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企業側労務トラブルに強い弁護士の探し方や相談メリット|選び方や弁護士費用も解説

更新日:2022年11月01日
ゆら総合法律事務所
阿部由羅
このコラムを監修
企業側労務トラブルに強い弁護士の探し方や相談メリット|選び方や弁護士費用も解説

企業が労務問題に直面した場合、対応を誤ると、思わぬ損害を被ってしまいます。労務問題には多種多様なパターンがありますが、日常的に相談できる顧問弁護士がいるとスムーズに対応できます。労働者との紛争を複雑化させないためにも、弁護士に相談して適切な対応を行いましょう。

 

本記事では、企業が悩まされがちな労務問題のよくあるパターンや注意点、弁護士に労務問題の解決を依頼するメリットなどについて解説します。

 

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この記事に記載の情報は2022年11月01日時点のものです
目次

企業でよくある労務問題とトラブルの事例

企業は潜在的に、多種多様な労務トラブルの可能性を抱えています。企業が悩まされがちな労務トラブルの代表例は、以下のとおりです。

 

残業代(その他賃金)の未払い

残業代が未払いとなっている場合、従業員からまとまった金額の残業代を請求される可能性があります。意図的にサービス残業を強いるブラック企業だけでなく、会社の側でも知らないうちに、労働基準法上のルールを誤って適用しているケースも存在するので注意が必要です。

 

特に、固定残業代・裁量労働制・管理監督者などの誤解が生じやすい制度の取扱いには、十分注意しましょう。また残業代以外の賃金・手当の未払いについても、計算を間違えているケースがあり得るので慎重に対応しましょう。

 

時間外労働の対象外となる労働者の例

取締役など、労働者ではない場合は割増賃金を請求する権利は基本的にありません。また、労働者であっても管理監督者など、経営者と一体的立場にある場合も時間外労働・休日労働の割増賃金を請求することはできません。ただし、役職上は『管理監督者』という扱いをしていても、『名ばかり管理職』のように、実態として経営者と一体的立場とはいえない場合は残業代を請求する権利があります。 

 

不当解雇

解雇権濫用の法理(労働契約法16条)により、客観的合理性・社会的相当性を欠く解雇は違法無効となります。安易に解雇を行い、後に労働者から解雇の無効を主張されて争いに発展するケースが後を絶ちません。そのため、何らかの理由で労働者を解雇する際には、特に労働法の規定を踏まえた慎重な検討を必要とします。

 

労働者を解雇するハードルは高い|安易な解雇は危険

日本の労働法では、使用者が労働者を解雇するハードルは非常に高くなっています。労働契約法16条に定められる「解雇権濫用の法理」によれば、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない解雇は、解雇権の濫用として無効となります。

 

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用元:労働契約法16条

 

仮に就業規則上の解雇事由・懲戒事由に該当する場合であっても、具体的な事情に照らして解雇が重すぎる処分であると客観的に判断される場合には、使用者は労働者を解雇することはできません。

 

退職勧奨に伴う交渉

退職勧奨(たいしょくかんしょう)とは、会社が従業員を退職させるために退職を勧めることです。退職勧奨をされても、最終的に会社をやめるかどうかの判断は、労働者が判断するので、一方的に労働契約を終了させる解雇とは全く違います。

 

解雇を避けて退職勧奨を行う際には、労働者側から退職金(解決金)などの条件を提示される可能性があります。労働者の主張を一部受け入れて退職金(解決金)を支払えば、その後の労働者との紛争を防止できる点がメリットです。退職金(解決金)の金額については、相場を踏まえた交渉が求められます。

 

日本航空事件|東京高裁 平成24年11月29日判決

航空会社の契約社員(客室乗務員)であった原告が、上司から受けた退職勧奨が不法行為にあたるとして当該上司および、会社に対して慰謝料500万円を求めた事例です。違法と判断されたポイントは、主に以下の2点です。

 

  1. 原告の成績が低迷し、それにより上司より退職勧奨を受けた際、自主退職はしない旨を伝えたところ、上司より「いつまでしがみつくつもりなのかなって」「辞めていただくのが筋です」「懲戒免職とかになったほうがいいんですか」などの表現を用いて退職を求めたこと
  2. 面談が長時間におよび、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱していること

