法テラスでは労働問題を弁護士に相談できる?利用の流れや費用の目安などについて解説
- 「職場でパワハラを受けているが、弁護士に相談するだけの経済的余裕がない」
- 「不当解雇に不満を感じているが、仕事をクビになったのでお金がない」
経済的な理由から労働問題を弁護士に相談・依頼できないという場合には、法テラスの利用がおすすめです。
法テラスでは、一定基準を満たす人を対象に、無料の法律相談や弁護士費用立替サービスを提供しているので、自分だけでは弁護士に相談・依頼できない人でも、労働問題解決にあたって弁護士のサポートを受けることができます。
この記事では、労働問題を弁護士に相談・依頼するための条件、法テラスに相談できる労働問題の具体例、労働問題を法テラスに相談・依頼するときの流れ、などについてわかりやすく解説します。
労働問題は法テラスの弁護士に相談・依頼できる!
法テラスでは、労働問題を弁護士に相談・依頼できます。
法テラスとは、経済的な理由から弁護士などのリーガルサービスにアクセスできない人のために国が設立した総合案内所です。
労働問題を抱えている人でも、条件を満たすことで以下のサービスを受けられます。
- 無料の法律相談:1回30分、同一案件につき3回まで
- 費用の立て替え:弁護士費用、司法書士費用を法テラスが立て替えてくれる
ただし、法テラスの各サービスを利用するには、法テラスが用意した審査基準をクリアする必要があります。
労働問題を法テラスの弁護士に相談・依頼する条件
労働問題を抱えている人が法テラスに相談・依頼するための条件として以下の3つが挙げられます。
- 収入や資産が一定基準以下であること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
それぞれの条件について、詳しく見ていきましょう。
1.収入や資産が一定基準以下であること
第1に、法テラスを利用するには、収入・資産が以下の基準を満たさなければいけません。
| 家族の人数 | 収入基準 | 資産基準 |
|---|---|---|
| 1人 | 200,200円 | 180万円以下 |
| 2人 | 276,100円 | 250万円以下 |
| 3人 | 299,200円 | 270万円以下 |
| 4人 | 328,900円 | 300万円以下 |
| 家族の人数 | 収入基準 | 資産基準 |
|---|---|---|
| 1人 | 182,000円 | 180万円以下 |
| 2人 | 251,000円 | 250万円以下 |
| 3人 | 272,000円 | 270万円以下 |
| 4人 | 299,000円 | 300万円以下 |
※同居家族の人数が1名増えるごとに、収入基準には以下の金額が加算される
- 生活保護の基準に定める一級地に住んでいる場合:33,000円
- 生活保護の基準に定める一級地以外に住んでいる場合:30,000円
※家賃・住宅ローンを支払っている場合には、以下の限度額まで収入から控除できる
| 家族の人数 | 家賃・住宅ローンの控除限度額 | |
|---|---|---|
| 東京都特別区以外に住んでいる場合 | 東京都特別区に住んでいる場合 | |
| 1人 | 41,000円 | 53,000円 |
| 2人 | 53,000円 | 68,000円 |
| 3人 | 66,000円 | 85,000円 |
| 4人 | 71,000円 | 92,000円 |
無料の法律相談を受けるときには書類上で簡単な審査がおこなわれるだけですが、弁護士費用などの立て替え制度を利用する際には疎明資料などの提出を求められて厳格な審査が実施されます。
2.勝訴の見込みがないとはいえないこと
第2に、法テラスのサービスを利用するには、相談する案件が勝訴の見込みがないとはいえない状態である必要があります。
言い換えれば、明らかに勝訴の見込みがないケースでは、法テラスの民事法律扶助制度は利用できません。
たとえば、明らかに労働者側に重大な過失・故意があり、懲戒免職が妥当だと考えられる場合には、法テラスを利用できない可能性があるでしょう。
とはいえ、「勝訴の見込みがないとはいえない」かどうかの判断は難しいので、一度法テラスへ電話で問い合わせてみるのがおすすめです。
3.民事法律扶助の趣旨に適すること
第3に、法テラスのサービスを利用するには、法テラスの利用が民事法律扶助制度の趣旨に適するといえる必要があります。
たとえば、報復目的、自己宣伝目的、権利濫用目的などでの訴訟について、法テラスから援助を受けることはできません。
つまり「解雇されたから嫌がらせに会社を訴えたい」「気に食わない上司がいるので困らせてやる」といった理由では、法テラスの利用を断られる可能性が高いでしょう。
法テラスの弁護士に相談できる労働問題の主な内容
