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残業代請求の解決期間はどのくらい?訴訟手続きや請求の種類別に弁護士が解説

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残業代請求の解決期間はどのくらい?訴訟手続きや請求の種類別に弁護士が解説

会社から支払われている残業代が思ったよりも少ない場合や、残業時間を正しく記録させてもらっていない場合などには、会社に対して『残業代請求』を行いましょう。

 

しかし、残業代請求をするためには、会社との交渉や法的手続きが必要となります。

 

そのため、場合によってはある程度の長期戦を覚悟しなければなりません。

 

残業代請求にかかる期間は、手続きの種類によっても異なります。弁護士と相談をしながら、可能であれば残業代請求にかかる期間が短く済む解決方法を模索することが大切です。

 

この記事では、残業代請求にかかる期間の目安などについて解説します。

 

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残業代請求の交渉(話し合い)は約1~2ヶ月|解決期間の短縮に繋がる

会社との交渉(話し合い)がまとまれば、残業代請求の問題をもっとも短期間で解決することができます

 

交渉(話し合い)で残業代請求の問題を解決するのにかかる期間は、ケースバイケースではあるものの、おおむね1~2か月程度です。

 

逆にいえば、これ以上時間がかかることが見込まれるようであれば、法的手続きへの移行も視野に入れるべきでしょう。

 

交渉(話し合い)は面倒な手続きが不要

会社と交渉(話し合い)をするだけであれば、法的手続きを取る場合とは異なり、法律上特に決まった手続きが存在するわけではありません。

 

そのため、内容面・手続き面ともに、当事者が納得する形で柔軟な解決を行うことが可能です。

 

会社との交渉(話し合い)により和解案がまとまった場合には、その内容を合意書の形で書面に残します。そして、合意書の内容に従って、会社から労働者に対して支払いが行われます。

 

これで手続きは完了です。

 

このように、交渉(話し合い)による和解には必要な手続きが少ないため、迅速に問題解決までたどり着きやすいというメリットがあります。

 

本気の姿勢を見せてスピーディな解決を

交渉(話し合い)は確かに迅速な解決に結びつきやすいといえますが、そのためには、当事者同士が真剣に問題解決に向けた話し合いをすることが前提となります。

 

労働者側としては、会社が残業代請求に関して、真摯に交渉のテーブルについてくれるように仕向けることが重要です。

 

たとえば『内容証明郵便の送付』や弁護士への依頼を行い、残業代を本気で請求するという姿勢を見せて、スピーディな解決を目指すのが良いでしょう。

 

まとまる見込みがない場合は法的手続きに切り替える

交渉(話し合い)がまとまらない場合は、結局のところ、法的手続きに訴えるほかなくなってしまいます。交渉(話し合い)がまとまる見込みがないのに、だらだらと話し合いを続けることは、時間の浪費にも繋がります。

 

そのため、交渉(話し合い)が難航している場合には、ある程度のところで見切りをつけて速やかに法的手続きに切り替えるべきでしょう。

 

労働審判なら3か月程度|迅速な法的手続きで訴訟より比較的短く済む

労働審判は、訴訟に比べて迅速な問題解決を実現できる法的手続きです。そのため、残業代請求問題の解決期間も、比較的短く済む傾向にあります。

 

労働審判とは

『労働審判』とは、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員(非裁判官)2名によって組織される労働審判委員会が主催する、労働紛争に特化した非公開の法的手続きです。

 

労働審判では、労働審判委員会が当事者双方の主張を聞き、間に入って調停の成立を試みます。

 

仮に調停が成立しない場合にも、労働審判委員会による審判が示されるため、当事者は一定の解決を得ることができるようになっています。

 

労働審判にかかる期間は申立てから3か月程度

労働審判の第1回期日は、原則として申立てから40日以内の日に指定されます(労働審判規則13条)。その後の期日は2~3週間おきに、最大3回まで開催されます。

 

すべての手続きにかかる期間をトータルすると、申立てからおおむね3か月程度となります。

 

訴訟が1年以上かかるケースもしばしばあることを考えると、労働審判は迅速に問題を解決できるメリットがあるといえるでしょう。

 

労働審判の流れ|期日は原則として最大3回まで

労働審判の具体的な流れ』をご説明します。

 

参考:裁判所

 

