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試用期間の残業は適法?正社員との違いや残業代が支払われない場合の対処方法

更新日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
試用期間の残業は適法?正社員との違いや残業代が支払われない場合の対処方法

試用期間とは、無期雇用契約を締結するにあたり、正社員としての能力・適性を評価・判断するための「お試し期間」と考えられています。では、試用期間中の従業員に対して、会社は残業を命じることができるのでしょうか。

 

今回は試用期間中の従業員に対する残業命令の適法性、残業代の支払いについての基本的知識について簡単に解説します。

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試用期間中の従業員と残業

 

残業を命じること自体に問題はない

試用期間は、正社員として正式採用する前段階の試しの期間であることは上記のとおりです。

 

この点、法律的には、試用期間中であっても会社と労働者との間には雇用契約関係があると考えられています。具体的には、試用期間中の社員と会社との間には、解約権留保付雇用契約が存在しており、会社は雇用契約に基づいて労働者に業務上の指示・命令が可能であり、労働者はこれに従う義務があると考えられています。

 

したがって、たとえ試用期間中であっても、会社は労働者に対して労基法のルールの範囲内で残業を命じることができますし、労働者は正当な理由なくこれを拒否することはできません。

 

この点について、試用期間であるかどうかは特に関係がなく、取扱いは正社員のそれと変わらないということです。

 

なお、本記事では「残業」という言葉を「1日8時間、1週間40時間」の法定労働時間を超えて働かせることという意味で使っていますので、以下もその前提でお読みください。

 

残業を命じた場合には割増賃金の支払義務がある

試用期間中であっても残業の取扱いは正社員のそれと変わらないことは上記のとおりです。そのため、当然、会社は試用期間中の社員に残業を命じた場合、残業代(割増賃金)を支払う必要があります。

 

具体的には、

 

  1. 1日8時間を超える労働には時間外労働に係る割増賃金
  2. 法定休日に労働した場合には休日労働に係る割増賃金
  3. 深夜に労働を命じた場合には深夜労働に係る割増賃金

 

をそれぞれ支払う義務があります。

 

この義務は、法律上求められるものですので、

 

  • 社員が試用期間であるから
  • 社員と試用期間中は残業を支払わない合意をしたから
  • 会社のルールで残業代を支給しないルールを定めているから

 

などの言い分は通用しません。

 

このような運用・取決めは法律に違反しており全て無効です。

 

残業について注意すべきポイント

試用期間中であろうとなかろうと、会社が労働者に残業を命じる場合は、法令の許容する範囲内でこれを行う必要があります。以下、問題となりやすいポイントについて簡単に紹介します。

 

36協定の締結がされているか

使用者が従業員に残業を命じるためには「36協定」の締結が必要です。36協定とは企業側が労働組合又は労働者代表者と締結する、時間外労働・休日労働に関する労使協定です。

 

36協定は、通常、所定のフォームに必要な事項を記載して締結します。また、締結した労使協定は所轄の労働基準監督署へ届出が必要です。36協定の締結がない事業場では従業員に残業を命じることができません

 

仮にこれに違反した場合には、法令違反となり是正のための指導・是正勧告を受ける可能性がありますし、悪質な場合には会社代表者に6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科される可能性があります。

 

なお、36協定を締結しても会社は無制限に残業を命じることができるわけではありません。残業時間の上限は、原則的には月45時間等、年360時間等の制限がありますし、2019年4月の労基法改正以降は特別条項によりこれを延長する場合でも、年720時間、2~6ヶ月平均80時間、月100時間を超えて時間外・休日労働を命じることはできなくなりました。

 

このような上限時間を超えて残業を命じることも労働基準法に違反する違法行為です。

 

【関連記事】

労働基準法での労働時間と長時間労働の対処法

 

労働時間管理についての問題

会社の支払うべき残業代は、労働者の実労働時間に従って計算することが原則です。そのため、会社が労働時間を適切に管理していないと、本来支払われるべき残業代が未払いとなってしまうことがあります。

 