 

またこれ以外にも「この仕事には、もう無理です。記憶障害であるとか、若年認知症みたいな」などの言動が、違法な退職勧奨であると認定されました。また、本判決においては上司だけでなく、違法な退職勧奨により使用者である会社も損害賠償を命じられました。

 

労働災害(労災)

労働災害(労災)が発生した場合、従業員に対する賃金の支払いなどについて、法律を踏まえて対応する必要があります。労働災害が発生した場合、事業主には労働災害の防止義務・補償義務・報告義務があり、労働安全衛生法に基づく安全衛生管理責任を果たす行為が求められます

 

万が一法違反がある場合、労災事故発生の有無にかかわらず、労働安全衛生法等により刑事責任が問われることがあります。また、労働者側から損害賠償請求を受ける可能性もあり、その場合は訴訟を見据えた対応が求められます。

 

労災事故が発生した場合、当該事業主は、労働基準法により補償責任を負わねばなりません。しかし、労災保険に加入して いる場合は、労災保険による給付が行われ、事業主は労働基準法上の補償責任を免れます(ただし、労災によって労働者が休業する際の休業1~3日目の休業補 償は、労災保険から給付されないため、労働基準法で定める平均賃金の60%を事業主が直接労働者に支払う必要があります)。したがって、労災保険に加入し ていない場合は、労働基準法上の補償責任を負うことになります。

引用元:厚生労働省|労働災害が発生したとき

 

ハラスメント問題

職場におけるセクハラ・パワハラを防止することは、会社の重要な責務です。セクハラ・パワハラを放置すると、従業員の離職を招いたり、会社が安全配慮義務違反を問われて損害賠償を請求されたりする可能性があります。そのため、経営陣を中心として、現場からハラスメント問題に関する情報収集を怠らないことが肝心です。

 

2020年6月から施行された「パワハラ防止法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)」もあり、厚生労働省はいわゆるパワハラ指針も公表しています。パワハラ防止法により「パワハラはだめだよ」と法律が明確に述べたことになり、「パワハラの定義」も整理されたといえます。

 

経営者・労働者を問わずパワハラの知識を深めて防止に努めることが義務化されたため、これまで以上にハラスメントへの徹底した対策が求められています。

【関連記事】パワハラ防止法とは何か|概要や成立背景・違反時の罰則まで詳しく解説

 

労働組合への対応

時間外労働に関する「36協定」や、「裁量労働制」などに関して、労働組合との労使協定の締結が法律上必要になる場合があります。また、労働条件に関する団体交渉を労働組合側から申し入れられるケースもあります。労働組合との交渉が決裂すると、労働者側との深刻なトラブルに発展しかねないので、それぞれ適切な対応が求められます。

 

労働基準監督署への対応

労働者からの申告を契機として、労働基準監督署から会社に対する調査が行われるケースがあります。調査結果次第では重大な行政処分を受ける可能性があるので、法令の根拠に則ってきちんと説明することが大切です。

 

 

労務問題の解決を弁護士に相談すべき4つの理由

労務問題に適切に対処するには、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。労務問題の解決を弁護士に相談すべき理由は以下のとおりです。

 

労働者側の権利が強いため、慎重な対応が求められる

日本の労働法は、労働者を厚く保護する規制内容になっています。また、手続きコストやレピュテーション(評判)リスクが大きくなりがちなのも、会社の側です。よって、労務問題に関しては、会社側はどうしても不利な対応を強いられることが多くなってしまいます。

 

そのため法的にきちんと理論武装をして対応しなければ、紛争が長引いたうえに巨額の損害賠償を命じられるなど、会社にとって大きな損失になりかねません。

 

労働者の言い分が合理的かどうかを見極めることができる

紛争の深刻化を防ぐため、労働者側の言い分が合理的であれば、妥協して受け入れるのも有力な選択肢です。これに対して労働者側の言い分が不合理であれば、合理的な範囲の主張に収めるよう、労働者を説得しなければなりません。

