パワハラ・セクハラ・未払い残業代・過重労働・リストラなどの労働トラブルが起こった際に、専門家に相談したくても費用がネックになり、相談が出来ず泣き寝入りしてしまう方が多くいらっしゃいます。
そんな方々を、いざという時に守るための保険が弁護士費用保険です。
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残業が全くない会社や、残業代を確実に支払っている会社でない限り、従業員から残業代請求される可能性は十分あります。
厚生労働省によると、労働基準監督署の監督指導によって未払い残業代を支払った会社は1,062社、そのうち1,000万円以上を支払った会社は112社ありました。
是正企業数 |
1,062社 そのうち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは112社 |
対象労働者数 |
6万5,395人 |
支払われた割増賃金合計額 |
69億8,614万円 |
支払われた割増賃金の平均額 |
1企業あたり658万円、労働者1人あたり11万円 |
従業員が十分な証拠を持って正当な残業代請求をおこなっている場合は、会社側は誠意をもって対応する必要があります。
一方、会社側が労働基準法を守ったうえで、残業が発生しない体制作りをしているようなケースであれば、従業員からの残業代請求に対して反論できることもあります。
この記事では、従業員から残業代請求された場合の対応方法や対応時のポイント、残業代請求に対して反論できるケースなどを解説します。
【関連記事】未払い残業代を自分で請求/獲得する為の証拠と手順を徹底解説
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従業員から残業代請求されてしまった場合は、以下のように対応しましょう。
従業員から残業代請求されたとしても、必ずしも請求された通りに素直に支払う必要はありません。
場合によっては、従業員が主張する残業代の金額が間違っていることもありますし、そもそも残業代請求の権利がない状態で請求している可能性もあります。
「残業代が未払いになっている」という認識がなく、未払い状態にならないように十分な対策を取っていたのであれば、しっかり反論しましょう。
また、従業員が弁護士に依頼したうえで残業代請求してくる場合もありますが、その場合も弁護士によって見解が異なりますので、会社側も弁護士にサポートを依頼して反論の余地がないかどうかを確認することをおすすめします。
従業員から残業代請求された場合は、請求金額や請求自体が正しいのかどうかを判断するために、支払い義務がある残業代を計算する必要があります。
その際は、計算ミスや把握漏れなどを避けるために、労務問題に注力する弁護士に確認してもらいましょう。
従業員から残業代請求された場合、会社側の選択肢としては以下のどちらかになります。
もし「未払いになっている残業代がある」という認識があり、従業員の請求内容が正当なものであれば、①の対応を取りましょう。
その際、金額面で訂正したい部分などがあれば、お互いに話し合ったりして金額を決めていきます。
一方、「未払いになっている残業代がある」という認識がなく、従業員の請求内容に疑問を感じている場合は、②の対応を取りましょう。
安易に残業代請求を認めてしまうと、他の従業員や過去に退職した従業員から、さらなる残業代請求をされる可能性もありますので、反論の余地がある場合にはきちんと反論しましょう。
残業代トラブルの場合、基本的には従業員本人や代理人弁護士などから残業代請求を受けることになりますが、なかには従業員が労働基準監督署に通報することもあります。
従業員が労働基準監督署に通報した場合、通報を受けた労働基準監督署によって、会社に対する調査・指導・勧告などがおこなわれる恐れがあります。
もし、労働基準監督署から通知などが届いても無視した場合には、強制的に立ち入り調査がおこなわれるリスクがあります(労働基準法第102条)。
また、労働基準監督署から調査対応などを求められた際に拒否した場合には、刑事罰の対象になります(労働基準法第120条4項)。
労働基準監督署に対して不誠実な対応を取ってしまうと、上記のようなリスクがありますので、誠実に対応しましょう。
従業員の残業代請求に対して、会社側が対応を誤るとさらに問題が大きくなる恐れもあります。
できるだけ穏便に問題を解決するためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
なかには、すでに退職した元従業員から残業代請求されることもあります。
そのような場合に、「もう会社に在籍していないのだから放っておいてもよい」などと残業代請求を無視するのは止めましょう。
残業代請求を無視した場合、労働基準監督署への通報や裁判手続きなどの手段を取ってきて、結果的に問題が悪化する恐れがあります。
すでに残業代請求している時点で、それなりの根拠と意思を持って動いているわけですので、「無視して乗り切れるものではない」と考えましょう。
