派遣でよくある労働問題とは?知らないと後悔する実態と今すぐできる対処法
- 「契約内容とは違う業務をやらされている」
- 「正社員と同じ仕事をしているのに、明らかに待遇が悪い」
派遣社員として働いている中で、このような理不尽な扱いに悩んではいませんか?
派遣という働き方は、派遣元と派遣先の2つの組織が関わるため、責任の所在が曖昧になりやすく、トラブルが起きやすい構造にあります。
しかし、泣き寝入りする必要はありません。
本記事では、派遣社員が巻き込まれやすいよくある労働問題を、具体的な事例とともに紹介します。
トラブルに直面した際の正しい相談先や解決策も解説するので、派遣ならではの問題に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
派遣でよくある労働問題の例
ここでは、派遣でよくあるトラブルを以下の3つの視点から解説します。
- 派遣先で起こる労働問題
- 派遣会社との間で起こる労働問題
- そのほか労働者派遣法に違反する労働問題
今の自分の状況に当てはまるものがないか、確認してみましょう。
派遣先で起こる労働問題の例
派遣先で起こりやすい主な労働問題は、以下の6つです。
- 契約していない業務を任される
- 一方的に労働条件を変更させられてしまう
- 給与の対象になっていない労働時間がある
- サービス残業を強制させられる
- 有給の取得が許可されない
- パワハラやセクハラを受ける
それぞれの問題について、詳しく見ていきましょう。
契約していない業務を任される
派遣就業は「就業条件明示書」などで取り決められた業務内容に基づいておこなわれます。
契約に含まれていない業務を指示されても、従う義務はありません。
しかし、現場の社員が契約ルールを理解しておらず、「手が空いているならこれもやって」と安易に指示を出してしまうケースが多いです。
たとえば、事務職なのに倉庫作業をさせる、契約外のお茶出しや掃除を強要するなどが典型例です。
一方的に労働条件を変更させられてしまう
派遣元から一方的に労働条件を変えられてしまうケースもよくあるトラブルのひとつです。
通常、契約期間中であるにもかかわらず、派遣先の都合で一方的に「時給を下げる」「勤務日数を減らす」といった不利益な変更はできません。
契約期間中の不利益な労働条件の変更は、契約違反となる可能性が高いでしょう。
ただし、契約更新のタイミングで条件変更の打診がある場合は違法ではありません。
給与の対象になっていない労働時間がある
労働時間のカウント方法についても、派遣ならではの労働問題のひとつです。
通常、派遣社員の労働時間は契約によって細かく決められています。
本来であれば、業務に関わる以下の時間も労働時間に含まれます。
- 始業前後の朝礼やミーティング
- 制服への着替え
- 別のシフトへの引継ぎ
- 作業の片づけにかかる時間
しかし、これらを「準備時間だから」という理由で無給扱いにしているケースも多いのです。
なお、朝礼や着替え、引継ぎなどが労働時間に当たるかはケースによりますが、業務上必要で、指示や拘束がある場合は労働時間として扱われる可能性があります。
サービス残業を強制させられる
派遣は時給制のケースが多く、残業が発生した場合は、働いた時間に応じた賃金(割増賃金を含む)が支払われるのが原則です。
しかし、定時以降も働いているのに、残業した時間の勤怠をつけさせてもらえないケースもみられます。
自主的であれ強制的であれ、働いた分の対価が支払われないサービス残業は労働基準法違反です。
有給の取得が許可されない
派遣社員であっても、一定の条件(雇入れから6ヵ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤など)を満たせば、法律通りに有給休暇が付与されます。
しかし、「忙しいから休まれると困る」「派遣の人に有給はない」などと言われ、取得を拒否されるケースもみられます。
取得の申請先は雇用主である「派遣会社」ですが、派遣先が有給の取得を不当に拒否したり、取得を理由に不利益な取り扱いをしたりすることは許されません。
パワハラやセクハラを受ける
「派遣だから」という理由で立場を低く見られ、パワハラやセクハラを受けるケースです。
- パワハラ(パワーハラスメント)の具体例:暴言を吐かれる、無視される
- セクハラ(セクシャルハラスメント)の具体例:身体的接触を受ける、性的な話をされる
派遣先企業には、自社の社員同様に派遣スタッフに対しても適切な職場環境を整える義務があります。
「派遣社員だから」といってハラスメントを放置することは許されません。
派遣会社との間で起こる労働問題の例
