看護師として働いている方の中には、セクハラ被害に悩んでいる方もいるでしょう。
看護師の場合、密室で2人きりになったり身体的接触が発生したりする機会も多く、セクハラが発生しやすい職場環境でもあります。
医師や患者などからセクハラを受けた際は、なるべく速やかにセクハラの証拠を集めて、相談窓口にどのような被害に遭っているのか報告しましょう。
セクハラの被害状況によっては、加害者から慰謝料を獲得できたり、加害者に対して刑事罰が科されたりすることもあります。
本記事では、看護師がセクハラに遭いやすい理由や被害時の対処法、セクハラ被害を相談できる窓口などを解説します。
セクハラとは
セクハラはセクシャルハラスメントの略で、職場で起こる代表的なハラスメントのひとつです。
被害者の尊厳を傷つけるだけでなく、職場の雰囲気や生産性にも悪影響を与える重大な問題でもあります。
ここでは、セクハラの定義や種類などを解説します。
セクハラの定義
セクハラとは「相手の意に反する性的な言動により、労働者が不利益を被ったり、労働環境が害されたりすること」を指します。
たとえば、以下のような言動があった際はセクハラに該当する可能性があります。
- 身体を触る
- 根拠のない性的な噂を広める
- 容姿や身体的特徴について言及する
- 何度もしつこく食事やデートに誘う
- 性的な画像・動画を見せつける など
男性から女性に対しておこなわれるケースだけでなく、女性から男性に対しておこなわれるケースもあれば、同性間でのセクハラが成立するケースもあります。
男女雇用機会均等法では、以下のとおり事業主に対してセクハラの防止措置を講じることが義務付けられています。
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)
第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
引用元:男女雇用機会均等法第11条
セクハラの種類
セクハラは、以下の4種類に大きく分類されます。
| セクハラの種類 | 主な特徴 | 具体例 |
|---|---|---|
| ①対価型セクハラ | 性的な言動について拒否・抵抗したことで、解雇・降格・減給などの不利益を受けるタイプのセクハラ | ・デートの誘いを断ったため、重要なプロジェクトのメンバーから外す ・性的行為の誘いを断ったため、不利益な配置転換をおこなう ・性的な関係を結ぶことを拒否したため、人事評価を下げる など |
| ②環境型セクハラ | 性的な言動が原因で労働環境が不快なものとなり、本来の能力を十分に発揮できないなどの悪影響が生じるタイプのセクハラ | ・職場で周囲に人がいる状況の中で性的な内容を話す ・職場にアダルト系のポスターを掲示する など |
| ③制裁型セクハラ | 性差別的な価値観で圧力をかけたり、性別で態度を変えたりするタイプのセクハラ | ・異性の同僚の意見を無視する ・異性の上司の言うことを聞かず、同性の上司に指示を求める ・「女性は仕事よりも家庭を優先するべき」と発言する など |
| ④妄想型セクハラ | 「自分に対して好意を抱いている」と思い込み、性的な言動をおこなうタイプのセクハラ | ・休日に食事やデートに連れ出そうとする ・個人的な内容のメールやLINEを頻繁に送る ・周囲に対して交際しているかのような噂を流す など |
なお、セクハラには「どこからがセクハラになるのか」という明確な線引きがないため、実際のところは個別の事情を総合的に考慮したうえで判断されます。
セクハラとして扱われやすい発言・行為について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
看護師がセクハラ被害に遭いやすい3つの理由
看護師は、主に以下のような理由から「セクハラ被害に遭いやすい」と言われることもあります。
- 上下関係に厳しい業界だから
- 身体的な接触が多く発生するから
- 密室で2人きりになることが多いから
ここでは、看護師がセクハラ被害に遭いやすい理由について解説します。
1.上下関係に厳しい業界だから
医療業界の場合、上下関係などの階級構造や役割分担がはっきりしているからというのが理由のひとつです。
たとえば、医師のほうが看護師よりも強い立場にあると、立場を利用したセクハラがおこなわれて看護師側が強く抵抗できない場合もあります。
また、看護師の中でも先輩・後輩の上下関係が厳しいケースもあります。
