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働く女性が直面するマタハラ問題|相談先と解決方法

このコラムを監修
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
働く女性が直面するマタハラ問題|相談先と解決方法

マタハラとは、働く女性が出産・妊娠をきっかけに、職場から精神的・肉体的な嫌がらせを受けることで、マタニティ・ハラスメントの略です。女性の社会進出が一般的になっていますが、女性が妊娠・出産をする際は、一時的に働くことが出来なくなります。

 

だからといって、会社が妊娠した女性を簡単に解雇することは出来ませんし、サポートする義務があります。

 

しかし、非正規雇用が増えてきた現在では、妊娠を理由に簡単に解雇する不当解雇や、辞めさせようと圧力を掛ける「マタハラ」が問題になっています。

 

今回は、マタハラを受けて悩んでいる方の、現段階でできる対処法と法的観念から見た対処法をご説明し、妊娠されている方の、出産後の社会復帰の悩みを少しでも軽減できればと思います。

 

 

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この記事に記載の情報は2026年09月09日時点のものです

マタハラとは

冒頭でも説明しましたが、マタハラとは、主に職場で、妊婦に対して行なわれるハラスメントの1種で、マタニティ・ハラスメントの略です。

 

妊娠によって、仕事の能力が一時的に下がった女性を軽くあしらい、冷たい態度で接したり妊娠に理解を示さなかったり、女性の上司から、嫉妬が原因の攻撃を受けることもあります。

 

また、妊娠後期から、出産・育児にかけて長期の休暇を必要とするため、それを見据えて会社が妊婦を精神的に追い詰め、不当に解雇しようとすることもあります。妊娠中の女性は非常にデリケートで、マタハラにより精神的にも追いつめられると母子ともに身体の危険性も出てくる、非常に悪質なハラスメントです。

 

マタハラの被害内容

 

マタハラの被害内容

 

マタハラNETの調査によると、マタハラの被害を受けた相手は、第1位「直属男性上司」、第2位「男性の経営層」「人事」、第3位「直属の女性上司」となっており、マタハラを防ぐ役割の人事部門自体が法律順守の意識が低いケースが見られます。また、マタハラをする同僚は男性より女性が2倍多く男性9.1%、女性18.3%と、女性からの被害が多いのもマタハラの傾向です。

 

マタハラによる精神的・肉体的攻撃

マタハラの被害で最も多かったものが、言葉による精神的な攻撃です。妊婦に対し、「辞めたら?」「甘えだ」などの解雇を示唆するような発言や、妊娠により体調を崩しがちな妊婦に対し、思慮の足りない発言や、態度をすることが考えられます。

 

また、肉体的な攻撃としては、妊婦に直接暴力を振るうような人は少ないでしょうが、妊婦の前で、タバコを吸ったり、身体的に負担のある仕事を与えたりすることも考えられます。

 

マタハラでの不当解雇・雇い止め

マタハラの被害で次いで多かったものは、解雇や雇い止めに関した内容です。妊娠すると必然的に長期的な休業期間が出てきてしまいます。その間も、会社は妊婦をサポートする義務がありますが、そうなってしまう前に、会社は妊婦を解雇にしようとします。

 

マタハラでの降格

また、妊娠を理由に、賞与の減額や非正規社員への降格の問題もマタハラでは見られました。妊娠を理由とした、減給・降格は不当となっています。(妊娠の身を考慮しての部署異動や、労働時間減少による収入減は、本人の同意があれば問題は無いでしょう)

 

マタハラでの心身への被害

妊娠中の女性の身体は非常にデリケートです。マタハラによる精神的苦痛や、肉体労働により「職場流産」になってしまう、非常に重大な問題が生じることもあります。

 

妊婦は労働基準法で守られている

このような事態を防ぐために、働く女性が妊娠したのであれば会社がしっかりとサポートをするように、男女雇用機会均等法と労働基準法律でも定められています。

 