①申立て

労働審判は、裁判所に対して労働審判の申立てをすることによって開始されます。労働者が会社に対して労働審判を申し立てる際には、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に対して申立てを行う必要があります(労働審判法2条1項)。

 

(管轄)

第二条 労働審判手続に係る事件(以下「労働審判事件」という。)は、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所、個別労働関係民事紛争が生じた労働者と事業主との間の労働関係に基づいて当該労働者が現に就業し若しくは最後に就業した当該事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所の管轄とする。

引用元:労働審判法2条1項

 

②労働審判期日(最大3回)

労働審判の申立てが行われると、労働審判委員会と各当事者が一堂に会する、労働審判期日が設定されます。労働審判期日では、労働審判委員会が双方の言い分を聞き、事件の争点を整理します。

 

また、必要に応じて、申立てまたは職権による証拠調べが行われます(労働審判法17条1項)。

労働審判期日は、特別な事情がある場合を除き、3回以内で終結します(同法15条2項)。

 

この点は、訴訟の期日が回数無制限であることに比べて、解決期間の短縮化に資する大きな特徴といえるでしょう。

 

(迅速な手続)

第十五条 労働審判委員会は、速やかに、当事者の陳述を聴いて争点及び証拠の整理をしなければならない。

2 労働審判手続においては、特別の事情がある場合を除き、三回以内の期日において、審理を終結しなければならない。

引用元:労働審判法15条

(証拠調べ等)

第十七条 労働審判委員会は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをすることができる。

2 証拠調べについては、民事訴訟の例による。

引用元:労働審判法17条

③調停成立または労働審判

当事者間で話し合いによる問題解決の見込みがある場合には、労働審判期日の中で調停が試みられます。労働審判委員会が提示する調停案に当事者双方が同意すれば、調停成立です。

 

一方、当事者間で調停が成立しない場合には、労働審判期日の終結後に労働審判が行われます(労働審判法20条1項)。

 

(労働審判)

第二十条 労働審判委員会は、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえて、労働審判を行う。

引用元:労働審判法20条

 

④異議の申立てまたは労働審判の確定

当事者は、労働審判の告知を受けてから2週間の不変期間内に、裁判所に対して異議の申立てを行うことができます(労働審判法21条1項)。

 

適法な異議の申立てがあったときは、労働審判は効力を失い、訴訟手続きに移行します(同法21条3項、22条1項)。

 

一方、適法な異議の申立てがないときは、労働審判は確定します。確定した労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有し(同法21条4項)、当事者を拘束します。また、確定した労働審判の審判書を債務名義として、会社に対して強制執行の手続きを取ることも可能です。

 

審判への不服申立てが行われると訴訟に発展してしまう

労働審判に対する異議申立てがあると、自動的に訴訟へ移行します。この場合には、労働審判にかかった時間が無駄になってしまいます。

 

そのため、会社があまりにも強硬な場合には、最初から訴訟を提起するという選択肢もあり得るでしょう。

 

訴訟になれば徹底抗戦|解決期間は長期化の可能性が高い

会社に対してやむを得ず残業代請求訴訟を提起する場合には、会社も徹底的に争ってくることが予想されます。したがって、解決期間も長期化することを覚悟しなければならないでしょう。

 

訴訟になるのは揉め事がこじれたケース

残業代請求訴訟に発展するのは、基本的には話し合いや労働審判では解決できなかったケースが中心となります。そのため、どうしても対立が根深く、問題も複雑になりがちです。

 

また、訴訟は最終的な決着の場になるので、会社も徹底的に争ってくる可能性が高いでしょう。このような理由から、残業代請求訴訟は長期化する傾向にあるといえます。

 

訴訟にかかる期間はケースバイケース|泥沼化すれば1年以上も

残業代請求訴訟にかかる期間は、事案によってかなり幅があります。訴訟における口頭弁論期日は、裁判所が心証を形成するまで、回数の制限なく開催され続けます

 

比較的シンプルなケースでは、数回の口頭弁論を経て、全体として数か月程度の期間で終わることもあります。

 

また裁判上の和解が成立するケースでは、手続きを途中で切り上げることができるため、短期間で終わることもしばしばです。しかし、事案の内容が複雑である場合には、1年以上の長期にわたって争わなければならない場合もあるでしょう。

 

訴訟の流れ

残業代請求訴訟の具体的な流れについて解説します。

 