たとえば「先輩の言うことには逆らえない」というような雰囲気の職場では、立場を利用したセクハラがおこなわれる場合もあります。
2.身体的な接触が多く発生するから
看護師の場合、看護のために身体的な接触が多く発生しやすいのも理由のひとつです。
たとえば、けがや病気で身体が不自由な患者には直接寄り添ってサポートする必要がありますし、治療のために近い距離で接するケースも多くあります。
日常的に多くの患者と接するため、なかには「何をしても大丈夫だろう」などと勘違いした患者からセクハラを受けたりする場合もあります。
3.密室で2人きりになることが多いから
看護師の場合、密室で2人きりになる機会が多いのも理由のひとつです。
たとえば、患者の診察や治療の入っていない空き時間に医師と看護師で2人きりになったり、夜勤でスタッフが少人数の場合なども2人きりになることが多くあります。
また、個室の患者を看護する際は、患者と看護師で2人きりになることもありますし、訪問看護の場合なども2人きりになることが多くあります。
「密室で2人きり」という状況を利用して、医師や患者などからセクハラ被害に遭うケースもあります。
【ケース別】看護師が受けるセクハラの具体例
ここでは、看護師が受けるセクハラの具体例についてケースごとに解説します。
1.医師からセクハラを受ける場合
看護師が医師から受けるセクハラとしては、主に以下のようなものがあります。
- 病院ですれ違いざまに身体を触られる
- 2人きりになったタイミングで手を握られる、抱きしめられる
- 2人きりになったタイミングで性的行為を強要される
- 恋人の有無・結婚・妊娠・出産について執拗に聞かれる
- 飲み会で隣に座るように強要される など
たとえ医師のほうが看護師よりも強い立場にあっても、セクハラが社会的に許されない行為であることは変わりません。
医師からセクハラを受けた場合は、泣き寝入りせずに「看護師がセクハラを受けた場合の5つの対処法」で後述する対応を取りましょう。
2.患者からセクハラを受ける場合
看護師が患者から受けるセクハラとしては、主に以下のようなものがあります。
- 介助の際に身体を触られる、必要以上に密着してくる
- 必要以上にナースコールを鳴らされて過剰なケアを強要される
- 2人きりになったタイミングで性的行為を強要される
- 執拗に連絡先を聞かれる、食事やデートに誘われる
- 夜勤巡回中に自慰行為を見せつけてくる など
看護師は、全ての患者に対して丁寧に寄り添って対応するのが基本です。
ただし、なかには「自分に好意を持っている」「何をしても大丈夫だろう」などと患者が勘違いしてセクハラに及ぶこともあります。
患者からセクハラを受けた場合も、医師の場合と同様に問題解決に向けて動きましょう。
看護師がセクハラを受けた場合の5つの対処法
医師や患者などからセクハラを受けた際は、以下のような対応を検討しましょう。
- セクハラの証拠を集める
- 加害者に対して拒否の態度を示す
- 病院内や外部の相談窓口に報告する
- 慰謝料請求や刑事告訴をする
- 転職・退職する
ここでは、看護師がセクハラを受けた場合の対処法について解説します。
1.セクハラの証拠を集める
まずは、セクハラの事実を証明する証拠を集めましょう。
十分な証拠が揃っていないと、事実確認ができずに誰も取り合ってくれず、セクハラの主張や加害者に対する責任追及が認められないおそれがあります。
セクハラの事実を証明する証拠としては、たとえば以下のようなものが有効です。
- セクハラを受けた際の音声・動画
- 加害者から送られてきたメールやLINEの記録
- セクハラの被害内容や被害日時を記録したノート
- セクハラが原因で心身に不調をきたし、病院を受診した際の診療記録
- 目撃者による証言 など
2.加害者に対して拒否の態度を示す
セクハラを受けた場合は、加害者に対して拒否の態度を示すことが大切です。
明確な拒否の態度を示しておかないと「この人は嫌がっていない」「自分の言動を受け入れている」などと勘違いされて、セクハラ行為がエスカレートするおそれがあります。
また、なかには「加害者本人にセクハラの自覚がない」というようなケースもあり、加害者に直接指摘しないと気付いてくれない可能性もあります。
もし直接伝えるのが難しい場合は、周囲に相談するなどしてサポートを求めましょう。
3.病院内や外部の相談窓口に報告する
セクハラを受けた場合は、病院内や外部の相談窓口に報告するのも有効です。