派遣会社との間で起こりやすい主な労働問題は、以下の3つです。
- 辞めさせてもらえない/強引に引き留められる
- 産休や育休をとらせてもらえない
- 派遣先の問題に対応してもらえない
それぞれの問題について、詳しく見ていきましょう。
辞めさせてもらえない/強引に引き留められる
派遣会社から「契約期間中は絶対に辞められない」「後任が見つかるまで我慢しろ」などと言われ、強引に引き留められるケースがあります。
しかし、有期労働契約であっても、病気や家族の介護などの「やむを得ない事由」があれば、期間の途中でも契約を解除できます。
また、契約期間の定めがない場合や、1年以上継続して働いている場合などは、退職の申し出から一定期間が経過すれば辞めることは可能です。
産休や育休をとらせてもらえない
派遣社員であっても、条件を満たせば産休や育休を取得できます。
しかし、派遣会社の担当者が制度を正しく理解していなかったり、手続きを面倒がったりして、取得をさせてもらえないケースも少なくありません。
中には、以下のような誤った説明をする担当者もいます。
- 「派遣スタッフには育休制度はない」
- 「復帰できる現場がないから取得できない」
これらは事実と異なる場合が多いため、安易に信じないよう注意が必要です。
派遣先の問題に対応してもらえない
派遣先での契約違反やハラスメントを派遣会社の担当者に相談しても、「あなたが我慢すれば丸く収まる」「現場の機嫌を損ねたくない」などと言われ、まともに取り合ってもらえないケースもあります。
本来、派遣会社はスタッフを守る立場にありますが、派遣先企業との関係を優先するあまり、スタッフの問題を放置してしまうというケースも多いのです。
そのほかで労働者派遣法に違反する労働問題の例
労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)とは、立場の弱い派遣労働者の権利を守り、派遣事業が適切におこなわれるためのルールを定めた法律です。
派遣会社だけでなく、派遣先にもさまざまな義務を課しています。
労働者派遣法に違反する主な労働問題は、以下の4つです。
- 二重派遣をさせられる
- 同一労働同一賃金のルールが守られていない
- 離職後1年以内に派遣スタッフとして受け入れられる
- 不正に雇い止めをされる
それぞれの問題について、詳しく見ていきましょう。
二重派遣をさせられる
二重派遣とは、派遣会社から派遣されたスタッフを、派遣先企業がさらに別の企業へ派遣して働かせることを指します。
たとえば「派遣会社A社から派遣されたのに、派遣先B社の指示で、さらに別のC社へ行かされて働く」という状態です。
二重派遣は、派遣スタッフの雇用責任の所在が不明確になり、派遣スタッフの労働条件が悪化するおそれがあるため禁止されています。
同一労働同一賃金のルールが守られていない
同一労働同一賃金とは、正社員とそれ以外の労働者(派遣労働者を含む)との不合理な待遇差を禁止するルールです。
同一労働同一賃金の目的は、立場によって待遇に格差が生じやすい派遣労働者などを保護し、働きに見合った十分な待遇を確保することにあります。
そのため、「派遣だから賞与がない」「派遣だから福利厚生が使えない」といった取り扱いは、違法となるおそれがあります。
同一労働同一賃金に関する詳しいルールについては、以下の記事も参考にしてください。
離職後1年以内に派遣スタッフとして受け入れられる
企業を離職して1年以内の労働者を同一企業が派遣スタッフとして受け入れることは、労働者派遣法に違反します。
これは、企業側が正社員を解雇し、同じ人をよりコストの安い派遣社員として雇い直すことで、労働条件が悪化するのを防ぐためです。
ただし、60歳以上の定年退職者であれば、1年以内に派遣スタッフとして受け入れることは可能です。
不正に雇い止めをされる
雇い止めとは、契約期間の満了時に会社側が契約更新を拒否して雇用を終了させることです。
本来、有期労働契約は期間満了をもって終了しますが、何度も更新を繰り返して実質的に長期雇用となっている場合や、更新されると期待する合理的な理由がある場合に、会社側が正当な理由なく契約を打ち切ることは認められません。
たとえば、「1年以上継続して勤務している」または「契約が3回以上更新されている」場合、会社が雇い止めをするには、少なくとも契約満了の30日前までに予告する必要があります。
「明日から来なくていい」「来週で終わり」といった急な通告は違法です。
雇い止めが有効か無効かの判断基準や、不当な雇い止めへの対処法について、詳しくは以下の記事も参考にしてください。
人材派遣で労働問題が起きやすいのはなぜ?