法テラスでは、以下のような労働問題について相談できます。
- 給与などの未払い
- 各種ハラスメント
- 不当解雇や退職強要
- 長時間労働
- 有給に関するトラブル
- その他の労働問題
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
1.給料などの未払いトラブル
法テラスに相談できる労働問題の代表例は、給与などの支払いトラブルです。
労使間で生じることが多い給与関係のトラブルとして、以下のものが挙げられます。
- 休業手当、深夜手当、時間外労働、残業代などが正確に算出されていない
- 就業規則や労働契約のルールどおりにボーナスや退職金が支払われない
- 労働協約などで特別の定めがないのに、直接労働者に対して賃金全額が通貨で支払われない
- 毎月1回以上、決まった期日に賃金が支払われない
- 同意をしていないのに給与から天引きされている など
給与や退職金の未払いトラブルでは、消滅時効が完成するまでに法的措置をとる必要があります。
現段階で未払い賃金などが存在する場合には、速やかに法テラスまで相談しましょう。
2.各種ハラスメント
法テラスでは、職場での各種ハラスメント被害について相談・依頼できます。
職場で発生するハラスメント事例として、以下のものが挙げられます。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシュアルハラスメント(セクハラ)
- マタニティハラスメント(マタハラ)
- モラルハラスメント(モラハラ)
- ケアハラスメント(ケアハラ)
- カスターマーハラスメント(カスハラ)
- パタニティハラスメント(パタハラ)
- SOGIハラスメント(SOGIハラ) など
これらのハラスメント被害を受けた場合、ハラスメント加害者や会社側に対して慰謝料請求・損害賠償請求をおこない、民事責任を追求できます。
ただし、その際には、相手方との示談交渉や民事訴訟への対応が必要です。
そして、これらの手続きを円滑に進めるには、ハラスメントを立証する客観的証拠を用意するなどの事前準備が欠かせません。
また、被害者本人は「ハラスメントをされた」と感じていても、法的にハラスメントに該当するかの判定が難しいケースも少なくないのが実情です。
その点、法テラスでは、ハラスメントに該当するのかどうか、ハラスメントを立証するためにどのような証拠が必要なのか、いくらの慰謝料を請求できるのかなど、基本的な事項から相談できます。
3.不当解雇・退職強要
不当解雇・退職強要トラブルは、法テラスに相談できる代表的なトピックです。
解雇とは、会社が従業員の同意なしに一方的に労働契約を終了させることです。
そして、解雇は労働者の地位を一方的に奪う強力な措置であるため、以下のように、解雇の種類によって厳格な要件が定められています。
| 解雇の種類 | 概要 | 有効・合法とされる主な要件 |
|---|---|---|
| 整理解雇 | 経営悪化などを理由に、会社都合で人員削減をおこなう解雇(いわゆるリストラ) | ・人員削減の必要性があること ・解雇回避努力(配置転換・希望退職募集など)を尽くしたこと ・解雇対象者の人選に合理性があること ・労働者への説明・協議など手続きが適切であること |
| 懲戒解雇 | 重大な職場規律違反・企業秩序違反に対する制裁としての解雇 | ・就業規則に合理的な懲戒解雇事由の定めがあること ・その事由に該当する重大な違反行為があること ・解雇権の濫用に当たらないこと ・弁明の機会付与など、手続きが適正であること |
| 諭旨解雇 | 懲戒解雇相当の行為があったが、会社が温情的に退職勧奨の形をとる解雇 | ・就業規則に諭旨解雇の規定があること ・規定に該当する違反行為があること ・退職届の提出について本人の真意による同意があること |
| 普通解雇 | 整理解雇・懲戒解雇・諭旨解雇以外の一般的な解雇 | ・客観的に合理的で社会通念上相当な解雇理由があること ・解雇制限期間・事項に該当しないこと ・解雇予告または解雇予告手当を支払っていること |
解雇手続きが法律上のルールを遵守していなかったり、解雇要件を満たしていなかったりする場合には、不当解雇を理由に解雇処分の無効を訴えることができます。
解雇処分が無効と認められた場合には、従業員としての地位の確認を求めて今まで通りに職場に復帰する、自主退職する代わりに解決金を受け取る、不当解雇がおこなわれてから紛争解決時点までの未払い賃金の支払いを求める、などの対応を期待できるでしょう。
また、形式上は自主退職であったとしても、仕事を与えなかったり職場で孤立させたりして退職せざるを得ない状況が作り出されていた場合には、慰謝料請求などの法的措置も可能です。
4.長時間労働
長時間労働に関するトラブルも、法テラスで相談できる労働問題のひとつです。