残業代請求された場合、従業員からタイムカードなどの残業実績に関する証拠開示を求められることもあります。
証拠開示については拒否することも可能ですが、たとえ拒否しても裁判手続きなどの過程で開示が必要になりますので、求められた際は誠実に対応しましょう。
なお、労働に関する重要書類は5年間保存する義務がありますので、「退職したから処分した」などの言い訳は通用しません。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
引用:労働基準法第109条
従業員から残業代請求された際は、問題解決に向けて動くのと同時に、これまでの管理体制に問題がなかったかどうかも見直しましょう。
もし管理体制に問題があれば、今回の問題が解決したとしても、また同じような問題が発生する恐れがあります。
未払い残業代が発生するような状況としては、以下のようなケースがあります。問題点がある場合は早急に改善しましょう。
残業代請求のように法律が絡むトラブルでは、一定の法律知識が求められます。
これまで請求対応の経験もなく、十分な法律知識もなければ、請求されている金額が正しいかどうか判断できなかったり、従業員とのやり取りがうまく進まずに裁判手続きに発展したりする恐れがあります。
残業代請求されているのであれば、すぐに現在の状況を整理し、会社の雇用契約書などを揃えたうえで弁護士にサポートを依頼しましょう。
弁護士には、従業員との交渉や裁判発展時の対応などを一任することができ、心強い味方になってくれます。
従業員から残業代請求されても、以下のようなケースであれば反論することが可能です。
ここでは、従業員の残業代請求に対して反論できるケースについて解説します。
従業員本人が未払い分を計算して残業代請求している場合、残業代の金額や労働時間の捉え方などが間違っていることもあります。
場合によっては、何の根拠もなく高額な金額を請求していることもあります。
残業代請求された際は、弁護士を交えて正確に計算し直し、もし金額に誤りがある場合は正しい金額に直して対応しましょう。
なお、従業員の請求内容の誤りを指摘する際は、タイムカードや雇用契約書などの客観的な証拠を準備しておきましょう。
残業代を請求する権利には時効があります。
例えば、「過去に長期間残業代が正しく支払われていなかった」というようなケースでは、請求金額の一部では時効が成立している可能性があります。
なお、2020年4月1日から改正民法が施行されたことで、残業代請求権の時効期間は2年から3年に変更されています。
以下のとおり、残業代請求権が発生したタイミングによって、2通りの時効期間が存在します。
残業代請求権の発生時期 |
消滅時効期間 |
2020年3月31日以前 |
2年 |
2020年4月1日以降 |
3年 |
残業代請求権の時効期間を過ぎたとしても、それだけでは支払い義務は免除されず、時効の援用という手続きをしなければいけません。
時効の援用とは、時効期間が過ぎた後に、時効の制度を利用する意思を相手方に伝えることです。
残業代を請求してきた従業員に対して、「すでに時効を迎えており、消滅時効を援用する」などと記載した通知書を送付するのが一般的です。
【関連記事】【2020年4月から】残業代請求の時効は3年に延長|時効を中断させる方法まで
会社側が残業を禁止していたにもかかわらず、従業員が勝手に残業しており、その分の残業代を請求された場合も反論の余地があります。
ただし、「単に口頭で軽く指導していただけ」というようなケースでは、残業を禁止していたことを主張・立証するのは困難です。
また、会社側が残業の禁止について明示していたとしても、「従業員が残業していることを知りながらそのまま働かせていた」という場合には、残業を黙認していたとして反論が認められない可能性があります。
従業員の残業代請求に対して反論できるケースとしては、以下のようなものがあります。
固定残業代制を導入している会社の場合、従業員に対して一定額の残業代を支払っています。
請求を受けている残業代が、固定残業代について一切考慮されていない金額であれば、残業代の支払いを拒否できる可能性があります。
ただし、固定残業代制は正しく運用しなければならず、以下の点を守っていなければいけません。
上記の内容を守っていないと、固定残業代制が正しく運用されていないと判断され、残業代請求が認められてしまう恐れがあります。
【関連記事】固定残業代(みなし残業)の仕組み|適正な残業代の計算方法
労働基準法では「管理監督者」というものが規定されています。
管理監督者とは、以下の内容に該当する者のことで、会社の役職である課長や店長などの「管理職」とは異なります。
参考:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省
もし、残業代請求してきた従業員が管理監督者に該当すれば、労働時間に関する多くの制限の対象外になり、残業代そのものが発生していない状況にあると反論できます。