たとえば、同僚・上司・病院内のセクハラ相談窓口などに相談すれば、セクハラの事実確認がおこなわれたのち、加害者に対してしかるべき対応を取ってくれる可能性があります。
病院内で相談して解決しなかったとしても、外部の相談窓口を利用することで解決につながる場合もあります。
セクハラ被害の相談窓口は多くあるので、積極的に利用することをおすすめします。
4.慰謝料請求や刑事告訴をする
セクハラ被害に遭った際は、加害者に対する慰謝料請求や刑事告訴なども検討しましょう。
慰謝料請求する場合は、加害者に対して書面・交渉・裁判などの手段で慰謝料の支払いを求めることになります。
慰謝料の金額は個別の事情によっても変わりますが、一般的な相場としては50万円〜300万円程度です。
刑事告訴する場合は、警察署に行って被害事実を申告することになります。
捜査機関が動いてくれれば、加害者が逮捕・勾留されたり、拘禁刑や罰金刑といった刑事罰が科されたりする可能性があります。
5.転職・退職する
セクハラ被害に遭った際は、転職・退職するのも選択肢のひとつです。
加害者と争う場合は相応の時間や手間がかかりますし、精神的にも大きな負担がかかるおそれもあります。
思い切って環境を変えれば、セクハラで悩むこともなく、安心して仕事に集中できます。
なお「医療業界は全体的に人手不足」と言われることもあるものの、給与や勤務先などの希望条件によってはなかなか転職先が見つからない場合もあります。
基本的には、新しい勤務先が見つかってから退職するようにしましょう。
看護師のセクハラ被害に関する相談窓口4選
看護師のセクハラ被害に関する相談先としては、主に以下の4つがあります。
- 同僚や上司
- 病院内の相談窓口
- 外部の相談窓口
- 弁護士
ここでは、各相談先の特徴や選び方について解説します。
1.同僚や上司|周囲に信頼できる人がいる場合
周囲に信頼できる同僚や上司がいる場合は、まずは相談してみるのが有効です。
信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが落ち着いて精神的に楽になります。
たとえば、医師からセクハラを受けている場合は自分の代わりに注意してくれたり、患者からセクハラを受けている場合は担当を代わってくれたりして解決する可能性があります。
2.病院内の相談窓口|周囲に相談しても解決が難しい場合
周囲に相談しても解決が難しい場合は、病院内の相談窓口を利用するのが有効です。
病院側には安全配慮義務が定められており、従業員が安全かつ健康に働けるように取り組む義務があります(労働契約法第5条)。
病院内のハラスメント相談窓口などにセクハラ被害を相談すれば、相談者や関係者にヒアリングをおこなったのち、加害者に対する処分が下されたりして解決する可能性があります。
3.外部の相談窓口|病院内に相談しても解決が難しい場合
病院内に相談しても解決が難しい場合は、外部の相談窓口を利用するのが有効です。
病院側が思うように動いてくれなくても、外部の相談窓口を利用してアドバイスやサポートを受けることで解決につながる可能性があります。
セクハラ被害の相談窓口は多くあり、代表的なものは以下のとおりです。
- 労働基準監督署
- 労働組合
- 労働局
- 法テラス
- みんなの人権110番
- 女性の人権ホットライン
- 警察 など
それぞれ対応できる内容が異なるため、自分に合った相談先を選ぶことが大切です。
各窓口の特徴やサポート内容について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
4.弁護士|加害者に対する慰謝料請求や刑事処罰を望む場合
加害者に対する慰謝料請求や刑事処罰を望む場合は、弁護士に相談するのが有効です。
たとえば、慰謝料請求では書面作成・加害者との交渉・裁判所とのやり取りなどが必要ですし、刑事告訴では捜査機関とやり取りしなければいけません。
弁護士に相談すれば、必要書類の作成方法・交渉時の注意点・裁判手続きの進め方などの状況に応じた的確なアドバイスをしてくれるので、迷わずに手続きを進められます。
さらに、弁護士なら、自分の代理人としてセクハラ問題を争ってもらうことも可能です。
加害者に対する慰謝料請求・刑事告訴や、病院に対する職場環境の改善要求も依頼できるなど、自力での対応が不安な方にとっても心強い味方としてサポートしてくれます。
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