労働基準法や就業規則では、以下のように従業員の就労時間について厳格なルールが定められています。
- 時間外労働の上限は、1ヵ月45時間、1年間360時間が原則。
- 例外的に、臨時的な特別な事情があれば労使間の合意があることを前提に、時間外労働の原則上限時間を超過できる。この場合でも、1年間720時間以内の時間外労働、時間外労働と休日労働を合わせて、1ヵ月100時間未満、2〜6ヵ月平均80時間以内の制限がかかる。
- 1ヵ月45時間の時間外労働の原則上限時間を超過できるのは、1年間で6ヵ月まで など
しかし、業務がひっ迫したり上司からの圧力がかかったりすると、就労時間規制を超過した労働を強いられる場合があります。
その結果、長時間労働によってうつ病などの病気に罹患することもあるでしょう。
このような場合には、割増賃金や慰謝料、未払い賃金を請求したり、法令を遵守した就労環境の整備を求めたりする方法が考えられます。
しかし、そのためには給与明細や勤怠管理システムのデータなどの情報を精査する必要があるので、労働問題への対応が得意な弁護士のサポートを受けるとスムーズでしょう。
5.有給トラブル
法テラスでは、有給休暇に関するトラブルについても相談が可能です。
法律で定められた要件を満たすと、労働者には有給休暇が付与され、自由なタイミングで取得できます。
しかし、実際には、有給休暇を希望通りに取得できなかったり、時季変更権が濫用されたりするケースは少なくありません。
法テラスでは、このような有給休暇関係のトラブルについても会社側への交渉方法や労働基準監督署に通報する際のポイントについてアドバイスをもらえたり、場合によっては、会社側と直接交渉を依頼することができます。
6.そのほか法テラスで受け付けている労働問題の例
ここまで紹介したもの以外でも、法テラスでは以下のような労働問題に対応してくれます。
- 労災や過労死などに関するトラブル
- 退職の引き止めに関するトラブル
- 転勤や配置替え、人事異動に関するトラブル
- 懲戒解雇以外の懲戒処分に関するトラブル
- 採用や内定取り消しに関するトラブル
- 労働条件の不利益変更に関するトラブル
- 団体交渉に関するトラブル
- 雇い止めに関するトラブル
- 待遇格差に関するトラブル
- 顧客の引き抜き、情報漏えいに関するトラブル など
【注意】労働問題でも法テラスが対応できない領域がある
法テラスに相談できるのは、民事・家事・行政に関する法律トラブルだけです。
たとえば、業務上横領やパワハラに及んだため、会社や被害者に刑事告訴された場合には、警察や検察官からの取り調べや刑事裁判などに対応する必要があります。
しかし、法テラスでは刑事弁護について相談・依頼できません。
ですから、自分で私選弁護人に相談・依頼をするか、当番弁護士制度・国選弁護人制度を利用しましょう。
労働問題を法テラスの弁護士に相談・依頼する際の流れ
法テラスの弁護士に労働問題を相談・依頼するときの流れについて解説します。
- 最寄りの法テラスの窓口の連絡をして予約をする
- 予約当日に担当弁護士と相談する
- 弁護士に法テラスの制度利用について依頼する
- 法テラスで審査が実施される
- 弁護士が問題解決に向けて弁護活動を展開してくれる
- 法テラスに費用を支払う
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
1.最寄りの法テラス窓口で予約する
まずは、最寄りの法テラスに連絡をして、法律相談の日時を予約します。
法テラスの予約方法は、電話もしくはWeb予約です。
電話での予約を希望する場合には、ホームページから最寄りの法テラス事務局の連絡先を確認してください。
Web予約をする場合には、以下のリンク先で注意事項を確認したうえで、申込フォームに必要事項を記入しましょう。
2.予約当日に担当の弁護士と相談する
予約日当日になったら、法テラス事務局を訪問して、弁護士もしくは司法書士の法律相談を受けます。
法律相談を受ける前に援助申込書を記入する必要があるので、法律相談の開始時時間の10分前には、法テラス事務局に到着しましょう。
法律相談の時間は、1回あたり30分間です。
短い時間内で弁護士に必要な情報を提供してアドバイスをもらう必要があるので、相談内容や時系列を記載したメモ、関係資料などを持参するのがおすすめです。
1回の法律相談だけで解決しなかった場合には、2回目の法律相談の予約ができます。
同じ弁護士を予約してもよいですが、相性などの面で不安があるなら別の弁護士に相談依頼を出すことも可能です。
3.相談した弁護士に対して依頼を申し込む
法律相談だけではトラブルの解決を見込めない場合には、法律相談を受けた弁護士に費用立替制度を希望する旨を伝えてください。
弁護士が今後の見通しや手続きの流れなどについて解説をしてくれます。
