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モンスター社員とは、主に自己中心的な態度や考えで周りの社員を困らせたり、企業に損害を与えたりする社員のことをいいます。モンスター社員を抱えるのは企業にとってもリスクとなりますので、「すぐにでも辞めさせたい」と考える企業も多いかと思いますが、従業員を簡単に辞めさせることはできません。
では、困ったモンスター社員を辞めさせるためには、どのような手続を踏めば良いのでしょうか。退職の交渉を弁護士に依頼するメリットについても紹介します。
まず、モンスター社員とはどんな社員のことを指すのか、その例を挙げてみます。
最近では、パワハラに対する世間の目も厳しくなっていますので、上司から部下に対するパワハラは起こりづらくなっていると思われます。しかし、上司が部下に対して強く言えないことを逆手に取り、上司に対して暴言を浴びせる等するモンスター社員もいるのです。
上司の指示を聞かない、指摘に対して「それってパワハラではないですか?」と圧をかける、集団で無視をするなどです。上司も立場的に社内で第三者に相談しにくく、問題は根深いものになっています。
発言が自己中心的なのもモンスター社員の特徴の一つに挙げられるでしょう。周りとの協調性がなく、自分の仕事だけを優先し、グループとしての仕事は人任せにするようなこともあるでしょう。
ギャンブルや女癖などの素行が悪い社員もいるでしょう。ギャンブルの場合は借金をして消費者金融から会社に連絡が入るということもあるかもしれません。女癖に関しては、社内で不倫やセクハラをすれば社内の人間関係にも影響が出てしまいます。
遅刻や欠勤の常習犯もいるかもしれません。遅刻や欠勤をすることで、ミーティングや取引先の面談に出席できなくなれば、周囲に大きな迷惑をかけてしまいます。病気が原因ならばやむを得ないかもしれませんが、飲みすぎや遊びすぎで体調を崩しているのであれば、自己コントロールができないモンスター社員と評価されるでしょう。
会社として不適切な髪形・服装・ネイルなど、注意されても直さない社員もいるでしょう。取引先から見て清潔感がないと感じられてしまえば、取引に影響が出ることもあるかもしれません。
仕事中にスマホでゲームをしたり、ネットサーフィンをしたりと、業務に集中しない社員もいるでしょう。仕事で実績を残せていたらまだ良いでしょうが、仕事もせずに他のことをするのは給料泥棒と思いたくなるかもしれません。
能力が不足しているのに、やる気を出さず勉強もしようとしない社員もいるでしょう。例えば、証券会社であれば証券外務員という資格がなければ証券の販売などができません。資格取得を命じても、資格勉強の努力を一切しない社員もいるかもしれません。
取引先から頼まれたことを忘れてしまう、指摘を受けたら逆ギレしてしまうなど、取引先と頻繁に問題を起こす社員もいるでしょう。当該社員をきっかけに取引先との関係に亀裂が入ることになれば、企業としては大きな損失を被ることになってしまいます。
架空の出張費や交通費を計上して不正に金銭を取得したり、顧客から得た金銭を自分の懐に入れたりといった犯罪行為をする社員は、当然問題社員といえるでしょう。
企業がモンスター社員を抱えるリスクにはどんなものがあるのでしょうか。
モンスター社員がいる環境では、モンスター社員のミスをフォローするなどして周囲の負担が増えます。その結果、周囲の社員の労働時間が増えるだけでなく、「なんで自分がフォローをしないといけないの。」と負の感情が生まれる可能性があります。社内の雰囲気が悪化し、職場環境が悪くなることが考えられます。
モンスター社員からパワハラやセクハラを受けたり、モンスター社員のフォローに疲弊したりして優秀な人材が退職してしまう可能性もあります。企業は人材から成り立っているので優秀な人材の流出は企業にとって大きな痛手です。
トラブルが絶えない社員に対しても、当然給与や賞与が発生します。会社の生産性に貢献しない社員の人件費は、会社として負担に感じることはあるでしょう。 また、モンスター社員が問題を起こすなどして取引先から取引を断られれば、多額の損害が発生する可能性もあり得ます。
モンスター社員を抱えることで、このような金銭的なダメージを被る可能性は高くなるでしょう。
モンスター社員と呼ばれる社員の中には、自己中心的な考えから被害者意識が強い人もいるかもしれません。 例えば、上司から通常の指摘を受けただけもかかわらず、「言い方がキツイ。パワハラだ。」などと訴訟を起こされる場合もあるでしょう。
適切に対応すれば問題はないでしょうが、労働者から訴訟を起こされた場合、会社はその対応にコストを割かなければならず、無用な負担が生じてしまいます。
では、モンスター社員を辞めさせることで得られる利益について紹介します。
まずは企業の雰囲気が良くなることが期待されます。 協調性がない社員や、モチベーションが低い社員がいれば、社内に負の影響を及ぼすことが想像できます。モンスター社員が周囲に与える負の影響がなくなれば、社内の雰囲気が良くなり、社員同士のコミュニケーションも円滑になる等のメリットが期待できます。
周囲の社員がモンスター社員のフォローをしなくてはいけなくなったりすると、周囲の社員の負担が大きくなります。モンスター社員が辞めれば、周りの負担を減少させることが期待できます。
モンスター社員に支払う給与・賞与を減らせれば、その分人件費をカットできます。それを新しい人材の確保に使ったり、他の社員の賞与の上乗せをしたりといった使い方もできるようになるでしょう。
モンスター社員を辞めさせようと思っても、日本では解雇に対する規制が厳しく、簡単には辞めさせることはできません。その他の対策にはどんな方法があるのでしょうか。
まず、異動させるという方法が考えられます。単純に能力の問題だけであれば、例えば、営業の能力が足りない社員を事務系の部門に異動させれば問題は解決するかもしれません。
また、人間関係に問題がある社員であれば、例えば、逆パワハラをするようなモンスター社員を厳しい上司の下につけると解決するいう場合もあるでしょう。