 

この辺りの見極めを行うには、法令のルールを踏まえた詳細な分析・検討が不可欠です。

 

訴訟や労働審判に発展してもスムーズに対応できる

労務問題が深刻化すると、労働者側との訴訟や労働審判に発展する可能性もあります。弁護士は訴訟・労働審判の手続きに精通しているので、充実した準備を整えたうえで手続きに臨むことができます。

 

労務問題の予防策についてもアドバイスを受けられる

会社にとっては、労務紛争が発生しないに越したことはありません。普段から労働基準法その他の法令を遵守したオペレーションを徹底することで、労務紛争のリスクを最小化することができます。

 

弁護士に相談すれば、労務紛争を予防するための社内オペレーションの構築についても、アドバイスを受けることが可能です。

【関連記事】企業が団体交渉で弁護士に依頼するメリットとは|弁護士の見つけ方や費用を解説

 

労務問題の解決を弁護士に依頼した際の費用

会社が労務問題の解決を弁護士に依頼する場合、必要となる弁護士費用の金額は、事案の内容や弁護士によってかなり幅があります。弁護士費用の体系は、「タイムチャージ制」と「着手金・成功報酬制」の大きく2つに分かれます。

 

タイムチャージ制

「時間単価×弁護士の稼働時間数」で弁護士費用の金額が決まります。時間単価は弁護士の経験などに応じて、2万円~10万円程度の範囲に収まるケースが多いです。

 

着手金・成功報酬制

基本的には労働者側からの請求額に応じて弁護士費用の金額が決まります。着手金については請求額の4~8%程度、成功報酬については会社の経済的利益(免れた経済的損失)の8~16%程度となるのが一般的です。

 

交渉・訴訟対応費用

労務問題の深刻さにもよりますが、交渉で終わる場合には数十万円~100万円程度、労働審判や訴訟に発展する場合には100万円~300万円程度が必要になります。

 

労務問題が得意な弁護士の選び方|企業担当者が見るべき3つのポイント

労務問題を会社にとって有利な形で解決するには、労務問題を得意とする弁護士に依頼することが大切です。労務問題を得意とする弁護士を見極めるに当たって、企業担当者が注目すべきポイントを3つ紹介します。

 

会社側のサポートに特化している事務所を選ぶ

労働問題を日常的に取り扱う法律事務所は、多くの場合、会社側または労働者側のどちらかに特化して案件を受任しています。公式HPなどで、会社側での労務対応に特化している旨が記載されていれば、労務問題への対応が得意な弁護士である可能性が高いでしょう。

 

労働法務のポータルサイトを活用する

インターネット上には、労働法務に注力する弁護士を検索できるポータルサイトが存在します。地域ごとに労務問題に詳しい弁護士を検索できるので、必要に応じてポータルサイトを活用することも有効です。

 

選択肢のメリット・デメリットをきちんと説明してくれることが重要

労務問題を得意とする弁護士を見極めるには、実際に弁護士に相談をしてアドバイスを求めてみることも大切です。その際、会社側の取り得る選択肢を複数示したうえで、それぞれのメリット・デメリットを詳しく説明してくれるかどうかがポイントになります。

 

こうした対応がきちんとできている弁護士は、労務問題を多様な観点から理解している可能性が高く、信頼に値するといえるでしょう。

 

 

労務問題への対応を誤った場合に会社が被る6つの損害・リスク

労務問題について、会社が適切に対応しなかった場合、以下のような損失を被る可能性があります。

 

従業員に対する金銭の支払い義務を負う

残業代の未払いが生じると、会社は未払い賃金の支払いとして、予定外の出費を強いられます。また不当解雇が認定された場合、解雇期間中の賃金を全額支払わなければならなくなるので、特に注意が必要です。

 

不当解雇では従業員を復職させる義務を負う

解雇無効の場合、解雇した従業員を復職させなければなりません。会社としては予定外の再雇用に等しく、人材配置に苦労する可能性が高いでしょう。

 

