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美容師に労働基準法違反はないの?オーナーを訴えるには?基本的な知識と手順を解説

更新日
このコラムを監修
下地 謙史
弁護士
美容師に労働基準法違反はないの?オーナーを訴えるには?基本的な知識と手順を解説
  • 「美容師は労働基準法違反で、オーナーを訴えることはできないのか。」
  • 「美容師が長時間労働や残業代未払いで困ったら、どうしたらいいのだろう。」

お店が忙しかったり、閉店後の研修・練習をさせられたりして、長時間労働に苦しむ美容師は少なくありません。

研修や練習の時間も残業代が発生する可能性が高く、結果的に残業代が未払いとなっているケースも多いです。

本記事では、美容室で労働基準法違反が起こりやすい背景や美容師にも適用される労働基準法上の基本的なルール、美容師が労働基準法違反でオーナーなどを訴える手順を解説します。

労働基準法違反と思われるケースで、オーナーなどの言いなりになっているだけでは何も改善しません。

本記事を読めば自分のお店が労働基準法にどのように違反しているかや、どうやってオーナーなどを訴えればよいかが把握できます

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美容師には労働基準法はないの?残業代が未払いでも訴えることはできないの?

長時間労働が続き、疲弊している美容師の方は少なくありません。

きちんと残業代が支払われていないケースも散見します。

美容師には、労働基準法は適用されないのでしょうか。

美容室で労働基準法違反が問題になりやすい背景

美容室の現場では、労働基準法違反が問題になることが多いのは否めません

以下、その背景を見ていきましょう。

営業時間が長く労働時間も長くなりやすい

美容室は営業時間が長い傾向があり、それに伴って美容師の方の労働時間も一般的な会社員に比べ長くなりがちです。

店舗の大きさや所属する美容師の数などによっては、シフトが変則的で勤務時間が不規則になることも少なくありません

休憩時間が適切に設けられていないことが多い

美容室では休憩時間が適切に設けられていないケースも少なくありません

たとえば接客対応の間で、適当に休憩をとるといった程度の取り決めだと、忙しくて休憩を取れないこともあります。

そのような取り決めでは休憩中も来店客があったときはすぐに対応しなくてはならず、しっかり休むこともできません。

法律的に見ても休憩とみなされない可能性があります。

営業時間終了後の練習・研修などで勤務が深夜まで続くことが多い

美容室では技術の向上を目的として、営業時間終了後に研修や練習が深夜まで続くことが多いです。

これら研修・練習に参加するかが完全な自由意思で決められ、業務に関係がない内容であれば残業代が支払われなくても違法ではありません。

一方でお店から参加が強制されていたり、業務上必要な内容だったりすれば、残業代が支払われる必要があるのです。

美容室によってはこういった認識が不足していて、深夜まで練習・研修をしているのに残業代が支払われていない可能性があります。

固定残業代制を採用し適切に残業代が支払われないケースもある

美容室では固定残業代制を採用していることを理由に、残業代が支払われないケースもあります。

固定残業代制とは実際に発生した残業時間にかかわらず、あらかじめ一定の残業代を含めて給与を支払う制度です。

美容室では、こういった固定残業代制のルールが守られていないことがあります

固定残業代制は、従業員に全く残業代を支払わなくてよい制度ではありません。

あらかじめ給与に含まれている分を超えて残業したら、固定残業代制でも残業代を払わなくてはならないのです。

たとえば月間10時間分の残業代がはじめから含まれる契約で、15時間の残業をしたら15-10=5時間分の残業代は支払われなくてはなりません。

就業規則や雇用契約書などで、固定残業代制の規定がきちんと掲載されていないケースもあります

もし固定残業代制の基本的なルールについて就業規則や雇用契約書に記載がなければ、その時点で違法です。

美容師も当然ながら労働基準法で守られている

当然ですが美容師も労働基準法で守られています

美容室は労働基準法に従い、従業員の労働環境を整えなくてはなりません。

以下、特にチェックすべき労働基準法の基本的なルールをみていきましょう。

法定労働時間や休憩・休日・残業時間についてのルールが守られなくてはならない

労働基準法では、労働時間・休憩時間・休日・残業について以下のようにルールが決められています