男女雇用機会均等法第12条「保健指導又は保険診査を受けるための時間の確保」

妊婦・産後の方が保健指導を受けるための時間の確保が、法で保護されています。

・妊娠中(妊娠23週まで4週間に1回、妊娠24週~35週まで週に2回、妊娠35週~出産まで1週間に1回)

・産後1年間(医師等の指導により必要な時間を確保する)

 

男女雇用機会均等法第13条「指導事項を守ることができるための措置」

妊婦・産後の方が医師の指導を受けた際に、会社は必要な処置を取らなくてはなりません。

・妊娠中の通勤緩和(通勤時間を遅らせたり、勤務時間を短くする)

・妊娠中の休憩(休憩時間の延長・休憩回数の増加)

・妊娠中及び産後の症状(作業の制限・休業)

 

男女雇用機会均等法第9条「妊娠・出産を理由とする不利益取り扱いの禁止」

従業員の妊娠・出産にあたり、解雇・降格・減給等をすることは禁止されています。不利益取り扱いと考えられる内容は、以下のようになります。

・解雇する

・有期労働者の契約を更新しない

・退職又は非正規社員へ変更を強要する

・降格させる

・本人の意思と関係なく自宅待機させる

・減給又は賞与に不利益な査定を行なう

・昇給・昇格の不当な人事評価を行なう

 

労働基準法第65条第1・2項「産前・産後休」

産前6週間から、産後8週間は、女性を労働させることが出来ません。(産後6週間以降は、医師から認められ、女性からの請求があれば働くことが出来ます。)

 

労働基準法第65条第3項「妊婦の軽易業務転換」

妊婦からの請求があれば、簡易的な業務に転換させなくてはなりません。

 

労働基準法第64条の3「妊産婦等の危険有害業務の就業制限」

妊娠中・産後の女性を工場の大型機械や、高温・低温、有害ガス等の生じる事業場に就かせることは出来ません。

 

労働基準法第66条第1項「妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限」

妊娠中・産後の女性の請求があれば、変形労働時間制の1日8時間、1週間40時間の法定労働時間を超えさせることは出来ません。

 

労働基準法第66条第2・3項「妊産婦の時間外労働・休日労働・深夜業の制限」

妊娠中・産後の女性から請求があれば、時間外労働・休日労働・深夜労働を行わせることは出来ません。

 

労働基準法第67条「育児時間」

出産後の女性は産後1年間、1日2回30分以上の育児時間を請求することが出来ます。

 

産休の給料は出ない企業がほとんど

いかがでしょうか。妊娠中・産後の女性は、しっかりと法律でも守られています。また身体にも影響が少なく、仕事をしたい(稼ぎたい)という意思があればそのまま働き、身体が辛くなってきた場合には会社に請求し、妊娠中の身を考慮してもらえます。

 

しかし、それでも産前6週間前から約3~4ヶ月の間は産休を取らなくてはならないので、頭を過るのは産休中の給与のことではないでしょうか。(解雇や降格に関しては、上記の通り本来法律では認められていません。)

 

しかし、残念ながら産休中の給与(産休手当)は、会社が支払う義務はありません。もっとも近年は女性の社会進出に伴い、就労規則に産休手当を取り入れ、アピールポイントとしている企業もあります。

 

また、健康保険に加入していると、産休中の日数分の給与を約3分の2支給してもらえます。(残念ながら、国民健康保険では支給されません)。ですので、詳しくは、会社の総務に確認をするようにしましょう。

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マタハラの訴訟例

実は、マタハラに関する裁判例は多くありません。というのも、マタハラが認知され始めたこともここ数年の出来事です。ですので、以前からマタハラが社内で起きていても、大きく問題になっていなかったことが考えられます。

 

また、一昔前は男性が家庭の生計を担っており、女性は結婚か妊娠をしたら退社することが一般的でした。しかし、近年続く不景気での収入減・雇用の不安定と女性の社会進出に伴い、このマタハラ問題も表面化したのだと考えます。

 

