裁量労働制における労働時間の基礎知識!残業の扱いや働く際のポイントなども解説
- 「裁量労働制ってどんな働き方なの?」
- 「残業代は出るの?労働時間はどうやって決まるの?」
このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定められた「みなし労働時間」に基づいて労働時間を計算する制度です。
働き方の自由度が高い一方で、残業の扱いや労働時間の考え方が通常の勤務形態とは異なるため、正しく理解していないと「思っていた働き方と違った」と感じてしまうこともあります。
そこで本記事では、裁量労働制における労働時間の基本的な考え方をはじめ、残業の扱い、制度の仕組み、働く際に知っておきたいポイントなどをわかりやすく解説します。
裁量労働制について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
裁量労働制における労働時間の基礎知識3つ
まずは、裁量労働制における労働時間を理解するために必要な3つの基本知識を押さえましょう。
- 裁量労働制が導入されると労働者はみなし労働時間として働くことになる
- 実際の労働時間は労働者本人に裁量が与えられる
- 裁量労働制は2種類に区分される
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
1.みなし労働時間として働くことになる
裁量労働制とは、みなし労働時間制の一種です。
みなし労働時間制とは、実際に労働者が働いた時間にかかわらず、事前に決められた労働時間を働いたとみなす制度のことです。
2.実際の労働時間は労働者に任せられる
裁量労働制における裁量とは、与えられた権限の範囲で本人の判断に任せることです。
裁量労働制では、労働時間を労働者本人に任せることができます。
これは、労働者本人に労働時間について裁量を与えることで、多様な働きかたを認めて業務効率性を高めるためです。
たとえば、裁量労働制におけるみなし労働時間が8時間と定められている事業所では、労働者は2時間でも7時間でも自由に実働時間を決定できます。
ただし、実働時間が何時間であったとしても、労働時間は8時間と扱われます。
また、出退勤のタイミング、始業時刻・終業時刻も自由に決定できますし、コアタイムもありません。
3.裁量労働制は2種類に分かれる
裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があります。
それぞれ対象となる業務や導入方法が異なるため、違いを理解しておくことが大切です。
まず、専門業務型裁量労働制とは、業務の進め方や時間配分を会社が細かく指示することが難しい専門的な仕事に適用される制度です。
会社と労働者の代表との間で労使協定を結び、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなします。
対象となる業務は法律で定められており、主に次のような職種が含まれます。
- 研究開発(新商品・新技術の研究など)
- システムエンジニアなど情報処理システムの分析・設計
- 新聞・出版・放送などの取材や編集
- デザイナー(衣服、工業製品、広告など)
- プロデューサー・ディレクター
- コピーライター
- システムコンサルタント
- インテリアコーディネーター
- ゲームソフトの開発
- 証券アナリスト
- 金融商品の開発
- 大学の教授・研究者
- M&Aアドバイザー
- 公認会計士
- 弁護士
- 建築士
- 不動産鑑定士
- 弁理士
- 税理士
- 中小企業診断士
一方、企画業務型裁量労働制は、企業の経営に関わる企画や立案などを行う業務に適用される制度です。
こちらは労使協定ではなく、社内の労使委員会の決議によって導入され、決議内容を労働基準監督署に届け出る必要があります。
対象となるのは、例えば次のような部門の業務です。
- 経営企画
- 人事・労務
- 財務・経理
- 広報
- 営業企画
- 生産企画
そもそも労働基準法では、原則として「1日8時間・週40時間」という法定労働時間が定められています。
しかし、研究や企画などの業務は、働く時間よりも成果やアイデアが重視されることが多く、時間で管理することが必ずしも適しているとは限りません。
そこで、専門性や創造性が求められる仕事については、労働者本人に裁量を与え、仕事の進め方や時間配分を自分で決められる働き方として裁量労働制が設けられています。
裁量労働制における残業時間の取り扱い|3パターン
裁量労働制が導入されている事業所ではみなし労働時間によって就労時間が管理されるのが原則ですが、例外的に残業時間が発生するケースがあります。
なぜなら、裁量労働制はあくまでもみなし労働時間を使って労働時間を計算するという仕組みであり、賃金や給与を固定したり、割増賃金の適用を除外したりするものではないからです。
ここでは、裁量労働制における残業時間の取り扱いを3パターンに分けて解説します。
- みなし労働時間が法定労働時間を超えている場合
- 22時から翌朝5時までの間に働いた場合
- 法定休日に働いた場合
それぞれのパターンについて、詳しく見ていきましょう。
1.みなし労働時間が法定労働時間を超えている場合
労働基準法では、「1日8時間以内、1週間40時間以内」という法定労働時間が定められています。
(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