一般的な直接雇用の正社員やパート・アルバイトと比較して、人材派遣ではトラブルや紛争が起きやすい傾向にあります。
考えられる主な理由は、以下の4つです。
- 正社員などの雇用に比べ派遣社員との関係性が複雑だから
- 法律のルールが複雑で頻繁に改正されるから
- 契約内容が曖昧にされることが多いから
- 関係性が希薄でコミュニケーション不足に陥りやすいから
ここからは、それぞれの理由について詳しく解説します。
正社員などの雇用に比べ派遣社員との関係性が複雑だから
通常の雇用契約は「企業」と「労働者」の二者間で成立しますが、人材派遣は「派遣元」「派遣先」「派遣社員」という三者間で成立します。
この三者は、それぞれの立場や利害関係に違いがあります。
- 派遣社員:安定した雇用やキャリアアップ、適切な労働環境を求める
- 派遣先:必要な期間だけ、必要なスキルを持った人材を確保したい
- 派遣元:スタッフと派遣先の板挟みになりながら、事業として利益を出す
三者の利害が必ずしも一致しないことから、歪みが生じやすいのです。
法律のルールが複雑で頻繁に改正されるから
労働者派遣法をはじめとする労働関連法は複雑で、かつ頻繁に改正されます。
近年でも、「派遣労働者の雇い入れ時の説明事項の追加」や「同一労働同一賃金」などの新しいルールが次々と導入されています。
しかし、全ての企業が内容を正確に理解し、遵守し続けることは容易ではありません。
とくに法務部門を持たない中小の派遣会社や、派遣の受け入れに慣れていない派遣先企業の場合、労働関係法令を丁寧に理解できていないケースも多いです。
その結果、「悪気はなかったが、知識不足で意図せず法律違反をしてしまった」という事態が起こり得るのです。
契約内容が曖昧にされることが多いから
派遣契約を結ぶ際は「就業条件明示書」などで業務内容や責任の範囲を明確にする必要があります。
しかし、実際には契約書の内容が不十分だったり、現場での運用が契約と異なっていたりするケースが多いです。
具体的な業務範囲や労働条件が曖昧なまま就業がスタートすると、あとになって認識のズレが表面化します。
「契約にはない業務を指示された」「聞いていた条件と違う」といったトラブルは、初期段階での契約内容の詰めが甘いことに起因する場合がほとんどです。
関係性が希薄でコミュニケーション不足に陥りやすいから
派遣社員は正社員と比較して会社への帰属意識を持ちにくく、派遣先との関係性が希薄になりがちです。
日頃から十分なコミュニケーションが取れていれば、不満や問題が生じても気軽に相談できます。
しかし、関係性が希薄な状態では、どうしてもコミュニケーションが不足してしまいます。
そのため、不満を一人で抱え込んでしまいやすく、事態が深刻化してからようやく発覚する事態となりかねません。
派遣社員が労働問題にあったらどうすればいい?どこに相談する?
