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自爆営業とは|違法事例から学ぶ断り方と対処法

更新日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
自爆営業とは|違法事例から学ぶ断り方と対処法
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自爆営業(じばくえいぎょう)とは、企業が労働者に自社商品などの購入を求めることです。自爆営業はコンビニなどの小売業や保険、物流業界などで問題となっています。

自爆営業は、労働法に違反している恐れがあり、民事上も損害賠償の対象になる可能性があります。この記事では、自爆営業の違法性や断り方、対処法などについてご紹介します。

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自爆営業とは|労働者の責任範囲と違法性

自爆営業によって、労働者に自社商品の購入を強制したり、代金相当額を給与から差し引いたりするのは違法です。この項目では、自爆営業の違法性と原因についてご紹介します。

『自爆営業』と労働者の責任

自爆営業は、自社商品を購入させることで、営業利益を本来よりも高く見せる行為です。課せられたノルマを達成するために、労働者が自主的に行う場合もあります。

ノルマ設定を行うこと自体は適法

会社と労働者の間には、『(会社が)労働賃金を支払う代わりに(労働者は)労務提供をする』という労働契約が結ばれています。労働契約で使用者が労働者に対して一定の成果を期待することは当然ですので、売上などのノルマを設定すること自体は問題ありません

もっともこれはあくまで期待であり、約束ではありません。したがって、業績やノルマ達成を確約させて、未達の場合に金銭的なペナルティを科すことは許されるものではありません

自爆営業は違法|ペナルティを科すのもNG

自爆営業によって労働者に金銭的負担を強要したり、商品購入や目標未達成などを理由に賃金を一方的に減額したりするのは違法です。労働基準法では、会社から労働者への賠償予定を禁止しています。

(賠償予定の禁止)

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

引用元: 労働基準法

そのため、自爆営業のほか、『遅刻したから罰金』といった制度も違法になります。

給与から天引きさせるのは違法

労働賃金には、『賃金の全額支払いの原則』というものがあります。これは、労働賃金は働いた分だけ、決まった期日に全額支払わなければならないというものです。

自爆営業で一方的に賃金を控除する行為は、給料不払いとして同原則に違反します。

(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外ので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

引用元: 労働基準法

悪質な自爆営業は『強要罪』に問われる可能性もある

労働者が拒否しているのにもかかわらず、自爆営業をするよう執拗に迫るのは、強要罪にあたる可能性もあります

「指示に従わないと査定上マイナスとなったり、給料を減額されたりするかもしれない」というプレッシャーを従業員に与えて、本来的に義務のない買取りを強制すると、労働基準法違反という犯罪にとどまらず、強要罪にも該当する可能性が出てくるのです。

引用元:自爆営業、強制すれば強要罪に?|エキサイトニュース

第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。

引用元: 刑法

自爆営業はなぜなくならないのか?

ノルマを達成できなかった労働者に金銭的負担を課す『自爆営業』は、本来、違法になる恐れのある行為です。自爆営業が起こる背景には、売上に対する本社からの厳しいプレッシャーが原因かもしれません。

コンビニの支店などで行われる自爆営業は、店長や上司自身も、自爆営業せざるを得ない状況に追い込まれている可能性もあるのです。

自爆営業の実例

自爆営業は違法性の高い行為です。しかし、現実問題として学生アルバイトや正社員など、多様な雇用形態の労働者が自爆営業に苦しめられているとの声があります。この項目では、自爆営業の事例についてご紹介します。

おすすめ記事: ブラックバイトとは|主な特徴と学生も出来る法的対策ガイド

年賀はがき販売

自爆営業でよく聞くのは、年賀はがきですよね。郵便局の厳しいノルマや自爆営業に関する声が、毎年ニュースになっています。

クリスマスケーキ販売

コンビニやスーパーなどの小売店ではクリスマスケーキをはじめとした、季節商品の自爆営業もよく耳にします。

労働者に商品やサービスの買取を強要する自爆営業は、労働法違反にあたる恐れがあります。

自爆営業を迫られた場合の断り方

この項目では、上司や会社から自爆営業を迫られた場合の、断り方をご紹介します。

建設的な話をする

自爆営業は労働者にとって金銭的負担になり、会社にとっても見せかけの営業利益でしかありません。ただし、真っ向から断ってしまうと、上司や会社側とトラブルになってしまう可能性もあります。

売上を上げるためのアイデアを自分から提案するなど、建設的な解決策が生まれるように働きかけることも大切です。

きっぱり断る

自爆営業は、不法・違法行為になる恐れもあるので、労働者側から断ることができます。労働者が商品の買取を強いられる理由はないので、買取を求められてもきっぱり断ってしまいましょう。とはいえ、面と向かって上司や会社に「自爆営業は嫌だ」というのは難しいという方もいるでしょう。

そういった場合は、メールなどで伝えることもできます。なお、メールは自爆営業の証拠にもなるので、削除せず手元に保存しておきましょう。

一旦保留する

アルバイトとして働く学生や主婦の場合は「家族に相談します」と言って、その場をしのぐこともできます。その後、メールなどで『相談したが、そのようなことはおかしいので、断るよう言われた』と伝えましょう。

なお、それでも自爆営業を強要された場合は、労働基準監督署への相談も検討してください

自爆営業を強要された場合の対処法

自爆営業は、会社にやめるよう交渉したり、発生した損害の賠償請求をしたりすることが可能です。この項目では、自爆営業の対処方法についてご紹介します。

自爆営業であることの証拠を集める

自爆営業の損害を会社に請求する場合は、その損害が自爆営業によるものであることや上司から強要されたことなどを証明する必要があります。

  • 特定の商品を大量に買ったレシートや明細書
  • ノルマが記載された掲示物の写真
  • 罰金などのペナルティが記載された就業規則
  • 上司からの言動を録音した音声データ

上記のものは、自爆営業の証拠になるので手元に残しておきましょう。

上司や本社に相談する

集めた証拠をもとに、自爆営業をやめてもらうよう上司や本社に相談します。自爆営業を上司から強要されている場合は、その上席にあたる上司に相談しましょう。店舗などで行われている場合は本社に相談します。

なお、相談する際はメールなど記録に残る方法でやりとりすることをおすすめします。

労働基準監督署に相談する

自爆営業を会社側に相談しても解決が難しい場合は、労働基準監督署に相談しましょう。労働基準監督署に相談する場合は、会社が所在する都道府県の労働局・労働基準監督署が管轄になります。

労働審判を起こす

労働基準監督署での解決が難しい場合は、労働審判を起こすことも検討しましょう。労働審判では、労働問題を専門とする審判官・審判員が問題解決のための判断を行います。労働審判の結果に納得がいかない場合は、通常訴訟(裁判)に移行することになります。

自爆営業をさせる会社は早めに転職

自爆営業は不法・違法行為にあたる可能性があります。また、労働者に自爆営業させる背景に、パワハラや賃金未払いなどの問題を抱えていることもあります。

そのため、自爆営業をさせる会社からは早めに転職するのも1つの手段です。この記事で、自爆営業に悩んでいる方の解決のヒントとなれば幸いです。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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