たとえば、みなし労働時間が9時間と定められている事業所では、1時間分が法定労働時間を超過しているため、この1時間については残業代を支払わなければいけません。
残業代は、原則として25%の割増賃金を加算する方法で算出します。
また、1ヵ月で60時間超の残業時間が発生したときには、超過分については50%の割増賃金率に引き上げられます。
なお、裁量労働制が導入されている事業所でも、法定労働時間を超えて労働者を働かせるには、時間外労働・休日労働に関する協定(サブロク協定/36協定)の締結が必要です。
36協定が存在しない事業所では、裁量労働制を導入していたとしても、法定労働時間を超過する労働時間が発生した時点で違法と扱われます。
2.22時から翌朝5時までに働いた場合
午後10時から午前5時までの深夜労働については、25%の割増賃金が加算されます。
たとえば、裁量労働制が導入されている事業所において、午後6時から午前0時まで労働者が働いた場合には、深夜労働の対象になる2時間分について深夜割増賃金が生じます。
3.法定休日に働いた場合
労働基準法では、「少なくとも1週間に1日、または、4週間で4日」の法定休日を与えなければいけないとされています。
(休日)
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
引用元:労働基準法|e-Gov法令検索
法定休日に労働者を働かせた場合、休日労働すべての時間につき、35%の割増賃金が加算されます。
裁量労働制で働く際に知っておくべき労働時間のポイント3つ
さいごに、裁量労働制が導入されている事業所で仕事をするときに把握しておくべき3つのポイントを紹介します。
- 裁量労働制の諸条件は労働条件通知書などで確認できる
- 裁量労働制が導入されていても深夜労働・休日労働などが禁止される場合がある
- 裁量労働制に対して疑問があるなら弁護士に相談する
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1.条件は労働条件通知書などに記載されている
2024年(令和6年)4月1日の労働関係法令の改正により、裁量労働制を導入する際には、労働者本人の同意を得ることが必要になりました。
そのため、裁量労働制の具体的な内容や適用条件、同意の撤回手続きなどについては、労働条件通知書や雇用条件通知書などに明記されるのが一般的です。
裁量労働制を導入している企業に入社する場合や、勤務先で新たに裁量労働制が導入される場合には、会社から交付される通知書や契約書の内容を必ず確認することが大切です。
内容をしっかり確認しておくことで、自分の労働条件や制度の仕組みを正しく理解できるでしょう。
2.深夜労働や休日労働が認められない場合もある
裁量労働制では、働き方の自由度が高いイメージがありますが、全ての時間帯で自由に働けるわけではありません。
会社の判断によって、労働時間に一定の制限が設けられることもあります。
たとえば、深夜労働(22時~翌5時)や休日労働を原則として禁止し、それ以外の時間帯の中で裁量労働制を運用するといったケースです。
このように、会社が一定のルールを設けたうえで制度を導入することも認められています。
会社側がこうした制限を設けられるのは、労働者の安全や健康を守るための安全配慮義務を負っているためです。
深夜労働が続くと、生活リズムの乱れや過度な疲労につながり、心身に大きな負担がかかる可能性があります。
そのため、従業員の健康リスクを抑える目的で、労働時間に制限を設けることが合理的と考えられています。
また、深夜労働や休日労働を無制限に認めると、割増賃金の支払いによって人件費が増加する可能性があります。
こうした理由から、企業側が一定の範囲で労働時間を制限するケースもあることを理解しておくことが大切です。
3.裁量労働制に疑問・不満があるなら弁護士に相談する
裁量労働制について疑問があったり、事業所の裁量労働制に不満があったりするなら、労使紛争への対応が得意な弁護士に相談するのも選択肢のひとつです。
労働問題に強い弁護士の力を借りることで、以下のメリットを得ることができるでしょう。
- 就業規則や労働条件通知書の内容を確認して、事業所に適用されている裁量労働制の内容を解説してくれる
- タイムカードや給与明細などをチェックして、裁量労働制にしたがって適切に賃金が支払われているかを確認してくれる
- 裁量労働制のなかで適切に残業代などが支払われていないときには、会社に対して未払い賃金を請求してくれる
- 会社との示談交渉や労働審判、民事訴訟などの法的措置を代理してくれる
- 裁量労働制への同意を撤回したいときの対応を任せることができる
- 裁量労働制をめぐるトラブル以外の労働問題が発生しているかを確認して、適切な法的措置をとってくれる など
労働者側の労使紛争に力を入れている法律事務所のなかには、初回の相談料を無料に設定しているところも多いです。
裁量労働制など、今の仕事について不安や疑問があるなら、弁護士のアドバイスを求めるとよいでしょう。
さいごに|裁量労働制に不満がある場合は弁護士に相談してみよう!
裁量労働制が導入されている職場で働くと、労働時間の管理が難しくなります。
企業側が適切に労務管理をおこない、かつ、労働者本人も働き方をしっかりと把握しておかなければ、残業代が未払いになるなどのトラブルが生じかねません。
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この記事の監修
下地法律事務所
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