このルールを破って従業員を働かせてはいけません

項目 概要
労働時間 (法定労働時間) 労働基準法における労働時間の上限は、原則として1日8時間・1週間40時間です。
この上限を法定労働時間といいます。
残業時間の上限 (時間外労働) 法定労働時間を超えて、働くことを時間外労働といいます。
美容室が36協定と呼ばれる特別な協定を結んでいる場合は、従業員に残業をさせることが可能です。  
ただし36協定を結んでいたとしても、無制限に残業をさせられるわけではありません。
36協定を結んだ場合、時間外労働の上限は月45時間・年間360時間までです。  
週1~2回休みで月25日、年間300日働くとすると、月間の残業時間は平均1.8時間、年間では1.2時間で労働基準法の上限に達します。  
※ 36協定を結んでいない美容室もあります。
不明であれば、店長などに労働基準監督署の受付印がある36協定届(控え)を提示するよう求めましょう。(店舗側には提示の義務があります。)
休憩時間 1日の労働時間が6時間を超えた場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩をとらせる必要があります。
法定休日 使用者は従業員に毎週1回以上、もしくは4週間に4日以上の休日(法定休日)を与えなくてはなりません。

労働基準法に従い残業代も支払われる必要がある

美容室では、労働基準法に従って残業代も支払わなくてはなりません

残業をした場合、通常の給与に対して以下の割増率を加えた残業代が算出されます。

労働時間の種類 割増率
時間外労働(法内残業/所定労働時間※は超えているが法定労働時間は超えない場合 1倍 (割増なし)
時間外労働(法外残業) ※法定労働時間を超える残業 1.25倍
1ヵ月に60時間超の時間外労働 1.5倍
法定休日労働 1.35倍
深夜労働(22時~翌5時) 1.25倍
時間外労働(限度時間内) +深夜残業 1.5倍
法定休日労働 + 深夜労働 1.6倍

※所定労働時間とは就業規則などで決められた労働時間のこと。

また、始業~終業までの時間から休憩時間を差し引けば所定労働時間になる。

残業代は以下のように計算できます。

1時間あたりの基礎賃金×時間外労働の時間×割増率(1.25)

月給制では、1時間当たりの基礎賃金を以下のように算出します。

1時間あたりの基礎賃金=【月給】÷【1ヵ月あたりの平均所定労働時間】

仮に月給が30万円で、残業を除いて1ヵ月あたりの平均的な所定労働時間が150時間なら、1時間あたりの基礎賃金は以下のように算出します。

30万円÷150時間=2,000円

この2,000円が時間単価(時給)です。

そのうえで、1ヵ月あたり50時間残業をしているのであれば、残業代は以下のように算出されます。

2,000円×50時間×割増率(1.25)=12.5万円
※深夜や休日の残業は発生していないものと仮定

なお固定残業代制でも、前述のとおり超過分の残業代は支払われなくてはなりません

たとえば残業代の設定が20時間分で、その月に30時間残業したのであれば30-20=10時間分の残業代が支払われる必要があるのです。

自分の契約が固定残業代制であれば、雇用契約書などで残業の条件を確認しましょう。

美容師も労働基準法違反でオーナーなどを訴えることはできる

自分のお店が労働基準法に違反しているようなら、美容師もオーナーなどを訴えることができます

泣き寝入りするべきではありません。

相手を訴え、労働環境の改善や未払いとなっている残業代の支払いを請求しましょう。

また労働基準法違反をしたオーナーなどは、刑事罰に問われる可能性も否定できません

たとえば適切に残業代を支払っていなかった場合、使用者は労働基準法違反で6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

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美容師が労働基準法違反でオーナーなどを訴える手順

それでは、美容師はどのようにして労働基準法違反でオーナーなどを訴えればよいでしょうか

以下具体的な手順を見ていきましょう。

まずは労働基準法違反といえる証拠を集める

最初の手順は証拠集めです。

証拠がなければ、相手に言い逃れをされてしまうかもしれません。

具体的な証拠の例として、以下があげられます。

  • 雇用契約書・就業規則
  • タイムカード
  • 出退勤時刻を記録したメモ
  • 指名履歴
  • 終業後の研修・練習に関する同僚の証言
  • 研修・練習への参加を指示するオーナーのLINEメッセージなど