①裁判所へ訴状を提出

残業代請求訴訟を提起する場合には、裁判所に対して訴状を提出する必要があります。

 

労働者が会社に対して訴訟を提起する場合、原則として会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に訴状を提出しなければなりません(民事訴訟法4条1項)。

 

ただし、労働契約などにおいて特に管轄権の合意がある場合には、その定めに従うことになります(同法11条1項)。

 

②口頭弁論

裁判所に対して訴状を提出すると、第1回の口頭弁論期日が指定されます。

 

口頭弁論では、当事者による主張、立証活動が行われます。裁判所が事件に関する心証を形成するまで、口頭弁論期日は何度でも設定されます。

 

口頭弁論期日においては、自らの主張を立証するに足る証拠を提出する必要がありますので、弁護士と協力して入念な準備を進めましょう

 

③裁判上の和解または判決

残業代請求訴訟では、手続きの途中で、裁判官が当事者双方に対して和解を勧告する可能性があります(民事訴訟法89条)。当事者が和解案に合意すれば、裁判上の和解が成立して手続きは終了です。

 

一方、和解に至ることが困難と判断される場合には、裁判所が心証を形成次第、判決が言い渡されることになります。

 

④控訴または判決確定

当事者が判決の内容に異議がある場合には、判決書の送達を受けてから二週間の不変期間内に控訴をする必要があります(民事訴訟法285条)。

 

(控訴期間)

第二百八十五条 控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。

引用元:民事訴訟法285条

 

控訴期間内に適法な控訴がない場合には、判決は確定し、当事者を拘束することになります。

 

労働者側の言い分が認められる判決が言い渡された場合には、確定判決の正本を債務名義として、会社に対して強制執行の手続きを取ることも可能です。

 

 

弁護士に相談することで解決期間を短縮できる可能性がある

労働者が会社に対して残業代を請求する場合、弁護士に相談をすることで、短い期間でスムーズに問題を解決できる可能性が高くなります。

 

会社が真剣に交渉に臨むタイミングが早まる

労働者が弁護士に残業代請求を依頼し、会社との交渉の場に弁護士を伴って臨めば、会社としても労働者側が真剣であることを認識することになるでしょう。

 

そうなれば、会社側もスムーズな問題解決を目指して、本腰を入れて交渉のテーブルに着くことが予想されます。

 

労働者・会社の双方が真剣に話し合いを行えば、それぞれの言い分を突き合わせて妥協点を探ることも容易になるため、スムーズな問題解決に繋がる可能性が高まるでしょう。

 

専門的な手続きをスムーズに進められる

労働審判や訴訟は準備する書類も多く複雑なため、労働者が自分だけで準備すると、あまりにも時間がかかってしまうでしょう。この点、弁護士は労働紛争を数多く取り扱っており、また労働問題に関する専門的知識も豊富に持ち合わせています。

 

そのため弁護士に依頼をすれば、専門的な手続きであってもスムーズに準備を進めることができるでしょう。

 

適切な手続きを選択できる

残業代請求問題を迅速に解決するためには、会社側の出方を見ながら、早期解決に役立つ手続きを適切に選択する必要があります。

 

たとえば、交渉(話し合い)で解決する見込みがないのに、いつまでもだらだらと交渉(話し合い)を続けるのは問題解決を長引かせてしまうことに繋がるでしょう。

 

弁護士が会社との交渉(話し合い)に同席すれば、これまで労働者側で会社とのやり取りを行ってきた経験から、会社が事件の見通しをどのように考えているかを敏感に感じ取ることができます。

 

その印象を踏まえて、残業代請求に関する戦略を適切に立てることによって、問題の早期解決を実現できる可能性が高まります。

 

まとめ

残業代請求は、労働者側から見ると、会社という強大な存在を相手にした難しい戦いになります。

 

会社側も、労働者側の言い分をすんなり受け入れることは少ないため、残業代請求に関する争いはどうしても長期化してしまうことが多くなりがちです。

 

しかし、弁護士に相談しながら適切な方法で争うことによって、残業代請求問題の解決期間を短縮できる可能性があります。

 

会社に対して残業代を請求しようと考えている労働者の方は、請求に関する戦略を立てるためにも、一度弁護士にご相談ください。

 

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この記事は、株式会社アシロの『ベンナビ労働問題編集部』が執筆、社内弁護士が監修しました。
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