死の背景として、労働基準法に反する過重労働があったと判断され、会社に50万円の罰金が科せられています。

 

電通女性社員過労自殺

電通の違法残業事件の判決公判が東京簡裁で開かれた。菊地努裁判官は「違法な時間外労働の態様は軽視できるものでなく、尊い命が奪われる結果まで生じたことは看過できない」として、電通に求刑通り罰金50万円を言い渡した。

参考: 産経新聞|電通社員過労自殺

 

過労死をめぐる裁判では、労働者の病死や自殺が業務を起因とする労災(労働災害)にあたるか、労働基準法違反にあたるものがあったかなどが争われます。

 

この記事では、過去の判例から、過労死の認定基準、裁判の流れや種類、遺族のための補償制度についてご紹介します。

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過労死の認定基準と裁判で争う3つのこと

厚生労働省では、過労死を以下のように定めています。

 

「過労死等」とは

 過労死等防止対策推進法第2条により、以下のとおり定義づけられています。

・業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡

・業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡

・死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

引用元: 厚生労働省|過労死等防止対策

この項目では、過労死の認定基準、裁判で争うことなどについてご紹介します。

 

 

過労死認定の対象となる疾患

脳血管疾患

脳血管疾患は、以下の疾患が対象となります。

 

  • 脳内出血(脳出血)
  • くも膜下出血
  • 脳梗塞
  • 高血圧性脳症

参考: 厚生労働省|脳・心臓疾患の労災認定

 

虚血性心疾患等

虚血性心疾患等は、以下の疾患が対象となります。

 

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心停止(心臓性突然死を含む)
  • 解離性大動脈瘤

参考: 厚生労働省|脳・心臓疾患の労災認定

 

精神障害による過労自殺

過労自殺とは、業務によって精神障害を発病し、自殺したと認められる場合に認定されます。対象となる精神疾患は、以下のとおりです。

 

精神および行動の障害分類

引用元: 厚生労働省|精神障害の労災認定

過労死の認定要件

過労死は、病死や自殺が労災によるものかを労働基準監督署に判断してもらう必要があります。

 

おすすめ記事: 過労死で労災認定を受ける基準と給付を受けるために知っておくべきこと

 

脳・心疾患の労災認定

脳・心疾患による過労死の労災認定は、以下の3つを評価し、業務との関連性を判断します。

 

  • 発症直前から前日までの期間で、身体的・精神的に極度の負荷がかかるような異常な出来事や、著しい作業環境変化などがあったか(異常な出来事)
  • 発症前の短期間で、特に過重な労働や負荷があったか(短期間の過重業務)
  • 発症前の長期間で、不規則な勤務や長時間の労働、作業環境などの面から著しい疲労の蓄積があったか(長期間の過重業務)

 

精神障害による過労自殺の認定要件

精神障害の認定要件

引用元: 厚生労働省|精神障害の労災認定

過労死自殺の場合、自殺に伴う精神障害が業務に起因しているものかどうかが認定要件となります。

 

精神障害の労災認定要件は以下のとおりです。

 

  • 認定基準となる精神障害か
  • 業務による心理的負担の評価
  • 業務以外の心理的負担、個体側要因

これらを総合的に評価し、業務との関連性が強いと判断された場合、労災と認定されます。

 

おすすめ記事: パワハラをされた人が労災認定を得るための条件と全手順

 

過労死裁判の種類

過労死の認定は労働基準監督署で行います。そのため、労働基準監督署での判断に納得がいかない場合は、行政裁判に発展する可能性もあります。

 

また、会社側には別途過労死による慰謝料や損害賠償を請求して民事責任を問うことができます。これらの裁判は、それぞれ異なる手続きが必要になります。

 

過労死認定を巡る行政裁判

労働者の死因が業務に関係するものである=過労死であったと認定するには、労働基準監督署で労災として認められなければなりません。

 

労働基準監督署による労災認定の流れは以下のとおりです。

 

労働保険審査制度の仕組み

引用元: 厚生労働省|労働保険審査制度の仕組み

労働基準監督署での判断(処分)に納得がいかない場合は、地方裁判所で労働基準監督署を相手どった裁判となることもあります。

 

慰謝料・損害賠償を請求する民事裁判

遺族は過労死によって家族を失ったことに対する慰謝料、また、当人が生きていれば稼いでいたであろう労働賃金などの損害賠償を会社に請求することができます。

 