派遣社員が労働問題に直面した際は、まず「誰に」「何を」相談すべきかを整理し、段階を踏んで対処していくことが重要です。
ここからは、具体的な相談先と解決へのステップを解説します。
派遣会社の担当者に相談する
派遣先でのトラブルや雇用契約に関する疑問が生じた場合、まずは派遣会社の担当者に相談してみてください。
派遣会社は、スタッフを守り、派遣先との間に入って環境を調整する義務があります。
全ての要望が通るとは限りませんが、現状をしっかり伝えることが大切です。
もし担当者が頼りないまたは高圧的である場合は、派遣会社の相談窓口へ連絡し、担当者の変更を申し出ることも検討してください。
派遣先の相談窓口に相談する
状況によっては派遣先企業の窓口を利用したほうがよいケースもあります。
たとえば、以下のような相談内容です。
- 具体的な業務の進め方や不明点
- オフィス設備や備品の使い方
- 職場環境や社内ルールに関する疑問
これらについては、派遣会社を経由するよりも、現場の指揮命令者や周りの社員に直接相談することで、タイムラグなく効率的に業務を進められるでしょう。
公的な機関に相談する
派遣会社に相談しても取り合ってもらえない場合や、派遣会社自体が法律違反をしている疑いがある場合は、公的な相談機関を利用しましょう。
以下では、主な公的機関とその特徴をまとめました。
| 公的機関名 | 特徴・相談できる内容 |
| 労働条件相談ほっとライン |
|
| ハローワーク(公共職業安定所) |
|
| 労働基準監督署 |
|
| 派遣に関する法律相談センター |
|
相談したい内容に応じて、適切な窓口を利用しましょう。
法的な対応を検討する場合は弁護士に相談する
「セクハラ・パワハラで精神疾患を患った」「不当な理由で突然雇い止めされた」「長期間の残業代が支払われていない」など、被害が深刻で損害賠償請求や未払い賃金の請求を考えたい場合は、弁護士に相談するのが有効です。
弁護士に相談することで、さまざまなメリットを得られます。
-
法的な判断と解決策が得られる
現在の状況で損害賠償などを請求できる見込みはあるか、証拠は足りているかなどを判断してもらえます。 -
会社との交渉を任せられる
会社や加害者と直接話す必要がなくなるので、精神的な負担が大幅に軽減されます。 -
会社側が無視しなくなる
弁護士は法的な根拠に基づいて文書の通知や交渉をするので、会社側も対応せざるを得なくなります。弁護士が介入することで、それまで誠実に対応しなかった会社側が態度を改めるケースも珍しくありません。 -
労働審判や裁判のサポートが受けられる
交渉で解決せず労働審判や訴訟へ移行する際も、一貫してサポートしてもらえます。
派遣会社を変えたりほかの働き方を検討したりするのもひとつの手
相談しても状況が改善しない、または派遣会社への不信感が拭えない場合は、環境を変えるのも有効です。
派遣会社によって、スタッフへのサポート体制や福利厚生、得意な職種は異なります。
「今の派遣会社が合わなかっただけ」という可能性も十分あります。
トラブルの際も親身になってくれる、信頼できる派遣会社を探し直すのもよいでしょう。
また、雇用の不安定さや、間に人が入るもどかしさに疲れてしまった場合は、直接雇用を目指すのも手です。
紹介予定派遣を利用して正社員を目指したり、契約社員として企業と直接契約を結んだりする方法も検討してみてください。
さいごに|労働問題の相談先・対処法を確認しておこう
本記事では、派遣社員が巻き込まれやすい「よくある労働問題」をわかりやすく解説しました。
派遣という働き方は「雇用元」と「勤務先」が異なる複雑な仕組みであるため、どうしても労働問題が発生しやすいです。
しかし、「派遣だから仕方がない」と諦める必要はありません。
トラブルに直面した際はひとりで抱え込まず、適切な相談先を頼りましょう。
とくに、深刻なトラブルが発生している、または会社に損害賠償を請求したい場合は、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談することで、法的な根拠を持って会社と対等に交渉できます。
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この記事の監修
東日本総合法律会計事務所
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