4.費用立替制度の審査などがおこなわれる
申し込みをすると、法テラスの費用立替制度の審査がおこなわれます。
審査の際には、以下の書類を法テラスに提出する必要があります。
| 書類の種類 | 具体的な書類 | 注意点 | |
|---|---|---|---|
| 本人及び同居の家族人数を確認するための資料 | 住民票 | ・申し込みから3ヵ月以内に発行されたもの ・本籍、筆頭者、続柄、世帯全員の記載があるもの |
|
| 収入を確認するための資料 | 給与生活者 | 給与明細及び賞与明細 | ・給与明細は直近2ヵ月分 ・賞与明細は直近のもの |
| 源泉徴収票 | 直近のもの | ||
| 課税(所得)証明書 | 直近のもの | ||
| 非課税(所得)証明書 | 直近のもの | ||
| 自営業者 | 確定申告書の写し | ・直近1年分 ・e-Taxの場合は受付結果(受信通知)を添付 |
|
| 課税(所得)証明書 | |||
| 年金受給者 | 年金振込通知書 | 直近のもの | |
| 年金支払通知書 | 直近のもの | ||
| 年金証書 | 直近のもの | ||
|
無職 |
非課税(所得)証明書 | 直近のもの | |
| 雇用保険受給者証明書 | |||
| 離職票 | |||
| 解雇通知 | |||
| 生活保護受給者 | 生活保護受給証明書 | 申し込みから3ヵ月以内に発行されたもの | |
| 生活保護(開始・変更)決定書 | 申し込みから3ヵ月以内に発行されたもの | ||
| 生活保護受給者証 | 最新のもの | ||
|
資産を確認するための資料 |
資力申告書 | ||
| 固定資産評価証明書 | 必要に応じて不動産全部登記事項証明書も提出 | ||
| 固定資産納税通知書 | 必要に応じて不動産全部登記事項証明書も提出 | ||
|
勝訴の見込みや事件内容を確認するための資料 |
事案による | ||
|
返済に使用する口座の確認のための資料 |
通帳の写し(キャッシュカードの写し) | ||
| 自動払込利用申込書兼預金口座振替依頼書の写し | |||
| インターネットバンキングなどの画面の写し | |||
審査が完了すると、法テラスから援助開始決定が出されます。
その際、立替額や毎月の返済額も決定されます。
依頼をした弁護士から契約書や案内書が手渡されるので、同意する場合には、委任契約を締結してください。
5.弁護士が事件に着手して問題解決に動く
弁護士との間で委任契約を締結すると、弁護士が依頼者の利益を最大化するために、さまざまな弁護活動を展開してくれます。
たとえば、会社側との話し合い、労働審判や民事訴訟への対応など、幅広い業務を代理してくれるので、定期的に弁護士と面談などの方法でコミュニケーションをとりながら業務の進捗状況を確認しましょう。
6.問題が解決したら法テラスに費用を支払う
法テラスが立て替えてくれた弁護士費用は、援助開始決定の2ヵ月後から返済が開始するのが一般的です。
ゆうちょ銀行の場合には毎月15日か25日、ゆうちょ銀行以外の場合には毎月27日に、指定口座から自動で引き落とされます。
毎月の返済額、返済期間などの詳細については契約書に記載されているので事前に確認しておきましょう。
労働問題を法テラスの弁護士に相談・依頼した際の費用目安
さいごに、労働問題を法テラス経由で弁護士に相談・依頼したときの費用目安額を紹介します。
以下の費用目安は、労働審判で紛争が解決した場合の費用相場です。
| 費用項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 実費 | 2万円 |
| 着手金 | 8万8,000円〜13万2,000円 |
| 報酬金 | ・入手金額が3,000万円以下の場合:入手した金額の10% ・入手金額が3,000万円超の場合:3,000万円以下の部分については10%、超過部分については6% ・相手方から当面取り立てができない場合:6万6,000円〜13万2,000円(標準額8万8,000円) ・相手方の請求を退けた場合:着手金の7割相当額 ・訴訟事件の場合:出廷回数 × 1万1,000円を加算(請求排除額の10%を超えない範囲) |
ただし、事件が複雑になったり、示談交渉や民事訴訟への対応などが必要になったりした場合には、弁護士費用がさらに高額になる可能性があります。
弁護士費用の詳細や目安額については、弁護士まで直接確認してください。
さいごに|経済的に苦しい方は法テラスの弁護士に相談・依頼しよう!
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この記事の監修
東日本総合法律会計事務所
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