優秀な従業員の離職を招く

残業代の未払いやハラスメントなど、労働条件・労働環境に関する問題を放置していると、優秀な従業員の離職を招いてしまいます。このような事態は、中長期的に見て会社の大きな損失になり得るので、回避すべきです。

 

労働組合のストライキに発展するケースも

労働組合には「団体行動権」が保障されており、労働条件の維持・改善を求めるストライキが認められています。労働組合側の言い分に理解を示さずに強硬な対応をとり続けていると、ストライキにより業務がストップし、会社として大きな損害を被る可能性があります。

 

労働基準監督署からの行政処分・行政指導

労働基準監督署の調査の結果、労働基準法違反の状態が発覚した場合、行政処分や行政指導による是正が行われます。行政処分や行政指導への対応には多大な労力を要するので、労働基準法を遵守して、労働基準監督署から目を付けられないようにしておくことが大切です。

 

会社のレピュテーション(評判)にも影響する可能性がある

違法労働・ハラスメント・労働基準監督署からの行政処分や行政指導などは、内部リークにより社外に情報が拡散する可能性が高いです。そうなると、労務管理が不適切に行われている会社としての悪評が広まり、レピュテーション・ブランドが毀損される結果になりかねません。

 

上場承認の停止または廃止も

会社が上場審査中の場合には、労務問題への対応には特に慎重を期す必要があります。上場審査ではコンプライアンスが重視されるので、深刻な労務問題が発覚すると、上場承認の進行に影響が出てしまうことも考えられるので注意しましょう。

 

上場承認の取り消し事例

 

平成 30 年 5 月 25 日開催の当社取締役会において、当社普通株式の株式会社東京証券取引所 JASDAQ 市場への上場に伴う募集株式発行及び自己株式処分並びに株式売出し等について決議いたしましたが、当社の内部管理体制に関連して確認すべき事項が発見され、本日開催の当社取締役会において、当該確認に時間を要するものと判断したことから、募集株式発行及び自己株式処分並びに株式売出しの中止と、上場申請の取下げを決議いたしましたので、お知らせ申し上げます。

引用元:募集株式発行及び自己株式処分並びに株式売出し等の中止に関する取締役会決議のお知らせ

 

企業は弁護士に頼らず労務問題に対応できるか?自社で対応する場合の注意点

労務問題がまだそれほど深刻な状況に至っていない場合には、弁護士に頼らず、自社だけで対応しようとするケースもあるでしょう。その場合、問題の深刻化を防ぐために、以下の注意点を踏まえて対応することが大切です。

 

法令に則って対応する

労務問題には、会社が法令上どのような義務を負うかを正確に把握し、その範囲で対応するというのが基本的な考え方です。そのため、法務部門を中心として、事実関係の把握・法令リサーチ・当てはめなどを適切に行いましょう。ただし、日本の労働法では労働者の権利が強いため、会社の義務範囲をある程度広めに見積もっておくのが無難です。

 

労働者側の主要な関心がどこにあるかを見極める

労務問題は交渉的な要素が強いため、杓子定規に法令に従って対応するだけでは不十分です。具体的には、労働者側の主要な関心がどこにあるかを見極め、会社側の事情と照らし合わせて落としどころを探ることも大切になります。

 

訴訟などのコストが大きいことを意識して穏便な解決を図る

労働者から訴訟や労働審判を提起された場合、その勝敗にかかわらず、手続きへの対応自体に多大なコストがかかります。そのため、できる限り交渉で解決するほうが、結果的に会社にとっての損害を少なくすることに繋がります。もちろん、労働者が不合理な主張をしている場合には、やむを得ず徹底的に争うこともあり得るでしょう。

 

しかし、トータルでの得失を重視し、引くべきところでは引くことも大切です。

 

まとめ

労働者との間で労務問題が発生した場合、会社は不利な対応を迫られることが多いです。労働者との紛争が深刻化することを防ぐため、早い段階から弁護士に相談して、対応方針についてのアドバイスを受けると良いでしょう。

 

労務問題への対応に悩んだら、弁護士の起用も有効な手段のひとつだということです。

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阿部由羅 (第二東京弁護士会)
西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て、ゆら総合法律事務所代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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