【関連記事】管理監督者とは|管理者の正しい定義と監督者の扱いに関するトラブル対処法
従業員から残業代請求されても、十分な証拠・根拠をもとに反論すれば支払わずに済むこともあります。
ここでは、裁判にて会社側の反論が認められ、残業代請求が却下された事例を解説します。
音楽家を養成する専門学校の従業員8名が、元勤務先の音楽院に対して残業代請求したという事例です。
音楽院では、労使間で時間外・休日労働に関する協定を締結していないことを理由に残業や休日出勤を禁止しており、業務が残っている場合には役職者に引継ぐように命じていました。
裁判所は、主に以下のような理由から、元従業員達の時間外業務について、残業代請求の対象にはならないとの判断を下しています。
参考:東京高裁 平成17年3月30日判決(Westlaw Japan 文献番号 2005WLJPCA03306005)
従業員の残業代請求に対して、残業禁止を理由に反論するのであれば、上記のように周知したり残業があるたびに注意したりなど、残業させないような体制を取っておく必要があります。
トラックの運転手が、所属していた運送会社に残業代請求したという事例です。
運送会社側は固定残業代制を導入しており、すでに請求者である運転手に対しても残業代を支払っていました。
裁判所は、主に以下のような理由から、運転手による残業代請求を棄却しています。
参考:東京高裁 平成27年12月24日判決(Westlaw Japan 文献番号 2015WLJPCA12246004)
運送会社の場合、従業員が社内にほとんどおらず、細かい残業時間を把握しにくいという特徴があります。
それでも、上記のように固定残業代制を導入して正しく運用されていれば、きちんと残業代を支払っていることが認められます。
タクシー運転手の従業員が、所属するタクシー会社に対して残業代請求したという事例です。
タクシー会社側は、請求者である従業員が管理監督者であることを主張していました。
裁判所は、主に以下のような理由からタクシー会社側の主張を認め、従業員による残業代請求を棄却しています。
参考:福岡地裁 平成19年4月26日判決(Westlaw Japan 文献番号 2007WLJPCA04266004)
従業員から残業代請求された際は、弁護士にサポートを依頼するのが効果的です。
ここでは、弁護士に請求対応を依頼するメリットについて解説します。
従業員の残業代請求に対して反論せずに応じるか、それとも反論するかどうかを決める段階から、ある程度の法律知識は必要です。
十分な法律知識がなければ、従業員に残業代請求の権利がないことに気付かなかったり、反論できる余地もないのに反論しようとしたりする恐れがあります。
また、残業代の請求額も正しいかどうかを計算する必要がありますが、未払い賃金の場合は遅延損害金なども関わりますので、計算がより複雑になります。
弁護士であれば、残業代請求に対してどのように対応するべきかアドバイスが受けられるほか、残業代計算も代わりにしてくれます。
従業員の残業代請求に反論する場合、お互いに主張がぶつかり合って解決できなければ、訴訟に移行することになります。
訴訟になれば、提出書類や証拠を準備したり、従業員側の主張に対する反論の準備なども進めなければいけません。
しかし、素人だけでは的確な反論ができず、不利な形で話が進んでしまう恐れがあります。
訴訟の場合、解決するまでに1年以上かかることもありますので、訴訟対応にリソースを使うことで事業に専念できなくなったり、従業員達の負担が大きくなったりすることもあります。
弁護士であれば、訴訟問題に発展した場合も代わりに対応してくれます。弁護士は法律の専門家ですので、安心して手続きを任せることができます。
パワハラ・セクハラ・解雇トラブルなど、会社では残業代請求以外にもさまざまなトラブルが起こり得ます。
労務問題に注力する弁護士であれば、残業代請求以外の問題についても相談することが可能です。
弁護士と顧問契約を締結することで、会社の中で日常的に発生する労務問題についてもアドバイスを受けることができ、会社としての労務管理体制を安定させることができます。
従業員から残業代請求された場合は、請求内容を吟味したうえで、応じるべきか反論するべきかを検討します。
ただし、「応じるとしても請求額は正しいのか?」「労働時間は合っているのか?」など、適切に判断するには法律知識が必要ですし、反論する場合は証拠などを準備して、どのような理由で反論するのかを固めておく必要があります。
できるだけスムーズに納得のいく形で問題解決するためには、労務問題に注力する弁護士のサポートが必要不可欠です。
弁護士であれば請求対応を一任できますし、まずは無料相談を利用してみるという手段もあります。弁護士への依頼を迷っている場合も、まずは一度相談してみることをおすすめします。
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