その場合は、労災認定を受けていれば手続外の協議で解決することもありますが、労災認定を受けていない場合は、ほぼ確実に民事裁判に発展します。

 

 

過労死をめぐる裁判事例

この項目では、過労死をめぐる裁判事例についてご紹介します。

 

 

大手外食フランチャイズ店長(50歳)死亡|慰謝料4,600万円

2012年、大手外食フランチャイズ店の店長が致死性不整脈により死亡した事件です。被害者の半年間の時間外労働は月平均112時間で、津地裁は企業に4,600万円の支払いを命じました。
 

参考: 毎日新聞|店長過労死訴訟 ミスドFCに賠償命令…津地裁

 

 

大手家電量販店社員(23歳)死亡|企業が反論

遺族の訴えに対し企業が反論したケースもあります。

 

被害者の死亡前1ヶ月の残業時間は106時間。精神障害を発症していたようで労災認定もおりていますが、企業側は死亡と過労の因果関係を否定しています。

参考: Business Journal|ヤマダ電機、社員過労死裁判で遺族に真っ向反論、長時間労働を完全否定「労災認定は誤認」

 

大手コンビニエンスストア店長(62歳)死亡|和解金4,300万円

被害者は過労死ラインを大幅に超える月218~254時間の残業をしており、明らかに長時間労働をしていたのに責任者はそれを放置したとして、4,300万円の解決金が支払われた事例です。
 

参考: 朝日新聞|ファミマ、過労死訴訟で和解 店員遺族側に4300万円

 

労働者の過労死で会社が負うペナルティ

過労死などの労災は、その背景に長時間労働などがあります。

 

会社が違法残業や長時間労働など、労働者の労働時間や休日に関する規定に違反している場合は労働基準法違反について行政指導等を受ける可能性があります。これに従わないで違法行為を繰り返すと、刑事責任を問われる可能性もあります。

 

 

過労死遺族のための補償・給付制度

家族の過労死が労災であると認定された場合、労災保険から葬儀代や遺族の生活費などの補償を受け取ることができます。

 

この項目では、労災保険による補償・給付制度についてご紹介します。

 

おすすめ記事: 労災とは?労働災害があった場合の補償内容

 

遺族(補償)給付

過労死などの労災によって家族を失った場合、遺族は人数に応じて年金・一時金を受け取ることができます。

 

給付金額は遺族の人数に応じ、亡くなった方の労働賃金に相当する金額が153〜245日分支払われます。また、このほかに一律300万円の一時金が支払われます。

 

遺族給付内容

引用元:厚生労働省|遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続

 

申請に必要な書類

共通

  • 遺族補償年金・遺族年金前払一時金請求書(年金申請様式第1号)
  • 遺族補償年金・遺族年金転給等請求書・遺族特別年金転給等申請書(様式第13号)

業務災害

  • 遺族補償年金支給請求書・遺族特別支給金支給申請書・遺族特別年金支給申請書 業務災害用(様式第12号)
  • 遺族補償一時金支給請求書 業務災害用(様式第15号)

通勤災害

  • 遺族年金支給請求書 通勤災害用(様式第16号の8)
  • 通勤災害に関する事項(様式第16号の7~10(別紙))
  • 遺族一時金支給請求書 通勤災害用(様式第16号の9)

参考リンク:厚生労働省|労災保険給付関係請求書等ダウンロード

 

葬儀給付

過労死による労災は、葬儀代に一部が支給されます。この際、実際の葬儀費用などの証明書は不要です。

 

葬祭料(葬祭給付) = 31.5万円 +  (1日あたりの労働賃金) × 30日分

※上記金額が60日分の労働賃金に満たない場合は差額分を追加支給

 

申請に必要な書類

共通

  • 葬祭料請求書 業務災害用(様式第16号)
  • 葬祭給付請求書 通勤災害用(様式第16号の10)

参考リンク:厚生労働省|労災保険給付関係請求書等ダウンロード

 

過労死認定は弁護士のサポートが重要

過労死は、病気や自殺が業務によるものかどうかを客観的に判断する必要があり、極めて難しい問題です。

 

また、過労死が労災であると認定されるには、労災の証拠集めや労働基準監督署への請求手続きなど、多くの手間や労力がかかります。そのため、弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。

 

過労死の調査や裁判を弁護士に依頼した場合、裁判をはじめとしたサポートや労働基準監督署への申請などを行ってくれます。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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