問題が起こった際には、始末書を書かせるのも一つです。自分の行いを整理し、何がダメだったかを自分自身で受け止めることで社員が心を入れ替えるかもしれません。また、始末書を書かせることで会社として指導したことが記録に残るため、その後当該社員が同様の問題を起こした場合に対処しやすくなるでしょう。
場合によっては減給するという方法も考えられます。ただし、減給は労働者に対する不利益が大きいため、慎重な運用を行う必要があります。また、減給については以下のようなルールもありますので注意が必要です。
(制裁規定の制限)
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。引用元:労働基準法第91条
従業員に対して退職してくれるように交渉するのも一つの方法です。社員自らが辞める場合は「自己都合退職」となります。 ただし、強行に退職を迫れば、退職強要とみなされ違法となり得るので注意が必要です。
最終的には解雇という手段も考えられます。 もっとも、問題があるからといってすぐに解雇できるわけではありません。解雇権の濫用だと判断された場合は、解雇そのものが無効となります。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元:労働契約法第16条
どのような場合に無効な解雇となるのかは、個々の事情によって異なりますので、安易な判断はせず、弁護士などの専門家に相談した上で慎重に進めるべきと言えます。 なお、解雇といっても普通解雇・整理解雇・懲戒解雇といった種類があるので、以下簡単に説明します。
普通解雇とは、やむを得ない事由があるときに使用者が一方的に労働契約を解約することをいい、整理解雇、懲戒解雇以外の解雇のことです。
整理解雇とは、企業の業績が悪く人員整理が必要な場合に行う解雇のことです。
懲戒解雇とは、懲戒処分として行う解雇のことです。 懲戒処分には戒告、譴責(けんせき)、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇があります。懲戒解雇は一番重い懲戒処分です。
なお、「諭旨解雇(ゆしかいこ)」とは、一定期間内に退職願を提出させ、提出があれば退職扱いとし、なければ懲戒解雇とする処分をいいます。
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安易に解雇をしてしまうと、以下のような様々なリスクがあります。
解雇が無効と判断されてしまうと、当該労働者が実際には働いていなくても、会社は当該社員に給与を支払う義務を負います(民法第536条第2項参照)
(債務者の危険負担等)
第五百三十六条
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。
この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
引用元:民法|e-gov
解雇した社員から、不当解雇として裁判を起こされるリスクがあります。裁判の準備には時間がかかりますし、弁護士に対応を依頼すれば弁護士費用もかかります。
社員から訴訟を起こされ、不当解雇と判断されれば、慰謝料を支払う必要が生じる場合があります。
解雇を行う場合には、いきなり解雇とせず、適切な手順を踏んで行う必要があります。以下、説明します。
まずは、口頭で注意することが基本です。本人の言い分を聞きつつ、反省の機会を与えます。
口頭注意でも効果がなければ、始末書を提出させることを検討しましょう。始末書を提出させることで、会社としても指導した記録が残り、後に裁判になったときの証拠としても利用できるでしょう。
再三の注意喚起にもかかわらず改善が見られない場合には、減給などの思い懲戒処分も検討します。
退職勧奨(たいしょくかんしょう)とは、従業員を退職させるために退職を勧める行為のことです。
改善の見込みがないと判断した場合には、退職勧奨を行うことが考えられます。もっとも、退職勧奨をしても、最終的に会社をやめるかどうかは労働者側が判断します。強行に退職を迫れば、退職強要とみなされ違法となり得るので注意が必要です。 退職勧奨が違法になるかどうかは、退職勧奨が労働者の自由意思を害する手段・態様で行われたか否かで判断されます。
例えば、長時間、多数回に渡る退職勧奨を行った場合は違法な退職強要と判断されやすくなるでしょう。
上述のような段階を経て、最終手段として解雇の判断をすると良いでしょう。
モンスター社員を解雇する場合は、その対応を弁護士に依頼すると安心です。弁護士に依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
弁護士に依頼することにより、リスクを最小限に抑えることが期待できます。 前述のとおり、日本では解雇に対する規制が厳しく、不用意に解雇をしてしまえば、解雇の効力が争われ無効とされるリスクがあります。
弁護士に依頼すれば、解雇事由として適切か、適切な手順をとれているかなどのアドバイスを受けることが期待でき、無効な解雇と判断されるリスクを抑えることが期待できます。
弁護士が法的な根拠に基づき社員と交渉することで、社員としても冷静な判断ができるかもしれません。顔を知った人事担当者には感情的になり強硬な態度を見せていても、弁護士に説得されれば自主的に退職するという判断になることも期待できます。
万が一、社員から裁判を起こされることになったとしても、事情を理解した弁護士がサポートしてくれれば安心です。弁護士に裁判の対応も依頼でき、会社の負担を減らすことができるでしょう。
モンスター社員に辞めて欲しくても思っても簡単には解雇することはできません。まずは口頭注意や減給などのさまざまな手段をとったうえで、解雇は最終手段として考えるべきでしょう。
社員が、解雇の理由や手続きが不適切だと感じれば、訴訟を起こされるリスクもあります。そのため、モンスター社員を退職させたい場合には弁護士に相談すべきと言えるでしょう。
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