しかし、2014年9月に妊娠を理由に降格された点を争った「マタハラ訴訟」が話題になりました。このことは、今後マタハラに対する改善の兆しではないでしょうか。
 

マタハラ降格に賠償命令 女性が逆転勝訴

理学療法士の女性が妊娠したことを理由に、勤め先の病院の管理職を降格された事で「不当に降格された」と訴えを起こした訴訟例で、病院側に管理職手当などの賠償金を請求しました。
 
一度は降格は適法と判断されたものの、その後、最高裁が判断した訴訟の差し戻し控訴審判で変更になり、精神苦痛による慰謝料なども含めた175万円の賠償金の支払い命令が病院側に言い渡されました。
 
繰り返しますが、この裁判で最高裁が「妊娠による降格は原則禁止」という判断を示し、今後マタハラで悩む女性の大きな希望とマタハラが行われている企業の改善の兆しになったと言えるでしょう。

 

マタハラを受けている方への相談先

それでは、マタハラを受けて、現在も困られている方への対処法をご説明します。現在、マタハラで困っている方は、まず、しかるべきところに相談し、味方を増やしましょう。現状ではまだまだマタハラに関する認知も少なく相談しても理解を得られない場合があるため相談先を選ぶ必要があります。

 

社内での相談先

社内での相談先は、社内の人と、社内の相談機関の2種類です。社内の人に相談する際は、「仲の良い同期や、バリバリ仕事ができる上司」ではなく、実際に出産されて、子供もいながら働いている方が第一基準です。

 

マタハラが起きる心理のもとには、「妊娠は自己責任」や「妊娠して浮かれているの?」といった軽視や嫉妬などがあり、なかなか理解されないことがあると考えられています。一度妊娠・出産して復職された方からが、一番理解を得られます。

 

また、会社の機関で言うとある程度の規模の企業であれば、労働問題の相談コーナーがあると思います。利用して損をするようなことはありません。気兼ねなく有効活用するようにしましょう。

 

社外での相談先

それでも、社内に相談できる人物が居なかったり、話を聞き入れてもらえなかった場合は、社外の機関に相談しましょう。社外での相談先は、労働問題を取り扱う、特に女性に対した機関に相談するのが一番でしょう。

 

厚生労働省 STOP!マタハラ

厚生労働省も、大々的にマタハラの相談を受け付けてくれるようになりました。

 

女性にやさしい職場づくり相談窓口

働く女性や企業の担当者が、母性健康管理や職場での女性の健康支援についてメールで相談できる窓口です。一般的な情報提供を目的としており、事業所への指導権限はありません。

 

NPO法人 マタハラNET

直接の相談は出来ませんが、マタハラに関する記事を日々更新しています。参考や励みになるかと思います。

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マタハラで不当解雇された方の取る対処法

妊娠を理由に、解雇や雇い止め(有期契約者の契約打ち切り)をされたのであれば、それは、不当解雇になります。迅速に対処をすれば、職場への復帰や、解雇後に生じたであろう賃金を請求することが出来ます。
 

しかし、一方でマタハラなどのハラスメント問題は、証拠が残っていないということで、仮に裁判を起こしたとしても負けてしまうことも多いことが現実としてあります。マタハラを常習的に受けている方は、受けた事実を証明するためにもボイスレコーダーなどの形に残して証拠を集めて下さい。

 

妊娠中に必要な配慮を職場に伝える

妊娠中や産後の症状が仕事に影響しているときは、健診の際に主治医に相談し、必要な配慮を職場に伝えましょう。母健連絡カードは、医師の指導内容を職場へ伝えるための書類です。

医師の指導内容を母健連絡カードで共有する

通勤の緩和や勤務時間の短縮について医師から指導を受けたら、母健連絡カードを使って職場に申し出ることができます。事業主は、伝えられた指導内容に応じて必要な措置を講じます。
参考:母健連絡カードについて|厚生労働省

まとめ

いかがでしょうか。マタハラで職場が居づらくなり、一人で悩みを抱えてしまいがちですが、必ず解決の方法も、相談先も存在します。一人で悩まず、周りに相談するようにしましょう。

 

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梅澤康二 弁護士
(第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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