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セクシャルハラスメント(以下、セクハラ)は、職場でのトラブルと思われがちです。
しかし、セクハラの内容によっては、以下のような犯罪が成立する可能性があります。
そして被害者が捜査機関に対して被害届を提出したり、刑事告訴をしたりするケースもあります。
そこで本記事では、セクハラをした自覚がある方に向けて、以下のような内容について説明します。
本記事を参考に、セクハラの定義や問題の重大性を理解し、適切な対応を取れるようになりましょう。
セクハラとは、職場でおこなわれる労働者の意に反する性的な言動のことを指します。
ここでは、セクハラの具体例や判断基準などに関する基本情報について説明します。
セクハラの具体例には、以下のようなものが挙げられます。
また、性的な言動に対して拒否・抵抗をおこない不利益な処分を受けた場合は「対価型セクハラ」、性的な言動により就業環境が害された場合は「環境型セクハラ」と判断されます。
現状、セクハラの判断基準を規定した法律としては、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第11条第1項が挙げられます。
同法には、セクハラについて、以下のように規定しています。
第十一条
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2〜4 略
なお、セクハラに対象者の性別は関係なく、異性間でも同性間でもセクハラは成立します。
セクハラは、民法上の不法行為に該当する可能性はありますが(民法第709条)、刑法などで犯罪として規定されているわけではありません。
しかし、セクハラの内容次第では、不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)や不同意性交等罪(旧強制性交等罪)などが成立する可能性はあります。
ここでは、セクハラによって成立する可能性がある犯罪について説明します。
不同意わいせつ罪とは、同意しない意思の形成、表明などができない状態にし、またはそのような状態に乗じて、わいせつ行為を働く犯罪のことを指します。
わいせつとは「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、一般人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」を指します(最高裁判所判決昭和26年5月10日)。
不同意わいせつ罪が成立した場合は、6ヵ月以上10年以下の懲役を科されることになります。
(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
引用元:刑法 | e-Gov法令検索
不同意性交等罪とは、同意しない意思の形成、表明などができない状態にし、またはそのような状態に乗じて、性交や肛門性交、口腔性交をしたり、膣や肛門などに身体の一部や物を挿入したりする犯罪のことを指します。
不同意性交等罪が成立した場合は、5年以上の有期懲役を科されることになる可能性があります。
(不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
引用元:刑法 | e-Gov法令検索
このほか、セクハラによって以下のような犯罪が成立する可能性があるでしょう。
【セクハラによって成立する可能性がある犯罪の例】
セクハラを理由に被害者が刑事告訴をする可能性はあります。
ここでは、セクハラで刑事告訴をされたあとの大まかな流れについて説明します。
セクハラにより犯罪が成立する場合は、警察に逮捕される可能性があります。
逮捕されると、身柄を拘束され、警察から事件に関する取調べを受けることになります。
警察は、逮捕から48時間以内に事件を検察庁に送致します。
検察に送致された場合は、今度は検察から事件に関する取調べを受けることになります。
検察は、送致から24時間以内に裁判所に対して勾留請求をするかどうかの判断をします。
検察に勾留請求をされ、裁判所が許可した場合は、原則10日間(最長20日間)にわたり身柄を拘束されます。
捜査を終えた検察は、起訴するか、不起訴にするかの判断をします。
不起訴の場合は事件が終了しますが、起訴された場合は刑事裁判に進むことになります。
第1回公判期日は起訴から約1ヵ月後であることが多く、それから複数回の公判を通じて判決が言い渡されます。
セクハラを理由に逮捕されると、長期間にわたり身柄を拘束され日常生活にも影響が生じます。
ここでは、セクハラを理由に刑事告訴された場合に加害者がとるべき対処法について説明します。
セクハラで刑事告訴された場合は、できる限り早く弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、今後の流れを理解できたり、取調べのポイントを知れたりします。
また、依頼をすれば身柄解放に向けた働きかけや被害者との示談交渉などにも対応してくれるでしょう。
セクハラを理由に刑事告訴された場合は、できる限り早く被害者と示談交渉をおこなうことも重要です。
被害者に対して十分に謝罪し、和解することができれば、刑事告訴を取り下げてもらえる可能性があります。
なお、セクハラの場合は加害者が被害者の連絡先などを知っているケースも多いですが、当事者同士では冷静な話し合いができない可能性があるため、弁護士を通じて示談交渉をおこなうことをおすすめします。
現状、刑法などにはセクハラを直接処罰する規定は設けられていません。
しかし、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪などの犯罪が成立する可能性はあります。
そのため、内容次第では被害者に刑事告訴されたり、捜査機関に逮捕されたりするでしょう。
もっとも、これらの犯罪が成立するかどうかに関係なく、セクハラは許されない行為となっています。
セクハラをしている自覚がある場合は、今すぐやめるようにし、被害者に対して謝罪をするのが望ましいでしょう。
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