例えば、会社は労働者の労働時間を原則として「1分単位」で管理、計算する必要があります。そのため、勤務先で15分単位や30分単位で労働時間が管理されており、単位未満の労働時間が切り捨てられて集計されていない場合、労働時間が適切に管理されていないということになります。

 

このように切捨て処理された労働時間については、本来労働時間として集計して残業代の計算根拠とするべきものが、不当に除外されているということになります。したがって、当該除外された労働時間については残業代が未払いとなっているということになります。

 

もし、このような運用がされている場合、労基署等に相談・通報することで状況が改善される場合がありますので、そのような対応も検討した方が良いかもしれません。

 

固定残業代についての問題

企業の中には「固定残業代」制度を導入している企業もあります。固定残業代制度とは、毎月の実労働時間の多寡に拘らず、一定の残業代を固定で支給する制度です。同制度が適正に運用されている限り、当該固定支給分については残業代(割増賃金)の支払いが行われているものと評価されます。

 

もっとも、固定残業代制度の下で、このような効果が認められるのは、あくまで制度が適正に運用されている場合に限ります。また、仮に制度が適正に運用されているとしても、実労働時間に基づいて支払われるべき残業代(割増賃金)が固定支給額を超える場合には当該超過分は別途精算されなければなりません(固定残業代制度は、一定額の支払いにより支払うべき残業代の支払義務を消滅させるような強力な制度ではありません。)。

 

企業の中には、このような固定残業代制度の基本をあまり理解していないでこれを運用しているケースもありますので、十分に注意しましょう。

 

固定残業代制度が適正か判断するには?

では、固定残業代制度が適正に運用されているかどうかはどのように判断されるのでしょうか。

 

基本的には

 

  1. 就業規則等で通常賃金部分と固定残業代部分が明確に区別できること
  2. 固定残業代として支給されるものに、何時間分の残業代が含まれているか明確であること

 

上記2点が残業の対価として支払われていることの2点が充足される必要があります。これらを充足しない場合には、固定残業代の支給分は残業代の支払いとはいえませんので、従業員は改めて残業代の支払いを求めることができます。

 

残業代が支払わなかった場合の対処法

試用期間であるかどうかに拘らず、企業側が支払うべき残業代を払わない場合、労働者は残業代の請求が可能です。残業代請求権の消滅時効は現行法では3年ですので、仮に未払いの残業代がある場合は、支払期日から3年以内に請求した方が良いでしょう。なお、実際に残業代を請求する場合、以下の点に留意してください。

 

労働時間に係る証拠を集める必要がある

労働者が残業代を請求する場合、残業代が発生していること(時間外、休日、深夜労働を行ったこと)は労働者側で主張・立証する必要があります。そのため、労働時間を証明する証拠の確保は非常に大切です。例えば以下のようなものが証拠として考えられます。

 

  • タイムカード、勤怠記録
  • パソコンのログイン、ログオフ記録
  • オフィスビルの入退館記録
  • 交通ICの入退場記録
  • 日々記録した労働時間のメモ等

 

会社と話合いの機会を持つことも大切

未払いの残業代がある場合、いきなり会社を訴えても良いのですが、話合いで解決できることもあります。まずは、会社に未払残業代があると考える根拠やその金額を明確にして、任意での支払いを求めるという対応もあり得ます。

 

個人では相手にされなくても、弁護士を通じて協議を申し入れることで一定の支払いを受けられることもありますので、検討してみては如何でしょうか。

 

話合いで解決しない場合は訴訟手続が必要

会社と協議しても任意支払いが期待できない、会社が支払いを拒否するという場合、法的手続きを通じて請求するしかありません。具体的には、労働審判や民事訴訟を通じて会社に未払残業代を請求していくことになります。

 

この場合には弁護士のサポートを受ける重要性はより高いといえます。

 

まとめ

試用期間中であろうとなかろうと残業に対する規律は正社員と変わらないことがおわかり頂けたと思います。未払いの残業代がある場合、本記事を参考にしつつ、これを会社に請求することも検討してみては如何でしょうか。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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