オーナーなどと話し合い改善や未払いとなっている残業代の支払いを求める

証拠が揃ったらオーナーなどと話し合い、労働環境の改善や未払いとなっている残業代の支払いを求めましょう

話し合いで解決ができるのであれば、このあとの手順が不要となりお互い手間や時間、コストを節約できます

そのためあなたの主張が正しく、それを裏付ける証拠もそろっているなら、話し合いで解決できる可能性も高いです。

労働審判を提起する

話し合いで合意できないときは、労働審判の提起を検討しましょう

労働審判とは、訴訟と同様に裁判所での手続きですが、訴訟より短い期間で決着するのが特徴です。

労働審判では、1人の裁判官と2人の労働審判官が間に入り、双方の主張を聞きます

そのうえで話し合いでの解決を促し、難しい場合は審判で決着するのです。

訴訟では判決がでるまで早くて半年、長ければ数年程度の時間がかかることがあります

一方で労働審判なら、原則3回以内の期日で3~4ヵ月程度での解決が目指されるのです。

訴訟を提起する

労働審判でも解決しなかった場合は、最終的に訴訟での解決を目指すことになります。

相手方が争う姿勢であれば、訴訟の期間が長期化してしまうのは避けられません。

ただし、あなたの主張を認める判決が出たら、相手は従うしかないのです。

なお訴訟の途中で、和解をすすめられるケースも多くなっています

和解ができれば、より早く解決できるわけです。

美容師が労働基準法違反の問題について弁護士に対応を相談・依頼するメリット

労働基準法違反の問題を解決したい場合、労働問題に強い弁護士に対応を相談・依頼することが強く推奨されます。

以下、そのメリットを見ていきましょう

どのように解決すべきかアドバイスしてもらえる

労働基準法違反の状況や問題点は、個別のケースによってそれぞれです。

ケースにあわせて適切な解決方法も異なります。

また労働に関する法律・ルールは頻繁に更新されており、専門家でなければそれらを全て把握し解決策を検討するのは困難です。

その点、労働問題に強い弁護士に相談すれば、ケースにあった最適な解決方法を提案してくれます

方法を誤れば望むような解決ができなくなってしまう可能性があるので、気になったらまず弁護士に相談だけでもしてみるとよいでしょう。

証拠の集め方や有効性についてアドバイスしてもらえる

タイムカードなど有効な証拠が集まらなかったり、手元にある証拠が不安だったりすることもあるでしょう。

弁護士に相談・依頼すれば有効な証拠の集め方や、手元にある証拠の有効性についてアドバイスしてもらえます。

オーナーなどと法的に争う際は、何より証拠が重要です。

その点、弁護士にサポートをしてもらえれば心強いのはいうまでもありません。

代理でオーナーなどと交渉してもらえる/交渉を有利にすすめやすくなる

オーナーが高圧的などで、自分で話すのが難しいという方も少なくないでしょう。

弁護士に相談・依頼すれば、代理でオーナーなどと交渉をしてもらうことも可能です。

また専門家である弁護士が交渉した方が、自分にとって有利な条件で解決しやすくなるのはいうまでもありません

自分だけで交渉して、相手から不利な条件で合意させられたり、うまく言いくるめられたりしてしまうのも避けられます。

時間的・精神的な負担を大幅に軽減できる

証拠を集めたりオーナーと交渉したりなど、労働問題の解決は時間がかかるだけでなく精神的な負担も小さくありません。

その点、弁護士に相談・依頼すれば交渉をはじめ負担のかかる手続きを代行してもらえます

証拠集めも適宜サポートしてもらえるので、自分ひとりでするよりもはるかに効率よくスムーズにすすめられるでしょう。

結果的に、時間的・精神的な負担を大幅に軽減できる点は、弁護士に相談・依頼する大きなメリットと言えます。

労働審判や訴訟になってもサポートしてもらえる

話し合いで解決しない場合は、労働審判や訴訟といった専門的な手続きをしなくてはなりません。

弁護士に相談・依頼すれば、書類の作成や裁判所のやり取りなどを任せられます。

手続きの進め方次第で、不利な状況に追い込まれてしまう可能性がありますが、弁護士がサポートしてくれるならその点も安心です。

特に相手側が弁護士をたてた場合は、こちらが弁護士なしで争おうとすると、有利な条件での解決が難しくなってしまいます。

さいごに|労働問題の悩みはなるべく早く弁護士に相談を!

美容師も労働基準法で守られており、お店で法律の上限を超える長時間労働や残業代未払いが発生しているのであれば違法です。

タイムカードなどの証拠を集めて、オーナーなどを訴えることができます。

ひとりでオーナーなどと交渉するのが不安であれば、労働問題に強い弁護士に相談・依頼しましょう

弁護士は証拠の集め方から解決の方法まで、法的な観点で適切なアドバイスをしてくれます。

また弁護士に依頼すれば、オーナーなどと代わりに交渉してもらうことも可能です。

無料で相談に応じる弁護士も多いので、労働問題で悩んだらまず弁護士に相談を申し込んでアドバイスを聞くとよいでしょう。

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この記事の監修

下地法律事務所

下地 謙史
弁護士
(第一東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部より、慶應義塾大学法科大学院へ飛び級入学。司法試験に合格後、都内の法律事務所勤務を経て下地法律事務所を開業。(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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